東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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リメイク前と比べて描写追加、変更しています。



序-3~東の果ての社にて~

~八雲邸 客室~

 

side-影政

 

 

「...よし」

 

 

 振袖のような広い袖口のシャツの襟元の紅いネクタイを締め直し、上に紅い肩衣を羽織る。腰に(相棒)を――今は手元に無いんだったな。紫の許しが出たら取りに行かねば。

 

―――『貴方の(相棒)は"円月堂"に預けてあるわ。折れていたのもしっかり直されているし、()は暇さえあれば手入れをしていたからちゃんと引き取りに向かうのよ』

 

 昨日の紫達との質疑応答で(相棒)について尋ねた時の紫の答えを思い返す。

 俺は吸血鬼異変(あの異変)で、(相棒)()()()()()()()()()。それが功を奏して吸血鬼に止めを刺す隙を作れたが、(相棒)には申し訳ないことをした。刃を折るのは、アレを最初で最後にしたい所だ。

 

 

―――スッ...

 

「影政、準備...は出来てるわね」

「あぁ、行こうか」

 

 

 客室の襖が開き、紫が顔を覗かせる。俺の様子を見に来たようだ。彼女に続いて客室を出て玄関に向かう。

 

 

 

「紫様、影政様。行ってらっしゃいませ」

「い、行ってらっしゃいませ...!」

 

 

 玄関に着くと、藍と橙が既に待機していて俺達に頭を下げる。二人は八雲邸(ここ)で留守番だ。

 

 

「えぇ、行ってくるわ」

「行ってくる。...さて、当代『博麗の巫女』はどんな人物なのか」

 

 

 そう呟きながらブーツを履き、紫が開いた無数の目が蠢く異空間―――()()()()()()()()()()()()()()―――"スキマ"に入る。

 

 

―――幻想郷を一つの世界として確立している()()()()の片割れ『博麗大結界』の要たる『博麗神社』。

 歴代の『博麗の巫女』が暮らす家でもあるが、神社として再建する以前から手水所傍の池に棲む、老齢なれど知識と記憶が豊富な亀。()()を起こし、三代目『博麗の巫女』に倒されて以来神社を根城にしている"悪霊"が同居している神社らしからぬ一面もある。

 

 しかも歴代によっては()()()()()()()()に惹かれた妖怪と親交を結ぶ者も居て、且つ立地故に人間が参拝しにくい(それでも四代目辺りまでは少なくない人間が参拝に来ていたが)せいで妖怪が屯する時期もあり、"博麗神社は妖怪神社"と陰口を叩かれていた。だが、歴代『博麗の巫女』は紫、()()()()()()、そして俺の手で修行を付けたおかげか総じて高い戦闘能力を持ち、"妖怪退治は博麗の巫女に"と人間から大いに頼られてもいた。

 

―――果たして今代『博麗の巫女』である『博麗霊夢』はどの様な人物なのか。そして、人間、妖怪とどの様な付き合い方をしているのだろうか。

 

 


 

 

~博麗神社 母屋~

 

side-霊夢

 

 

「...はぁ、暇だわ」

 

 

 社殿の裏手にある母屋の縁側。熱い緑茶を注いだ湯吞片手に座り、晩夏の晴空を見上げてため息をつく。最近は()()退()()の依頼も無い。...やってて虚しくなる日課を終えれば、家事以外にする事も無かった。

 

 

「今日も賽銭は無し、かしらねぇ...()()()()、来るのはいいけど賽銭入れなさいよ全く」

 

 

 ()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()等々―――暇だからと神社(ウチ)に来る癖に、賽銭どころか参拝もしない連中の顔を思い出してつい顔を顰めてしまう。

 

 

―――『博麗神社』は、幻想郷の最東端に聳える山の中腹の平地に建っている。参道はあるけど、普通に()()()()()()()()獣道同然だ。

 昔は態々その獣道(参道)を通って参拝する人間も居たらしいけど、今では誰も通らない。そのせいで草木が生い茂って道がある事を認識することも出来ないだろう。

 

 では参拝客を呼び込みやすい立地に変えられるかと言えば、()()()()()()だ。この神社は幻想郷を構成する二つの結界の片方『博麗大結界』の要だから、動かせる訳が無い。―――故に、安全に、楽に神社を訪ねられる最低条件は()()()()()こと。普通の人間では無理な条件だ。そのせいで、神社(ウチ)には()()()を除けば殆ど妖怪(人ならざるもの)しか来ない。例えば―――

 

 

 

―――フッ...

 

「――立地がアレだけど、連中からしたらここは暇つぶしに最適なのさ。参拝じゃなく、()()()()()()()()()()()()()()()()感覚なんだよ。いい加減連中から賽銭せびるのは諦めな」

 

 

―――私の隣にフワリと実体化して現れた、緑色の長髪に青い天冠風の帽子を被り、白く縁った青いケープとワンピースを纏う"悪霊"『魅魔(みま)』。

 紫曰く、生前は『魔法の森』に棲む魔女だったらしいけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という理不尽な最期への未練と、『博麗の巫女』への憎しみを抱いて"悪霊"と化したらしい。

 

 『博麗の巫女』三代目の時に復讐を図り、巫女を憎む妖怪達をけしかけて一時神社を占拠した()()()()()()を起こしたが、当時の巫女の手で魅魔は倒され()()()()が成された。

 それ以来、魅魔は幻想郷の方々を彷徨く無害な悪霊(それは果たして悪霊なのか?)となり、何故かここ『博麗神社』を根城にして(本人曰く居心地が良いらしい。私としては堪ったものじゃないのだけど)今まで気ままに過ごしてきたらしい。三代目以降、偶に()()()()に力添えもしてくれる同居人(?)だ。実際、私も巫女就任間も無い頃に妖怪退治で何度か魅魔のサポートを受けたけど、大妖怪に相応しい実力の持ち主だった。

 

 

―――閑話休題。

 

 

「...()()()()ばっかじゃ私の気が済まないのよ。参拝してもらって、お賽銭も入れてもらって、妖怪退治や異変解決で得た収入で己の生活を潤わせる。...最近妖怪退治すら依頼されないから懐が寂しいのよ」

 

 

 魅魔の言葉にそう返す。"()()()()()()"とは、私を巫女として教育した紫、その式神藍、その他()()()()()()()()()が時々食料やお酒、諸々道具を持ってきてくれることを言う。

 紫曰く初代からそうしていて、『博麗の巫女』は()()()()()()()()()()()を約束されて来たらしい。でも、紫から見ても首を傾げる程、私は歴代一金運が無いようだ。なけなしの収入が入っても、何かしら()()()()()が出るせいで貯まらない。

 

 

「妖怪もすっかり落ち着いちまったからねぇ。――史上最も凄惨だった『吸血鬼異変』から百年..."()()()()()()()"が不味いことだと解っちまった。今までの異変は"強い奴が異変を起こして別の強い奴が解決"するようなものだった。人間や弱小妖怪に余地なんざ無かったし、寧ろ理不尽に巻き込まれてきた。

 流石にそれじゃダメだと気付いた紫達()()()()()()()()()()()()()策を取ったら、今度は()()()()()()()()()だ。妖怪は()()()()()()()()こそだってのに、その機会を奪われちまったから当然の結界だった。その結果大半がぽっと出の吸血鬼に靡いちまって、()()()()()()()を齎した」

 

「...だから、『弾幕ごっこ』を制定させたのよ。"完全な実力主義"を否定し、それなりに実力があるなら誰でも戦えて、ルールの範疇で存分に暴れられる。...数百年で誰も思いつかなかったのが謎だわ」

 

 

 魅魔が珍しく飄々とした表情を顰めて語った『吸血鬼異変』の顛末に言い返す。

 

―――修行の一環で、私は幻想郷創造から起きた数々の異変の記録を見てきた。それで浮かんだ感想は一言、"バカらしい"だった。紫が常日頃言っていた"人妖が共存する理想郷"とは思えない、()()()()()()()の暴力が詰まっていた。

 共存を謳うなら、非力な人間や弱小妖怪にも異変を起こしたり、解決させる権利と機会を与えるべき―――そう思って、巫女に就任して早々に儀式に集まっていた連中に『弾幕ごっこ』を提案してやった。紫が普段はしない豆鉄砲を食らったような顔をしていたのは今でも思い出せる。

 

 

「...霊夢が初めてだよ。弱い奴に目を向けるなんざ、誰も考えもしなかった。私も含め、完全な実力主義に染まり切っていたからねぇ。人間好きの紫ですら目から鱗だった考え方だ。――『弾幕ごっこ』は幻想郷を変えるよ、間違いなく」

「...でも、制定から六年位経ったけど普及はイマイチじゃない」

 

 

 魅魔に褒められ、湧きあがった恥ずかしくも嬉しい感情を抑えるように茶を飲み、芳しくない『弾幕ごっこ』の普及の進みをぼやく。

 

―――『弾幕ごっこ』の発起人として真っ先に弾幕と"スペルカード"を作り、同じように早く順応した()()()と勝負して手本を見せたり、乞われれば態々教えに行ったりもした。それでも、私が思っていた以上に普及は進んでいなかった。

 

 

「そりゃあねぇ...精神面は兎も角、"()()()弾幕"ってのが難しいんだよ。それは芸術的な感性じゃないか。皆が皆、霊夢みたいにホイホイできるわけじゃないんだ」

「自分の()()やイメージを表現するだけよ?難しいものじゃないわよ」

「...ただ力を誇示してきた妖怪にゃ分からんのさ」

 

 

 魅魔はそう言って肩を竦める。どうやら、"自分を表現する"というのが大半の妖怪には難しいようだ。魅魔や紫は私より少し遅かったけど早く順応できたし、それなら妖怪にも普及できると思っていたけど...それは楽観的過ぎたようだ。

 

 

「はぁ...どうせなら"弾幕ごっこの教えを乞う"奴とかこないかしら」

「はっ、そんな物好きは居ないよ。形にするのが難しいだけで、制定されたルール自体は簡単なんだ。居るとすれば、()()()()()()()()()()()()()奴――」

 

 

 

 

 

...チャリン...

 

 

―――ダッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~~~~ッ!!お賽銭ッ!!!!」

 

 

―――諦めかけていた。でも、確かに聞こえた。

 

 

―――()()()()()()()あの音が。

 

 

―――自分史上最速で()()()()()()()に飛びつき、引き出しを開ける。

 

 

 

 

 

 

 

――――――あった。入れた人に良縁を繋ぐ五円玉(穴が空いた黄金色の丸い硬貨)が。

 

 

 

 

「五円玉!!コレ入れるなんて分かってるじゃない!!さぁ、どんなご縁が欲しいの?!私もよく分かってないけど間違いなく素晴らしいご利益が―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ゴンッ!!

 

 

「――霊夢...そんな娘に育てた覚えはないわよ」

「――これが、当代『博麗の巫女』か?」

 

 

―――瞬間、脳天に度々食らったことがある()()()()()()()()()を食らった。薄れゆく意識で聞こえてきたのは、(胡散臭い教育役)の声と、()()()()()()()()()()だった。

 

 

 


 

 

side-影政

 

 

<スリスリスリ...

 

 

「――そうかい。本当に()()()()()()()()とはねぇ...まぁ、お前さん自身が受け入れたならそれでいいさ」

「いつかはこうなるだろうと思っていた。それが予想より早かっただけだ」

 

 

―――参拝を終え、手水所の傍にある池に住む、歴代『博麗の巫女』の動静を全て識る『博麗神社』の生き字引たる亀『玄爺(げんじい)』に挨拶し、紫、魅魔、当代『博麗の巫女』()()()()()と共に母屋の縁側に集まって会話を交わす。百年経っても『博麗神社』は変わっていなかった。強いて変化を挙げれば補強や補修の痕が増えている位か。

 

 

<スリスリスリ...

 

「でも、百年は眠り過ぎだよ。皆どれだけお前さんを心配していたか...()()()()()ことで少なくとも死にはしないと分かっても、()()()()()()()()ままじゃ不安にもなる。これからあちこち挨拶やら報告やらに行くだろうけど、絞られるのは覚悟しておきな」

「...あぁ、分かってる」

 

<スリスリスリ...

 

 

 魅魔の言う通り、百年という時間は長すぎた。特に人間には長すぎる。()()()()()()()()()()()()()()()...百年前に見知っていた人里の者も三代以上は変わっているだろう。妖怪でも、大半の者からすれば百年は長い方だろう。

 

 

「...で、最初に神社(ここ)に来たのはどうしてだい?」

「当代『博麗の巫女』を見たくてな。後は『弾幕ごっこ』について教えてもらいたかったんだが...」

 

 

<スリスリスリスリスリスリ...

「~~~~~~!」

 

 

 隣に座り、五円玉に頬を擦りつけて恍惚とした表情を浮かべる紅白の巫女装束(肩出し脇出しは先代からだが、袴もやめたらしい)の少女『博麗霊夢』を見る。歴代にこんな奇行をする者は居なかった。本当に彼女が巫女なのか疑わしいが...

 

 

「...コレが当代『博麗の巫女』だよ、残念なことにね。確かに素質はあるんだが」

「はぁ...どこで間違ったのかしら私...」

 

 

 俺が言いたいことを察したのか、魅魔は肩を竦め、紫は額に手を添えてため息をつく。確かに彼女から感じられる霊力は(初代)に迫るものがあるが...

 

 

「...おい―――」

「本ッ当にありがとう!!紫も魅魔もアイツらも来るはいいけどお賽銭入れないし本当神社をなんだと思ってるのかしらそれに比べて貴方は最高の人よ!!ただ入れるんじゃなくて五円玉よ五円玉!!もう本当最高よ貴方!!折角入れてくれたから一回いや二回くらいはお願い聞いてあげるわお料理家事洗濯祈祷神事なんでもござれよあぁでも身体はだめよ巫女は神聖なんだから―――」

 

 

―――ゴンッ!!

 

 

「――ごめんなさい、影政。ちょーっと、このおバカさんを懲らしめてくるわ」

 

 

 話しかけると瞬時に俺の手を掴んでブンブン振りながらまくし立ててくる。息継ぎもなしに紡がれる言葉を聞き流していると―――紫はスキマから"100t"と側面に刻印された大きな鉄鎚を霊夢の脳天に落として気絶させる。俺に笑顔を向け、霊夢の首根っこを掴んで境内上空へと昇って行くのを見送る。

 

―――妙齢の女性の笑顔だったが、その目は笑っていなかった。

 

 

 


 

~博麗神社 境内~

 

side-魅魔

 

 

《廃線「ぶらり廃駅下車の旅」》

 

<多い多い?!ルールギリギリよコレー!!

<でもルールの範疇よ。ほらほら、避け切れないと大事な大事な五円玉は没収よ?

 

 

 紫の周りに大きなスキマが幾つも現れ、廃電車(鉄の長い箱が連結したもの)が次々飛び出して霊夢を襲う。霊夢は何か叫びながら必死に避けていく。

 

 

「ほっほっほ、紫様も霊夢も元気一杯ですなぁ」

「張り切ってるねぇ。霊夢を懲らしめるついでに『弾幕ごっこ』を見せられる、一石二鳥だ」

 

 

 池の水面から顔を出して『弾幕ごっこ』を眺める玄爺の言葉に頷く。確かに紫は霊夢の奇行にキレていたが、同時に『弾幕ごっこ』の実演を影政に見せる機会としても利用したようだ。

 

 

「...あれは勝負なのか?一方的に紫が攻撃してるように見えるが」

「『耐久勝負』。ルール上はあれも形態として認められてるよ。制限時間で弾幕、スペルカードを避け切れたら勝ちだ。霊夢は攻撃もスペルカードも無しでひたすら避けるだけだから、いい修行になるだろうさ」

 

 

 困惑している影政に説明する。『弾幕ごっこ』は()()()()双方の合意でルールを決めて行う。制限時間、スペルカード枚数、被弾数...人によって組み上げるルールは違う。

 

 

<よ、避け切れた...紫!さっさと大事な大事な五円玉を――

 

《罔両「禅寺に棲む妖蝶」》

 

<反省が見えないわね。まだ続行よ

<ぎゃー?!いつもより速いじゃないのー!

 

 

 紫が次のスペルカードを切る。卍のレーザーが展開され、高速回転しながら蝶弾をばら撒く。

 

 

「『弾幕ごっこ』はああいうスペルカードが本命。正に自分自身のイメージ、思想、能力の具現化さ。スペルカードをぶつけ合うルールだと正に見応え抜群だよ」

 

 

 説明を続けながら、脳裏に霊夢と()()()()()()()が以前やった『弾幕ごっこ』を思い出す。『博麗奥義』をベースにした霊夢、努力の結晶で一から作った()()()。天然の天才と努力の天才のぶつかり合いは実に見応えがあった。

 

 

「イメージの具現化か...難しそうだな」

「実際それが普及が芳しくない要因だからねぇ。自分の種族や能力、思想...あんな風な形にするのは難しい」

 

 

 影政の言葉に頷く。口で思想を言ったり、ただ力や()()を振るうことが如何に簡単なことだったのか。弾幕やスペルカードを考えた時にそれを思い知らされた。

 昔から幻想郷に住んでる奴はそんな感じだが、()から来た奴―――"外来人"なら結構順応出来るかもしれない。それを切っ掛けにして普及されるといいが。

 

 

「...そうだ。コイツをやるよ。思い付かなくて余らせちまってね」

「...無地のカード?あぁ、なるほどな...」

「名前、イメージ、術式を念じてやれば完成。作るのは簡単だよ」

 

 

 影政に白紙のカードを数枚渡すと、察したように受け取ったカードを見つめる。これが主に霊夢、紫が作っている()()()()()()()()()だ。これにイメージやら術式、名前を念じて篭めると()()()()()()となる。

 発動は()()()()()()だけ。詠唱や宣言は特にいらないが、格好が付くからとやる奴もいる。

 

 

「足りないなら霊夢か紫に言いな。作ってるのは主にその二人だからね」

「分かった。今は病み上がりの身だからな、紫のお許しが出たらやってみるとしよう」

 

 

 見た目にはピンピンしてるが...百年の眠りだ。気付けない異常があるかもしれない。紫は医者ではないが知識と経験はある。『人里』にも医者や薬師はいるが...()の診察や薬の処方なんぞ無理だろう。

 

 

「さて、霊夢はまだ行けるかね。それともヘバッて終わるか」

「...ちょうど制限時間が来たようだな」

 

 

 空に視線を戻すと、紫の弾幕が消えていた。霊夢は肩で息をついてるがまだ行けそうだ。紫もそう判断してか次のスペルカードを持っている。

 

 

<ゼェハァ...も、もういいでしょ?

<肩で息をつく程度ならまだ行けるわね

<この鬼ババア!!人の心は無いの?!

<人じゃなくて妖怪ですー。鬼でもないけど、あんな奇行を二度とさせないように、心は鬼にしているわよ

 

 

 霊夢の激高も聞き流し、紫はスペルカードを―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《恋符「マスタースパーク」》

 

 

<あら危ない

<は?ちょm

 

 

―――突然、()()()()()()()()()()()()()が紫を襲った。が、紫はスキマを開いて飲み込み、そのまま霊夢に向けてスキマを開いて吐き出した。当然、霊夢は避けられずレーザーの奔流に飲み込まれた。

 

 

 


 

 

~博麗神社 母屋~

 

side-影政

 

 

「やっぱ紫の()()反則だろ...完璧に奇襲入ったと思ったのにちくしょー」

「あら、霊夢にはバッチリ決まったじゃない。おかげさまでこらしめられたわー」

「棒読みやめろ。...まぁ、金運無さ過ぎて守銭奴拗らせてるからなぁ霊夢。影政、悪いことは言わんから霊夢に賽銭はやめとけ」

「...善処しよう」

 

 

 紫と霊夢の弾幕ごっこ(お仕置き)に乱入してきた、左側のもみあげにおさげを垂らした金髪のセミロングに、リボンのついたつばの広い黒い三角帽を被り、黒系の服に白いエプロンと白黒の魔女装束の少女『霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)』の忠告にとりあえず頷く。

 "霧雨"...()()()()()()()の娘であろう彼女は、歴代で()()()の"人間の魔法使い"だった。商人ではないのは何か理由があるんだろうが、そこまで詮索するのは無礼だろう。

 

 

―――霊夢へのお仕置きは、魔理沙の奇襲スペルカードで決した。本来は霊夢(幼馴染)を助けようと紫を狙ったが、上手いこと紫に利用されてしまって助けることはできなかった。紫に憤慨していた魔理沙だが、事情を聞いて納得して呆れたようにため息をついていた。

 今は互いに自己紹介を交わし、母屋の縁側に戻ってこうして話をしていた。霊夢は奇襲でもろにダメージを受けて気絶してしまい、部屋に寝かされている。俺が入れた五円玉は枕元に返してやってる辺り、紫は相変わらず『博麗の巫女』に甘いようだ。

 

 

「...しかし、暇つぶしに来てみたら思わぬ出逢いがあったな。()()()の奴もよくお前の事を話していたよ。アイツと親友なんだってな?」

「あぁ、そうだ。...ルーン達は息災か?」

「勿論だぜ。...ルーンの姿は()()()()()から見てないが」

 

 

 魔理沙の口から馴染みのある名前が出て来た。魔理沙は『魔法の森』に住んでいるというからもしかしたらと思っていたが、息災のようでよかった。アイツにもちゃんと挨拶に行かないとな。

 

 

「一週間か...まぁ、ルーンはよくあちこち出かけるからな。遠出もあり得る」

「『人里』で人形劇やってる()()()や行商で魔導具売ってる()()()は兎も角、()()は籠りがちだからな。私やルーンみたいにもっと外に出るべきだぜ」

 

 

 魔理沙はそう言って肩を竦める。やはり彼女は魔法使い(同業者)との付き合いが多いようだ。

 

 

「...まぁ、親友ならルーンに会いに行ってやれよ。いつも通り飄々としていたが、それでも心配そうだったしな。――それより、だ!影政お前、『弾幕ごっこ』を教えてもらいに神社(ここ)に来たんだよな?その願い、私が引き受けてやるぜ!」

 

 

 魔理沙はそう言って金色の瞳を輝かせて迫ってくる。

 

 

「...いや、さっき紫と霊夢のを見たし別にその必要は――」

「あんな()()()()()()()のは確かにルール通りだが変則的だ。これでも霊夢に続いて『弾幕ごっこ』に順応したんだぜ?絶賛気絶中のアイツに変わって教えられる自信はあるぞ!」

 

 

 断ろうとするが魔理沙は瞳を貪欲に輝かせて尚も迫ってくる。

 

 

「魔理沙は霊夢に対してマウントを取りたいのさ。本来教える筈だった霊夢がいざ教えようとしたら、影政は()()()()()()()()じゃないか。そこで魔理沙がドヤ顔d「よ、余計なこと言うなこの悪霊ッ!」おっと危ない」

 

 

 魅魔がおちょくるように魔理沙が食い下がる理由を語るが、魔理沙は遮るように箒を振り回す。魅魔は瞬時に実体化を解いて姿を消して躱し、魔理沙から少し離れて再度実体化する。

 

 

「...まぁ、揶揄うのはこの位にして。教えを受けるなら魔理沙でもいいんじゃないかい?霊夢の次に順応しただけあって『弾幕ごっこ』の腕は確かだよ。さっき私も少し教えたけど、ソイツの方がよっぽど詳しいよ」

「そうか...分かった。魔理沙、『弾幕ごっこ』を教えてもらおうか」

よっし任せろ!...だが、病み上がりだと実戦は無理か?」

 

 

 提案を受けると魔理沙は嬉しそうに頷くが、すぐに悩まし気に腕を組む。

 

 

「...弾幕の撃ち方とか、スペルカードの作成と発動位ならいいんじゃないかしら。対戦や弾幕を躱させるような激しい動きはダメとしましょうか」

「じゃ、それで行くか!多分第一回『霧雨魔理沙の弾幕ごっこ講座』、始まり始まりだぜ!」

 

 

 紫から限定的なお許しが出て、魔理沙は意気軒昂に声をあげて靴を履いて境内に出ていく。

 

 

「...霊夢には悪いが、『弾幕ごっこ』はこれから必要になるものだからな。早く覚えねば」

 

 

 お詫びに賽銭―――はまた奇行を繰り出しそうだから、いつか酒でも持っていこうかと考えながらブーツを履き、魔理沙に続いて境内に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――「...噓...いやでも、間違いなくあの姿は...!()()様に――()()()に報告しなければ!これは新聞どころじゃないわ!」

 

 

...バサッ!

 

 

 

「...ん?一瞬風が...いや、今はこっちに集中しなければ」

「やっぱり私や霊夢みたいにすぐには作れないか...影政、()()()()()()出来たら教えてくれよ!」

「あぁ、分かった。...さて、俺自身のイメージか...」

 

 

―――『弾幕ごっこ』の教えを受けている最中、微かに()()()()()感覚を感じたが、スペルカードのイメージを形にすることを優先してすぐに忘れてしまった。

 

 

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

 

 

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