東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
後半に新規で絡みを追加したら長くなったぜ()
~天狗の里 広場~
side-影政
「――影政様!」
「「「影政様!!」」」
宴会が始まり十数分が経った。俺は白狼天狗達が集まる広場の一角に向かう。仲間達と談笑していた椛が真っ先に気付いて嬉しそうに笑みを浮かべる。椛の後に俺に気付いた白狼天狗達が俺を囲むように集まって来る。
「...本当に、壮健のようで嬉しいです!...ちょっと、
「『紅霧異変』、でしたっけ?『文々。新聞』で読みましたが、目覚めて早々に
「あ、でも...挨拶回りで最初に山を訪るべきだったと思うんですよ。特に椛は影政様が目覚められたと知ってから溜息ばっかりでしたし」
「ち、ちょっとそれは...!」
白狼天狗達は笑顔で尻尾を振りながら次々俺に話しかけてくる。
―――本来、白狼天狗はこれ程友好的な種族ではない。『妖怪の山』での平時の哨戒、有事の尖兵という役目柄輪を掛けて排他的で、天狗以外の種族の住人相手でも冷たい所があった。
それが変わったのは、俺が椛の父親―――『
―――『イテテ...アンタ強いな。人間なのに
初めて『妖怪の山』に入った際に斬り結んで彼に打ち勝ち、興味を持たれたのが友情の始まりだった。紅葉は種族の性格に反して随分友好的な性格で、当時山を支配していた"鬼"に
天狗社会は厳格な階級社会だ。白狼天狗は階級の最底辺であり、衣食住は揃っていたが娯楽に乏しい待遇だった。将棋と酒以外には鍛錬、試合位しか無かったせいか、白狼天狗は武人的気質も合わせ持っていた。『天狗の里』内にある白狼天狗の集落に入れるようになった当初は警戒されて距離を取られていたが、紅葉との鍛錬や将棋、酒の付き合いを見てる内に興味を持たれたのか、一人、また一人と加わって来て、いつしか白狼天狗全体から歓迎される程に友好的な関係を結べた。...山に入ると、哨戒中に俺を見付けた白狼天狗に試合を挑まれるようにもなったが。
種族全体とも付き合いを深めた結果、白兵戦の師としての側面まで持つようになった。特に、赤ん坊の頃に紅葉から紹介されて以来、遊んでやったり簡単な鍛錬に付き合ったりしていた椛は
―――閑話休題。
「すまないな。この山以外にも行くべき所はあったからな。『紅霧異変』もあって遅れてしまった。...それはさておき、椛。宴の席で言うことではないが――紅葉の事は残念だった。友人として葬儀にも参列出来なくてすまなかった」
そう言って椛に頭を下げると、椛以外の白狼天狗達の表情に少し陰が差す。紅葉は白狼天狗随一の白兵戦能力と指揮能力を持ち、次期『白狼大将』として期待されていた。―――その話が現実味を帯び始めていた時に、『吸血鬼異変』が起きてしまったが。
―――俺は吸血鬼が動き出したという急報を聞いて単身
「...百年経っても変わらず、律儀な方ですね。父上ならそんな事は気にしないでしょうし、こうして目を覚まして私達と話しているのを見れただけで嬉しいでしょう」
「紅葉さんなら、"そんな事より飲もう!笑って話してるだけで充分手向けだ!"って言うだろうしねー」
「うんうん。――だから、大丈夫ですよ影政様。椛も私達も、紅葉さんの事は乗り越えられましたから」
「...そうか。なら良かった」
―――しかし、椛はそう言って微笑み、周りの白狼天狗達も明るい雰囲気になる。彼女は
「...ですが、影政様に一つお願いがあるんです。...もしまた、山を訪ねる機会があったら一度手合わせをお願いしたいんです。百年の間にどれだけ成長できたか、父上に見せてあげたくて」
「ふむ、それ位なら構わないぞ。いつまた山を訪ねられるか分からないが、その時は相手を――」
「あ、椛だけズルい!影政様、私とも手合わせを――」
「影政様、私とも――」
微笑みから真面目な表情に変えた椛の願いを引き受けると、他の白狼天狗達も手合わせをしろと詰め寄ってくる。
「っとと、押すな押すな...!」
「ち、ちょっと皆そんなに押し掛けないで!影政様が困るでしょう!」
「影政様!」
「手合わせを――」
「「「影政様!」」」
詰め寄る白狼天狗達を押し留め、椛も窘めるが我も我もと数がどんどん増えてくる。
「――相変わらず、白狼天狗から大人気ね」
ふと、背後から聞き覚えがある声が聞こえて来た。白狼天狗達を留めながら振り向くと、茶髪をツインテールで結い上げ、紫色の天狗帽子を被り、薄いピンク色のブラウスに黒いネクタイを締め、黒と紫の市松模様を飾ったスカートと紫色のバンドで締めた黒いハイソックス、一本足の下駄を履いた鴉天狗『
「――あ、はたてさん!皆を止めるの手伝ってください!」
「えー、止めるなんて勿体ないじゃん?このまま押し倒されてもふもふされてくれたらいいネタになるわ」
椛の頼みを聞き流しながら、はたてはベルトに提げていた
彼女も文と同様に『花果子念報』という新聞を発行しているが、
「題して『救山の英雄、白狼の牙にかかる!』って所かしらねー。英雄すら
「...そんな内容の記事を書くなら、私達は許しませんよ」
すると、椛の言葉を皮切りに白狼天狗達は俺に詰め寄るのをパッと止めて一斉にはたてを睨む。嘗てなら
「...いい目付きじゃない。
白狼天狗達の雰囲気に動じる事無く、はたては不敵に笑いながら俺を見る。
―――前述の通り、天狗社会は厳格な階級社会だ。本来ならば白狼天狗は鴉天狗に跪くべきである。しかし、俺との交友を通して白狼天狗達は
「...記事の事は冗談よ。流石にそんな内容で書いたら大天狗所か
「...互いに利がある方法、ですか?」
はたての言葉に白狼天狗達は首を傾げる。
「――影政が
「組手か...確かにそれなら皆の望みに応えられるが」
はたての提案は一理ある。椛も含め、白狼天狗達は百年振りに俺と手合わせがしたい。俺としても、百年も心配させた事への埋め合わせの一助になる。そしてはたては―――
「――で、私はその様子を記事にする。
「...なるほど、確かに互いに利益がある方法ですね。ですが、組手となれば沢山の娘が影政様に挑むでしょう。それで影政様を拘束して長く留まらせる事になるのは...」
「...あー、確かにね。影政はこの山の英雄ってだけじゃないしねぇ...」
椛の指摘に対し、はたては失念していたように額に手を添えてため息をつく。椛は俺が組手に時間を取られる事による、他所や他者への影響を懸念しているようだ。
「...影政、この山以外に行く所ってまだある?」
「『地底』、『冥界』...直接行くべき所はまだあるな」
「本当、繋がりが広いわよねぇ...羨ましいわ」
はたての問いに答えると、彼女は羨ましそうに俺を見る。文と同じ新聞記者だが、はたてを
「はたてさんはそもそも、命令が無ければ山の外に殆ど出ないですからね」
「...そ、それは今関係ないでしょ」
「関係大有りですよね?普段はできない
「ぐっ...」
椛の追究にはたては言葉を濁す。
ただ、得られる写真は大概
「...べ、別に利用したっていいじゃん!せっかくいい記事が書けるチャンスなんだから!」
「文さんみたいに
「ぐぬぬ...影政、椛が私を苛めるんだけど?!」
「...単に正論を言ってるだけだと思うが。
「か、影政まで...」
椛の追究に参って俺に助けを求めてくるが、断るとガックリと項垂れる。
「...ですが、魅力的な提案なのは確かです。父上なら、二つ返事で引き受けたでしょう」
「...確かにアイツ、白狼天狗らしからぬ自由人だったわねー。アイツなら"いいなそれ!今度やろう!"って即決でしょうね」
「...ですが、私は父上ではありません。私は、影政様のお手を煩わせることになってしまうなら、その提案はお断りします」
椛はあくまで
「――何やら面白そうな話をしているね?」
「「「「飯綱丸様!!」」」」
―――ふと、聞き覚えのある声が俺の背後から聞こえ、椛達白狼天狗全員は勿論、はたてまで跪く。『妖怪の山』を実際に統治する八人の"大天狗"、その筆頭ともなればはたてからしても高位の人物だ。
「――皆、楽にせよ。此度の宴は
「...分かりました」
「「「...飯綱丸様がそう仰られるのであれば」」」
大天狗筆頭たる龍は、威厳を示しつつも気さくな笑みを浮かべて無礼講を許す。椛達白狼天狗、はたては跪くのをやめて立ち上がる。
「――影政、改めて百年前に山を救ってくれた事の礼を言いたい。お前の加勢が無ければ
「影政様。私からも、お礼を言わせて下さい。あの時、周りから向けられていた猜疑の目を翔琉様と共に晴らして頂かなければ、
龍と、彼女の傍に控える腹心の管狐『
―――典は龍に使役されているが、それでも狐だ。忠実に振る舞いつつも裏で混乱の火種を作ったり、
その性分が
しかし典の敵側としての振る舞いが完璧過ぎて、性分もあって誰も彼もから疑われていたのを、戦局が落ち着いた所で俺と翔琉が弁護した。彼女は
「俺も二人に感謝したい。龍の指揮と、典の攪乱が無ければ戦局を優勢に変えるのも厳しかっただろう」
「む、そう謙遜するな。実際に戦局を変えたのは影政だ。...私達では方法を思い付けても実行に移す余力は無かったのだから」
「影政は相変わらず謙虚ねー。もっと誇ってもいいんじゃない?」
「そう言われてもな...俺だって独力で全てできる程の力は無い。お前達が手を尽くして耐えていたからこそ、利用できるものを利用して優勢に持って行けた」
龍とはたてに謙遜するなと言われるが、これは最早俺の性分だろう。驕らず冷静に在ろうとしているだけだが、それが周りからは謙遜に見えるようだ。
「...これ以上は不毛な議論だな。感謝や謝罪はここまでとする。今は宴だ、楽しい話をしようじゃないか」
龍はそう言って手をパンパンと鳴らす。
「さて。宴が始まって最初に向かったのが白狼天狗の所とは実に影政らしいが、何か面白そうな話をしていたね?」
「えーと、実はですね――」
はたては龍に俺と白狼天狗の組手の提案について説明する。
「――という訳で、互いに利がある提案だと私は思うんですよ」
「ふむ。なるほど面白そうな提案だ。...影政はどう考えているのかな?」
「白狼天狗皆がやりたいと言うなら、その意思を尊重して引き受けようと思っている」
龍にそう答えると、彼女は頷きながら瞑目して考え込む。
「...白狼天狗の皆。影政は前向きのようだが、どうしたい?」
「影政様がそう考えていらっしゃるのであれば、否やはありません」
「影政様がやりたいと言うなら、私達も組手は歓迎しますよ」
「ですが、やると決まってもいつやるか...」
龍の問いに椛達は前向きな答えを返す。
「確かに、いつ実施するかが問題だな。少なくとも翌日にさぁやるぞ!...とは行くまい?」
「そうだな。まだ挨拶回りも終わっていない。すぐには無理だな。...だが、日程が決まったなら
俺の答えに白狼天狗達とはたてがパァッと喜色を浮かべる。
「影政様、ありがとうございます...!」
「「「やったー!」」」
「よっし!これで文に追い付けるわ...!」
椛は俺に頭を下げ、他の白狼天狗達は互いに喜び合い、はたてはガッツポーズをする。
「うむ、見事な喜び様だね。...影政、時期未定だがやると決まった以上、すべき事は漏れなくやることだ。直前になって"外せない用事がある"なんてことは無いようにな」
「あぁ、勿論だ」
龍の言葉に頷く。その為にも、挨拶回りはやり切らないとな。
「――さて、影政。そろそろ他の所に行くといい。白狼天狗以外にもお前と話したい者は居るであろう」
「そうだな。そろそろ行くとしよう」
「影政様、組手の時はよろしくお願いします。私達も全力で挑むので、影政様も手加減せずにお願いしますね」
「「「影政様、組手の時はよろしくお願いします!」」」
「影政、組手の時は私が取材独占するからね!」
白狼天狗達とはたての声を背に受けながら、次の場所に向かう。
「...あの紅い装いは...」
「...あ、影政!」
「こっちこっちー!私達とお話しましょー!」
宴の喧騒に紛れてすぐに、俺を見付けた声が聞こえて来た。顔を向ければ、厄神様の雛と、『人里』に密接に関わる秋の神二柱、紅葉を司る姉神『
「...三人共、元気そうだな」
「影政さんこそ、無事なようで良かったわ。このまま目覚めないのかって百年間、気が気じゃなかったのよ?」
「特に雛なんて、毎日毎日溜息ついてたものねー。影政が目覚めたって話が山中に広がった時、厄を祓えそうなすっごくいい笑顔だったし」
「そ、それは...当然の反応でしょう!...影政のおかげで、私はこうして普通にお話ができるのだから」
穣子の揶揄うような物言いに、雛は頬を少し赤くして開き直った様に反論する。
―――雛は流され、忘れられた厄除けの雛人形から"厄神様"(神とは言うものの、存在は信仰に依らない為妖怪側である)となった存在だ。
人間の中に溜まる厄を雛人形や厄祓い等を通して集め、再び人間へ還らないように溜め込み、操るのが彼女の役目だが、その性質上彼女に近付くと
それ故に他者は下手に近寄れず、名前を挙げる事すら憚られる孤独な存在だった。―――彼女自身はそれに反して人懐っこい性格であり、気楽に他者と話せない事を悩んでいた。
―――『...雛、という厄神様が居るんだが。彼女、性格と役目が相反していてな。...気丈に振舞ってるが、内心寂しそうでな...』
雛の事、その悩みを知ったのは、翔琉と飲んでいたある時だった。紅葉と違って物静かだが、同様に友好的な性格だからこそ、雛の在り方を遠目に見ていて悩んでいた。
―――そこで、俺は幻想郷創造以前に知己を得た、今は
―――『...本来ならその程度の事に権能は使わないんだけどね。
その
―――ともあれ、ただ厄を溜め込むだけの
雛が集めた厄はその身に溜まらず、
この事については、雛と俺だけが知っている。
―――閑話休題。
「――三人共、百年も心配させてしまってすまなかった」
そう謝罪して三人に頭を下げる。秋姉妹は毎年『人里』で催される"豊穣祭"で必ず見かけるおかげで友人であるし、雛は前述の事があって付き合いが長い友人だ。それぞれ信仰、厄がある限りほぼ永遠に存在出来とは言え、三人はずっと不安だったようだ。
「...百年経っても変わらず律儀な人ね。こうして元気な姿を見せてくれたことでお相子よ」
「雛程じゃないけど、私達も心配だったんだからねホントに!今年の"豊穣祭"は絶対参加すること!それでチャラにしてあげるわ」
「...また、百年前みたいに山に来た時にお話してくれるなら、それでお相子にするわ。貴方は恩人で、友人だから。それだけで充分よ」
静葉は苦笑しながら、穣子は俺に指を差しながら、雛は人懐っこい笑みを浮かべながらそれぞれ言葉を返す。
「...三人共、ありがとう。いい友人を持ったな、俺は」
「友人ならもっと私達に頼ってよね!誰にも助けを求めないでたった一人で先に行くのは、
「...あぁ、肝に銘じる」
穣子の言葉に苦笑しながら頷く。改めて、
「――やあやあ、影政。元気そうだね」
ふと、背後からまた聞き覚えがある声が聞こえて来た。
「――にとりか、百年ぶりだな」
「たかねさんも居るよー。百年ぶりだね、影政」
振り向けば、山の住人である"河童"『
「やあ、三人共。...影政とまだ話したいことはあるかい?」
「無い...訳じゃないけど、影政さんと話したい人は他にも居るでしょう?だから、今は大丈夫よ」
「なら良かった。じゃ、影政を連れて行くよ。――影政、大丈夫だね?」
「あぁ、丁度にとりに
にとりの問いに頷く。――カニンへの贈り物の為に、にとり達"河童の
「またね、影政さん」
「またねー!"豊穣祭"に来なかったら荒ぶっちゃうんだから!」
「またね、影政。挨拶回りは大変でしょうけど、しっかりやり切ってね」
三人の声に見送られ、にとりとたかねに着いて歩き出す。
「...『工廠』は大丈夫か?」
「
「...でも、激しい戦闘で兵器や弾薬やその他諸々の資材が枯渇しちゃったからねー。全部終わった後で、回復するまでは一人残らずデスマーチだったよ...」
「気力維持に齧ってた胡瓜が無くなったって聞いた時は、死を覚悟したよね...」
二人は揃って瞳から光を失くす。
―――『妖怪の山』には、その気になれば山の住人全員を収容出来る程の広さを持つ巨大な空洞が存在する。そこには、にとり達河童と山童の中で科学技術に明るい者達で建設した『工廠』と呼ばれる施設がある。
河童、山童の本拠地は『玄武の沢』だが、そこには置けない大掛かりな設備を備え、日々科学技術の探究と発展を目指して様々なものを生み出している。―――天狗、そして
しかし、生み出された
―――閑話休題。損失した諸々のものの回復は大変だった様だが、何とか原状回復に持って行けたらしい。
「...
「本当に大変だったんだからね!私は技術屋じゃないからって傍観しようとしてたら、にとりに巻き込まれて兵器や資材の在庫管理させられたんだよ!」
「作り手は有り余ってたけど、作ったものの数を管理出来る人手も余裕も無かったんだから仕方ないじゃないか!傍観なんてさせる気は更々無かったよ!」
酒で少し酔っているせいか、たかねの愚痴ににとりがムキになって言い返す。どうやらたかねは職業柄経理に明るいのを利用されて損失の回復に従事されられていたようだ。
―――山童も多くは技術屋だが、たかねは珍しく商才を持ち行商人をやっている。山中で採れた山菜や薬草、『工廠』で造られた
「...
「うんうん、影政はよーく分かってるじゃないか。...たかねだって、文句は言いつつも真面目にやってくれたしね」
「...まぁ、私だって山の住人だしね」
にとりの言葉にたかねは気恥ずかしさを誤魔化すように頬を掻く。二人の仲は相変わらず変わっていないようだ。
「...
「あぁ、実はな――」
にとりが俺の
「――という訳だ。...にとり、頼めるだろうか?」
「お安い御用...とは素直に言えないね。彼女が持ち逃げしてきた
「
俺の
―――カニンが
「...でも、その
「そうか...では、お前に頼もう。依頼料は後払いでいいか?」
「お代はいらないよ。友人だし、山を救ってくれた英雄からお金は取れないさ。...でも、機会があったら胡瓜で一品作って欲しいかな?」
河童達は幻想郷随一の技術による産物を身内で使うだけに留まらず、
「――いいだろう。交渉成立でいいな?」
「うん、オッケーだよ!ものがものだからいつ出来上がるか確約はできないけど、出来には妥協しないよ!」
「じゃあ、出来上がったものは私が届けるね。影政が居ない時に他人が受け取ってもバレないように梱包しておくから安心してね。あ、私も送料とか要らないからねー。その代わり、直接カニンに渡してあげること!」
「あぁ、勿論そのつもりだ。...全く、俺はいい友人に恵まれたな」
にとりは俺の
「友達なら、もっと私達に頼りなよ!影政の頼みなら、他の河童だって動員して応えるからさ」
「私だって、『人里』で商売に出てるからね。友達の貴方なら、お代はまけてあげるよ」
「...二人共、ありがとう」
二人の言葉に俺は礼を言って口角を上げる。
「じゃ、私達はこの位でいいよ。他にも話したいのは居るだろうしね。――こっちに来てる翔琉とか」
にとりが指差す先を見れば、盃と酒瓶を持った翔琉が此方に歩いて来ているのが見えた。その道中で天狗達と軽く会話を交わしながら、徐々に此方に近付いてきている。
「翔琉も人気者だよねー。階級に囚われていない自由な雰囲気がそうさせてるのかな?」
「天狗社会じゃ見た目含めて異質だろうに、不思議な奴だよねぇ」
にとりとたかねがそんな会話を交わしている内に、翔琉は俺達の前まで辿り着く。
「...影政、空いているか?」
「あぁ、大丈夫だ。...にとり、たかね、またな」
「またね。
「またねー、影政」
二人と別れ、翔琉と肩を並べて歩き出し―――
「――っ?!」
―――翔琉の背に
~後戸の国~
side-???
「お師匠様、連れてきました!」
「直に見ると解るけど、本当に
「...相変わらず、いきなりで強引な呼び付け方だな」
―――『牙門影政』。
「お前にとっては慣れたものだろう?...あぁ、
「物騒な愚痴だな。...確かに望みがもう叶わないとなればそう言いたくなるか」
「あぁ、全くもって残念だよ。...とは言え、これからも幻想郷にお前は必要だ。――壮健のようで何よりだ、影政。先の
「お前も変わっていないようで何よりだ。――"
叶わぬ望みへの未練を吐き出す様に一息吐き、改めて影政と挨拶を交わしながら
「さ、少し飲もうじゃないか。――
盃を影政に渡し、酒を注ぎながら軽く愚痴る。――私は眺めていただけで鎮圧は他の者がやったし、実際エネルギー操作を行ったのは左に控える『
「非力でも数が集まれば脅威になるからな。生命エネルギーで強化もされていただろうから手間取りもするだろう」
「生命を生み出す
影政の言葉に答えながら何となく思った事をぼやく。『月の都』が持つ力は
「さぁな。そもそも俺達は『月の都』を見たことがない。...カニンも『月戦争』以来
「確かにそうだな。紫の
影政の返事に頷き、盃の酒を飲み干す。
「...む、適当に選んだせいか中身が大して無いものを掴まされたか。仕方ない、これでお開きとしよう。――影政。多くの者から言われただろうが、
「あぁ、肝に銘じよう」
影政が頷いたのを確認し、その背後に
「では、またな。...また呼び付けるようなことがあったら、もう少し丁寧にしてくれ」
「あぁ、考えておこう」
ひらひらと手を振りながら適当に答え、
~天狗の里 広場~
side-影政
「...いきなり
「あぁ、挨拶ついでに少し話して今しがた解放された所だ」
翔琉の背に浮かぶ
「...
「翔琉こそ、壮健のようで何よりだ。...百年間、大変だっただろう?」
広場の片隅、山の住人が居ないスペースで足を止め、互いに壮健を喜びながら互いの盃に酌をする。
「...あぁ、本当に大変だったぞ。...お前の無事を祈りながら、らしくも無く仕事漬けだった」
翔琉はそう答えながら眉間に僅かに皺を寄せる。
―――翔琉の仕事はある意味"山の何でも屋"だ。手が足りない時、他に頼めない時等に仕事を受け、卒無く要領良く熟す。余った時間は山の住人と世間話をしたり、偶に
翔琉は自分の時間を優先する性分で、長時間拘束される、或いは連続するような仕事は好まない(必要なら引き受ける真面目さもある為悪い印象は無い)。
「そうか...俺が眠っている間、苦労を掛けたな」
「謝る必要は無い。...
翔琉はそう返して盃の酒を一気に呷る。俺の加勢で
―――もっと早く加勢出来ていれば。山の被害を知ってからは時々そんな無意味な仮定が脳裏を過ぎった。
「...それでも気に病むなら、これからはもっと私達を頼れ。...お前には親友や友人が多い。だが、お前は肩を並べず
「...あぁ、これからはもっとお前達に頼っていくさ。誰も彼もから言われれば反省せざるを得ない」
翔琉の言葉に苦笑しながら返し、盃の酒を呷る。
「...なら、いい。...百年振りだ。こっちには話したい事が色々ある」
「あぁ、聞こう」
互いの盃に酒を注ぎながら、翔琉の言葉に頷く。百年間だ、山の損失の回復以外にも話したい事はあるだろう。
―――空を見上げれば、夕焼け空が見え始めていた。宴はまだ続く。
という事で、おっきーなとの絡みを追加しました。出逢いを如何にして描くか未だに思いつかないぜ()