東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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後編です。ちょっと短いかも。



春雪異変-6-3~還るもの、還らぬもの~

~白玉楼 大桜の丘~

 

side-妖夢

 

「――妖力の放出が、止(・)ま(・)っ(・)た(・)?」

 

 

 残心を終え、『白楼剣』を納める背後で失(・)敗(・)に備えて身構えていた藍さんが戸惑った声が聞こえてくる。

 

―――お(・)じ(・)い(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)が(・)憑(・)依(・)し(・)た(・)私が放った『白楼剣』の一閃により、『西行妖』から放出されていた計(・)り(・)知(・)れ(・)な(・)い(・)妖(・)力(・)の放出がピ(・)タ(・)リ(・)と(・)止(・)む(・)。

 

―――私は確かに感じた。見えなかったけど、沢(・)山(・)の(・)何(・)か(・)を一(・)気(・)に(・)斬(・)っ(・)た(・)手応えを。

 

 

『――上手く行った。妖夢の正(・)確(・)無(・)比(・)な(・)太(・)刀(・)筋(・)のおかげで、寸分の狂いなく斬(・)る(・)べ(・)き(・)も(・)の(・)を(・)斬(・)れ(・)た(・)。――これで、我(・)が(・)役(・)目(・)は(・)果(・)た(・)さ(・)れ(・)た(・)』

「妖忌、その剣技は一体――」

 

 

―――コォォォ...!

 

「――何か来るわ!」

 

 

―――師匠がおじいちゃんに尋ねた刹那、『西行妖』の前に白(・)い(・)光(・)と(・)し(・)て(・)見(・)え(・)る(・)程(・)の霊力が集まり始め、全員再び身構える。

 私も再び『白楼剣』の柄に手を添えて身構えるけど―――おじいちゃんは静かに、落ち着いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――カッ...!

 

『『......』』

 

 

「あれは...」

「幽々子さんにそっくり...」

 

 

―――一瞬の閃光が治まると、『西行妖』の前には灰(・)色(・)で(・)透(・)き(・)通(・)っ(・)た(・)、襦(・)袢(・)を(・)纏(・)う(・)幽(・)々(・)子(・)様(・)に(・)よ(・)く(・)似(・)た(・)人(・)影(・)と、袿(・)と(・)単(・)を(・)纏(・)う(・)幽(・)々(・)子(・)様(・)そ(・)っ(・)く(・)り(・)な(・)人(・)影(・)が揃って瞑目して浮かんでいた。誰もが困惑する中―――

 

 

「――幽と幽々子...か?だが何故――」

 

 

―――師匠だけは、普段殆ど見られない驚きの表情を浮かべて名前を呟く。師匠はあの二(・)人(・)の(・)人(・)影(・)を知って―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『もろもともに』

 

 

『われをも具して』―――

 

 

―――『散りね花』

 

 

『うき世をいとふ』―――

 

 

 

 

 

―――『『心ある身ぞ*1』』―――

 

 

「西行寺無余涅槃」

 

 

―――心に響く声で歌が詠まれた刹那。二(・)人(・)の(・)人(・)影(・)が光を放ち、弾幕が放たれ始めた。

 

 

「ぐわーッ?!」

「魔理sっ危な?!」

「っくぅ...!」

 

 

―――赤い蝶弾を食らって吹き飛ぶ魔理沙。咄嗟に躱す霊夢と、避け切れず被弾する咲夜。

 

 

「レイラッ!危nぐぅッ?!」

「カナ...?!」

 

「くぅっ...?!」

「あらら~?!」

「ぎゃーッ?!」

 

 

―――続けて展開された赤い大玉弾からレイラさんを庇って突き飛ばし、自身は吹き飛んでしまうカナさん。避けられず一緒に吹き飛ぶ騒霊三姉妹。

 

 

「何という弾幕dぐぁッ?!」

「ら、藍sぎにゃーッ?!」

 

 

―――紫と青の蝶弾を避けるも紫色のレーザーに追い込まれて被弾して吹き飛ぶ藍さん。それを見て動きを止めた結果蝶弾に被弾して大きく吹き飛ぶ橙ちゃん。

 

 

「っおぉ?!――美しいがそれ以上に凄まじい密度の弾幕だな、おい!」

「幽(・)と(・)生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)の(・)人(・)影(・)が現れたと思ったら...妖忌――」

 

 

―――意表を突かれながらも辛うじて弾幕を避けていく妹紅さんと師匠。師匠はおじいちゃん―――私の方を見て―――

 

 

 

 

 

―――スゥッ...

 

『――影政、妖夢。役(・)目(・)を(・)果(・)た(・)し(・)た(・)私(・)は(・)こ(・)こ(・)ま(・)で(・)だ(・)』

「――え...?」

 

 

―――私から霊(・)力(・)が(・)離(・)れ(・)る(・)感覚を感じた刹那、『西行妖』の方―――幽(・)々(・)子(・)様(・)に(・)よ(・)く(・)似(・)た(・)二(・)人(・)の(・)人(・)影(・)が居た、弾(・)幕(・)の(・)発(・)生(・)源(・)の方へと吸(・)い(・)込(・)ま(・)れ(・)る(・)様に浮かんでいくおじいちゃんを目の当たりにする。

 

 

『――"白楼剣"が持つ力を全て放つ魂魄家秘中の秘"断迷剣-皆尽頓悟-"は、発(・)動(・)者(・)の(・)魂(・)諸(・)共(・)死(・)者(・)の(・)迷(・)い(・)と(・)未(・)練(・)を(・)断(・)つ(・)剣技。――二人には、この意味が解る筈だ』

「――妖忌、失(・)踪(・)した時からそのつもりだったのか」

 

―――『西行妖』を討(・)ち(・)、幽(・)々(・)子(・)様(・)を(・)お(・)救(・)い(・)す(・)る(・)。それを果たす為に使った発(・)動(・)者(・)の(・)魂(・)諸(・)共(・)死(・)者(・)の(・)迷(・)い(・)と(・)未(・)練(・)を(・)断(・)つ(・)剣技。私の身体に憑依したけど、剣(・)技(・)を(・)使(・)っ(・)た(・)のはおじいちゃんだった。師匠も察したのか、辛そうな表情を浮かべている。

 

 

―――噓だ。

 

―――信じたくない。

 

 

「...そん、な...やっと...また会えた、のに...」

 

 

―――目からこみ上げて来るものを止められず頬を伝い、声の震えも止められないまま縋るようにおじいちゃんを見上げる。

 

 

『――己(・)を(・)犠(・)牲(・)に(・)す(・)る(・)剣技など、隠されて当然のものだ。――だが、"西行妖"を討(・)つ(・)にはこれしか手がなかった。会得に至れなかった母上が最(・)期(・)ま(・)で(・)私(・)に(・)謝(・)り(・)続(・)け(・)て(・)い(・)た(・)意味を、密(・)命(・)を引き継いだ時に理解した。だからこそ妖夢に――愛しい孫にこのような密(・)命(・)を任せられようものか。その一心で、あの日――悟(・)り(・)を得た瞬間、私はそれを真っ先に掴み――今、密(・)命(・)を果たした。――これで、幽々子様も、妖夢も..."西行妖"に悩まされることなくこれからを生きていける』

 

 

―――サァァ...

 

 

「ぁ...だめ...置いて、逝かないでよ...!」

 

 

―――満足そうに微笑むおじいちゃんが足(・)か(・)ら(・)消(・)え(・)始(・)め(・)る(・)。弾を掠めるのも構わずおじいちゃんの下へ飛び立って手を伸ばし―――

 

 

 

 

―――スカッ...

 

 

『――妖夢、幽々子様を頼むぞ。お前ならば"冥界の庭師"の役目を全うできる。だが――』

 

 

 

 

 

『――孫の晴れ姿を見届けられぬのだけは、残念だ』

 

 

「ぁ...あぁ...おじい、ちゃん...」

 

 

―――私が伸ばした手はお(・)じ(・)い(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)の(・)身(・)体(・)を(・)す(・)り(・)抜(・)け(・)、おじいちゃんはそのまま吸(・)い(・)込(・)ま(・)れ(・)る(・)様に消(・)え(・)る(・)。目からますますこみ上げて来るものを止められずおじいちゃんが居た所を見上げたまま―――

 

 

 

―――ゴォッ...!

 

 

「――妖夢ッ!!」

「...あ――」

 

 

―――師匠の声でハッとすると、目の前に赤い大玉弾が迫っていて―――

 

 


 

~???~

 

side-紫

 

 

...サァァ...

 

 

「――ここ、は...?」

 

 

―――真っ白な空間。無数の桜の花弁が風も無いのに遥(・)か(・)前(・)方(・)に(・)流(・)れ(・)る(・)様に舞っている。

 

 

「――『西行妖』...いえ、妖(・)力(・)が(・)感(・)じ(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)...?」

 

 

―――後ろに何かの気配を感じて振り向くと、満(・)開(・)の(・)『西行妖』―――になる前の『西行の大桜』が聳えている。桜の花弁はそこから尽きる事無く舞い散り、飛んでいる。

 

 

―――冬(・)眠(・)の最中、誰(・)か(・)に(・)呼(・)ば(・)れ(・)た(・)気がして目を覚ましたら、この空間に居た。夢なのか、それとも―――

 

 

 

 

 

 

 

―――フッ...

 

 

『――久しぶりね、紫』

『――あの時より一層大人びたわね。親友として嬉しく思うわ』

「...え...?」

 

 

 聞き慣れた、も(・)う(・)聞(・)く(・)こ(・)と(・)は(・)出(・)来(・)な(・)い(・)筈の声が聞こえて振り向くと―――生(・)涯(・)最(・)初(・)の(・)親(・)友(・)と、彼(・)女(・)に(・)よ(・)く(・)似(・)た(・)雰(・)囲(・)気(・)と(・)容(・)姿(・)の(・)親(・)友(・)が並んで佇んでいた。二人揃って懐かしそうに微笑みながら私を見ている。

 

 

「なん、で...?どうして、貴女達が...?」

『――そんな反応になるのも当然ね。私達は本来、こうして会(・)う(・)こ(・)と(・)は(・)で(・)き(・)な(・)い(・)のだから』

『――でも、影政にも、貴女にも伝えていなかった秘(・)策(・)が(・)成(・)っ(・)た(・)おかげで、最(・)期(・)に(・)こうして貴女に会えた』

「秘策...?どういう、こと...?最期、って...?」

『――今、貴女に伝えるわ。私達が何をしたのか』

 

 

...キィィン...

 

「...っ...!」

 

 

―――幽々子(生前の親友)が瞑目すると、私の頭の中に彼女のものであろう記(・)憶(・)が流れ込んで来る。

 

 

―――『...これは、魂魄家(我が一族)伝来の剣術書の破(・)ら(・)れ(・)た(・)項(・)目(・)ですな。まさか西行寺家(主家)が持っていたとは..."白楼剣"の力を用いた秘儀...幽々子様、これを我らに託される意図は如何に?』

―――『父上が...いえ、西行寺家(主家)がこれを今まで隠していたのは、代(・)償(・)が(・)大(・)き(・)過(・)ぎ(・)る(・)からに他ならない。――でも、"西行妖"を討(・)つ(・)にはこの秘儀が必要なの。私が明日行う封(・)印(・)は、その為の時(・)間(・)稼(・)ぎ(・)』

―――『封(・)印(・)が時(・)間(・)稼(・)ぎ(・)?』

―――『――これは魂魄家(子々孫々の従者)に課す密(・)命(・)、確と心に銘じなさい。私が封じている間に――この魂(・)魄(・)家(・)の(・)秘(・)儀(・)を会得し、機を図って"西行妖"を討(・)ち(・)な(・)さ(・)い(・)』

 

―――『西行妖』封(・)印(・)決行の前日、幽々子(生前の親友)が妖蔵と妖華に秘(・)策(・)を成す為の密(・)命(・)託す瞬間。

 

 

―――『貴女は――成程、私は転(・)生(・)して紫と再会できたのね。――でも、あの娘はま(・)た(・)親友を喪ってしまった。そこまで私を真似しなくても、とは思うけど――西行妖(あの妖怪桜)のことを考えれば避けられないことだったのだろうけど』

―――『――紫が貴女のことを話していたけど、察しもいいのね。まさか、こうして転(・)生(・)前(・)の(・)私(・)と出逢えるなんて――"反魂香"の効果は不(・)完(・)全(・)な(・)が(・)ら(・)も(・)本(・)当(・)だったのね』

 

―――封(・)印(・)に臨む前に幽々子(生前の親友)が白装束に焚きしめていたお香が持つ力で、幽(転生前の親友)が一(・)存(・)在(・)と(・)し(・)て(・)、封(・)印(・)を(・)補(・)強(・)す(・)る(・)形(・)で確立した事。

 

 

―――『...これも、"反魂香"の効果なのかしらね。まさか三(・)度(・)目(・)の(・)逢(・)瀬(・)を果たすなんて』

―――『それだけではないと思うわ。――多分、私(・)の(・)未(・)練(・)も作用したのでしょう。死(・)を(・)操(・)る(・)異(・)能(・)、明(・)る(・)く(・)活(・)発(・)な(・)性(・)格(・)...私がずっと夢想していたものよ』

―――『成程、ね。でも、どうするの?秘(・)策(・)が成れば――』

 

―――"反魂香"と幽々子(生前の親友)が抱いていた未(・)練(・)によって幽々子(亡霊の親友)が一(・)存(・)在(・)と(・)し(・)て(・)生まれたけど、このまま秘(・)策(・)が成れば彼(・)女(・)も(・)消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)事。

 

 

―――『まさか、話でしか知らなかった生(・)前(・)の(・)主(・)と、主(・)が(・)転(・)生(・)す(・)る(・)前(・)の(・)お(・)方(・)とこうして対面することになるとは...』

―――『目元が妖華(貴方の母親)そっくりね。...それで、悟(・)り(・)を得たということは――』

―――『――はい。妖華(母上)と妖蔵(祖父)の代では果たせなかった秘(・)儀(・)を(・)会(・)得(・)しました。――完(・)全(・)な(・)霊(・)体(・)と化したこと、"西行妖"の封(・)印(・)に束(・)縛(・)さ(・)れ(・)た(・)ことは予想外でしたが。この有様では...』

―――『...そう悲観することではないわ。秘(・)儀(・)の(・)行(・)使(・)については――』

 

―――妖忌が秘(・)儀(・)を会得し、その代償完(・)全(・)な(・)霊(・)体(・)と化して"西行妖"の封(・)印(・)に束(・)縛(・)さ(・)れ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)けど、幽(転生前の親友)が新(・)た(・)な(・)秘(・)策(・)の実行方法を提案し、それを実行すると決めた事。

 

 

 

―――『あの娘、本当に封(・)印(・)を(・)暴(・)く(・)つもりね。――でも、秘(・)策(・)を実行する機会よ』

―――『えぇ。これで、やっと償(・)え(・)る(・)。――妖忌、覚(・)悟(・)は(・)で(・)き(・)て(・)い(・)る(・)わね?』

―――『はい。――心残りがない訳ではありませぬが、秘(・)策(・)の(・)実(・)行(・)で将(・)来(・)妖(・)夢(・)に(・)大(・)き(・)な(・)負(・)担(・)を(・)掛(・)け(・)ぬ(・)ことに繋がるのなら――』

 

―――そして、幽々子(亡霊の親友)が異(・)変(・)を起こしたのを確認し、秘(・)策(・)の実行を始めた事。

 

 

―――幽(転生前の親友)と幽々子(生前の親友)は、影政にも、私にも黙って秘(・)策(・)の成就を目指して動いていた。

 

 

 

 

 

―――封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)である幽と幽々子(二人)が、『西行妖』を生み出した死者の思念や魂を纏めて抑え込み―――幽々子(亡霊の親友)が持つ二(・)人(・)と(・)の(・)繋(・)が(・)り(・)と共に魂(・)魄(・)家(・)の(・)秘(・)儀(・)で斬って『西行妖』を討(・)つ(・)事で『西行の大桜』として還し、亡(・)霊(・)と(・)し(・)て(・)の(・)一(・)存(・)在(・)として『西行寺幽々子』も還そうという秘(・)策(・)を。

 

 

「...影政にも、私にも黙って、こんなことをしていたの...?」

『――貴女達には申し訳ないと思うわ。でも――こうしないと貴女は止めるでしょう?』

「当然でしょう?!貴(・)女(・)達(・)が(・)犠(・)牲(・)に(・)な(・)る(・)前(・)提(・)の(・)策なんて受け入れられない!!」

 

 

 幽々子(生前の親友)の言葉に我慢できず声を荒げて答える。目から溢れたものが頬を伝うのを感じながら、感情のままにまくしたてる。

 

 

「二(・)度(・)も(・)目(・)の(・)前(・)で(・)親(・)友(・)を(・)喪(・)っ(・)た(・)悲(・)し(・)み(・)は決(・)し(・)て(・)忘(・)れ(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)のよ!!――幽々子が...亡霊の幽々子(貴女)が現れた時、私は三(・)度(・)も(・)喪(・)う(・)も(・)の(・)か(・)と決意して、封(・)印(・)と幽々子(生前の貴女)に関する情報は徹底的に隠した。

――なのに...なのに...貴女達は自分を犠牲にするのも厭わない策を実行しようとしている!!私の想いも知らないで...っ...」

 

 

―――耐え切れず、膝をついて顔を覆って泣き出してしまう。

 

―――私が幽々子(生前の親友)が封(・)印(・)に臨む事を受け入れたのは、封(・)印(・)の(・)依(・)代(・)となって会う事は叶わずとも、幽々子(生前の親友)は『西行妖』の中に在り続けるからだった。幽々子(生前の親友)が身を挺して『西行妖』を封じ続けている――そう思えば、悲(・)し(・)み(・)は少しだけ和らいだ。

 

―――それが、二人の秘(・)策(・)で無くなろうとしている。そんなの―――

 

 

 

 

 

―――スッ...

 

「...ふ、ぇ...?」

 

 

―――二人分の手が、私の頭を撫でる。顔を上げれば、しゃがんで微笑む二人が目の前に居た。

 

 

『――本当に、貴女は私達が大好きなのね。親友であるこっちも嬉しくなるわ』

『――でも、私達の秘(・)策(・)は成さねばならない。――"西行妖"の封(・)印(・)は、永(・)遠(・)に(・)は(・)で(・)き(・)な(・)い(・)のだから。私達が封(・)じ(・)込(・)め(・)て(・)尚、抵抗するように妖力は増え続けていた。遅かれ早かれ、封(・)印(・)が(・)破(・)ら(・)れ(・)る(・)のは目に見えていたわ。そうなれば、幽々子(亡霊の私)も...』

「...でも...でも...!」

 

 

―――私だって解っていた。『西行妖』の封(・)印(・)はいつか破(・)ら(・)れ(・)る(・)。そうなれば、幽々子(生前の親友)から生まれた存在である幽々子(亡霊の親友)が消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)。

 

―――でも、私は対策を講じず現実逃避をしていた。いつか直面する幻(・)想(・)郷(・)の(・)危(・)機(・)と三(・)度(・)目(・)の(・)喪(・)失(・)が怖かった。

 

 

『――紫、本(・)当(・)の(・)死(・)はどういうものだと思う?』

「本当の、死...?」

 

 

 幽(転生前の親友)の問いに首を傾げる。一体どんな意図で―――

 

 

『――"誰(・)も(・)か(・)れ(・)も(・)か(・)ら(・)完(・)全(・)に(・)忘(・)れ(・)去(・)ら(・)れ(・)る(・)"。これが本(・)当(・)の(・)死(・)だと私は思うの。――肉体が、魂が死んでしまっても、誰かがその人を想えば忘(・)れ(・)ら(・)れ(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)な(・)い(・)。――私が言いたいことは解るわね?』

「解るけど...でもっ...!」

 

 

―――私が、親(・)友(・)が(・)二(・)人(・)を(・)想(・)う(・)限り二(・)人(・)は(・)生(・)き(・)て(・)い(・)る(・)と言いたいのだろう。"人間と妖怪の共存"に加え、妖(・)怪(・)の(・)存(・)在(・)意(・)義(・)を(・)保(・)つ(・)為に幻想郷を創り出したから幽(転生前の親友)が言いたい事は理解出来る。

 

―――それでも、折角こうして再会したのに、すぐに、しかも迷(・)い(・)を(・)断(・)た(・)れ(・)た(・)事で消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)なんて...受け入れられない。でも、秘(・)策(・)が成ってしまった以上はもう―――

 

 

『――秘(・)策(・)が成ったことで幽々子(亡霊の私)は生(・)前(・)の(・)私(・)か(・)ら(・)生(・)ま(・)れ(・)た(・)存(・)在(・)ではなく、た(・)だ(・)の(・)亡(・)霊(・)の(・)一(・)存(・)在(・)となる。彼女の魂から私(・)達(・)の(・)記(・)憶(・)はなくなってしまうけど、影政と、他ならぬ貴女が忘れず想う限り私(・)達(・)は(・)心(・)の(・)中(・)で(・)生(・)き(・)て(・)い(・)る(・)』

『――だから、泣かないで。私達が居(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)分、幽々子(亡霊のあの娘)と仲良くしてあげて』

 

 

―――ザァッ...!

 

 

 辺りを舞う桜の花弁が風に吹かれた様に一気に舞い散り桜吹雪と化し―――

 

 

―――スゥッ...

 

「あ...待って...!」

『――お別れね。"西行妖"(死を齎す妖怪桜)を成した魂、思念が全(・)て(・)消(・)え(・)、"西行の大桜"(嘗ての美しい大桜)へと還る』

『――紫。私達のかけがえのない親友。貴女と出逢えて、本当によかった。皆が愛した"西行の大桜"(あの大桜)と共に、幽々子(亡霊の私)も還る。亡霊の幽々子(あの娘)と出逢ってからの今まで以上に、沢山仲良くしてあげてね』

 

 

―――私の傍を離れ、桜吹雪と共に流れる様に二(・)人(・)の(・)姿(・)形(・)が(・)消(・)え(・)て(・)い(・)く(・)。手を伸ばすけど、二人は桜吹雪と共に離れていき―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『――さようなら、私達の大好きなひと』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

~八雲邸 紫の自室~

 

 

「――逝っちゃダメッ!!」

 

 

―――手を伸ばして跳ね起きると、視界に見慣れた自室の光景が広がる。涙が頬を伝う感覚と共に、親(・)友(・)二(・)人(・)と(・)再(・)会(・)し(・)た(・)あ(・)の(・)情(・)景(・)を夢(・)と(・)は(・)思(・)え(・)な(・)い(・)程(・)鮮(・)明(・)に(・)思(・)い(・)出(・)す(・)。

 

 

「夢...じゃなかった...?...行かなきゃ...確かめないと...」

 

 

 布団から出て立ち上がり、『スキマ』を開き―――

 

 

 

 

 

~白玉楼 大桜の丘~

 

 

―――ドサッ...

 

 

「っ...?!頭打ったぁ...」

 

 

―――『スキマ』から出る時に足に力が入らず、頭から地面に落ちる様に出てしまってそのまま頭を打った痛みで頭を抱えて突っ伏す。

 

 

「「――紫様ッ!!」」

 

 

―――突っ伏してすぐ、聞き慣れた式神二人が駆け寄って来た気配を感じ、私が出て来た事に驚き、心配する声が聞えて来る。

 

 

「だ、大丈夫ですか...?」

「えぇ...大丈夫...それよりも...」

 

 

 橙にそう答えながら起き上がり―――目の前の光景に言葉を失う。

 

 

―――妖(・)力(・)を(・)完(・)全(・)に(・)失(・)っ(・)た(・)『西行妖』―――否、『西行の大桜』が満(・)開(・)で咲き誇っている。その根元で―――

 

 

 

 

 

 

 

「...ぅ...ん...?」

「――幽々子!」

「幽々子様ッ!!」

 

 

―――妖夢と影政に抱えられ、意識が回復して薄らと目を開け、妖夢に抱き締められる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ダッ...!

 

 

 

 

 

 

 

 

「...ゆか――」

「~~~~~~~!!」

 

 

―――亡(・)霊(・)の(・)親(・)友(・)が確かに還(・)っ(・)て(・)来(・)た(・)嬉しさと、その為に親(・)友(・)二(・)人(・)が(・)消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)喪失感と悲しみ。

 

―――相反する感情が混ざった涙を流し、言葉にならない思いの丈をぶつけながら幽々子を思いっ切り抱き締めた。

 

 

―――to be continued―――

 

 

 

*1:
生をいとう私であるから、桜よ、私も共に散らしてしまっておくれ





春雪異変、解決!

オリジナル展開として、『西行妖』の"妖怪桜"としての面を討ち元の大桜に戻して、且つ幽々子も消えない展開にしてみました。

いやはや、難産でした()

何とか形にはなったものの、何度読み返しても満足出来ない自分が居る...いつかいいアイデアが浮かんだら書き直すやもしれぬ。

さて次回、EX――も、Phもスキップじゃい!ゆかりんのメンタルが落ち込んでいるのにやらせられるか!

という事で、次回は〆の宴会です。
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