東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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幽々子戦の中編、ここからオリジナル展開です。この描写が書きたかったからこういう展開にした所はある。



春雪異変-6-2~秘策~

 

 

ゾワァッ...

 

 

~紅魔館 レミリアの私室~

 

「――ん?」

「――もしかして、お姉様も感じた?」

「えぇ、一瞬だったけど...圧(・)し(・)潰(・)さ(・)れ(・)そ(・)う(・)な(・)妖(・)気(・)だったわね。...気のせい、だといいのだけど...」

 

~牙門邸 居間~

 

「...っ...今のは...?」

「...カニンも感じたのか?一瞬だったが、あんな圧(・)し(・)潰(・)さ(・)れ(・)そ(・)う(・)な(・)妖(・)気(・)は初めて感じたぞ...」

 

~妖怪の山 山中~

 

「――っ?!」

「――椛も感じたか。...一瞬だったが、あんな妖力は初めて感じたな...」

 

~博麗神社 母屋~

 

「――今のは一体...?」

「――文も感じたようだね。一瞬だったが...こりゃ悪(・)い(・)予(・)感(・)が当たったかねぇ」

 

~星見原 ルーンの家~

 

「――ルーン、感じた?」

「――あぁ。一瞬だったけど...この異(・)変(・)、もしかしたら不(・)味(・)い(・)展(・)開(・)になっているかもしれない」

 

~地霊殿 執務室~

 

《...!》

「...お燐、どうしたの?」

《にゃー!》

「"一瞬凄(・)い(・)妖(・)気(・)を感じた"?また勇儀か嶽丸が喧嘩している...のなら一瞬では済まない筈よね。――地上(うえ)で何か起きている...?」

 

~彼岸 河の渡し場~

 

「――何gいッだァ?!」

「おぅ、目ぇ覚ましたか?その反応、手前(てめぇ)も感じたか、"小町"」

「イテテ...お、お頭...何かあったんですかい?」

「さて、な...出処は『白玉楼』の方みてぇだが、嫌な予感がする」

 

~幻想郷上空~

 

「...んがッ?!...気のせいかぁ?一瞬、凄(・)ま(・)じ(・)い(・)妖(・)気(・)を感じたが――ちょっと飲み過ぎたかね?春の盛りだってのに一面雪景色だし...まさか、異(・)変(・)が起きているのか?」

 

 

 


 

~白玉楼 居間~

 

side-妖夢

 

「――ッ?!」

 

 

―――意識が覚醒して跳ね起きると、見慣れた居間が視界一杯に広がる。どうやら妹紅さんとの『弾幕ごっこ』に負けた後に運ばれて寝かされていた様だ。

 

 

「...負けた、か...これじゃ師匠にも、幽々子様にも会わせる顔が――」

 

 

―――『例え敗北しても、己が動ける範囲で主(・)の(・)状(・)況(・)を(・)知(・)り(・)、護(・)る(・)為(・)に(・)行(・)動(・)す(・)る(・)こと。従者であるなら、敗北を悔いるよりまず主(・)を(・)優(・)先(・)しましょう。――尤も、己が怪我を負っていたらそれを治すのが先ですが』

 

―――従者の務めに従事する者として先輩であるカニンさんの言葉が脳裏を過ぎる。

 

 

「――今は負けたことを悔いるより動かないと。...幽々子様は...」

 

 

―――幽々子様が居るであろう『大桜の丘』の方に目を向けると、神力や妖力、魔力、霊力...様々な力の気配を感じ取れる。幽々子様以外に、何者か達(・)が居る様だ。その中には間違い無く―――

 

 

「...怪我は特に無い。服はボロボロだけど、着替える必要も時間も無い。――行こう」

 

 

―――タッ...

 

 自分の状態を確認し、傍に置かれていた『楼観剣』『白楼剣』を肩に背負って居間を飛び立つ。師匠、幽々子様。今すぐそちらに―――

 

 

 

~白玉楼 大桜の丘~

 

―――スタッ

 

「――え...?」

 

 

―――一本たりとも花(・)が(・)咲(・)い(・)て(・)い(・)な(・)い(・)、丘を囲う桜の木々。それを飛び越えて丘の頂の平地に降り立つと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...ギギギ...ギシッ...!

 

―――『西行妖』の根本に広がる紫(・)様(・)が(・)よ(・)く(・)使(・)う(・)術式。そこから展開されている、軋(・)み(・)続(・)け(・)る(・)結(・)界(・)に包まれた満(・)開(・)で妖(・)し(・)く(・)花(・)が(・)光(・)る(・)『西行妖』。その目の前で―――

 

 

「姉さん達ちゃんと霊力注ぎ込んでる?!さっきより結(・)界(・)の(・)軋(・)み(・)がヤバい...!」

「っく...やってる、わよ...!」

「こんなに霊力出すのは初めてよ~!カナは大丈夫~?!」

「大丈夫、ではないわね...このままじゃ皆ジリ貧よ!」

「...あぁ、皆を手伝える程の霊力が無い自分が恨めしい...再(・)封(・)印(・)の成功を祈るしかできないなんて...」

 

 

―――揃って結界に霊力を注ぎ込んでいる、幽々子様が満(・)開(・)の(・)『西行妖』での花見で歌曲を添える為に呼び寄せ、ついでに『桜花結界』の守護を任されていた"騒霊楽団"のメンバー。

 その四人の後ろで祈る様に手を組んで不安そうな表情を浮かべる、騒霊三姉妹を創(・)っ(・)た(・)、死後白(・)と裁かれ『冥界』で過ごしている『レイラ・プリズムリバー』さん。

 

 

 

「おいおい嘘だろ...こんなに人数集まって力を注ぎ込んでも封(・)印(・)できないってのかよ?!」

「っく...不味いわね。これは私達の力が尽きるのが先になるかもしれないわ...」

「影政と霊夢の神力、霊力で充分だろうと思っていたが...『西行妖』は封(・)印(・)に反発する程に妖力を溜め込んでいたのか。抑(・)え(・)込(・)む(・)しかできないなんて、な...!」

「こんなことになるなんて...リリーが不(・)完(・)全(・)で(・)も(・)影(・)政(・)さ(・)ん(・)を(・)守(・)ろ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)せいで...!」

「口を動かす暇があるなら力を注ぎ続ける!この結(・)界(・)が破れたら――私達所か幻(・)想(・)郷(・)が(・)滅(・)び(・)る(・)のよ!あの妖力は解き放っちゃいけない!!」

 

 

―――苦しそうな表情を浮かべ、各々の力を結界に注ぎ込む、『紅霧異変』(前の異変)で異(・)変(・)解(・)決(・)を成した霊夢と魔理沙、『紅霧異変』(前の異変)では敵側だった咲夜、そして私を倒した妹紅さんと、師匠と一緒について行ったリリーホワイト。

 

 

「っく...橙、大丈夫か?!」

「な、何とか...!で、でも藍様!このまま抑(・)え(・)込(・)ん(・)で(・)ばかりじゃ...!」

「分かっている...!まさか『西行妖』が溜め込んだ妖力がこれ程とは、完全に想定外だ...!」

 

 

―――『西行妖』の根本の術式に繋がっている各々の術式を足元に展開し、妖力を注ぎ込む藍さんと彼女の式神である橙。

 

 そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫(・)の(・)備(・)え(・)は発動できたが、『西行妖』の妖力がこれ程とは...!封(・)印(・)されていた中でずっと溜め込み続けていたのか。抑(・)え(・)込(・)み(・)で精一杯とは、な...!」

 

 

―――『西行妖』の目の前に集まる面々の中心に立ち、光を放つ紫(・)色(・)の(・)御(・)札(・)を翳して紅(・)い(・)オ(・)ー(・)ラ(・)として目に見える程の濃(・)く(・)強(・)力(・)な(・)神(・)力(・)を結界に注ぎ込む師匠が居た。『西行妖』を包み込む結界は師匠が展開して、藍さんと橙がそれを補助しているらしい。

 

―――『西行妖』の目の前に集まっている面々の把握は出来たけど、状況が理解出来ない。『西行妖』が満(・)開(・)という事は、幽々子様の目的である封(・)印(・)を(・)暴(・)く(・)事は出来たのだろう。でも―――

 

 

「――幽(・)々(・)子(・)様(・)が(・)、居(・)な(・)い(・)?」

 

 

―――目的を成したのに、幽々子様(主)の姿がこの場に無いのは何故だろう。

 

 

「...あ?妖夢、目を覚ましたか!ボーっとしてないでお前も手伝え!」

 

 

 妹紅さんが私に気付いて加われと声をあげる。その表情は普段と、そしてさっき『弾幕ごっこ』で戦った時と違って苦しそうだ。師匠も含め皆が似たような雰囲気なのは幽(・)々(・)子(・)様(・)の(・)目(・)的(・)が果たされたせいだけじゃないのだろうか―――

 

 

「...妹紅さん、一体何が起きて――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見れば分かるだろ!『西行妖』の封(・)印(・)が(・)暴(・)か(・)れ(・)て(・)、それと同時に幽(・)々(・)子(・)の(・)姿(・)が(・)消(・)え(・)て(・)、とんでもない妖力が放出されかけているんだ!」

 

 

―――妹紅さんの答えを聞いた瞬間、頭が真っ白になる。

 

 

 

 

 

 

―――幽(・)々(・)子(・)様(・)が、消(・)え(・)た(・)?

 

 

 

 

 

 

―――幽々子様は、異(・)変(・)を起こしたのは"『西行妖』の封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)を(・)暴(・)く(・)"のが目的だからだと言っていた。

 

 

 

 

 

 

―――目的を成した結果、姿(・)が(・)消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)...それって......噓だ...信じられない...

 

 

 

 

 

「...そん、な...幽々子様...幽々子、様...!」

 

 

 突き付けられた状況を目の当たりにして力が抜けてへたり込んでしまう。

 

―――力なく見上げた先の『西行妖』は満(・)開(・)で美しい筈なのに、酷く恐ろしいものに見える。

 

 

 

―――幽々子様を、主を失った私は、どうしたら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――妖夢、我が孫よ。まだ諦めるな』

 

 

 


 

~???~

 

side-幽々子

 

―――フッ...

 

―――幻覚か、走馬灯か。見たことが無い集落の丘、そこに聳える桜の樹の下に人影が二つある。

 

―――『幽って、ふとした時に何か食べてるわね。間食も欠かさないし...』

―――『この集落は居心地が良いけど、隠れているおかげで娯楽に乏しいもの。だから、こうして食べるか駄弁るしかないのよ』

―――『確かに娯楽が少ないのは分かるけど...食べ過ぎじゃない?私がその量を食べようものなら...』

―――『"亡霊"だもの。紫と違って胃の腑が無いようなものだからつい、ね。この前の貴女みたいにお団子を食べ過ぎて増えr『そ、それは言っちゃだめー!』』

 

 

―――私(・)が(・)知(・)る(・)姿(・)よ(・)り(・)幼(・)い(・)容(・)姿(・)の紫(親友)が、私(・)に(・)よ(・)く(・)似(・)た(・)亡(・)霊(・)ら(・)し(・)き(・)人(・)物(・)と和やかな会話を交わしている。

 

―――こんな記憶は無い筈なのに、何故か懐(・)か(・)し(・)い(・)と(・)感(・)じ(・)る(・)。

 

 

―――フッ...

 

―――場面が変わり、今度は『白玉楼』そっくりな屋敷の一室――私の私(・)室(・)に(・)よ(・)く(・)似(・)た(・)部(・)屋(・)だ――その縁側に人影が二つある。

 

 

―――『...本当に、私達って初対面だったのかしら』

―――『急にどうしたの、幽々子?』

―――『...貴女と出逢ってから、時々妙(・)な(・)夢(・)を見るの。西行の大桜(あの桜)とは違うけど、"古く大きな桜の樹の下で、幼い見た目の貴女と一緒に小さな集落を眺めている"夢なのだけど...そんな記憶は知らないのに、懐(・)か(・)し(・)い(・)と(・)感(・)じ(・)る(・)の』

―――『...不思議な夢ね。でも、私と幽々子が初対面だったのは事実よ。もしかしたら――』

 

―――私がよく知る姿に近い容姿の紫(親友)が、物静かな、達観した様な表情の私(・)そ(・)っ(・)く(・)り(・)な(・)人(・)物(・)と会話を交わしている。

 

―――よく似ている要素はあるのに、私はこの場面を知らない。でも、これもまた懐(・)か(・)し(・)い(・)と(・)感(・)じ(・)ら(・)れ(・)る(・)。

 

 

―――何故、知(・)ら(・)な(・)い(・)の(・)に(・)懐(・)か(・)し(・)く(・)感(・)じ(・)ら(・)れ(・)る(・)ものを見ているのだろうか。まるで、各場面に居た私(・)に(・)よ(・)く(・)似(・)て(・)い(・)る(・)人物、私(・)そ(・)っ(・)く(・)り(・)な(・)人物が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――スゥッ...

 

 

『――そう。私達は...いえ、二(・)度(・)目(・)は(・)厳(・)密(・)に(・)は(・)違(・)う(・)のかしらね。...でも、貴(・)女(・)は(・)私(・)達(・)が(・)転(・)生(・)し(・)た(・)存(・)在(・)であることは事実よ』

『――転生は普通、記(・)憶(・)ま(・)で(・)は(・)継(・)承(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)。でも、魂(・)の(・)奥(・)底(・)に(・)は(・)確(・)か(・)に(・)刻(・)ま(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)みたいね』

 

 

―――目の前に、各場面に出ていた"幽"と呼ばれていた亡霊と、幽々子と(同じ名前で)呼ばれていた私そっくりな人間の姿が現れ、現れるなり私の予想が正しいと告げて来る。

 

 

―――"転生"。死した者の魂が、長い時を経て違う時代、種族、存在へと引き継がれる事象。

 

―――でも、妙だ。転生したと言うのなら、何故転(・)生(・)前(・)の(・)存(・)在(・)が目の前に居るのだろうか。

 

 

『――"反魂香"。遺品を整理していたら偶然見付けた、父上が娘(私)にすらずっと隠していた死(・)者(・)の(・)魂(・)を(・)呼(・)び(・)出(・)す(・)お香。封(・)印(・)に臨んだ時に、効果は信じず父上の形見として焚きしめたのだけど――まさか、本物ではあれど不(・)完(・)全(・)な(・)も(・)の(・)だとは思わなかったわ。幽(転生前の私)を一(・)存(・)在(・)と(・)し(・)て(・)確立させ、お香の効果と私(・)の(・)未(・)練(・)が相乗効果をもたらして"亡霊"としての私――即ち貴女をも一(・)存(・)在(・)と(・)し(・)て(・)顕現させたのは予想外だった――いい意味で、ね』

 

 

―――幽々子(人間の私)はそう答えて微笑む。彼女(人間の私)も予想していなかった結果として私は生まれたらしい。

 

―――それでも妙だ。二人の話を聞けば、私達は転生によって繋がりがある。だから、『西行妖』の封(・)印(・)を(・)暴(・)い(・)た(・)結果、封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)である幽々子(人間の私)から生じた存在である私は吸(・)い(・)込(・)ま(・)れ(・)る(・)様(・)な(・)感(・)覚(・)を感じて意識を失い―――ここで二人と相対している。

 

―――このままでは私(・)も(・)消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)のに、何故嬉しそうなの?

 

 

『――封(・)印(・)に臨んだ当初は、私(・)達(・)の(・)完(・)全(・)消(・)滅(・)を伴う形で"西(・)行(・)妖(・)"を(・)討(・)つ(・)ことになるから、討(・)伐(・)の為に密(・)命(・)を下した魂魄家(我が家の従者)と、そ(・)れ(・)を(・)知(・)ら(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)親友――特に紫を悲しませることになる筈(・)だ(・)っ(・)た(・)』

『――でも、幽(転生前の私)と、貴女の一(・)存(・)在(・)と(・)し(・)て(・)の(・)顕現。そして――魂(・)魄(・)家(・)秘(・)中(・)の(・)秘(・)の(・)剣(・)技(・)を会得した代償で完(・)全(・)な(・)霊(・)体(・)と(・)化(・)し(・)た(・)"彼(・)"と接触できたおかげで策(・)を変えることができた。――"西行妖"を討ち、同時に貴(・)女(・)を(・)喪(・)わ(・)な(・)い(・)為に』

 

 

―――"西行妖"を、討(・)ち(・)、私(・)を(・)喪(・)わ(・)な(・)い(・)様(・)に(・)す(・)る(・)?

 

 

『――"西行妖"は嘗て、"西行の大桜"という美しい桜だった。...でも、その美しさに惹かれた者――幽々子(人間の貴女)の父の死をきっかけにして、その在り様が歪み始めた。見る者を喜ばせる美しさは見(・)る(・)者(・)を(・)死(・)に(・)誘(・)う(・)ようになり、そうして死した者の魂と思念、血と生気を取り込んで"妖怪桜"と化してしまい、益々人を魅せては死(・)に(・)誘(・)い(・)、取り込んで強大になっていった』

『――だから、"西行妖"の被害を止める為に私は封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)となった。――でも、それだけでは償(・)い(・)にはならない。父上の死をきっかけにして"西行妖"は生まれた。だから、娘である私が"西行妖"を討(・)ち(・)、"西行の大桜"に戻(・)し(・)て(・)あげるの。――そして、紫(・)に(・)三(・)度(・)目(・)の(・)喪(・)失(・)を(・)味(・)わ(・)わ(・)せ(・)な(・)い(・)為に、貴(・)女(・)を(・)あ(・)ち(・)ら(・)に(・)還(・)す(・)』

 

 

―――そんな事が出来るの?

 

 

『――えぇ、できるわ。"彼(・)"と接触できたのは本当に幸運だった。そして――今、封(・)印(・)が(・)暴(・)か(・)れ(・)た(・)この瞬間が唯一の機会――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――さぁ、頼んだわよ。妖(・)忌(・)』

 

 


 

side-妖夢

 

 

「――え...?」

『――久方振りだな、妖夢。"冥界の庭師"としての役目を殆ど教えぬまま、役目を引き継がせてすまなかった』

 

 

―――すぐには信じられず、呆けてしまう。

 

―――白髪の様な、輝きがくすんだ銀髪をローポニーテールで結い上げた髪。白い着物の上に深緑の肩衣を羽織り、深緑の袴と桐の下駄を履いた先代"冥界の庭師"―――姿(・)形(・)が(・)少(・)し(・)朧(・)げ(・)で、強(・)力(・)な(・)霊(・)力(・)を(・)感(・)じ(・)ら(・)れ(・)る(・)妖忌おじいちゃんはそう言って、微笑みながら私の頭を撫で―――ようとして手(・)が(・)私(・)の(・)頭(・)を(・)す(・)り(・)抜(・)け(・)る(・)。

 

 

『――やはり、触れるのは叶わぬか...』

「どう...して...?なんで...居なくなったの...?」

 

 

 自分の目に溢れそうになるものを抑えながら、震えた声で尋ねると、残念そうな表情を浮かべていたおじいちゃんは真剣な表情を浮かべる。

 

 

『――我が魂魄家には、生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)様(・)か(・)ら(・)課(・)さ(・)れ(・)た(・)密(・)命(・)があった。あの時、私は密(・)命(・)を果たす為の悟(・)り(・)を得て、それを逃さぬことを優先した。その結果、失(・)踪(・)――"西行妖"に束(・)縛(・)さ(・)れ(・)て(・)動けぬ身となって幽々子様(主)や妖夢、多くの者に迷惑をかけることになってしまったが』

「...密命...?」

『――そうだ。今、封(・)印(・)を(・)暴(・)か(・)れ(・)て(・)その力を振るわんと再(・)封(・)印(・)に抵抗している"西行妖"。それを討(・)っ(・)て(・)嘗ての美しき"西行の大桜"に戻し、幽(・)々(・)子(・)様(・)を(・)お(・)救(・)い(・)す(・)る(・)為に――"白楼剣"が必要だ』

 

 

 おじいちゃんはそう答えて私が肩に担いでいる『白楼剣』を見る。―――魂魄家が代々継承する二振りの片割れであり、斬(・)っ(・)た(・)も(・)の(・)の(・)迷(・)い(・)を(・)断(・)つ(・)力を持つ『白楼剣』。

 

―――『既に幽々子(貴女の主)から聞いていると思いますが、私からも忠告しておきます。特に死者を相手取る時、その"白楼剣"はみ(・)だ(・)り(・)に(・)抜(・)か(・)な(・)い(・)ようにしなさい。魂というのは、皆大なり小なり迷(・)い(・)や、未(・)練(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)ま(・)す(・)。それを喪った魂は――存(・)在(・)を(・)保(・)て(・)ず(・)消(・)滅(・)し(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。勝手に幻想郷の生死の輪廻を外れた外(・)法(・)の(・)魂(・)を討つなら兎も角、うっかりや気の迷いで冥界で過ごす魂を斬られては生死の輪廻(摂理)が狂ってしまうのです』

 

―――幽々子様や映姫様が仰っていた『白楼剣』が持つ力の危険性を思い出す。それが必要になるなんて、おじいちゃんは一体何を...?

 

 

『――だが見ての通り、悟(・)り(・)を得た代償で完(・)全(・)な(・)霊(・)体(・)になってしまってな...実体があるものに触れられぬ。――そこで、妖(・)夢(・)の(・)身(・)体(・)を(・)借(・)り(・)た(・)い(・)』

「私の身体を...?」

『――密(・)命(・)を果たすには"白楼剣"と、私が悟(・)り(・)を経て会得した魂(・)魄(・)家(・)秘(・)中(・)の(・)秘(・)の(・)剣(・)技(・)が必要なのだ。多少妖夢に負担をかけるかもしれぬが...幽(・)々(・)子(・)様(・)を(・)お(・)救(・)い(・)す(・)る(・)為に――力を貸してくれ』

 

 

 おじいちゃんはそう言って頭を下げる。

 

―――未だに状況を、目の前におじいちゃんが居る状況も、理由もはっきりと理解出来ないけど...幽々子様(主)を守れなかった未熟者の私が力を貸す事で幽(・)々(・)子(・)様(・)を(・)助(・)け(・)ら(・)れ(・)る(・)のなら―――

 

 

 

 

「――うん、分かった。幽々子様を助けられるなら...私の身体、使っていいよ」

『――ありがとう、妖夢』

 

 

―――スゥ...

 

 

―――おじいちゃんが微笑みながら目の前から姿を消した刹那、背(・)後(・)か(・)ら(・)霊(・)力(・)が(・)纏(・)わ(・)り(・)付(・)く(・)感(・)覚(・)を感じる。おじいちゃんの――血が繋がった家族の霊力だからか身体に馴染み、私(・)の(・)意(・)思(・)に(・)反(・)し(・)て(・)腕や手が動いても違和感が無い。

 

 

『――成程。己の素質を磨く為の弛まぬ鍛錬を続けているようだな。これならより上手く斬(・)れ(・)る(・)やもしれぬ。――妖夢、行くぞ』

「うん...!」

 

 

―――スタッ...

 

 

「妖夢お前――何だ?お前...誰(・)の(・)気(・)配(・)を(・)纏(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)?」

「妖夢――その霊力はまさか...!だが何故急に...!」

 

―――おじいちゃんと意思が重なり合い、跳躍して師匠達の前に躍り出て『白楼剣』を抜いて軋(・)む(・)結(・)界(・)に包まれた『西行妖』を見上げる。

 その背後で妹紅さんと藍さん―――おじいちゃんを知っている二人の驚いた声が聞こえる。私に憑(・)依(・)し(・)て(・)い(・)る(・)霊力の質で気付いた様だ。

 

 

「その霊力――妖忌か?!」

『――久方振りだな、影政。我が友よ。このような形での再会になってしまってすまぬ。――再(・)封(・)印(・)が叶わぬと見て、密(・)命(・)を果たす為に妖夢の身体を借りた』

「密(・)命(・)だと?――妖忌、何をするつもりだ?」

 

 

 師匠も驚きを隠さずおじいちゃんに尋ねる。

 

 

『――"西行妖"を討(・)つ(・)。私はそれを果たす為に、悟(・)り(・)を得て魂(・)魄(・)家(・)秘(・)中(・)の(・)秘(・)である剣技を会得した。その代償で完(・)全(・)な(・)霊(・)体(・)と化し、幸い"西行妖"に取り込まれはしなかったが、束(・)縛(・)さ(・)れ(・)て(・)動けぬ身となってしまった――だがその時、私は封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)である生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)様(・)と接触し、新(・)た(・)な(・)密(・)命(・)を下された』

 

 

 おじいちゃんは師匠の問いにそう答える。

 

―――『西行妖』の封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)は生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)様(・)だった様だ。だから師匠も紫様も明かそうとせず、自分の手で封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)の正体を知ろうとした幽々子様(その亡霊である主)は封(・)印(・)を(・)暴(・)か(・)れ(・)て(・)...でも、おじいちゃんはそれを救(・)え(・)る(・)と言っていた。

 

 

「生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)と逢った、だと?そんなことが――」

『――私も何故生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)様(・)と逢えたのかは分からぬ。だが新(・)た(・)な(・)密(・)命(・)――"西行妖"を討(・)ち(・)、幽(・)々(・)子(・)様(・)を(・)お(・)救(・)い(・)す(・)る(・)。これを果たす為に――こ(・)れ(・)か(・)ら(・)や(・)る(・)こ(・)と(・)を(・)、信(・)じ(・)て(・)く(・)れ(・)』

 

 

 驚きと困惑を隠さない師匠が重ねる問いにおじいちゃんはそう答え―――師匠や再(・)封(・)印(・)に臨んでいる皆に振り向く。結界に力を注ぎながらも、誰もが驚きや困惑の表情で私達を見ている。

 

 

「妖夢(その半霊従者)に憑(・)依(・)す(・)る(・)ような、知らないヤツを信じろって言うの?藍とか影政はよく知っているみたいだけど...」

『――再(・)封(・)印(・)には未だ至れておらぬだろう。"西行妖"が今も放出し続けている計(・)り(・)知(・)れ(・)ぬ(・)妖(・)力(・)。紫様の結界、ここに集まっている皆の力を以てしても抑え込みで精一杯であるのは予想外だったが――尚更、"西行妖"を討たなければ幻(・)想(・)郷(・)が(・)滅(・)び(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)』

 

 

 霊夢の言葉におじいちゃんはそう返して『西行妖』を見る。

 

 

「――"西行妖"を討(・)つ(・)。その言葉、信じていいのね?」

「霊夢、妖夢(ソイツ)に憑いてるいきなり現れたヤツを信じるってのか?!」

 

 

 数秒瞑目して考え込んだ霊夢の言葉に対して魔理沙がとんでもないと大きな声をあげる。

 

 

「私だって信じたくないわよ。――でも勘(・)が言ってるの。現状再(・)封(・)印(・)は(・)不(・)可(・)能(・)。でも――"西行妖"を討(・)つ(・)チャンスでもあるってね。妖夢に似て真面目なヤツみたいだし、やらせてみようじゃない。...ただ、失(・)敗(・)しようものなら、アンタ達を一生恨むから」

『――勘(・)か。その霊力もだが、初(・)代(・)によく似て――いや、感傷に浸る暇はないな』

 

 

 おじいちゃんは霊夢を見て懐かしそうに呟くけど、すぐに感傷を止めて『西行妖』に向き直る。

 

 

「妖忌、俺達はどうすればいい?」

『――確実に成す為にも、一瞬で構わぬ――合図を出して結(・)界(・)を(・)解(・)い(・)て(・)ほしい』

「結(・)界(・)を(・)解(・)く(・)だと?!」

 

 

 おじいちゃんの言葉に藍さんが大きな声をあげる。今も軋み続けている結界の中では、計(・)り(・)知(・)れ(・)な(・)い(・)妖(・)力(・)が結(・)界(・)を(・)破(・)ろ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)いる筈。それを此方から結(・)界(・)を(・)解(・)い(・)て(・)放出したらどうなるか―――私でも最(・)悪(・)が予想出来てしまう。でも―――

 

 

「――一瞬でいいんだな?」

「影政様?!」

 

 

―――結界の術式を展開している師匠―――おじいちゃんの友人はそう言って自身の目の前に翳している紫(・)色(・)の(・)お(・)札(・)に触れる。藍さんがそれを見てまた大きな声をあげるけど―――

 

 

「妖(・)忌(・)の(・)友(・)人(・)として、妖(・)夢(・)の(・)師(・)として――俺は二人を信じる。頼むぞ、二人共」

「――はい!」

『――任された』

 

 

 おじいちゃんと同時に答え、『白楼剣』を構えて『西行妖』を見据える。

 

 

「全員、身構えておけ!万が一がある。いつでも、どの瞬間でも結(・)界(・)を(・)再(・)展(・)開(・)できるようにしろ――」

 

 

 師匠の言葉を受け、皆緊張した表情を浮かべて身構える。こみ上げて来る緊張を吐き出す様に深呼吸し―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――結界を解く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワ―――

 

 

『――"西行の大桜"を歪めし数多の思念よ。その未練と迷いの尽くをいざ断たん』

 

 

白楼秘儀「断迷剣-皆尽頓悟-」

 

 

―――キィィィィン...!

 

 

―――to be continued―――

 

 

 





次回、後編で春雪異変解決です。

秘策を実行した結果とその影響は次回を待て!
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