東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~ 作:しがない東方二次創作者
影政が今回使っている『弾幕ごっこ』装備は設定集の影政の項目に追記しています。
~『白玉楼』 大桜の丘~
side-影政
「わぁ...!綺麗な桜ですよー!」
『白玉楼』の敷地内。風流な日本庭園を抜け、丘を囲う桜の木々の間の道を通り抜けた先に聳える『大桜の丘』に着くと、リリーが妖精らしい明るい笑顔で瞳を輝かせる。その視線の先には―――
「...やはり、本当に
思わず呟き、眉間に皺を寄せてしまう。妹紅とリリーに過去と
―――『
「...今更迷っても意味は無い。――幽々子を止めねば、
紫の言葉を思い返し、心中に湧きかけた迷いを振り払う様に頭を振って丘に作られた道を歩き出す。少し歩けば―――
「......」
「――幽々子」
―――桜の花びらを模した
丘の頂上、『西行妖』が根を張る平地に着き、足を止めて呼び掛ける。
「..."桜は八分咲きが最も美しい"。枝や蕾が目立つ三分、五分よりも花に満ち、蕾一つ無い満開よりも想像を掻き立てられる余地がある。
――でも、
「――
―――幽々子はゆっくりと俺とリリーの方へ振り向き、桜より濃いピンク色の双眸で
「...今ならまだ
「あら、断言は良くないわよ?そうね...去年末の"冬眠送り"で
―――一陣の風が吹き、
「――そう、
私が貴方達と親友として過ごしている年月より、貴方達が
「――流石、私の親友ね。確かに
「――リリー、離れていろ」
「...っ...は、はい...!」
―――目を開いて射抜く様な眼差しを、その身に静かな殺気を孕んだ霊力を宿し、手にしていた扇を開くと同時に俺も"相棒"を抜いて神力を纏い、左右に神力を練り上げた紅い光弾の砲台を展開した後、幽々子との『弾幕ごっこ』に巻き込ませない様リリーを離れさせる。
幽々子はふわりと飛翔し、青い丸弾と蝶弾をばら撒く。俺自身も飛び立って初弾を躱し、"相棒"を振るって"
「ホーミング弾...一対一に特化した弾幕という訳ね」
幽々子はふわりと身を翻しながら扇を軽く振って蝶弾を放ち、波形弾にぶつけて相殺して再度弾幕を放つ。"剣神波"の連射性能の低さ故に幽々子の迎撃対応を飽和させて被弾を誘う手は使えない。
「その程度なら余裕で対応するか。ならば...」
速度を絞って中弾と蝶弾が織り成す弾幕を躱しながら砲台を前に出して"
「...成程、そのアミュレットは連射が効くようね」
アミュレットの特性を見抜いた幽々子は右へ左へ身を翻しながら蝶弾を連射して迎撃を図る。蝶弾でアミュレットが次々落とされるが―――
「――そこだ」
「っ...!...あらあら、狙い撃ちされちゃったわね」
―――蝶弾の射撃で動きが鈍り、意識を俺から逸らした所に"剣神波"を撃ち込む。意識外からの攻撃は捌けず幽々子は被弾して怯む。
「流石影政ね。――死して過去を忘れた者達よ、我が掌中で舞いなさい」
幽々子は
「――さぁ、舞いなさい」
「っと...移動範囲を狭めて且つ、楔弾の軌道を変えて来たか...」
―――楔弾を躱していると、幽々子が振る扇に合わせて爪の様に五条の赤く太いレーザーが展開されて時計回りに薙ぎ払われ、楔弾の軌道が外向きに変化する。レーザーは扇形で長く展開されて避ける余地は殆ど無く、此方の移動を制限する為の壁になっている様だ。
レーザーに被弾しない様に楔弾を躱しながら"神籤アミュレット"を撃つ。アミュレットは幽々子の霊力を感知して軌道を変えて飛んで行き―――
「――あら危ない」
「っち...!」
―――目を細めた幽々子は赤のレーザーを撃ち止めて紫色のレーザー五条を展開し、反時計回りに振り薙いでアミュレットを纏めて迎撃しながら楔弾を再び内向きの軌道に変える。
ギリギリでレーザーへの被弾を避け、軌道を変えた楔弾の隙間を抜けて幽々子へアミュレットを再度撃ち出し―――"剣神波"をレーザーで生じているであろう幽々子の死角へ向けて放つ。射線からは少し外れているが、高いホーミング性能なら―――
「またアミュレットね。ホーミングは厄介だけど――」
「――しまっくっ...!」
―――アミュレット迎撃で再度レーザーを展開しようと紫のレーザーを撃ち止めた瞬間を突いて、霊力を感じ取って軌道を変えた"剣神波"が幽々子に次々当たって怯ませる。先程と同じ様に意識外を突くやり方だが、今度はアミュレットの迎撃に意識を割かせ、且つレーザーで生じた視界の死角に"剣神波"を撃つ方法が上手く嵌った。
「...また意識外からやられちゃったわね。その装備の連射が効かない欠点を補うやり方、流石影政ね。攻撃手段の特性を理解した戦術を組んで戦う姿勢は妖夢にも見習って欲しいものね。――妖夢と言えば、あの子の腕は成長していたかしら?」
「...妖夢にはすまないと思っているが、今頃は妹紅と戦っている。お前を早く止める為に、
「――成程、ね。道理で私の想定より
幽々子の問いにそう答えると、一瞬驚いた表情を浮かべてすぐに納得した様に瞑目する。幽々子は妖夢と俺をぶつけ、
「...
幽々子はそう言って息を吐き―――
「――でも、私を止められなければ――
―――目を開き、両腕を広げて
「...っと...幽々子も本腰を入れてきたか...!」
一瞬美しさに見惚れてしまうが、迫る蝶弾に気付いて我に返り、蝶弾を躱しながら"神籤アミュレット"を撃つ。距離を取れば蝶弾の密度は薄くなって躱しやすくなる様だ。
幽々子本人、幽々子の背の扇の地紙の色合い、蝶弾の色がよく合っていて幽々子らしい美しさを表現した弾幕だがこの程度の弾幕で―――
「ふふ、風流さに欠けてる所がある貴方でも見惚れるのね。――でも、見惚れたが最期。これで堕ちなさい」
「――っ...?!ここで大玉弾だと...!不味い――」
―――蝶弾に紛れて青い大玉弾が展開される。曲線状で弾数も多く、隙間はあるが位置取りが悪くこのままでは被弾しかねない。隙間を抜けての回避は厳しいと判断して
「森羅結界」
「...あら?」
「...これは、結界か?」
―――突然、俺を中心に広範囲に
「...っ...!」
「――リリー...?!」
―――結界が消えると、俺の傍にリリーが飛んでくる。幽々子を前にしているせいか怯えて身体を時々震わせるが、幽々子を見つめる眼差しには覚悟を感じられた。
「...影政さん、リリーがサポートします!普段だったらこんなことはできませんが...沢山の春が集まっているおかげでリリーでも結界を張れます!
「それは解ったが...何故加わって来た?」
「...本当は、すごく怖いです。でも...奪われた春が集まっている
実際今も春を集めている様で、辺りを舞う
状況が特殊なせいだろうが、春の到来を感じ取り、それを方々に伝えて回る"春告精"にこんな
「...影政は"妖精"とも仲が良かったわね。悪戯を仕掛けるせいで大体の人間からは嫌われていて、人間でも倒しやすいから鬱憤晴らしすら推奨される程の存在なのに、貴方は差別せず、虐める事もせず対等に接している。
私も予想外だけど、
幽々子はリリーにも俺に向けているものと同様の眼差しと霊力を向け、扇を構える。
「...幽々子は見逃すつもりは無さそうだな。リリー、俺もできる限りカバーはするが完璧にできる保証は無い。ある程度の自衛や回避行動はやって貰うぞ」
「はい!――あ、来ます!」
リリーに注意をしてすぐ、幽々子は水色の楔弾を四発直線に並べた弾幕を扇形に放ち始める。
「っと...!」
「っ...!」
分断されないようにリリーにも意識を向けながら楔弾を躱し、"剣神波"を撃つ。リリーは俺の傍にピッタリ付き、桜色の粒弾を二射線で撃つ。誘導性能は無い様だが、俺の装備がホーミング、対単体特化である為、リリーが撃つ弾幕のおかげで戦術の幅が広がる。
「威力は低い様だけどホーミング能力が無いだけでも厄介ね...これならどうかしら?」
―――楔弾を躱しながら弾幕を撃ち込む俺達を目で追いかけている幽々子が扇を軽く仰ぐと、一部の楔弾が軌道を変えて
「...!変則的な狙い方だな。リリー、挟まれないように気を付けろ」
「はい...!っとと...」
真っ直ぐ飛び続ける楔弾と挟まれない様にしつつ、俺達を狙って来る楔弾を躱していく。リリーは回避と
「
幽々子は蝶弾を撃って"剣神波"を迎撃し、捌き切れないものはひらりと身を翻して回避する。普段はとんでもない量の料理や菓子を食べてばかりだが、こうして戦うと普段の姿からは想像出来ない軽やかな身のこなしを見せてくる。今回はその身のこなしが厄介だが、
「っと...これで...!」
連射速度が遅い"剣神波"の迎撃に射し込む様に"神籤アミュレット"を撃ち込む。"剣神波"より速い連射性能のアミュレットが混ざれば流石の幽々子も―――
「っく...!高火力は厄介ね...惑う霊達よ、生者に華を咲かせなさい」
被弾して怯んだ幽々子は
―――
「ひゃっ?!」
リリーが蝶弾に驚いて硬直するが、それが幸いして被弾は避けられ、蝶弾はすぐに消えて霊魂が散っていく。蝶弾の配置は
「...回避阻害を狙った包囲弾幕か。二、三秒程度とは言えここに別の弾幕を重ねられたら――」
―――離れた霊魂が再び俺達を追尾し始めた所に、幽々子から青い丸弾、くの字型に並ぶ小丸弾の弾幕が円形に放たれる。
霊魂の集結と蝶弾の展開タイミングを見るに、追尾は甘く俺達の
「っち...!追尾する霊魂の蝶弾、幽々子が撃つ弾幕。運悪くタイミングが重なれば...リリー、春はどれだけ集まった?」
「わっ...!も、もう少しです!」
「分かった。
リリーに方針を伝え、彼女の背後で集まり出した霊魂から引き離す様に彼女を手で引っ張って蝶弾を避けて勢いそのままに偶然見出せた丸弾と小丸弾の間を抜けて"剣神波"を幽々子目掛けて撃つ。
くの字型に並ぶ小丸弾の展開は丸弾を三波程撃った後の様で、丸弾ばかりで隙間が広い今は高速で飛ぶ方が霊魂の追尾も振り切れる。
「――
「っと...!」
霊魂が俺達の背後で集まったのを、俺の背後の視界を補う様に背中に付いたリリーが伝え、広がる蝶弾から離れて小丸弾が放たれて密度が濃くなったのを見て速度を絞って隙間を抜けつつ"神籤アミュレット"を撃ち込み―――
「――
「――行くぞ」
―――リリーの合図と共に
「森羅結界」
「...なっ――」
「しぃっ...!」
「ぐぅっ?!」
―――蝶弾への被弾と引き換えに
「...っ...近接攻撃...ルールでは使ってはいけないって定められていないものね。『弾幕ごっこ』らしからぬやり方だけど、貴方らしくもあるわね」
体勢を立て直した幽々子は感心した表情を浮かべる。『弾幕ごっこ』は互いの弾幕の美しさを競うのが基本だが、弾幕の構成については特に規定が無い。その為近接攻撃を弾幕の一部と見做せると考えて俺は近接攻撃も交えている。
「『弾幕ごっこ』は歓迎すべきルールだし、できる限りルールに従いたいが...どうしても
「私は別に構わないと思うわ。明確な規定が無い、ということはそれは各人のやりたい様にやっても良いってことでしょうし、
苦笑する俺に幽々子はそう返して微笑み―――
「――こうして戦い、話している間にも、『西行妖』は益々春を吸収している。今は
―――扇を構え、交戦し始めた時よりも強力な霊力を放出する。
背後の『西行妖』を見れば、交戦し始めた時より明らかに枝に咲く花の数が増えているのが見て取れる。
「...確かにそうだな。リリー、
「...それが、あの『西行妖』さんがどんどん吸収し続けているせいなのか、漂っている
「分かった。リリーは援護射撃と回避に集中してくれ」
リリーが張る
幽々子が持つ
「――行くぞ。
自身の神力を更に引き上げ、"剣神波"を放つ。
「っと...さぁ、桜の幽玄な謡いで踊りなさい」
"剣神波"を躱した幽々子は
―――それぞれが十発ずつ直線状に連なって放たれる。隙間はあるが展開されている弾数がかなり多く避けにくい弾幕だ。
「凄まじい数の蝶弾だな。
速度を絞って隙間を抜けながら"神籤アミュレット"を幽々子に撃つ。
「わわ...すごい数の
「発生源、展開の仕方は固定のようだな。弾数は多いがパターンが固定なら――」
「――ふふ、これは避けられるかしら?」
―――幽々子が扇を振ると、青、紫の蝶弾が半円形で展開され、
「わわっ...か、影政さん!
「使えないならそれでも構わない。今は弾幕を避ける事に集中しろ」
「は、はい...!」
「っく...やるわね...!」
幽々子がアミュレットを回避した先に粒弾の射線を置いていたおかげで、粒弾に幽々子が被弾して僅かに怯むが
「二波目だ。厳しいなら攻撃せず回避に集中しても構わないからな」
「は、はい!頑張ります...!」
リリーが頷いたのを確認し、蝶弾の隙間を抜けながら"神籤アミュレット"を撃つ。
「っ...流石に全部は避けられないわね」
弾数が多く更に
「削り切れなかったか...」
俺の装備は対単体特化で高いホーミング性能も有している為幽々子に射線を合わせる必要は無いが、そもそも撃てない状況に追い込まれるとその性能も意味は無い。
リリーも彼女なりに頑張っているが『弾幕ごっこ』はまだ不慣れな様で、
恋符「マスタースパーク」
「――っ?!」
―――突如、俺達の背後から見慣れた真っ白な極太レーザーと星弾が幽々子に飛んで行く。幽々子は素直に驚いた表情を浮かべて咄嗟に回避するが―――
霊符「夢想封印・集」
「ぐぅっ...?!」
―――避けた先を狙った様に、これまた見慣れた霊撃弾が俺達の背後から飛んできて次々幽々子にぶつかる。幽々子はそのまま全弾被弾して吹っ飛ぶと―――
幻符 「殺人ドール」
「なっ...?!」
「よっ、影政!今回も一足先に越されたが、加勢するぜ!」
「...あの大きな桜。あれが
「
―――
だが、今は咲夜が霊夢達と共に来ている理由を尋ねる時間は無い。
「...
「『西行妖』...紫から何時だったか聞いたことはあるけど、
「やることが分かりやすくてありがたいわね。
「見た所影政と
魔理沙が顔を向けた方を見やると、『白玉楼』の方から見慣れた人影が此方に飛んできているのが見える。どうやら妖夢を撃破したタイミングで霊夢達と合流した様だ。
「――悪い、妖夢を
俺の隣に飛んで来た妹紅はそう言って『西行妖』を見上げる。
「...あまり時間は無いな。――行くぞ」
「よし、
「さっさと止めないと不味いって
「――貴女が幻想郷から奪った
「――親友を止めようとしている
「...ふふ、いいでしょう。この
一斉に動き出した俺達に対し、幽々子は
「っおぉ?!いきなり派手だな!」
「...次は蝶?微量だけど霊力を感じるから
大玉弾の隙間を抜けると、幽々子は紫、水色の蝶弾を八の字に展開し、放射状に拡散させる。これまた弾数が多いが拡散が広い為避けやすい。
蝶弾を回避し、各々弾幕を撃ち出し幽々子に集中砲火を加えていく。
「...正に弾幕ね。全ては捌けないけど...さぁ、咲き誇る桜の花よ。舞い散り踊りなさい」
蝶弾を出してアミュレットやナイフを迎撃しながら、幽々子は桜色の粒弾を桜吹雪の様にばら撒き始める。
「っと、今度は粒弾か。桜吹雪みたいだが、これに蝶弾とさっきの開幕大玉弾が加わると厄介だな...!」
「...言ってる傍から大玉弾ね。二波目に入ったみたいだわ」
粒弾の桜吹雪を躱し、弾幕を撃っていると二度目の大玉弾放出が行われる。展開される弾数が多くかなりリソースを割いている筈だが、幽々子は多少被弾しつつも蝶弾を飛ばして迎撃している。『西行妖』の
「粒弾もまだ舞っている。上下から挟む様に展開しているのが厄介だな...それに――」
大玉弾の次に展開され、拡散する蝶弾を躱しながら『西行妖』をチラリと見ると、花が無い枝を探す方が難しい―――
霊夢、妹紅達の増援を得て『弾幕ごっこ』を再開してからそれ程時間は経っていない筈だが...やはり
だが、サッと丘の周りの桜の木々を見渡すと
「...影政さん。『西行妖』さんが...」
「あぁ、見えている。これ以上
―――リリーの言葉と、
「――影政さん!!」
「森羅結界」
―――リリーが展開する
―――俺に張られた
「――え...?」
―――
―――『西行妖』から、今まで感じたことが無い
前作最新話まで到達しました。ここからは連続投稿は無理となります。シナリオやプロットを変えたり加えたりしつつ書いていくので気まぐれ亀更新に戻ります。