東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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春雪異変-4~桜花結界の雇われ門番~

~幻想郷西方 上空~

 

side-魔理沙

 

「...おぉ?!――コイツは正に春(・)の(・)陽(・)気(・)だな。気温が真逆で風邪をひきそうだ」

 

 

 寒々しい曇天を抜けて高空へ出ると、正に春(・)み(・)た(・)い(・)な(・)暖(・)か(・)さ(・)が場を支配していた。周りでは桜(・)の(・)花(・)び(・)ら(・)ら(・)し(・)き(・)も(・)の(・)が、気流に乗って西(・)へ(・)向(・)か(・)っ(・)て(・)舞い散っているのも見える。

 

 

「...確かに春と言えば桜だが、この中に春(・)が(・)詰(・)ま(・)っ(・)て(・)る(・)なんてなぁ」

 

 

 ちょうど目の前を舞って来た花(・)び(・)ら(・)ら(・)し(・)き(・)も(・)の(・)を摘み、近付けて眺める。普通の桜の花びらより一回り程大きいが本来の花びらのような柔らかさは無く、結(・)晶(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)硬(・)い(・)感(・)触(・)だ。

 

 

―――『信じられないかもしれないけど、これは春(・)が(・)結(・)晶(・)化(・)し(・)た(・)も(・)の(・)だ。これが高空域を西(・)へ(・)向(・)か(・)っ(・)て(・)沢山流れているのを見てきた。それで高空にも関わらず春(・)み(・)た(・)い(・)に(・)暖(・)か(・)い(・)みたいなんだ』

 

―――アリスとの『弾幕ごっこ』に勝利した後、ルーンから聞いた手掛かりの説明を思い出す。

 聞いた当初はアリスと揃って"そんなバカな"と思ったが...ルーンが花びらを詰めた小瓶を足元に叩き付けると、そこだけ雪(・)が(・)解(・)け(・)、春(・)の(・)草(・)花(・)が(・)咲(・)い(・)た(・)のを見たら信じざるを得なかった。しかもそれが一(・)瞬(・)で(・)枯(・)れ(・)て(・)雪(・)に(・)覆(・)わ(・)れ(・)た(・)のを目の当たりにして、春(・)が(・)吸(・)収(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)と理解出来た。

 

―――"魔法使い"として色々と魔法を創って来たが、季(・)節(・)を(・)結(・)晶(・)化(・)さ(・)せ(・)る(・)、季(・)節(・)を(・)吸(・)収(・)す(・)る(・)現象なんて初めて見た。一体何をどうやればこんな花びらに春(・)を(・)封(・)入(・)し(・)、吸(・)収(・)す(・)る(・)なんて芸当が出来るのか...ルーンも今(・)は(・)原理は解らないと言っていたから、異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)は私じゃ到底理解出来ない方法を使っているのかもしれない。

 

 

「...っと、こんな高空に妖精が居やがるな。寒さが苦手な妖精は多いからな。暖かいここらに集まってるって訳か!」

 

 

 目の前に妖精が数体現れ、弾幕をばら撒いて来たのに気付いて思考を止める。適当にばら撒かれる丸弾を躱しながら"ストリームレーザー"で妖精を消し飛ばしていく。

 

 

「気絶させて落としたら、目覚めたら寒空の下だからな。消し飛ばしてやるだけありがたいってもんだよな――って、あれは...」

 

 

 そう呟きながら時々飛んで来て弾幕をばら撒く妖精共を倒していると―――下方から見慣れた紅(・)白(・)の(・)人(・)影(・)が此方に飛んでくるのが見えた。ちょうど妖精共の襲撃も治まり、出迎えてやるべく箒を止めて滞空する。

 

 

「――あら、魔理沙じゃない。アンタも暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)を追ってここまで来たのかしら?」

「ちょっと違うな。確かにこの暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)を追っている最中だが――アリスとの『弾幕ごっこ』(一悶着)はあったが、ルーンから手掛かりを教えて貰ってな。見ろよ。この花びらみたいな結晶、コイツに春(・)が(・)封(・)入(・)されてるんだぜ」

 

 

 私の下に飛んでくるなりそう尋ねてきた霊夢に春(・)を(・)結(・)晶(・)化(・)さ(・)せ(・)た(・)花(・)び(・)ら(・)を見せてやる。霊夢の事だ、勘(・)だけでここまで来ただろうから具体的な異(・)変(・)の情報、手掛かりは知らないだろう。

 

 

「...そりゃ凄いわね。その花びらを集めて地上にばら蒔けば解(・)決(・)するんじゃない?」

「それができりゃ実に楽なんだがな。ルーンの実践を見て解ったんだが、この暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)は異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)が春(・)を(・)吸(・)収(・)し(・)続(・)け(・)て(・)い(・)る(・)せいで生じているらしい。この花びらを蒔いても、すぐに吸(・)収(・)さ(・)れ(・)て(・)元の木阿弥だぜ」

 

 

 霊夢は少し眉を上げただけで大して驚かず、花びらを地上にばら撒く事を提案して来る。ルーンの実践を見た私は、その提案は無意味だと否定する。この異(・)変(・)を解(・)決(・)するには―――

 

 

「――つまり、異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)を吹っ飛ばせ――ってことね」

「ご明察。この暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)を追っていけば、自ずと異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)の下に辿り着ける筈だぜ」

 

 

 霊夢の分かりやすいまとめ方に頷く。『紅霧異変』の時と同じで実に脳筋だが、今も尚春(・)を(・)吸(・)収(・)し(・)続(・)け(・)て(・)い(・)る(・)以上はそうするしかない。

 

 

「じゃ、さっさと――」

「ん?――こりゃ珍しいヤツが来たな」

 

 

 霊夢が何かを見つけて急に言葉を止める。霊夢の視線の先を見ると―――見覚えのあるメ(・)イ(・)ド(・)姿(・)の(・)人(・)影(・)が、此方に向かって来ているのが見えた。

 

 

「――こんにちは、二人共。上と下じゃ温度差があり過ぎて風邪をひきそうだわ。...で、二人が合流しているってことはこの暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)の流れる先に行けば異(・)変(・)解(・)決(・)に繋がるって訳ね」

「確かにその通りだが...まさかお前が異(・)変(・)解(・)決(・)に出て来るとはな」

「文から影政が動いているってのは聞いたけど...アンタが出て来るなんてね」

 

 

 『紅魔館』のメイド長がこんな所まで来ている事に、霊夢と揃って珍しいと感じて言葉を零す。

 

―――『紅霧異変』から数ヶ月。『紅魔館』(目に悪い真っ赤な館)の連中も幻想郷に馴染んで来たが、咲夜は人(・)間(・)ら(・)し(・)か(・)ら(・)ぬ(・)行(・)動(・)が多いと私は感じている。レミリア(仕えている主)第一なのか、そもそもの性格なのかは分からないが...人間との接し方がおかしい、というよりは人(・)間(・)を(・)人(・)間(・)と(・)し(・)て(・)見(・)て(・)い(・)な(・)い(・)ように思う。『人里』で食料や日用品の買い出しに来ているのを偶に見かけるが―――

 

 

「異(・)変(・)解(・)決(・)に出る連中に思わぬ新顔。こりゃ明日は雪じゃなくてナ(・)イ(・)フ(・)が(・)降(・)る(・)んじゃないか?」

「――今、降(・)ら(・)せ(・)て(・)も(・)良くってよ?」

「...アンタなら冗談抜きでやりかねない、って思ってしまうわね。妖怪(人間じゃない連中)に囲まれてメイドやってるせいかしら?」

 

 

―――こんなやり取りのように、咲夜は人間(同胞)にすらナイフみたいに冷たく淡白だ。霊夢の言う通り、妖怪(人じゃない連中)に囲まれているせいで妖怪みたいな思考に染まっているのかもしれない。

 

 

「確かめてみなさい、って言いたいけど...お嬢様の命令もあるし、今は状況が状況だもの。今回は異(・)変(・)解(・)決(・)の勉強がてら、普通に共闘させてもらうわ」

「賢明な判断ね。異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)に近付きつつあるってのに、無駄な消耗はしたくないし。ま、一緒に来るなら"博麗の巫女"のやり方を見せてあげるわ」

「咲夜は能(・)力(・)が強力だが、異(・)変(・)解(・)決(・)は今回が初めてになるよな。...今回も単独解(・)決(・)は無理そうだし、共闘するってなら足手まといになってくれるなよ?」

 

 

 咲夜の共闘しようという言葉に霊夢と揃って二つ返事で頷く。

 

―――『紅魔館』の地下図書館に本(・)を(・)借(・)り(・)に(・)突っ込むと、偶に立ち塞がってくるからその度に『弾幕ごっこ』を戦ったが、時(・)間(・)を(・)操(・)る(・)能(・)力(・)は反則級に強い。『弾幕ごっこ』のルールによる制約が無かったら一方的に殺(・)ら(・)れ(・)て(・)いただろう。

 だが、今回は異(・)変(・)解(・)決(・)を目指す仲間だ。単独解(・)決(・)は最早無理だが、せめて美味しい所は持っていきたい。その為にも、咲夜の能(・)力(・)と実力に期待しておこう。

 

 

「二人共、今回はよろしくね。...で、このまま西(・)へ(・)向(・)か(・)う(・)ってことでいいのかしら?」

「そうするしか無いわね。この暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)もだんだん暖(・)か(・)さ(・)が(・)増(・)し(・)て(・)る(・)気がするし、このまま行きましょうか」

「だな。二人なら大丈夫だろうが、この暖かさを求めて妖精共がそこそこ昇って来てるみたいだ。一応気を付けてな」

 

 

 咲夜の言葉に頷き、三人揃って西へと飛び立つ。―――この先に、一体何があるんだろうか。

 

 


 

 

~幻想郷西方 幽明結界付近~

 

side-霊夢

 

「――こりゃ結界、か?」

「...霊夢、どう思う?」

「結界の類なのは間違い無いけど――現世(この世)と幽世(あの世)を隔てる『幽明結界』に、こんなものを創るなんてね」

 

 

 時々襲ってくる妖精達を落としながら西へ飛び続けて暫く経った。私達は、『幽明結界』が在る位置に浮かぶ―――桜(・)色(・)の(・)巨(・)大(・)な(・)魔(・)法(・)陣(・)を見付けて足を止めていた。春(・)が(・)結(・)晶(・)化(・)し(・)た(・)花(・)び(・)ら(・)と暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)はこの結界に向かって流れ、結界の先へと入っていくのが見える。

 

 

「『幽明結界』...どんな結界なんだ?」

「分かりやすく言えば...この世とあの世を隔てると同時に、霊(・)魂(・)の(・)み(・)を(・)あ(・)の(・)世(・)側(・)に(・)送(・)る(・)結界よ。私達みたいな生きてる存在は『幽明結界』を越(・)え(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)不(・)可(・)能(・)。幻想郷(ここ)での生死の輪廻を維持する大事な結界よ」

 

 

 修行の一環で紫から教わった『幽明結界』についての説明を二人にする。前述の通り、幻想郷における生死の輪廻を維持する重要な結界なのだけど―――

 

 

「...そんな大事な結界なら――この春(・)を(・)吸(・)収(・)し(・)て(・)い(・)る(・)結(・)界(・)は、在(・)っ(・)て(・)は(・)い(・)け(・)い(・)な(・)異(・)物(・)じゃないの?」

「――その通りよ。既存の結界の中に、目的がまるで違う別の結界を創ると――普通は結(・)界(・)の(・)意(・)義(・)が(・)曖(・)昧(・)化(・)するの。要は越えられない壁に穴(・)を(・)空(・)け(・)る(・)ようなものよ」

 

 

 咲夜の言葉に頷く。結界とは、目には見えずとも概念やものを隔てる力を持つ壁のようなものだ。高度なものだと目の前の『幽明結界』のような、指(・)定(・)し(・)た(・)も(・)の(・)だ(・)け(・)を(・)通(・)す(・)ふるいみたいな機能を加えたものもある。

 

―――でも、目の前の結界は私の目から見ても『幽明結界』の意義を曖(・)昧(・)化(・)さ(・)せ(・)か(・)ね(・)な(・)い(・)異物だった。

 

 

「『幽明結界』の先に在る『冥界』を管理してる大(・)食(・)い(・)亡(・)霊(・)とその従者の堅(・)物(・)な(・)半(・)人(・)半(・)霊(・)が『人里』に出入りしているみたいに、例(・)外(・)はあるけど――基本的に生(・)者(・)が(・)幽(・)世(・)に(・)入(・)る(・)事(・)と幽(・)世(・)の(・)霊(・)魂(・)が(・)現(・)世(・)に(・)勝(・)手(・)に(・)戻(・)る(・)事(・)は許(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)。この結界が存在し続ければ――言わずとも分かるわね?」

「...未練タラタラで戻ってきた霊魂がこの世で何かしでかしたり、実際に居るのかは知らんが物好きな生者があの世に入り込んだりしかねない、ってことか」

 

 

 魔理沙の答えに頷きながら、脳裏に『冥界』在住の二人の姿を思い起こす。

 

―――今思えば、冬が例(・)年(・)以(・)上(・)に(・)長(・)引(・)い(・)て(・)い(・)る(・)と気付いた時から、あの二人を現世(こちら側)で見ていない気がする。主がとんでもない大食いだから、毎日『人里』に食料の買い出しに来ているあの半霊従者すらパッタリと見かけていない。―――私の勘(・)が、あの二人に会うべきだと囁いている。

 

 

「――でも、この暖(・)か(・)い(・)空(・)気(・)と春(・)を(・)詰(・)め(・)込(・)ん(・)だ(・)花(・)び(・)ら(・)は結(・)界(・)の(・)先(・)――幽世に向かって流れている。異(・)変(・)解(・)決(・)の為には、霊夢が言う許(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)をやる必要があるわね」

「...今回は例外よ。"博麗の巫女"として許すわ。"異(・)変(・)解(・)決(・)の為にやりました"、って言えば紫(冬眠中のアイツ)も許してくれるでしょうし。――一応聞くけど、生(・)き(・)た(・)ま(・)ま(・)あ(・)の(・)世(・)入(・)り(・)す(・)る(・)覚悟はあるわね?」

 

 

 咲夜の言葉の意味を察し、"博麗の巫女"として許して改めてこ(・)れ(・)か(・)ら(・)や(・)る(・)こ(・)と(・)への覚悟を二人に問う。

 

 

「――勿論、覚悟は既にできてるぜ。何ならあの世(死後の世界)を死ぬ前に見られるんだから楽しみな位だ」

「――"多くの人間があの世の存在を信じるのは、あ(・)の(・)世(・)に(・)対(・)し(・)て(・)全(・)く(・)の(・)無(・)知(・)だ(・)か(・)ら(・)"。いつだったかパチュリー様はそう仰っていたけど、無(・)知(・)の(・)も(・)の(・)を(・)知(・)ろ(・)う(・)と(・)す(・)る(・)のもまた人間よね。覚悟はできてるわ」

 

 

 予想通り、二人が怖気付く訳が無かった。片や妖怪を普通に相手取れる人(・)間(・)の(・)魔法使い。片や妖怪に囲まれていながら普通に生きている人(・)間(・)の(・)メイド。生(・)き(・)た(・)ま(・)ま(・)あ(・)の(・)世(・)入(・)り(・)する程度で折れる精神は持っていない。

 

 

「ならば良し。じゃ、早速――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――覚悟を決めてる所悪いけれど、それを許す訳にはいかないの」

 

フッ...

 

 

「っ!」

「お?『騒霊楽団』の連中じゃないか」

「見たのは"豊穣祭"以来ね。...状況的に、私達を演奏でお出迎えでは無さそうだけど」

 

 

―――突然、何処かで聞いたような聞かなかったような、物(・)静(・)か(・)で(・)憂(・)い(・)を(・)含(・)ん(・)だ(・)よ(・)う(・)な(・)声(・)が聞こえてきて身構える。声が聞こえてすぐ、私達の目の前―――結界の前に立ち塞がるように『騒霊楽団』の四人が実(・)体(・)化(・)して姿を現す。

 

 

「私達に"お花見での演奏"を依(・)頼(・)し(・)て(・)き(・)た(・)人(・)からの追(・)加(・)の(・)お(・)願(・)い(・)でね〜。"『桜花結界』に近付くヤツは追い払え"って言われてるの~」

「大人しくここで退くなら良し。退かないなら...本当に、本っ当に面倒くさいけど、力づくで退かせるから」

「...リリカ、腹を括った方がいいわ。三人共、退くような雰囲気がまるで無いもの」

 

 

 ルナサに続いてメルラン、リリカ、カナが私達と対峙しながら言葉を続け、身構える。

 

―――依頼されれば何処ででも、人妖関係無く演奏し、その音色とパフォーマンスで楽しませている、"騒霊"四人組で構成された演奏隊『騒霊楽団』。その四人が演(・)奏(・)と(・)無(・)関(・)係(・)な(・)依(・)頼(・)を引き受けるなんて、どんな取引をしたのやら。それは兎も角として―――

 

 

「――カナ(そこの歌担当の騒霊)は分かってるみたいね。異(・)変(・)解(・)決(・)は"博麗の巫女"の仕事の一つ。目の前に明らか異(・)変(・)に関わるものがあるってのに、退ける訳無いじゃない」

「霊夢の言う通りだぜ。私は異(・)変(・)解(・)決(・)に近付けるチャンスを捨てる程の馬鹿じゃない」

「異(・)変(・)解(・)決(・)はお嬢様からの命令でもあるの。――邪魔をするのなら排除するまでよ」

 

 

 三人揃って退く事を拒否し―――陰陽玉、星を飾った蒼紫色の玉、ミニ八卦炉。各々の得物を展開する。

 

 

「...私は外じゃ無力だし、先に戻るわ。――三人共、頑張って。レイラと一緒に待っているから」

「...ありがとう、カナ。――メルラン、リリカ。行くわよ」

「身内以外との『弾幕ごっこ』は多分初めてよね~。――さぁ、楽しみましょう!!」

「あーもう面倒くさい!こうなったらやるだけやってやる!」

 

 

《騒符「ライブポルターガイスト」》

 

 

 カナ(歌担当の騒霊)が結(・)界(・)の(・)先(・)に消えていき、留まった騒霊三姉妹がいきなりス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。三人がそれぞれ楽器を奏でると赤い音符弾が螺旋状に浮かび、炸裂して赤い丸弾をばら撒く。更にメルランが青い音符弾、リリカが緑色の音符弾を円形にばら撒いてそれぞれの色の鱗弾に変化して自機狙いで(私達を狙って)飛んでくる。

 

 

「うおっと?!いきなりス(・)ペ(・)ル(・)か!」

「鱗弾の追尾が厄介ね。避ける方向を間違えたら丸弾と挟まれる、わねっ!」

「二人共散開よ!...三人居るせいか鱗弾の追尾がそれぞれに分散してるから良かったわ。一対三だったらもっと厄介だったかも」

 

 

 『弾幕ごっこ』で対戦人数の規定はしていない。ある意味騒霊三姉妹らしい賑やかな演奏のようなス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)弾幕だけど、一人でこれを相手取るのは御免被りたい。

 二人に散開して相手をするように声をあげ、弾幕に挟まれないように躱していきながらルナサを狙って"ホーミングアミュレット"を撃つ。

 

 

「っく...!『弾幕ごっこ』の発案者相手じゃ、三人合わせたス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)でも倒せないようね...」

「仮に一人でアンタ達三人を相手取ることになってたら、面倒だったと思うけど、ねッ!」

 

「あらあら~、ナイフで弾幕を作るなんて物騒ね~」

「ナイフは私のメイン武器だもの。――霊体が相手でも刺さるようになってるから安心なさい」

 

「単体相手なら数の暴力でワンチャン勝てたのに...!」

「私も単身異(・)変(・)解(・)決(・)を狙っていたが、もう無理だからな。目論見が外れたのはお互い様だッ!」

 

 

 弾幕を躱し、アミュレットを撃つ合間に二人の様子を見やれば、咲夜はメルランを、魔理沙はリリカをそれぞれ相手取っている。このままス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切り抜けて、一対一で戦えるように分断すれば負担は減る筈。

 

 

「っ...?!」

「きゃっ?!」

「うわっ?!」

 

「怯んだ...!これで吹っ飛びなさいッ!!」

 

 

霊符「夢想封印・散」

 

 

 少しして三人にダメージが溜まって怯む。すかさず私はス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。追撃ではなく分断を狙う為に散の型で三人目掛けて三色の霊撃弾をばら撒く。

 

 

ドドドドドド...!

 

 

「くぅっ...!」

「あ~れ~」

「ぎゃーっ?!」

 

「魔理沙、咲夜!このまま一対一に持ち込んで!」

「いきなりス(・)ペ(・)ル(・)を切ってどうしたと思ったが、こういうことか。あぁ、分かったぜ!」

「同数で乱戦は思わぬ損害を被りそうだし、最善の判断ね。――了解よ」

 

 

 霊撃弾で三姉妹がバラバラの方向に吹っ飛んだのを見届け、二人に指示を飛ばしてルナサの方へ飛んでいく。咲夜がメルラン、魔理沙がリリカの方へそれぞれ飛んでいくのを視界の端で確認しながら、"ホーミングアミュレット"をルナサに撃ち込む。

 

 

「っ?!...成程、姉妹で連携はさせないつもりね」

 

 

 体勢を立て直した所に撃ち込まれてルナサは怯むものの、すぐ持ち直して手(・)を(・)使(・)わ(・)ず(・)ヴァイオリンを奏で始める。青い丸弾がばら撒かれ、私に向かって飛んでくる。

 

 

「アンタ達の土俵には易々と乗るつもりはないわ。このまま各個撃破で終わらせる!」

 

 

 丸弾を躱しながら"ホーミングアミュレット"を撃つ。ルナサは避けようとするも、アミュレットの誘導性能からは逃げ切れず次々被弾する。

 

 

「くっ?!...厄介な誘導弾ね。――偽りの音色に魅せられなさい」

 

 

偽弦「スードストラディヴァリウス」

 

 

 被弾を重ねて怯んだルナサはス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。ヴァイオリンの音色が赤い音符弾に変化して配置され、それらが赤い丸弾に変化して私を狙って飛んでくる。

 

 

「っと、誘導を間違えると追い込まれるわね。音符弾はブラフみたいだけど――」

「――この子の音色はこれだけじゃないわ」

「っく...!そんな単純なものじゃないって訳ね...!」

 

 

 今度は青い音符弾が配置され、青い丸弾に変化して高(・)速(・)で私を狙って飛んでくる。辛うじて弾幕の隙間を通り抜け、追い込まれて被弾するのを避ける。

 

 

「パターンが分かれば、後は...!」

 

 

 ルナサは再び赤い音符弾を展開し、赤い丸弾が飛んでくる。どうやら赤と青のパターンを交互に繰り返すス(・)ペ(・)ル(・)のようだ。

 左右どちらか一方向の回避で追い込まれて挟まれないように、弾幕の隙間を見付けて逆方向に抜けながら"博麗アミュレット"に切り替えて撃ち込む。

 

 

「くっ?!...この程度じゃ勝てない、か」

「だったら諦めて退いて欲しいわね。邪魔する奴は全部吹っ飛ばすけど、基本的には負けを認めて退く相手を甚振る程鬼じゃないわ」

「...妹二人がまだ戦っている。だったら姉として――退く訳にはいかないわ」

 

 

 被弾を重ねて怯んだルナサに撤退を促すも、キッと挑むような眼差しで私を見つめながら青い丸弾をばら撒いて来る。

 

 

「――そう。じゃあ、遠慮無くぶっ飛ばすわよ!」

 

 

 ルナサの答えに一息つき、弾幕を躱してアミュレットを撃ち出した。最初のス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)のように、連携されると厄介だ。このまま一対一で倒せれば―――

 

 


 

side-咲夜

 

 

「きゃっ?!...アハハ、やるじゃな〜い!人間なのにこんなに強いなんて、是非お友達になりたいわ〜」

 

 

 ナイフが次々メルランの服を斬り、破れや切り傷を作って怯ませる。けど、彼女は何ともなさそうに明るい―――けどど(・)こ(・)か(・)異(・)常(・)さ(・)を(・)感(・)じ(・)る(・)笑顔で感心する。

 

 

「...笑ってばかりなのが何となく不気味ね。前向きなのはいいことだけど、貴女のそれは異常よ」

 

 

―――霊夢がス(・)ペ(・)ル(・)で三姉妹を分断し、私は距離が比較的近かったメルランを相手取っていた。

 最初は彼女の明るい笑顔と、こちらまで楽(・)し(・)く(・)な(・)り(・)そ(・)う(・)な(・)トランペットの音色で妹様に似ていると感じていたけど、私が放つナイフから逃げ惑ってキャーキャー声を上げたり、今のように被弾をして怯んでも笑(・)顔(・)を(・)絶(・)や(・)さ(・)な(・)い(・)様に不気味さを感じ始めている。

 

―――まるで、笑(・)顔(・)と(・)楽(・)し(・)い(・)感(・)情(・)し(・)か(・)知(・)ら(・)な(・)い(・)ような感じだ。

 

 

「私、そんなに変かしら〜?今とっても楽しいし、楽しければ笑うものじゃな〜い?」

「今、貴女は少し不利な状況よ。私は見ての通り被弾ゼロ。貴女はさっきのナイフで服は破れと切り傷だらけ。普通なら悔しがったり、負け惜しみでムキになったりする所よ」

「...そういうのはよく分からないわ〜。私は自分の感情に素直なだけだもの。――さぁ、お話ばかりしないでもっと楽しみましょ!」

 

 

冥管「ゴーストクリフォード」

 

 

 メルランはより明るい笑顔で声を上げ、ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。トランペットから五本のレーザーが放たれ、レーザーらしからぬ曲がり方で軌道を変え、その軌跡から赤い楔弾が私を狙って飛んでくる。楔弾の回避に集中していると、変則的な軌道を取るレーザーに被弾しかねない弾幕だ。

 

 

「...こちらとしては楽しんでいる時間は無いのだけど、ねッ!」

 

 

 楔弾を躱し、砲台からナイフを撃ち出す。

 

 

「っとと...!つれないわね~。さぁさぁ、まだまだよ~!」

 

 

 楽し気な笑顔のままだけど、流石に被弾を重ねると負けるのは解っているようで、ナイフを躱して再びトランペットを吹いてレーザーを放つ。さっきとは違う軌道を取り、それに合わせて飛んでくる楔弾の軌道も変わっている。

 

 

「一定じゃないレーザーの軌道がなんだかメルランらしいわね。彼女自身も動き回ってるし、忙しないわね...!」

 

 

 楔弾とレーザーを躱し、飛行速度を上げてナイフを広範囲にばら撒く。メルラン(的)が動き回るなら、広くばら撒いて捉える方がいいだろう。

 

 

「おっとと...これは流石に避け切rきゃんっ?!」

 

 

 メルランはナイフを躱そうとするも、広範囲にばら撒かれたナイフの雨からは逃げられず被弾を重ねて怯む。

 

 

「イタタ...困ったわね~。やっぱり姉さんとリリカと合わせないとダメかしら~」

「そんなことさせると思って?――このまま私にやられてもらうわよ」

 

 

 メルランの言葉にそう返し、砲台から再びナイフを撃ち出す。"豊穣祭"でのコンサートを見た時も思ったけど、メルラン達三姉妹は姉妹で連携してこそ本領を発揮するようだ。このまま一対一を維持して倒したい所だけど―――

 

 


 

side-魔理沙

 

 

「危なっ?!...本っ当面倒くさいなぁ!なんで私がこんな負担を...!」

 

 

 "ストリームレーザー"がリリカを掠めて一瞬怯む。持ち直したリリカはうんざりした愚痴のような言葉を漏らす。

 

―――霊夢が三姉妹を分断して、私はリリカの相手をしているが、どうにも戦意が乏しい気がする。さっきから愚痴みたいな言葉ばかり漏らしているし、私に向けて撃つ弾幕もイマイチだ。戦闘でやる気を感じないのは普(・)段(・)の(・)アリスに似ている。何かしら理由があって本(・)気(・)を(・)出(・)し(・)た(・)く(・)な(・)い(・)んだろうか。...アリスに似ているなら、退く事を促せば聞いてくれかもしれない。

 

 

「面倒なら退いてくれるとありがたいな。こっちもお前達に構ってる時間は無いんだ、さっさとその結(・)界(・)の(・)先(・)に行かせてくれよ」

「...できることならそうさせてあげたいよ。私も面倒事が無くなるし、魔理沙も異(・)変(・)解(・)決(・)に向かえる。お互い利益はあるね。でも――」

 

 

 私の言葉にリリカはそう答えて目を伏せ―――

 

 

「――"引(・)き(・)受(・)け(・)た(・)依(・)頼(・)は(・)全(・)う(・)す(・)る(・)"。それが私達"騒霊楽団"の矜持なんだ。――例え、今みたいな演(・)奏(・)と(・)無(・)関(・)係(・)な(・)も(・)の(・)であろうとね!」

 

 

鍵霊「ベーゼンドルファー神奏」

 

 

 リリカはそう吠えてス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。赤と黄色の楔弾がリリカを囲うように展開され、それぞれ逆の回転方向で曲がると赤い楔弾は縦寄りの斜め、黄色の楔弾は横寄りの斜めの壁のように飛んでくる。

 

 

「うぉっと!...仕事人らしい矜持だな。この場合は面倒だが――」

 

 

―――弾列の隙間を抜けた瞬間、立て続けに青と黄色の楔弾が同様のパターンで展開される。

 

 

「危なっ?!二波目があったか...!」

 

 

 辛うじて被弾は避けて弾列を抜けると、一波目の赤と黄色の組み合わせのパターンが展開される。距離が離れていれば隙間も多いが、近いと弾幕の密度が濃くなって避けにくい構成だ。

 

 

「射線さえ合えばダメージは与えられるが、あの弾列は避ける方向を間違えると射線が合わなくなるな...よし、さっさと終わらせる為にも使うか!――食らえ!」

 

 

《恋符「ノンディクショナルレーザー」》

 

 

 時短の為にも弾幕ごと掻き消してダメージを与えるべくス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。五色のレーザーが回転して楔弾を薙ぎ払うように打ち消し、星弾がリリカに飛んでいく。

 

 

「なっ、ちょ、避けrぎゃーっ?!」

 

 

 弾幕の壁を失って無防備なリリカに星弾が次々当たる。レーザーを撃ち止め、星弾も尽きると被弾痕で服がボロボロになったリリカが顕になる。

 

 

「...はぁぁ...何だってルナサ姉さんはこんな依頼引き受けたのか...あ(・)の(・)人(・)が言う桜(・)が(・)満(・)開(・)に(・)な(・)る(・)時(・)を大人しく待ってたら良かったのに」

「...どう言うことだ?」

 

 

 心底面倒臭そうなため息を吐いたリリカの言葉が気になって尋ねる。

 三姉妹に結界の護りを任せたあ(・)の(・)人(・)なる依頼主は桜(・)を(・)咲(・)か(・)せ(・)た(・)い(・)ようだが...結界の特性や異(・)変(・)の状況的に、幻(・)想(・)郷(・)中(・)の(・)春(・)を集めてまで咲(・)か(・)せ(・)た(・)い(・)桜(・)とは何なんだろうか。

 

 

「...おっと、危うく口を滑らせる所だった。ごめんね、私達の依頼主については他人には話せないんだ」

「ほぅ、そうかそうか。――今お前を吹っ飛ばして、無理矢理口を割らせてもいいんだぜ?」

 

 

 そう言ってミニ八卦炉を構え、軽く魔力をチャージして敢えて白い光を見せ付ける。

 

 

「...そんな脅しには屈しないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――私達の演奏(セッション)は、まだ終わりじゃない!」

 

 

「アンコール・ゴーストセッション」

 

 

...フッ...

 

 

「――予告無しは心臓に悪いわ。でも、いい判断よ」

「――ソロだと正直厳しかったわ~。ナイスタイミングよ~リリカ!」

 

「――マジかよ」

 

 

―――唐突にリリカがス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切ると、分断した筈の二人がリリカの左右に瞬(・)時(・)に(・)転(・)移(・)し(・)て(・)き(・)た(・)。

 

 


 

side-霊夢

 

「――とんだ奥の手だわ。分断を一瞬で立て直すなんて」

「分断されることを想定して対策を仕込んでいたようね。やられたわ」

「多分、隙を見せた私が悪いな。リリカのやる気が無さそうだったから、ワンチャン説得して退かせられないかと思ったんだが...」

 

 

 突然の転(・)移(・)で魔理沙の下に合流したルナサを追って、同じようにメルランを追って来たらしい咲夜と共に魔理沙の左右に合流する。

 

 

「ふふん、驚いてるね。...いつかのルーンのアドバイスが無かったら、あのまま各個撃破でやられてたね。本当に分断してくる相手が居るなんて思わなかったよ」

「...ルーンか。確か楽団の常連ゲストだし、仲も良かったな。今は余計なことしてくれやがってと思うが」

 

 

 リリカの言葉に魔理沙が何とも言えない表情で言ちる。どうやらルーンの入れ知恵で生まれたス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)のようだ。分断しても即座に立て直す手段があると、敵としては厄介だ。

 

 

「...そして、このス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)は何(・)度(・)で(・)も(・)、楽(・)団(・)メ(・)ン(・)バ(・)ー(・)な(・)ら(・)誰(・)で(・)も(・)使(・)え(・)る(・)わ」

「つまり、もう私達に分断は通用しないってことよ~」

「それは厄介ね。...でも、さっき分断されてすぐに使わなかったのは、何か制約がありそうね。ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切るから、そうする為の隙が無いと発動できないとか」

「...さぁ、どうだろうね」

 

 

 続くルナサとメルランの解説に対する咲夜の言葉に、リリカが僅(・)か(・)に(・)目(・)を(・)反(・)ら(・)し(・)な(・)が(・)ら(・)はぐらかす。...どうやら図星のようね。一応弱点はあるようだ。――こうして三姉妹が集合した今では、そもそも分断を再度狙うのは難しいだろうけど。

 

 

「...兎も角、こうして姉妹三人集まることができた。――改めて、私達の演奏(セッション)で貴女達を倒す」

「ソロの時間は終わり!さぁ、アンコールタイムよ~!」

「一人じゃ厳しくても、三人合わせれば大きな力になる。さぁ、改めてトリオの始まりだ!」

 

 

騒葬「スティジャンリバーサイド」

 

 

 三姉妹がス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。ルナサがヴァイオリンを弾くと、黄色い米粒弾が渦巻状に展開される。

 

 

「さぁ、リリカ!やるわよ~!」

「はいはいっと!」

 

 

 メルランとリリカが短く太い青いレーザーを展開し、剣を振るように回転させると―――米粒弾の軌(・)道(・)が(・)歪(・)む(・)。

 

 

「っと...!軌道が歪んで隙間もバラバラだな」

「――二波目が来るわ」

 

 

 米粒弾に続いて黄緑色の針弾が展開され、また二人がレーザーを振り薙ぐと軌道が変わる。そこから水色、青、紫と針弾が展開され、二人は振り薙ぐだけでなく、槍の突撃のように突っ込んで広い範囲の弾の軌道を歪める。

 

 

「っく...!密度も濃いけど、軌道の歪み方がバラバラで避けにくいわね」

「慌てず避けて、ルナサに集中砲火を与えるのが得策かしら。動き回る二人のレーザーと弾の軌道変化に注意しつつ、狙っていきましょう」

「あぁ、そうするか!こう回避を強要されると、射線が合わせにくくてもどかしいが...!」

 

 

 咲夜の献策に賛成し、散開してバラバラの軌道に変化して飛び交う針弾や米粒弾を避けながら"博麗アミュレット"を撃ち出す。咲夜と魔理沙も弾幕を避けつつ、それぞれナイフ、レーザーをルナサに集中して浴びせていく。

 

 

「っと...ねぇ、魔理沙。射線合わせに苦労するなら、誘導性能を持った弾幕を作ったら?」

「よっと...!誘導性能を持たせるとどうしても火(・)力(・)が(・)落(・)ち(・)る(・)んだよ!"弾(・)幕(・)は(・)パ(・)ワ(・)ー(・)"の私にゃ合わない、ぜッ!」

 

 

「ぐぅっ?!...ごめんなさい、やられたわ」

 

 

 弾幕を交わし、アミュレットを撃ちながら魔理沙のぼやきにアドバイスを与えると、それを拒否しながらレーザーでルナサを狙い撃つ。その一撃が決め手になってルナサが怯んで弾幕が治まる。

 

 

「やっぱり強いわね~。『紅霧異変』を解(・)決(・)した二人は勿論、あのメイドも中々強いわ~」

「本当にこの三人、人間なのかな?『弾幕ごっこ』とは言え、ここまで私達が追い込まれるなんて...」

「『弾幕ごっこ』の発起人としては、この程度で屈する訳にはいかないのよ。さぁ、まだ手はあるでしょ?三姉妹の連携で私達を倒してみなさい」

 

 

 メルランとリリカの言葉にそう返し、挑発して次のス(・)ペ(・)ル(・)発動を誘う。

 

 

「...これが最後――私達の本気の演奏(セッション)を見せてあげる」

「あれをやるのね~?――さぁ、最高のフィナーレを飾りましょ!」

「勝てるか分からないけど、やってやる...!――騒霊のトリオ合奏(コンチェルト)で葬られろ!」

 

 

大合葬「霊車コンチェルトグロッソ怪」

 

 

 三姉妹はス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を切る。三角形のように位置取り、それぞれ楽器を奏で始めると、三角形の真ん中から黄色い米粒弾、三発並んだ紫色の針弾が反時計回りで展開される。

 

 

「早速来たわね...!」

「お?最後にしてはそれ程――」

「――メルラン、リリカ」

「は~い!しっかり合わせるわよ~!」

「姉さん達こそ、遅れず合わせてよ!」

 

 

 私達が放たれた弾幕を避け始めてすぐ―――三人から赤、青、緑のレーザーが展開されて三角形を形る。更に角度が付いた二本目のレーザーも展開されて回り出す。

 米粒弾と針弾がレーザーに触れると―――赤、青、黄色の針弾に変化してバラバラな軌道に変化して飛んでくる。

 

 

「レーザーで軌道が変わるパターンはさっきのと同じだけど...あの三角形のレーザーが厄介ね。特に角度が付いた二本目で全体の範囲が広がっていて、移動が制限されるわ」

「それだけじゃないぞ。あの二本目のレーザーのせいで大分軌道変化がバラバラだ。見た目はプリズムの反射光みたいで綺麗だが、かなり避けにくいぜ...!」

 

 

 二人の言う通り、三姉妹が展開する三角形のレーザーとそれに触れて軌道が変わる針弾が厄介なス(・)ペ(・)ル(・)だ。レーザーに触れないように距離を取り、飛び交う針弾を躱しながらアミュレットを撃つ。

 

 

「くっ...まだ、まだよ...!」

「ちょっと厳しいかしら~?――でも、まだまだやれるわよ~!」

「イタタ...!でも、まだ行ける...!」

 

 

 魔理沙のレーザー、咲夜のナイフも三姉妹に当たって少し怯むものの、負けじと更に弾幕を展開してくる。

 

 

「激しくなってきたわね...魔理沙、咲夜!一気に決めるわよ!」

「あぁ、分かった!」

「――了解よ」

 

 

 トドメを刺すべく、二人に向かって声を張り上げながらカ(・)ー(・)ド(・)を構える。察した二人は弾幕を躱しながら答え、それぞれミニ八卦炉を展開しチャージを始め、周りに沢山のナイフを展開し始める。

 

 

「――これで、終わりよ!」

「――纏めて吹き飛べ!」

「――チェックメイトよ」

 

 

霊符「夢想封印・集」

恋符「マスタースパーク」

幻符 「殺人ドール」

 

 

 ス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)を三人同時に切り、三色の霊撃弾、極太レーザーと星弾、無数のナイフが三姉妹に飛んでいき―――

 

 

 


 

~冥界 『桜花結界』付近~

 

side-咲夜

 

「...あぁ、やっぱり居たわ。吹っ飛んで結(・)界(・)を(・)突(・)き(・)抜(・)け(・)た(・)ようね」

「かなりボロボロだな...流石にス(・)ペ(・)ル(・)カ(・)ー(・)ド(・)三枚分の火力は過剰だったか?」

「勝てたならいいじゃない。"勝てば官軍負ければ賊軍"、敗者がどうなろうと知ったことじゃないわ。幽霊の類なんだから、その内目覚めるでしょ」

 

 

 春(・)を(・)吸(・)収(・)す(・)る(・)結(・)界(・)を抜けた先で、下着までボロボロになって倒れ伏す三姉妹を見つける。それを見て魔理沙は申し訳なさそうな表情を浮かべるけど、霊夢はそう言って三姉妹の傍を通り抜けて歩き出す。

 

 

「...まぁ、異(・)変(・)解(・)決(・)中だしな。...しかし、これが『冥界』か。そんなに隔絶された世界って感じがしないな。...明らか霊魂っぽいのがあちこち飛んでるから間違いなく幽世(あの世)なんだろうが」

「...本でしか見たことなかったけど、これが春(・)というものなのね」

 

 

 霊夢に続いて歩き出し、白い綿のような霊魂があちこち漂う石畳の道の左右に並ぶ満(・)開(・)の(・)桜(・)を見回しながら思わず呟く。死後の世界ならば殺風景なものだろうと思っていたけど、こんな眺めがあるなら死後はつまらないものでは無さそうだ。―――寿命か運命で死ぬまでお嬢様にお仕えすると決めているから、今死ぬ気はさらさら無いけど。

 

 

「...あぁ、咲夜達が来たのは去年の夏の終わり頃だったわね。なら春がどんなものか分からないのも当然か」

「春と言ったら"花見"、こんな満開の桜を眺めながらの宴会だが...幽世(あの世)の連中が独り占めしてる状況を解(・)決(・)しないとできないからなぁ。さっさと異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)を倒して解(・)決(・)と行こうぜ」

「そうね。この眺めをお嬢様達にも見せてあげたいし、異(・)変(・)解(・)決(・)して春を取り戻さないとね」

 

 

 魔理沙の言葉に頷き、敵が来ないか警戒しつつ歩いて行く。今の所は辺りを漂う霊魂以外は居ないようだけど、異(・)変(・)の(・)元(・)凶(・)は何を仕掛けてくるか―――

 

 

 


 

~白玉楼 門前階段~

 

side-妹紅

 

 

「...どうして...どうして妹紅さんが?!」

 

 

 影政がリリー(春告精)と共に『白玉楼』へ向かったのを見送り、信じられないと言いたげな驚いた表情の妖夢に視線を戻す。

 

 

「...建前としては、『人里』の備蓄が厳しいからその解(・)決(・)の為に来た。本音としては――影政から、友(・)人(・)か(・)ら(・)頼(・)ま(・)れ(・)た(・)からね。"力を貸してくれ"、ってさ。――なら、それに応えるのが友人ってものだろ?」

 

 

 妖夢にそう答え、戦闘態勢を取る。

 

 

―――影政から聞いた、冥(・)界(・)の(・)管(・)理(・)者(・)とこの異(・)変(・)に関わる過(・)去(・)。それを知(・)っ(・)た(・)者としては、影政を彼(・)女(・)の下に行かせてやらないといけない。妖夢は刀を構えているが、隙あらば影政を追おうとしている。

 

 

「――さぁ、始めようか。師匠を追いたいなら、私を倒してからだ」

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

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