~魔法の森への道~
side-影政
「――確かに見かけない家屋があるな。...本当に店を構えたのか」
幻想郷西部。『人里』と幽世に近い場所の間を隔てる様に広がる『魔法の森』に続く道を歩いてしばらくの時が過ぎた。鬱蒼と木々が生い茂る森を背景に、森の入口の傍に木造の家屋が建っているのが見える。
―――『おう、影政。そういや伝え忘れてたんだが、あの霖之助が店を構えやがった。今日、俺らは無縁塚に用事があるんだが、ついでに店の状態を見ておきたくてな。俺らについて来て、挨拶しに行かねぇか?』
―――『太陽の畑』で幽香達に挨拶を終えた翌日―――俺は朝方牙門邸を訪ねて来た宗二からの誘いで『香霖堂』という道具屋と、『無縁塚』に向かう事を決めた。
―――『危ない所だったな。自衛手段も無しにここに来るとは...死にに来たのか?』
―――『い、いや...僕はただ面白そうな道具を探したくて...ここには、外で忘れられた道具が流れ着くんだろう?』
―――幻想郷創造を成して数十年程経った頃。『無縁塚』で妖獣に襲われかけていた所を助けたのが、銀髪、黄色い瞳の上に眼鏡、青と黒のツートンカラーの和装が特徴的な"半人半妖"『森近霖之助』との出逢いだった。
―――『...またか。お前は馬鹿なのか?一度死にかけて学習しなかったのか?』
―――『これでも知識と経験は人並み以上に持っているつもりだよ。...でも、僕の趣味に熱中すると周りが見えなくなってしまう癖は改めないと今度こそは不味いって、身に沁みて解ったよ』
―――趣味に没頭し過ぎて自衛も疎かにする彼を見かね、まともに自衛手段を用意し、自衛出来る様になるまで『無縁塚』に行くという時は俺自身で護衛に付いた。そうしている内に、同性だった事もあって俺は霖之助と友人関係を築いた。
―――霖之助は幻想郷屈指の蒐集家だ。蒐集を趣味にし始めた頃は暇な時に何となく探す程度だったらしいが、そうして集めた道具を大事にしている内に『道具の名前と用途が判る程度の能力』が発現し、それを切っ掛けにして本格的な蒐集に目覚めたと言う。
―――『確かに使い方まで分からないのは不便だと思うことも度々ある。――でも、道具の見た目、機能、そして能力で分かったことから、思考を巡らせて使い方を考察するのが楽しいんだ。その考察が的中した時なんかは特にね』
―――そうして『人里』にあった自宅には日を追う毎に珍妙な道具が増えていった。家に入れられない大型の道具は外に置かれていき、良くも悪くも霖之助の家だとすぐに分かる様になった。良い意味では里の中で明らかに目立つ様になって彼の家を探すのが容易になったが、悪い意味では集めた道具に関わる問題―――使わず放置された道具の付喪神化だった。
―――『...おい、霖之助。テメェの趣味をどうこう言いたくはねぇが、いい加減道具の放置は止めろ。最近テメェが集めた道具の付喪神化の対処案件が増えてやがる。無縁塚に流れ着いてる道具はただでさえ付喪神化しやすいんだ。時々使ってやるか、面倒見きれねぇなら壊して捨てろ。付喪神になるだけならまだ可愛いが...』
―――『捨てるなんてとんでもない。確かに増え過ぎて手入れや使うのが疎かになっているものもあるけど、ここにあるのは全て僕の大事な蒐集品なんだから』
―――『扱いを疎かにしてんのが問題だって言ってんだ。ヘソ曲げた道具が集まってると最悪――』
―――宗二は鍛冶の"現人神"としての特性で金物や刃物と言った、鍛冶で扱う道具の声を聞く事が出来る。時々『無縁塚』に流れ着く金物や刃物、武具の類を集め、付喪神化しない様に新品と見紛う程の出来まで修理して商品として売り、長く売れなくても時々手入れを行っている。限定的だが道具の声が聞こえるからこそ、霖之助の趣味の問題点に人一倍敏感だった。
「私が初めて霖之助さんのお店に行った時はすごかったよ。――商品の道具が皆不満な感情を持ってたんだ。最初はそれに戸惑ったけど、私に向かって羨ましそうな感情が集中してきたから、師匠の言っていたことが...霖之助さんは道具をちゃんと大事にしていないって解ったの」
「小傘を弟子に取ってからは、霖之助の店の様子見に行く時にゃ必ず連れて行ってる。俺みてぇに声は聞けねぇが、道具全般の感情を感じ取れるからな」
小傘の語りを補足する様に宗二が軽く説明してくれる。―――"相棒"を引き取りに『円月堂』を訪ねた時。小傘が"相棒"を見て『喜んでいるみたい』と言っていたが、"付喪神"故か物言わぬ道具の感情が解る様だ。
「成程な...果たしてどんな店なのか、行ってみるとしよう」
「言葉はいらねぇ。とりあえず外観と、中を見てみりゃ如何にヒデェか解るだろうぜ」
宗二と小傘と並んで歩き出し、『香霖堂』へ向かう。
―――『...確かに幻想郷では珍しいものだな。使ってみてもいいか?』
―――『駄目だよ。この考察は確定じゃないんだ。使い方が間違っていて、壊れてしまったらどうしてくれるんだい?――仮に的中していても、君に触らせるつもりは更々無いけどね』
―――集めた道具の中で気に入った物は他者に触らせない程に大事にする様な蒐集をしていた筈だが、店を開いて変化はあったのだろうか。
~魔法の森入口傍 香霖堂~
「おし、着いたな。...小傘、どうだ?」
「...んー...外に置かれている道具達は相変わらず不満そうだね。でも、前に来た時からあまり変わってない、かな?」
―――数分歩き、『香霖堂』の看板を掲げた家屋の前で三人揃って足を止める。小傘が道具達の感情を感じ取って状態を見ている間に店の外観を見回す。
壁や屋根には蔓や苔が目立ち、目の前には冷蔵庫、古いパソコン...見た事が無い大型の道具が十数個程、後から延長したらしき軒下に乱雑に並べられている。俺の記憶―――『人里』に住んでいた頃は外置きの道具は大半が雨曝しだった気がするが、それは止めた様だ。とは言え―――
「――看板が無かったら店には見えないな。『人里』に居た頃と同じ、ごみ置き場同然の空き家のようだな。建ててから家屋自体の整備も大してやってなさそうだ」
「外観でコレだからな。...さて、中に――」
「――三人、か?」
ふと意識を集中すると、中から三人分の気配を感じる。どうやら霖之助以外に客が居るらしい。宗二も感じ取ったのか、珍しいと眉を上げる。
「珍しく客が居るみてぇだな。...何となく見当は付くが、兎も角入るぞ」
宗二と小傘に続いて『香霖堂』の扉を開ける。
―――チリンチリン...
―――扉に付けられた鈴の音と共に入ると、目の前に大小様々な道具が並ぶ陳列棚が四つ程並び、棚の傍や空いた床の空いたスペースを埋める様に棚には置けない大きな道具が所狭しと置かれている光景が現れる。―――棚や商品の掃除はしているようだが、それでも動線を考慮していない乱雑な陳列だ。やはり店とは思えない。
「おら霖之助、抜き打ちで様子見ついでに――あん?珍しいのが一緒じゃねぇか」
「あれ、本当だ。貴女がここに居るって珍しいね」
宗二に続いて棚と商品の間を抜けて行き、帳場が据えられた最奥に出ると、宗二と小傘は揃って珍しいと声をあげる。二人が見ている先には―――
「――やぁ、影政。百年振りだね。文々。新聞で君が目覚めていたのは知っていたけど...ふむ、本当に戦神そのものになったんだね」
「――あら、宗二に小傘...それと何時だったか稗田邸に居た剣士様じゃない」
―――六角二胡とその弦が置かれた帳場の椅子に座り、俺を見て少し眉を上げて軽い口調で挨拶する霖之助。彼と何か話していたのか、帳場の前に立つ小兎姫。そして―――
「宗二さん、小傘ちゃん、おはようございます――そして、そちらの紅装束の剣士の方。貴方が『牙門影政』さんですね。此方の姉さんからある程度お話は聞いています。――私は自警団で参謀役を務めております、『冴月麟』と申します」
―――金髪のミディアムヘアを赤いリボンでポニーテールに結い上げ、レースの襟元に赤い紐リボンを締めた白い巫女風の上着、赤いスカートを纏う少女は『冴月麟』と名乗り、礼儀正しく俺に頭を下げる。
「...そうか、影政は麟とは初対面か。確かにコイツが外出てんのを見る機会は中々ねぇからな...麟が言ってた通り、コイツは今の自警団の参謀役だ。得物を使う腕は最低限だが、その代わり頭脳と霊力がずば抜けて優秀だ」
「麟が居るおかげで団員の配置や交代もかなり効率的になったのよねー。緊急時を除けば皆満遍なく自由な時間を取れるようになったから士気も落ちにくいし、新規の団員が来る頻度も上がってきたし。ホント、よくできた自慢の妹よ」
宗二の説明を小兎姫が継ぎ、自慢げな表情を浮かべる。確かに麟からは霊夢に匹敵する質の霊力を感じ取れる。彼女がどういう戦い方をするかは分からないが、しっかり鍛えれば異変解決も行える実力を発揮出来そうだ。だが―――
「――姉妹と言うには、似通った点が少ない気がするが」
「そりゃそうよ。――私と麟は血が繋がっていないからねー」
「――義理の姉妹か。なら納得できるが...」
「経緯が気になるかい?――なら、僕が簡単に経緯を説明するよ」
「それがいいな。――何せ、小兎姫を拾った当事者だもんな。一応俺も補足するぜ」
俺が気になる事を見抜いた霖之助が軽く手を挙げると、宗二が頷く。どうやら霖之助は小兎姫と麟の繋がりに重要な当事者らしい。
「――今から十九年前、いつものように『無縁塚』で道具漁りをしていた時だ。籠も一杯になってそろそろ帰ろうと思ったら――赤ん坊の泣き声が聞こえてきたんだ。影政は勿論『無縁塚』の環境はよく知っているだろうけど――幸い妖獣の気配が無い状況で泣き声を聞いてしまった僕は、それを無視できる程薄情にはなれなかった」
霖之助は懐かしむ様に金色の瞳を細める。
―――『無縁塚』には道具以外のものも流れ着く。だが、あの場所は妖獣が多くうろつく人間にとって危険な場所であり―――それ故に流れ着いた者が喰われる様を見付けてもそのまま無視して逃げるか、後で供養するのが暗黙の了解だ。だが、霖之助が赤ん坊―――小兎姫を見付けた時は幸い付近に妖獣が居ない状況だった様だ。
「泣き声が聞こえた方に向かったら、赤い髪がよく目立ったおかげですぐに見付かったよ。幸い怪我もなかったし、彼女を抱えて妖獣に襲われる前に急いで『無縁塚』を離れたんだ」
「霖之助が赤ん坊を抱えて帰ってきたのに出会した時は目を疑ったぜ。だが、赤ん坊が泣き出したのを見てマジだと分かってちょっとした騒ぎになった。まぁ、慧音の一声ですぐに治まったが。勿論今もだが霖之助に恋の気配なんざ一寸もなかったし、変な噂が立つこともなかった」
「......それで、慧音と相談した結果――当時それぞれ自警団団長と参謀役だった麟のご両親の下に養子として預けることになった」
宗二の茶化す様な説明に霖之助が抗議したそうに眉を顰めるが、諦めた様に軽くため息を吐いて説明を続ける。
「――当時、麟のご両親はそれなりに歳を取ってきてるのに中々子供に恵まれないことに悩んでいてね。僕が赤ん坊を拾ってきたって話が里中に広がってすぐに僕と慧音が相談していた所に来て、土下座してまで養子に欲しいって頼んできたんだ。僕と慧音は揃って戸惑ったけど、二つ返事で認めて小兎姫をご両親に預けた。名前が決まったのはその翌日だったよ。
――そして、三年後に麟が産まれた時は『小兎姫が来てくれたおかげだ!』ってすごく喜んでいたよ。ご両親は二人を差別することなく同じように愛を注いで育てていた。二人が揃って自警団になることを決めた当初は頑固に反対した程にね」
「まぁ、私が父さんを練習試合でボコボコにして、麟が母さんを机上演習で完敗させて認めさせたけどね。私達を心配してくれているのはよく解っていたけど...二人共還暦越えてたし、いい加減世代交代すべきだって説得したわ」
「姉さんが新しい団長に、私が参謀役になる際の引継ぎ式では、二人して団員皆に"娘二人をどうかよろしく頼む"って頭を下げていました。...本当に、良い両親の下に産まれて良かったとつくづく実感します」
麟はそう言って微笑む。血の繋がりが無い事も一切気にしない両親の深い愛情があったからこそ、二人の今がある様だ。
「――こんな所かな。これで分かったかい?」
「あぁ、よく分かった。二人が居るなら『人里』は安泰だな」
「貴方が団員になってくれたら盤石なんだけどねー。...阿求から貴方のことは聞いたから諦めてるけど」
「一所に付きっ切りは無理だが、助けが必要な時はできる限り応えよう。それに、お前達自警団に頼ることもあるかもしれないしな」
「幻想郷を何百年も護ってきた超ベテランについて行けるか分からないけどね。――改めて、麟共々よろしくお願いするわ、影政」
「――"人間"故に至らない所はあるかもしれませんが、よろしくお願いします」
「――こちらこそ、よろしく頼む」
小兎姫と麟が差し伸べた手をそれぞれ握る。―――『人里』は幻想郷での人間の象徴だ。故に必ず護らなけれならないが、文武でそれぞれ優秀な二人が居るなら『人里』の治安は安泰だろう。
side-宗二
「――にしても、マジで珍しいじゃねぇか。お前はこんな店に来る性格でもねぇし、小兎姫みてぇな趣味もねぇだろ」
影政へ小兎姫と麟の関係について説明し終え、話を麟が香霖堂に居る理由に変える。小兎姫は普通なら興味を持たないものばかりを集める蒐集家だが、麟は六角二胡の演奏が趣味という小兎姫に比べれば随分普通なもの―――ん?なら何で麟の六角二胡が霖之助の所にあるんだ。
「実は先週から六角二胡の修理を依頼していたんです。今日はその引き取りに来たんですが、姉さんがついでに買い物したいとついて来たんです」
「あぁ、成程な。この店の商品より、道具の修理と魔導具作成の方が需要がある位に霖之助の手先は器用だからな」
麟が香霖堂に居る理由を聞いて納得する。
―――霖之助は能力を活かした道具の修理も請け負っている。更に魔法にも理解があり、その知識を活かして魔導具の作成も引き受けている。魔法使いでもないのに出来と性能は高く、『魔法の森』とその周りに住む"魔法使い"連中は大分頼りにしているらしい。
「まぁ、道具屋だからね。自分の技能で売り上げに繋がるならやるさ。...でも、僕としては商品の売買がメインなんだけど」
「だったら奥に隠してる実用的な道具を売りやがれ。見た目が珍妙で使い方もよく分からねぇモンばっかだから売れねぇんだ」
霖之助の言葉に呆れを隠さず返しながら店内をざっと見回す。―――前に来た時と並んでいる商品に変化は無い。相変わらず商品はマトモに売れてないらしい。
店を構える前からだが、霖之助は自分にとって気に入るものは自慢する時以外は他人に触らせず、隠して自分だけで楽しむ所がある。こうして店を構えてからもそれは変わらず、陳列されているのは大半が幻想郷では使えないか、使い方が分からない珍妙な置物同然のものばかりという有様だ。
「...この店の経営はあくまで趣味の一環だからね。僕のお眼鏡に適わなかったものを放置せず、商品として売りに出しているだけでも改善していると思うんだけど」
「買われなきゃ意味ねぇんだよ。道具は使われてこそって何度も言ってるだろうが」
「――百年経っても相変わらずのようだな」
一切悪びれない霖之助の言葉に影政と揃って呆れる。『人里』に住んでいた頃と比べて商品の手入れはやっている様だが、それだけで道具は満足しない事を霖之助はちゃんと理解しているのか...
「まぁまぁ、そんなに目くじら立てないで宗二。少なくとも私はこの店を贔屓にしてるから売上ゼロってことはないんだし」
「確かに小兎姫には助けられてるよ。数少ないまともに買ってくれる常連客だからね」
「...正直、家族としては困ってるんですけどね。霖之助さんと違って集めたものは全部大事にしていますが、姉さんの部屋がそろそろ手狭で...私の部屋にまで侵食して来そうなんですよ」
二人して頷くのを横目に、麟は困った様に眉を八の字にする。霖之助の様に毎日ではないが、小兎姫の蒐集品も徐々に増えているらしい。霖之助も小兎姫も、蒐集の問題点は置き場の確保に帰結するらしい。
「部屋が狭いのが悪いのよー。でも、最悪執務室に――」
「それは絶対駄目です。姉さんは団長――自警団の顔なんですよ?そんな姉さんが来客を迎える部屋に珍妙なものが沢山並んでいたら印象が悪くなるんです。もし一個でも置いたら――それを壊して捨てますから」
「ぶー...」
小兎姫は自室に置けなくなったら『自警団本部』の団長執務室に置く事を目論んでいる様だが、麟が真面目な表情でピシャリと脅しも加えて否定し、小兎姫は不満一杯にぶー垂れる。壊して捨てると他人が聞けば酷いと思うかもしれないが、幻想郷ではそうしなきゃ付喪神化する可能性があるからな。
「他人の趣味に口出ししたくはないが、お前達の趣味は付喪神化のリスクがあるからな...聞いていると小兎姫はまだ穏当だが、霖之助のようにのめり込まれると『人里』に住んでいた頃のようになりかねない」
「影政の言う通りだ。お前ら二人の趣味にゃそういうリスクがあるってことをいい加減理解しやがれってんだ」
「はいはい、善処するよ」
「...治安を守る人間が治安を乱しちゃ良くないものねー。部屋は手狭だし、ちょっと整理しようかしら」
霖之助は適当な返事で答えるが、小兎姫は少し反省している様だ。香霖堂は『人里』から充分離れているから付喪神化が起きても被害はすぐに出ないだろうが、小兎姫の場合は面倒になるからな。...小兎姫には気まぐれな所もあるからイマイチ信用できないが。
「...さて、影政。百年振りの再会だし、何か買っていかないかい?お代は安くするよ」
「...いや、別に買うつもりはない。――気を引く品もないし、あくまで香霖堂の様子見と霖之助への挨拶が目的だからな。次は宗二と小傘について行って『無縁塚』を見に行くつもりだ」
霖之助の誘いを影政はあっさり断る。使える道具を求めるなら里に『霧雨道具店』があるし、この店は小兎姫とかの蒐集家や魔法使い以外に寄る奴は居ない。
「...そうか...まぁ、無理強いはしないよ。君なら問題ないだろうけど、『無縁塚』は相変わらず妖獣が跋扈しているから気を付けて」
「あぁ、分かった」
「じゃ、俺らは行くぜ。小傘、そろそろ『無縁塚』に行くぞ」
「はーい!...霖之助さん、せめて商品にしてるものの掃除やお手入れはサボらないでね。前と変わらず皆不満そうだから」
「あぁ、分かったよ。じゃあ、香霖堂をご贔屓に」
「三人共またねー」
「お三方、道中お気を付けて」
棚や床に直置きの商品を見て回っていた小傘を呼び寄せ、霖之助達と別れて『香霖堂』を出る。次はこのまま『魔法の森』を迂回して西へ―――外界と結果の交点に在る『無縁塚』だ。今回はどんなものが流れ着いているのやら―――
「...あ」
「霖之助、どしたの?」
「去年から、『無縁塚』に庵を構えてる新しい住人が居るってこと、影政に伝え忘れていたよ」
「――あぁ、あのお二方ですね。偶に里で説法も行っていて宗二さんも面識はありますし、大丈夫だと思いますが...」
―――to be continued―――