東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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一面です。

実は仲がいい訳では無いチルノとレティ。多分チルノが一方的にシンパシーを感じて突っかかってるんじゃないかな。



春雪異変-1~長引く冬故に~

~霧の湖 湖上~

 

side-咲夜

 

 

「...霧は少ないけど、雹が多いわね」

 

 

 『霧の湖』の領域に入ると、目に見える大きさの白い粒が舞い散り始める。気温が低過ぎるせいか、霧ではなく雹になっているようだ。速く飛ぶと肌に当たった時に痛いため、速度を落として辺りを見回しながら飛んでいく。

 

―――『紅魔館』を出発してすぐ目に付いたこの湖で、ここを縄張りにする"氷精"を探していた。買い出しや外出の用事で湖の近くを通りかかると高確率で悪戯を仕掛けて来るため、どうでもいい存在であっても覚えてしまった。看破、撃退した手口を何度も使って仕掛けて来る辺り、意地というよりは魔理沙や霊夢が言う通り考え無しのバカなのだろう。

 そんなバカでも流石に"吸血鬼"であるお嬢様に随行している際は仕掛けて来ず、ある程度悪戯を仕掛ける相手を選んではいるようだけど、私は()()だからか対象外になれないらしい。

 

―――本当なら関わり合いになりたくないけど、今起きている()()()()の手掛かりになり得る可能性がある為、敢えて此方から探していた。

 

 

「――っと、妖精が出て来たわね。普段よりずっと数が少ない辺り、この寒さは妖精でも堪えるようね」

 

 

 霧の中、様々な方角から妖精が何匹か飛び出してきて弾幕を放って来る。弾幕を躱しながら砲台からナイフを取り出して一匹一本ずつ投擲する。妖精は()()()()()()から生まれる存在だけど、冬の冷気に耐えられる存在は少ないらしい。私を襲った妖精達も動きが緩慢で、ナイフを避けられず次々ナイフに当たって落ちていく。

 

 

「...!大きな氷塊...やっぱり居るみたいね」

 

 

 妖精に交じり、何度か見た事がある()()()()()が霧の中から次々飛んでくる。避けながら氷塊を飛ばして来る()()を探すと―――

 

 

「くっそー!霧がうすくて当たらないぞ!」

 

 

―――目の前の霧を払って氷精『チルノ』が現れ、悔しそうに空中で地団駄を踏む。霧のせいというより氷塊の命中精度そのものが悪いのだと思うけど、言っても解らないだろう。

 

 

「...チルノ、だったわね?――単刀直入に聞くわ。"冬を長引かせているのは貴女"?」

 

 

 さっさとチルノに会おうとした用事を終わらせる為に尋ねる。

 

―――"()()を操る"という妖精としては強力な力を持ち、その気になれば広範囲で気温を下げて冬の気候に出来るかもしれない。つまり今起きている()()()()()である可能性がある。

 

 

「は?何言ってるんだ。あたいがそんなことするわけ無いだろう!...というか、()()()()()()()()なんて初めて知ったぞ。だから()()()()()()()()()のか!」

 

 

 案の定、チルノはこの()()に無関係―――というより影響を受けただけのようだ。私の問いから勝手に話を展開して自分で納得している。()()()()()ではないと分かった以上、これ以上この氷精に関わっていたくないけど―――

 

 

「冬はあたいにとっていごこち(居心地)がいい。それがずっと続くならさいこーだな!」

「貴女が良くても、他からしたら問題なのよ。紅魔館(うち)では食料が底を尽きかけてるし、中を温める燃料も少なくなってきてる。だから、この()()()()()()()()()()()()()

「あんたの家のつごー(都合)なんて知るもんか!この冬を終わらせようってなら、あたいがせーばい(成敗)してやるッ!!

 

 

 予想通り、チルノは仕掛けてきた。青い氷弾をばら撒いて私を落とそうとして来る。

 

 

「はぁ、全く...空振りな上無駄な『弾幕ごっこ』まで強いられるなんてね。――さっさと終わらせましょうか」

 

 

 氷の弾幕を交わしながら砲台を展開し、チルノを狙ってナイフを撃ち出す。

 

 

うわっ?!...やるな!なら、コイツはどうだ!

 

 

霜符 「フロストコラムス」

 

 

 ナイフに被弾して怯んだチルノは、()()()()()()を切る。氷弾を放射状にばら撒き、雪弾を追尾させるように撃ちだしてくる。霜柱のような、雪を持ち上げる細い氷の柱を表現したような弾幕だ。

 

 

「雪の下の霜柱、って所かしら。氷弾と雪弾が時々重なるのが厄介ね」

 

 

 チルノなりにらしい表現をしていると感心しながら、弾幕の隙間を潜り抜けてナイフを撃ち込む。氷精程度に()()()()()()を切るつもりは無い。このまま―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――捉えた」

なっ?!い、いつの間に――」

 

 

―――サクッ

 

 

―――弾幕を抜けてチルノに肉薄し、ナイフを一本驚いた表情の眉間に刺す。驚いた表情のまま湖に落ちていくのを見届ける。

 

 

「――()()させなかっただけ感謝なさい。次からは仕掛ける相手を選ぶ良識を持っていることを祈るわ」

 

 

 どうせ翌日には忘れて元気に悪戯を仕掛けて来るだろうけど――そう思いつつ湖を離れる。

 

 

「――さて、どうしようかしら。もしかしたらと思ってチルノに確かめたけど、案の定無駄足になったし...他に()()()()()()()程の力を持つ存在なんて居るのかしら?」

 

 

 チルノがやられたのを見たのか、挑んで来る数が少なくなっている妖精を落としながら思案する。

 

―――チルノを探したのは、私が出会った妖怪の中で()()()()()()()力を持っていると考えたからだ。その結果が無駄足だった以上、他の妖怪を探す必要がある。

 しかし、これまで私が足を運んできたのは『博麗神社』、『人里』、『魔法の森』(の傍の道具屋)位のもので、それぞれで出逢った妖怪の中に()()の類を操れる存在は居なかった。

 

 

「...真面目に困ったわね。お嬢様に従う以外じゃ『人里』に食料やら日用品やらの買い出し以外に外部との関わりが少ないのが仇になってるわ。()()()()()()()為にも、それが可能な妖怪を探さないといけないのに――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あらあら、それはちょっと困るわぁ」

「――!」

「あら危ない。...貴女にとって、初対面の人への挨拶はナイフ投げなのかしら?」

 

 

―――突然、思わせぶりな口調の声が聞こえてきた。咄嗟にナイフを聞こえてきた方向に投げて見やれば、雪のようなターバンを薄紫色のショートボブに巻き、白いゆったりしたシャツの上に青紫色のベストを羽織り、首周りには白いマフラーを巻いている。そして下半身には青紫色のロングスカートと白い小さなエプロンを纏い、薄茶色のブーツを履いている妙齢の少女が右手に()()()()()()()()()()を持ちながら紫色の瞳で私を見つめながら尋ねて来る。

 

 

「...初対面だからこそ、誰彼構わず襲いかかる危険な妖怪かもしれない可能性を考えた結果よ。見た目は危険には見えないけど――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から怪しいわね」

 

 

―――チルノと相対した時も当然ながら寒かった。けど、目の前の妖怪から放たれ、雪まで降り始めさせたものは()()()()()()とすぐに分かった。それよりも寒く、まるで()()()()()()()()のような感覚だ。

 

 

「――あら、私が出しているものが()()だって分かるのね。じゃあ自己紹介しましょうか。私は『レティ・ホワイトロック』、冬を愛し、冬に生きる"雪女"よ」

「...『十六夜咲夜』、人間のメイドよ」

 

 

 レティと名乗った雪女と互いに自己紹介する。"雪女"...確か、冬の夜中に現れる存在で、身体が雪で出来ているが故に冬以外では消えてしまう存在だと何かの本で見た気がする。...それが事実なら、彼女は()()()()()()()理由を持っている。

 

 

「咲夜、ね。冬の間しか出歩かないけど、よろしくね。――それで、どうして咲夜は()()()()()()()()のかしら?」

「...もう春の半ばに差し掛かるのに、こうして冬が続いていると困るのよ。食料の備蓄も少ないし、温める燃料もそろそろ厳しいわ」

「なるほどねぇ。それなら冬を終わらせたいって気持ちも解るわ。...でも、私にも冬が長引いて欲しい()()()()()()

 

 

 レティはそう言って不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「さっきも言った通り、"雪女"は冬以外ではまともに活動できない。一年の四分の一しか出歩けないなんて、つまらないと思わない?――だから、()()()()はありがたいものなのよぉ。私の()()も充分発揮できるしね」

「...つまり、活動期間を伸ばしたいが為に()()()()()()()()()、とでも言いたいのかしら?」

「――さぁ、どうかしらぁ?」

 

 

 私の問に、レティは思わせ振りな微笑みを浮かべる。―――彼女が()()()()()だと確定した訳では無い。けど、これほど自らを()()だと思わせる素振りを見せているなら、仮に()()()()()()()()としても、()()に関わる情報を持っているかもしれない。

 

 

「――冗談だったと謝るなら今の内よ。改めないなら――ナイフが飛ぶわよ」

「妖怪の私がその程度の警告に屈すると思って?そのナイフで、私がこの()()()()()()()()か否か、確かめてみなさいな。――冬の気候を齎す寒気を操る私を倒せるのなら、ねっ!

 

 

 警告をあっさり拒否し、レティは水色の丸弾の弾幕を展開する。同時に()()も発動したのか、舞い散る雪の量が増えて来て視界が少し悪くなる。

 

 

「...防寒対策はしているとは言え、あまり時間は掛けられないわね」

 

 

 弾幕を躱しながら、砲台を起動してナイフを撃ち出す。躱そうとするレティの動きは遅く、ナイフが次々当たる。

 

 

くっ...!中々やるわね。なら、これはどう?」

 

 

寒符 「リンガリングコールド」

 

 

 被弾が重なって怯んだレティは()()()()()()を切る。レティの周りに吹雪が生じ、それに紛れて青い丸弾がばら撒かれる。それに加えて水色の丸弾を放射状に展開して私を狙ってくる。

 

 

「吹雪で弾幕の出処が分かりにくいのが厄介ね。弾幕そのものの密度も濃いから気を付けないと...」

 

 

 弾幕を分析しながら隙間を見付けて躱していく。吹雪が途切れてレティの姿が見えた所を突いてナイフを撃ち込む。

 

 

きゃっ?!...どうやら、人間だと舐めない方が良さそうね...!」

「私としてはそのまま舐めたままの方がありがたいのだけど。さっき落とした氷精は毎度毎度私を舐めて仕掛けて来るから少し癪ではあるけど、楽なのよね」

 

 

 怯みから持ち直したレティが丸い雪弾の弾幕をばら撒き、それを躱して隙を突いてナイフを飛ばしながら会話を交わす。

 

 

「...その氷精、『チルノ』って名前じゃない?」

「あら、知ってるのね。()()が似てるから親近感が湧くのかしら」

「っと...あんな()()()()()()()()()()()と一緒にしないで欲しいわね。向こうから馴れ馴れしく突っかかってくるから覚えちゃっただけ、よッ!」

 

 

―――ゴオッ!

 

 

「っ...?!」

 

 

 レティはナイフを躱し、視界を遮るように吹雪を私達の間に巻き起こす。突然目の前が白くなって怯むと―――

 

 

「――しまっtくっ...!

 

 

―――吹雪を突き抜けて水色の丸弾が数発飛んできて、避け切れず一発スカートに掠めて焦げ跡ができる。

 

 

「あの妖精ができるのは()()()()()()()ことだけ。確かに妖精にしては強力だけど――私は()()()()()()()()()()()()。吹雪で視界を遮り、大雪で道を塞ぎ、凍てつく寒さで()()()()()()に就かせることができるのよ」

 

 

 私が被弾したのを見て、不敵に笑みを浮かべてレティは言う。どうやら()()を利用した攻撃を改めて仕掛けた事でチルノとは違う妖怪であると示したようだ。

 

 

「...身に沁みて解ったわ。――油断はしない。貴女を倒して、情報を聞き出すわ」

「情報ねぇ。貴女が望むものを持っていたらいいのだけど――そう簡単には倒されたくはないわね!」

 

 

怪符 「テーブルターニング」

 

 

 レティは二枚目の()()()()()()を切る。二本一組の青いレーザを自身の周囲に展開し、青い鱗弾を雪の結晶のような放射状にばら撒く。レーザーが移動範囲を狭めた所に、密度が高い鱗弾の弾幕を重ねた、先程のスペルより避けにくい弾幕だ。

 

 

「っと...さっきより避けにくい弾幕ね。鱗弾の密度が凄いわ」

 

 

 レーザーの位置を見ながら鱗弾の隙間を通って躱し、ナイフを撃ち出す。

 

 

「っと...これ以上の被弾は不味いわね...!」

 

 

 レティは弾幕を展開しながら()()で吹雪を起こす。瞬間的な強風でナイフがあおられて何本かの軌道がずらされて外れてしまう。

 

 

「吹雪でナイフを...仕方ないわね。あまり時間はかけられない――こちらも()()を使わせてもらうわ!」

 

 

幻符 「殺人ドール」

 

 

 スペルカードを切り、周囲にナイフを展開し―――()()()()()()。そのままレティに近付き、ナイフを配置する。これだけ近ければ吹雪を起こしてもずらしようが無い。

 

 

「――これで、チェックメイトよ」

 

 

 配置を終え―――()()()()()()。私から放たれたナイフと、レティの周りに配置したナイフが一斉に動き出す。

 

 

「なっ――」

 

 

 驚いた表情を浮かべたレティにナイフが迫り―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタタ...何をされた分からないけど、私が負けたのは確かね...降参よぉ」

 

 

―――レティが()()で降らせていた雪が止んだ『霧の湖』の湖上。ナイフで切り刻まれてボロボロになった服を纏うレティは肩を竦めて敗北を認める。

 

 

「さて、情報を吐いてもらうわよ。まず、貴女がこの()()()()()()()()()の?」

「...()()っぽく振る舞ってみせたけど、残念なことに()()()()()()のよねぇ。私はただ、()()()()()()()()()()だけなの」

「...はぁ。噓をついてる風にも見えないし、空振りね。――腹いせにナイフ刺そうかしら」

 

 

 結局レティはこの()()()()()()()()()ではなかったようだ。思わずため息をついて我ながら物騒な事を呟いてしまう。

 

 

「...それは勘弁願いたいわねぇ。貴女のお眼鏡に適うかは分からないけど、一つ()()()()()()があったのよ。聞きたくない?」

「...聞かせてもらおうかしら。手掛かりになりそうにないなら、このナイフが刺さるから」

 

 

 私の呟きを聞いたのか、レティは困ったような表情を浮かべて提案して来る。ナイフを一本取り出しながら軽く脅しをかけて促す。

 

 

「この湖に来る前に、雪雲に入ってみようと思って空高く飛んだの。そしたら――()()()()()()()()()()()()()を感じてすぐ降りたの。おかしいと思わない?高度が高いとそれだけ()()()()のに」

「――確かにおかしいわね」

 

 

 高度が高ければその分気温が低くなる事は知識で知っている。レティの言葉が事実なら、本来の法則に反する現象が空で起きているという事だ。()()()()()()()()()()()()()...この()()の手掛かりになるかもしれない。

 

 

「...その空気の流れ、どこで感じたの?」

「この湖から西に向かった空よぉ。空気の流れも西()()()()()()()()から、西に行けば何か分かるんじゃない?」

「西、ね。情報ありがとう。役に立ちそうだからナイフは納めるけど――またいつか会った時、今回みたいに()()()()()()()()を取ったら容赦せずナイフを刺すから」

「...はいはい、そうならないように気を付けるわぁ。――いらないお世話かもしれないけど、気を付けてね。()()()()()()()()()を起こしてるもの。()()()()()はきっと強いわよ」

「...そうかもしれないわね。じゃ、そろそろ行くわ」

 

 

 レティの忠告を受け取り、背を向けて西へと飛び立つ。―――本来在るべき四季の流れを歪める程の力を持つ存在。一体何者なのだろうか。

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

 

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