東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
挨拶回りも最後です。
~魔法の森 入り口~
side-影政
「空を覆う程に広がる木々の枝。『星見原』以外に用があると歩かざるを得ないのは変わっていないな」
目の前に広がる森を眺めながら呟き、入口となる道を歩いて森へ―――『魔法の森』に入る。
―――『人里』と『無縁塚』の間を隔てる様に広がるこの森は、内部に群生する"幻覚キノコ"と魔力の溜まり場によって只人と魔力が苦手な妖怪の侵入を拒んでいる。
『迷いの竹林』程ではないが、それでも空を覆う程に広がる木々の枝葉によって日光はあまり差さず、その薄暗さも相俟って迷いやすい。"幻覚キノコ"の胞子を吸い込んでしまえば最期、幻覚に惑わされたまま野垂れ死ぬか、森に棲む魔物や獣に喰われて死ぬ。
―――だが只人を拒む一方で、魔法に於いて有用な素材と魔力が豊富に存在し、"魔法使い"にとって拠点を置くに最適な場所となっている。その為『魔法の森』という名前が付けられている。
「――ん?魔理沙か?」
「――お?影政じゃないか。魔法と無縁そうな奴が来るなんて珍しい」
「ルーンに挨拶がてら、少し森を見てみようと思ってな。魔理沙は魔法研究の素材集めか?」
―――森に入って数分。箒を肩に担ぎ、木の幹や地面に生えているキノコを吟味する白黒の魔女装束の後ろ姿―――魔理沙を見付けて声を掛ける。俺の声に彼女は振り向き、意外だと言う様に眉を上げる。
「そんな所だ。ここらは色んなキノコが群生していてな。キノコ系の素材集めに便利なんだ。――にしても、わざわざ入口から入って歩いてきたのか?ルーンの所なら、空からあっという間に行けるだろ?」
魔理沙はそう疑問を挙げて首を傾げる。
―――森の大半が空を覆う程に枝葉を伸ばしている『魔法の森』だが、中心部には木々が生えていない広大な平原が存在する。その平原から見上げた夜空が特に綺麗な事から『星見原』と"魔法使い"達から呼ばれており―――そこにルーンは家を構えている。
木々が生えていない平原だからこそ、数少ない
「さっきも言ったが、森の中を見てみたかったんだ。森の存在は把握していたが、偶にルーンに会いに行く以外には用がなかったからな。何ならルーンの方から訪ねて来る方が多かったから尚更な。――だからこそ、こうしてルーンへの挨拶に向かうついでに、どんな場所なのか見ておこうと思い立った訳だ」
「ほー、なるほどな。――なら、これから暇になりそうだったし、案内がてらついて行っていいか?
理由に頷いた魔理沙はそう提案して来る。『魔法の森』にはルーンが住み始めた頃に彼の手で整備された道があり、『星見原』と森の入口、森に住む"魔法使い"達の家を繋いでいる。その為案内はいらないが、魔理沙は暇な様だし、折角の機会だろうから受け入れよう。
「あぁ、構わないぞ」
「お、そうか!――じゃ、霧雨魔理沙のなんちゃって『魔法の森』ツアー、始まり始まりだぜ!」
キノコを何個か採取して腰に提げた袋にしまい、道を歩き出した魔理沙について歩き出す。
「――そう言えば、影政はルーンとはどう出逢ったんだ?アイツ、元々『魔法の森』在住って訳じゃないみたいだが」
「出逢ったのは二百年前――カニンと出逢った時から数年経った後だな。『幻魔異変』と"縁起"に記録されている
―――『君の仲間達が随分と暴れ回っているみたいじゃないか。
―――『待て。どうしてもと言うなら仕方ないが...その前に、俺達が
―――『魔界』から幻想郷に入り込んだ魔物や"魔界人"が幻想郷で暴れる『幻魔異変』が発生し、それを止める為に『魔界』に向かったはいいが、共に
「『魔界』...いつだったかルーンが話してたっけか。今は
「あぁ、その通りだ。『幻魔異変』の
―――『
―――ルーンと出逢ったおかげで魔物や"魔界人"の流入を
それから数年後、幻想郷に再び―――大勢の魔物や"魔界人"が侵入し、壮絶な
「私も、ルーンに出逢えて心底良かったと思ってるぜ。何せ――」
「――
「――慧ノ子か。百年振りだが、元気そうだな」
「げっ、慧ノ子かよ...」
―――一対のヤマイヌの耳を伸ばした薄く紫色を帯びた白髪のボブカットの前髪の右側に薄色のメッシュが走り、肩を出した袖が無い紫色の服を身に付け、ローズピンクのスカートを纏い、両足首には赤いアンクレットを巻き、両手首には赤いトラバサミを装備し、後ろから三本の尻尾を覗かせる"山犬"『
―――見た目に反して齢が千に近い老齢であり、"魔女"だった頃の魅魔が森に棲み着いたより前から森に棲んでいると言う、幻想郷創造以前の森の事すら識る『魔法の森』の生き字引的な存在だ。
―――先程の言葉と魔理沙の反応を見るに、どうやら魔理沙は決して明るくは無い事情で『魔法の森』に入り、"
―――閑話休題。
「影政、百年ぶりね。ルーンも普段通りに振舞ってみせていながら内心心配してたみたいだから、元気そうでなによりよ。――数日前の『紅霧異変』とか言う
「『紅霧異変』での再会は偶然だったし、
慧ノ子にそう理由を伝えると、彼女は呆れと安心が混ざった様な表情を浮かべる。
「相変わらずの律義さね。まぁ、私がどうこう言うつもりはないけど。――貴方なら問題ないだろうけど、この森は
「あぁ、分かった」
「じゃあ、またね。...魔理沙もそろそろ自立する頃合いよ。新作の魔法ができる度に披露して、彼の興味を独占してると――
慧ノ子は魔理沙を見てニヤリと笑って何か思わせぶりな言葉を掛け、ひらひらと手を振りながら木々の間を通って去っていく。
「...相変わらず、よく分からないことを言う山犬だな。さ、行こうぜ」
「あぁ。――慧ノ子の話を聞くに、ルーンとは大分仲が良いようだな」
困惑しながら頭を掻く魔理沙の言葉に頷き、再び道を歩き出しながら尋ねる。
―――ルーンが幻想郷に来る以前、『魔法の森』に棲む"魔法使い"達は自らが修める魔法の神秘性を保つという側面もあって単独行動が基本で、顔見知り程度の薄い繋がりしか無かった。
しかし、ルーンが移住してからは彼の温厚で社交的な性格と広く深い魔法への理解と知識に彼女達は惹かれ、彼を中心に親交が結ばれた。魔理沙もその例に漏れずルーンと仲良くしている様だが、それでも魔理沙に手ずから魔法を教えるとは随分興味を惹いているらしい。
「アイツと仲が良いのは
「...確かにな」
妖怪は大半が人間に対して絶対的な強者であるが故に、極稀に現れる妖怪に互せる力を持った者に驚き、惹かれる一面がある。今もその友情を変えるつもりは毛頭無いが、俺は
魔理沙も霊夢と並んで
「...お。そろそろ『星見原』に出るぜ」
「そのようだな。...っと...」
道の先に眩い光が見えて来て、その先に出ると日光が一瞬視界を白く覆い―――逆光が治まると木々が生えていない広大な平原と、中心辺りの低く広い丘に立つ―――屋根に大きな望遠鏡を据えた三階建ての塔が併設された白い壁と青い屋根が目立つ平屋建ての洋風の家―――ルーンの家が前方に見える。
「鬱蒼と茂る木々を抜けた先、空が広がる広い草原。リフレッシュするには最高だな!」
「ここも特に変わった所は無い...ん?あれは...妙なものがあるな」
空を見上げながら伸びをする魔理沙の隣で『星見原』を見回していると―――南の方に木々より高く大きな、蔓や草木に覆われた遺跡か何かの様な、森に似つかわしくない人工物と思しきものが鎮座しているのが見えた。あんなものは百年前に無かった筈だが...
「――あぁ、あれは『岡崎魔法研究所』にある
「...二人共知らない名前だな。俺が眠っていた間に住人になったのか...ルーンの家はもうすぐだし、簡単に教えてくれるか?」
魔理沙から知らない名前の人物二人の名前が挙げられ、ルーンの家に向かって歩き出しながら尋ねる。
「...あぁ、そうか。時期的に影政はまだ寝ていたか。私もその時生まれてすらいないから、ルーン達から聞いた話になるが。
――五十年前位に『
「...立て直しの最中に
『空船異変』の概要を聞いて思わず呆れた表情を浮かべてしまう。『鈴奈庵』から借りた"縁起"はまだ読んでいる途中で、五十年前となるとそれなりに後ろのページになるだろう。だが、幻想郷を構成する結界に
「――で、二人はその
「...成程な。ルーンへの挨拶が終わったら寄ってみるとしよう」
魔理沙の説明を聞き終えると、ルーンの家が目前に迫っていた。玄関横のテラスには誰も居ないが―――中から
「――お?誰か来てるみたいだな。まぁ、ルーンが一人で居る所を見かける方が少ない位だが」
「ルーンも出歩くことが多いし、顔が広いからな。客を応対していて忙しそうなら、軽く挨拶するだけにするか」
玄関のドアの横に付けられた呼び鈴を鳴らす。
「――おや。魔理沙は兎も角、影政が来るなんて珍しい。何か用かな?」
「『紅霧異変』の時はまともに挨拶できなかったからな。『魔法の森』の様子見がてら訪ねて来た次第だ」
「私は暇になったから、案内がてらついて来たぜ」
呼び鈴を鳴らして数秒、ドアが開いてルーンが顔を覗かせて俺を見るなり珍しいと眉を上げる。
「相変わらず律義だね。――でも、丁度いいか。君に紹介しておきたい娘が二人共来ていてね。さぁ、上がって」
「...噂をすればなんとやら、って奴だな。見た目で分かりやすい二人だから、すぐ覚えられると思うぜ」
察した表情を浮かべた魔理沙とルーンに続いて中に入ると―――
「――あら、魔理沙と...その容姿、ルーンが常々話していた親友の剣士ね?」
「――
リビングの真ん中辺り。本や魔法の素材と思しきものが並べられた大きな丸テーブルの椅子に座り、此方を見る二人の人物―――
「紹介しよう。森の南に『岡崎魔法研究所』を構えている、"魔法使い"とその助手――」
「――元"比較物理学"専攻の大学教授。今は"魔法使い"として魔法を研究中の『
―――『岡崎夢美』と名乗る、長い真っ赤な髪を後ろで長く太い三つ編みで結い上げ、襟元に赤いリボンを締めた白いシャツの上に赤いベストと白く縁取ったケープを羽織り、白く縁取った赤いスカート、白い靴下と赤い靴を履いた少し大人びた少女。
「元"比較物理学"専攻の院卒で教授の助手、同じく今は"魔法使い"として色々学んでる『
―――『北白河ちゆり』と名乗る、金髪のツインテールに水兵帽を被り、半ズボンのセーラー服を纏う、夢美より年下と思しき少女。
「夢美とちゆりか。――『牙門影政』。
二人の自己紹介に対して此方も自己紹介をした。
~星見原 ルーンの家 リビング~
side-ルーン
「...
魔理沙と影政を迎え入れ、テーブルを囲んで会話を交わす。夢美は影政を見ながら興味津々に赤い瞳を輝かせる。
「...
「ルーンとか
「...それは凄いな」
影政は夢美の言葉に素直に驚く。夢美達が居た世界はかなり高度な科学文明を有している。しかし、影政はそれに疑問を抱いたのか―――
「――だが、その遥かに高度な科学の恩恵を受けていながら、何故
「...元居た世界では、"統一原理"によって
夢美は影政の疑問に答え、嫌な事を思い出す様に顔を顰める。
「――私は、そんな当たり前のように信じられ、利用されている"統一理論"に疑問を抱いた。その疑問から私は新しい理論を主張したんだけど...あぁ、もう!思い出しただけでムカつくわ!稀代の天才だって持て囃してた癖に、いざ新しい理論を主張したらバカにして...!」
夢美は声をあげてテーブルを拳で叩く。
「まぁまぁ落ち着いて。――折角だ。二人が密接に絡んだ
「魔理沙が言っていた『空船異変』か。聞かせてくれ」
「私も聞くぜ。前に聞いたが、ちゃんと聞いてなかったからな」
「夢美達と会わせた時に話した筈なんだけどね...まぁ、いいか。あれは――」
僕の提案に影政と魔理沙が頷く。――魔理沙には二人と会わせた時に話した筈だけど、忘れてしまったらしい。あの時は
―――『...何、あれ...船?でも
―――『あれは飛んでいるというよりは...兎に角迎撃する!所々爆発して破片が飛び散っているみたいだ。被害が広がる前に止めるよ!』
―――今から五十年程前。『空船異変』として"縁起"に記録されている
突然の事に呆然としていた皆に発破を掛け、僕達"魔法使い"で
―――『うーん...あら?こんなに暗かったかしら...って...』
―――『...っ?!な、何だお前ら?!どうやって入ってきたんだ?!』
僕達"魔法使い"は、
―――『"魔法が存在する世界"を求めて、か。どうやら幻想郷が隣接する
―――『よく分からないけど...一つの理論で全てが証明できるなんて、すごいというより
―――『そうでしょそうでしょ?!昔から"統一理論"の
―――夢美とちゆりから聞いた話によれば、二人が元居た世界では"統一原理"なる理論であらゆる力の原理が証明されているという。夢美はそんな中で"統一原理"に異を唱え、"統一原理"に当てはまらない未知の力―――
自身と自身の主張を馬鹿にした者達に主張の正しさを解らせ、復讐する為に
―――『うーん...こりゃ私達じゃ無理だね。科学技術の産物だっていうのは分かるんだけど、今の私達の技術じゃこの船は直せないや。やるにしてもまずは解析と研究だけど...
―――『そ、そんな...!折角
―――『
―――『可能性空間移動船』という
―――でも、二人が元居た世界に帰る事が出来る機会は思ったよりすぐ訪れた。
―――『成程、事情は理解したわ。――いいわ、望むなら帰しましょう』
―――『本当に?!なら今すぐお願い!!ちょっとデータ不足かもだけど、これだけあれば連中を...!』
―――『慌ただしい娘だ。...でも、いいのかい?幻想郷を知った存在を、
―――『
―――帰られる様になるまでの間にと、二人に魔法を教え、幻想郷の案内をしていた時。
―――『なんで...なんでよなんでよなんでよッ!!証拠をあれだけ用意したってのに、なんで信じないどころか
―――『...かなり荒れてるね。彼女の目論見は失敗してしまったようだけど、一体何があったんだい?』
―――『あの世界の人間は、
――そんな所に突然、
―――
―――どうやら、夢美は幻想郷で得た証拠で以て"非統一魔法世界論"を正しいと証明しようとした結果、誰もかれもから
―――『...ごめんなさい。昨日はみっともない所を見せてしまったわ。――あそこまでやってダメなら、もういっそのこと
―――『私は教授について行くぜ。...
―――『――
―――戻って来たその日一杯荒れ続けた翌日。頭が冷えた夢美はちゆりと揃って幻想郷の住人となる事を決めた。それを聞いていたのか
「――こんな所かな。分かったかい?」
「あぁ、よく分かった。――俺が寝ている間にそんなことになっていたとはな。だが、幻想郷に無事に受け入れられたようで何よりだ」
「私もよく分かったぜ。――にしても、元々研究してたものと全然違うだろうによく順応できたな?」
話を終えて二人に聞くと揃って分かったと頷き、魔理沙が疑問を挙げる。
「魔法も科学も、
夢美はそう答えて心底嬉しそうな笑みを浮かべる。彼女が言った通り、科学と魔法の本質はよく似ている。そのおかげで二人はあっさりと魔法の探求に順応した。
「寝る間も惜しいからって、私も付き合わされて"
「それは後天的な"魔法使い"への転化だとよくあることだから仕方ないさ。僕としては人間らしさが残っているのは好ましいしと思うよ」
苦笑いを浮かべるちゆりの言葉にそう返す。―――"
―――『どうしてもと言うなら教えるけど...本当にいいのかい?この魔法を使ったら最期、
―――『人間であろうと
―――『...私的には寝食が要らなくなると益々
―――でも、夢美は種族の変化よりも研究に費やせる時間の拡大を優先した。それ程に、魔法が持つ神秘と無限の可能性は彼女を惹き付けていた。
「二人共、"魔法使い"として幻想郷に馴染んでいるのら何よりだ。――だが、あまり研究や探求にのめり込まないようにな。定命が短い人間から、遥かに長命な"魔法使い"になったんだ。時間は有り余る程にあることを忘れるな。適度に休みつつ、何かしら魔法以外の楽しみを見付けるといい」
「魔法以外に、ねぇ...科学は
「操船技能はあるが、
影政の言葉に二人は揃って悩み始める。
―――何か一つの事に没頭し過ぎると、ふとした時に
「――今すぐ決めろとは言わない。さっきも言ったが、お前達の時間は有り余る程にある。ゆっくり気長に見付ければいい」
「気長に、ね。確かにここ最近は魔法の研究ばっかりだったし、ちょっと休んで趣味でも探そうかしら」
「――本当に休めるのか?それがマジならやっと自分の時間がマトモに取れるんだが...」
夢美の言葉にちゆりは疑いの目を向ける。
―――ちゆり曰く、夢美には未知のものを見付けるとそれを明らかにするまで寝食を忘れて研究に没頭する癖があり、ちゆりは夢美の研究室に入ってからずっとそれに振り回されて来たという。"魔法使い"になった事で寝食が必要なくなり、夢美の癖はエスカレートしてちゆりは自分の時間を中々取れないでいた。
それぞれ趣味を見付けられるかは分からないけど、ちゆりの負担減に繋がる事を祈ろう。
「――っと、そろそろ『エレン』達が来る頃合いかな」
「なんだ、
「――あれ?魔理沙にも招待状は届けた筈だけど」
「朝っぱらから素材集めしてたんでな。多分、家には届いている筈だ」
ふと壁掛け時計を見ると、
「それなら仕方ないか。――じゃあ、この場で聞くけど参加するかい?」
「勿論、このまま参加するぜ!」
でも、偶然影政と出会し、暇だからとついて来たおかげで彼女もお茶会に参加出来る。僕の誘いに魔理沙はニカッと笑って二つ返事で乗る。
―――
―――そこで、魔法に関係無く『魔法の森』の住人として交友関係を築き、維持する為にお茶会を主催する事を思い付いた。始めた当初は新参者という事もあって変な目で見られたけど、今では当たり前の様に受け入れられ、森に住む"魔法使い"達の楽しみの一つになっている。
「――って、そうか。夢美達が居たのは
「そうだね。――まさか予定していた時間よりずっと早くに来るとは思っていなかったけど」
「今やってる研究が一段落したタイミングで、ちょっと暇になってたのよ。だから息抜きがてらにって来たけど...招待状に書かれていた時間は見てなかったわ」
「だから出る時に『今から
魔理沙の言葉に頷き、苦笑しながらそう答えると夢美は軽く目を逸らして理由を話し、ちゆりは半目で夢美を睨む。――相変わらず、研究に没頭し過ぎて周りの細かい事を見逃している様だ。
「――なら、俺はそろそろお暇するとしよう」
「別にこのまま残って参加してもいいんだよ?君とは親友だし、
「あくまで目的はルーンへの顔見せと挨拶だったからな。夢美とちゆり、新たな住人とも知り合えたし、俺としては充分満足だ」
カップの紅茶を飲み干して席を立つ影政にそう尋ねると、そんな答えが返ってくる。――訪ねた相手に何かしら用事があると、それを優先させようと自分の用事を終わらせてさっさと帰ろうとするのは相変わらずだ。
「僕としては普段居ない人が居ることで会話も弾むだろうから歓迎なんだけど...まぁ、無理強いはしないよ」
「『魔法の森』とはほぼ無縁な俺が居ても気不味いだろう。なら、普段通りにやった方がいい」
そう答えながら
「――ルーン、百年経っても変わらず交友関係を築いているようで何よりだ。これからは、その交友関係を頼りにすることもあるだろう。その時は、よろしく頼む」
「...百年の眠りによる周りへの影響を知って変わったようだね。――僕達は親友だ。
「――あぁ」
玄関を開け、外に出た影政と握手を交わす。
―――影政の他の親友達に比べたら親友としての年数は短い方だけど、それでも
「――では、またな」
「またなー、影政。宅飲みするなら言ってくれよな。今度はキノコ持って来て参加するぜ!」
「またね、影政。貴方が言った通り、何か趣味を見付けてみるわ」
「またな。『岡崎魔法研究所』はいつでも来客歓迎だぜ。――マトモな応対ができる保証はないが」
魔理沙達と共に空へ飛び立つ影政を見送る。
―――影政曰く、僕で挨拶回りは
―――でも、これで影政が居る日常が戻ってくる。彼が居ない百年間はどこか空しい、心に穴が空いている感覚を感じ続けていた。それがやっと埋まって、心が晴れやかだ。
―――
ということで、魔法使い系として夢時空から教授と助手、獣王園から慧ノ子が登場です。
二人は人間のままでも良かったけど、教授なら魔法の探究の為に人間辞めそうな気がするのでこうなりました。捨食、捨虫は既に修めてしまっています。
影政の挨拶はとりあえず終了。次回から日常編...という名の豊穣祭編に入ります。