東方護郷譚・廻~幻想を護る者達~   作:しがない東方二次創作者

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春雪異変解決の宴会です。


春雪異変-終幕~遅い見頃の桜の下~

~白玉楼 大桜の丘~

 

side-文

 

「これはこれは見事な...幻想郷(現世)の桜が霞んでしまいますね」

 

 

 『冥界』の管理拠点たる『白玉楼』。その敷地内にある庭園の中心、小高い丘に聳える大桜を見上げながら率直な感想を零す。

 

 

「霊夢が言っていたけど、あんな大桜が幻(・)想(・)郷(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)得(・)る(・)程(・)の(・)妖(・)力(・)を溜め込んでいて、あわや放(・)出(・)さ(・)れ(・)る(・)寸(・)前(・)まで状況が悪化したらしいから驚きだね」

「そして、それを止めたのが霊夢さんや影政さんで(・)は(・)な(・)い(・)ら(・)し(・)い(・)ですから尚更驚きですねぇ。詳しく顛末を聞きたいですが――」

 

 

<「――――まさか封(・)じ(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)も(・)の(・)を(・)暴(・)こ(・)う(・)という愚行に奔るとは思いませんでした。親友二人がそれに関わる情報を徹底して伏せていたことから触(・)れ(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)と解っていた上で、自(・)分(・)の(・)好(・)奇(・)心(・)を優先し――結果的に阻止できたとはいえ幻(・)想(・)郷(・)に(・)危(・)機(・)を(・)齎(・)す(・)寸(・)前(・)まで状況が悪化してしまった。貴女は――――」

 

 

「――あれはまだまだ掛かるねぇ。取材は宴会中になるんじゃないかね」

「そうですね。それまで手持ち無沙汰になりますし、準備でも手伝いますか」

 

 

―――大桜が聳える丘を桜の木々が囲う庭園の一角で、今回の異(・)変(・)の(・)首(・)謀(・)者(・)だという幽々子さん。何故か紫色の着流しの寝巻き姿で髪も乱れている紫さん。そして点々と『弾幕ごっこ』のものと思しき被弾痕が服に付いている影政さん。

 この三人を正座させてお(・)得(・)意(・)の(・)お(・)説(・)教(・)を垂れる映姫さん(閻魔様)を見て魅魔さんと揃って苦笑し、彼女にそう言い置いて離れ屋敷の台所に向かう。

 

―――霊夢さんが鼻息荒く神社に帰って来るなり、『異(・)変(・)解(・)決(・)したから宴会やるわよ!』と宣言した事を受け、神社で留守番を任されていた魅魔さんと(偶然話を聞き付けた光の三妖精と)揃って取材ついでに宴会に参加する事を決め、その会場であるここ『冥界』に足を運んでいる。

 その『冥界』に向かう道中のあちこちで、急(・)速(・)に(・)雪(・)が(・)解(・)け(・)、春(・)の(・)草(・)花(・)が(・)次(・)々(・)伸(・)び(・)て(・)い(・)た(・)のを目撃し、異(・)変(・)解(・)決(・)が確かに成ったのだと実感した。

 

 

<「成程、これは見事な桜だね」

<「こんなに桜があるなら、冥界(ここ)で過ごす霊魂も寂しい思いはしないのでしょうね」

<「でも、この桜が一(・)瞬(・)感(・)じ(・)た(・)あ(・)の(・)妖(・)気(・)の元凶だったなn「ルーンお兄様ー!」うぉ、っと...!フラン、君が居るってことは...」

<「えぇ、私達も来ているわよ。あ(・)っ(・)と(・)い(・)う(・)間(・)に(・)雪(・)が(・)溶(・)け(・)て(・)暖(・)か(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)から戸惑ったけど――無事に解(・)決(・)は成ったようね」

 

<「お、阿求か。慧音は――流石に来れないか」

<「急(・)激(・)に(・)雪(・)解(・)け(・)と(・)春(・)の(・)陽(・)気(・)が(・)到(・)来(・)しましたからね。『人里』で混乱の収拾と状況確認を行っています。私も手伝いたかったのですが、"私の分も楽しんでこい"と言われまして...」

<「そうか...ちゃんと春(・)が(・)戻(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)なら良かった。慧音と一緒にあの大桜を見ながら飲めないのは少し残念だけど仕方ないか。...ちょっと待て。慧音が居ないならどうやってここに来たんだ?」

<「『人里』でレミリアさん達と出会しまして、美鈴さんに背負ってもらったんです」

 

<「さぁ、今回はこのお屋敷の探検よ!『紅魔館』ではメイド長に見つかって連れ戻されちゃったけど、ここにはあんな一(・)瞬(・)で(・)移(・)動(・)す(・)る(・)人(・)間(・)は居ないはず...!」

<「またサニーは懲りずに...ここにはメイド妖精なんて居ないし、どうやって忍び込むの?」

<「私達の能(・)力(・)ならそうそうバレない...はずなんだけどね」

 

 

「――しかし、生者が幽世(死後の世界)に居ていいのかしら。『幽明結界』が曖(・)昧(・)化(・)しているのは来る時に確認したけど、これが原因で幻想郷の生死の輪廻が破綻したら...」

 

 

 庭園のあちこちで談笑や準備を進める参加者達を横目に歩きながら独り言を漏らす。

 本来生(・)者(・)が(・)幽(・)世(・)に(・)入(・)る(・)事、死(・)者(・)の(・)霊(・)魂(・)が(・)勝(・)手(・)に(・)現(・)世(・)に(・)戻(・)る(・)事は許されない。幻想郷での生死の輪廻を維持し、前述の許されない事を防ぐ為に現世と幽世を別け隔てる『幽明結界』が構築されているけど―――私達が『冥界』に入る際に利用した春(・)を(・)吸(・)収(・)し(・)て(・)い(・)た(・)という結界によって、生(・)者(・)と(・)死(・)者(・)の(・)行(・)き(・)来(・)が(・)容(・)易(・)に(・)な(・)る(・)程に曖(・)昧(・)化(・)していた。これがどの様な影響を与えるか―――

 

 

―――スッ...

 

「――大丈夫、少なくとも輪(・)廻(・)の(・)破(・)綻(・)は起きない。結(・)界(・)の(・)崩(・)壊(・)は幸いにも起きていなかったからな」

「――あやや、思ったより早かったですね」

 

 

―――目の前に"すきま"が開き、藍さんと橙ちゃんが出て来る。冥界(ここ)に入る時に春(・)を(・)吸(・)収(・)し(・)て(・)い(・)た(・)結(・)界(・)の調査を行っていたのを見かけたけど、どうやら終わったらしい。

 

 

「――とは言え、『幽明結界』そ(・)の(・)も(・)の(・)が(・)曖(・)昧(・)化(・)していてな...自(・)我(・)が(・)強(・)い(・)霊(・)魂(・)であればす(・)り(・)抜(・)け(・)て(・)行(・)き(・)来(・)で(・)き(・)る(・)可能性がある」

「――それ、結構問題では?冥界(ここ)を漂う霊魂の大半は問題ないでしょうが、『地獄』に堕ちた霊魂にはそういう自我が強い――諦(・)め(・)が(・)悪(・)い(・)ものも居るでしょう」

「だから、紫様や映姫様と『幽明結界』の問題について話し合いたかったが...説教(取り込み)中だったのでな。準備の手伝いに来た次第だ」

 

 

 藍さんはそう言って困った表情を浮かべる。やはり、『幽明結界』には厄介な問題が生じている様だ。解決には結界の構築に直に携わったであろう紫さん(境界の賢者)か映姫さん(閻魔様)の力が必要だろう。

 

 

「成程。私も取材ができないので、同じようにお手伝いに向かっている所だったんですよ。一緒に行きましょうか」

「そうさせてもらおう。大所帯だし、幽々子様も居る。人手は多いに越したことはない」

 

 

 藍さん、橙ちゃんと共に台所に向かう。

 

―――幽世である『冥界』で、今季最初の宴会。異(・)変(・)に絡む問題は幾つかあるけど、今は異(・)変(・)解(・)決(・)を祝い、花見酒を楽しむとしよう。

 

 


 

side-妹紅

 

「――妹紅さん、今お一人ですか?」

「あぁ、今のところはそうだね。カニンも一人か?」

「はい。(Ja.)台所の後片付けが終わりましたので、今から宴会に加わります」

 

 

 宴会が始まって二十分程。飲み騒ぐ参加者連中から少し離れた場所に陣取って『西行妖』―――の本来の姿である『西行の大桜』を眺めながら酒を飲んでいると、酒瓶とグラス、幾つかの肴を乗せたお盆を持ったカニンが話しかけてくる。

 

 

「そうか。...でも、影政の所に行かなくていいのか?」

「主様は映姫様のお(・)説(・)教(・)が終わった後、そのまま紫様と幽々子様とご一緒に宴会に加わっていたので...今は親友のお二方との語らいを優先させようかと」

「...それがいいかもな。分かった、私でいいなら付き合おう」

「ありがとうございます(Danke.)」

 

 

 カニンが空いていた私の隣に座り、彼女が手に取ったグラスに酒を注いでやる。

 

―――影政から幽々子や『西行の大桜』に絡む過(・)去(・)を聞いた身としては、カニンの言葉に納得出来た。妖(・)夢(・)に(・)憑(・)依(・)し(・)た(・)妖(・)忌(・)が現れ、『西行妖』を斬(・)る(・)とまるで最(・)期(・)の(・)輝(・)き(・)の様な弾幕が展開された。弾幕が治まり―――気(・)絶(・)し(・)た(・)幽(・)々(・)子(・)が現れて影政と妖夢が介抱している最中に、寝間着姿で髪も乱れた紫(境界の賢者)がらしくも無く慌てた様子で現れた。

 紫(境界の賢者)と幽々子は恐らく、私達が『西行妖』と対峙した時に起きた一連の出来事を知らない。なら、影政が親友として話すべきだろう。

 

 

「妹紅さん、異(・)変(・)解(・)決(・)お疲れ様でした。一緒に台所を受け持った咲夜さんや藍さんから簡単に聞きましたが...かなり危ない局面まで陥ったそうですね」

「あぁ。まさかあんな膨(・)大(・)な(・)妖(・)力(・)を溜め込んでいたなんて予想外だったよ。あれは封(・)印(・)して当然だったし――討(・)て(・)た(・)おかげでもうあの桜が幻想郷を脅かすことはない。...でも、代(・)償(・)は大き過ぎた。確か妖夢も台所を受け持っていたよな。...大丈夫そうだったか?」

 

 

 カニンにそう答えながら、脳裏に『西行妖』を討(・)っ(・)た(・)妖忌が消(・)え(・)て(・)逝(・)っ(・)た(・)瞬間を思い返す。―――ある日突然失(・)踪(・)したのは、『西行妖』を討(・)つ(・)為の剣技を会得したからだったという。それが魂魄家に課された密(・)命(・)だと妖忌(アイツ)は言っていたけど―――折角再会出来たのに二(・)度(・)と(・)会(・)え(・)な(・)い(・)結果になってしまった事は、妖夢にとって酷く辛い事だろう。

 

 

「...ふと見ると上の空だったり、暗い表情を浮かべてため息を吐いていました。私とは違って、家族と――大(・)切(・)な(・)人(・)と二(・)度(・)と(・)会(・)え(・)な(・)い(・)のですから。藍さんも咲夜さんも彼女を休ませようとしていましたが...『何(・)か(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)と(・)悲(・)し(・)み(・)に(・)沈(・)ん(・)で(・)し(・)ま(・)う(・)』と泣きそうな表情で言われてしまっては、止めるに止められず」

「...家(・)族(・)の(・)喪(・)失(・)を目の当たりにしちゃそう簡単に立ち直れないよな」

「妖忌様が失(・)踪(・)されてしまった時も、一日中泣いていましたから。今回はその時よりも辛いでしょう」

 

 

 カニンはそう言って辛そうな表情を浮かべる。

 

 

「...でも、いつまでも泣いてる訳にはいかないのも事実だ。妖夢は当代"冥界の庭師"――跡継ぎができるまで役目を果たさないといけない」

「そうですね。――剣術の師である主様と、直接の主である幽々子様が立ち直る支えとなることを祈りましょう」

「そうだな。――辛気臭くなっちゃったな。折角満開の桜があるんだ、花見酒を楽しまなきゃ、なっ...ぷはっ」

 

 

 辛気臭さを飲み込む様にグラスの酒を一気に呷り、グラスを空にして息を吐く。

 

―――今回の異(・)変(・)解(・)決(・)の代償は大きいけど、宴会は異変の首謀者(敵)も異変の解決者(味方)も関係無く飲み騒いでしがらみを無くす事が目的だ。

 

―――影政、上手い事妖夢(弟子)と紫と幽々子(親友二人)を立ち直らせてくれよ。

 

 


 

~白玉楼 縁側~

 

side-影政

 

「...スゥ...スゥ...」

「...あら、泣き疲れて寝ちゃったみたいね」

「妖忌が失(・)踪(・)した時以上に泣きじゃくったもの。――これだけ泣いて、思いを吐き出したなら立ち直れるでしょう。妖忌(祖父)譲りで芯が強い子だしね」

 

 

 幽々子は紫にそう返しながら、そっと自身の膝に妖夢の頭を乗せて優しく妖夢の銀髪を梳く。縋る様に頭を寄せて寝息を立てる様子は、普段より幼く見える。―――退行を見せる程に、妖夢の精神に妖(・)忌(・)の(・)喪(・)失(・)は重くのしかかっていた様だ。

 

―――『――妖夢、不(・)相(・)応(・)な(・)強(・)が(・)り(・)は(・)止(・)め(・)な(・)さ(・)い(・)。今は宴会、無礼講よ。――私でいいなら、そ(・)の(・)心(・)の(・)内(・)の(・)全(・)て(・)を(・)受(・)け(・)止(・)め(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)から』

 

 幽々子と紫に異(・)変(・)解(・)決(・)の顛末を話す為、宴会の喧騒を避けて『白玉楼』の『西行の大桜』を眺められる縁側に集まり、一緒に持って来た酒や肴の給仕をやろうとした妖夢に対して幽々子が掛けた言葉で彼女の強がり―――我慢が限界に達した。友(・)人(・)の(・)喪(・)失(・)を目の当たりにして、またしても平(・)静(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)だった俺とは正反対だった。

 

 

「...影政は相変わらず涙を流さないのね。寧ろ、そのおかげで安心できるわ」

「そうか?共に剣術を研鑽し、飲みにも付き合ってくれた友人を喪って悲しいというのに涙も流せないというのは、異常じゃないか?」

「ちゃんと心の中では悲しんでいるって解っているからこそよ。悲しんでいる上で、貴方は変わらず普段通り。――その姿を見ていると、自分も悲しんでばかりじゃなく前を向かないとって思えるの」

 

 

 紫はそう返して微笑む。―――大(・)切(・)な(・)も(・)の(・)の(・)喪(・)失(・)を何度も目の当たりにして来て、涙も流さず平静なままである事で紫(親友)に前向きな影響を与えている様だ。

 

 

「普通ではないけど、それが貴方らしいのだから気に病まないで。――それに、落ち着いているからこそ顛(・)末(・)を知ることができる」

「――そうね。私も話したいことがあるし、異(・)変(・)解(・)決(・)を直に知る貴方の話も聞きたい。――それに、『西行妖』がなくなった今なら私(・)と(・)影(・)政(・)が(・)伏(・)せ(・)て(・)い(・)た(・)こ(・)と(・)も話せる」

「――そうだな。俺達がそれぞれ知ることを互いに明かそう――――」

 

 

 紫の言葉に頷き、各々が知る事を話していく。

 

―――幽々子が『西行妖』の封(・)印(・)を(・)暴(・)い(・)た(・)事で幻(・)想(・)郷(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)か(・)ね(・)な(・)い(・)妖力が放たれかけた事。

―――妖忌が妖(・)夢(・)に(・)憑(・)依(・)し(・)て(・)現れ、己(・)を(・)犠(・)牲(・)に(・)し(・)て(・)『西行妖』を討(・)ち(・)、幽々子を還(・)し(・)た(・)事。

―――紫が夢で幽と生(・)前(・)の(・)幽(・)々(・)子(・)と再会し、『西行妖』を討(・)つ(・)という秘(・)策(・)を実行した事を明かし、それが成った事で二人は消(・)え(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)事。

 

―――そして、幽(紫の初めての親友)と、生前の幽々子(二人目の親友)が居た事で今俺達と共に居る幽々子が生まれた事。

 

―――今回の異(・)変(・)に密接に絡む、俺(・)と(・)紫(・)が(・)伏(・)せ(・)て(・)来(・)た(・)過(・)去(・)も含めて互いに話せる事を話した。

 

 

「――ごめんなさい、二人共。貴女達の想いを知っていながら私(・)自(・)身(・)の(・)好(・)奇(・)心(・)を優先した結果――親(・)友(・)や(・)従(・)者(・)を(・)置(・)い(・)て(・)先(・)立(・)ち(・)か(・)け(・)た(・)だけでなく、幻(・)想(・)郷(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)か(・)ね(・)な(・)い(・)事態を招いてしまった」

「こっちこそ、ごめんなさい。――貴女の好奇心を知っていながら、明かしてどんな影響が出るか怖くて話せなかったせいで、今回の異(・)変(・)に繋がってしまった」

「すまなかった。いつかはバレるだろうから明かすべきだと俺は思っていたが――紫に三(・)度(・)目(・)の(・)喪(・)失(・)を味わわせたくなかったが故に伏せ続けることを選んでしまった。――その結果、大(・)き(・)な(・)代(・)償(・)を支払う異(・)変(・)解(・)決(・)になってしまった」

 

 

―――互いに話すべき事を話し終え、互いに謝る。それぞれの想いがすれ違った結果、今回の異(・)変(・)が起きてしまい―――解(・)決(・)の為に大(・)き(・)な(・)代(・)償(・)を支払う結果となってしまった。もう、幽と生(・)前(・)の(・)幽々子、そして妖忌が戻って来る事は無い。だが―――

 

 

「――三人とは二(・)度(・)と(・)会(・)え(・)な(・)い(・)。でも、私達が共に過ごした記憶と思い出は私達の中にある。――私(・)達(・)が(・)想(・)う(・)限り、三人が完(・)全(・)に(・)死(・)ぬ(・)ことはない」

「そうだな。それに、こうして幽々子を――親(・)友(・)を(・)喪(・)う(・)ことが避けられた。俺としてはそれが何より嬉しい」

「――結果的に防ぐことができたけど、私が幻(・)想(・)郷(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)か(・)け(・)た(・)のは事実よ。――そんな私を、親友と言ってくれるの?」

 

 

 幽々子の瞳が不安そうに揺れる。

 

 

「幽と生(・)前(・)の(・)幽々子との繋がりも含めれば、どれだけ永く付き合っていたと思ってるの?――確かに貴女が異(・)変(・)を起こして幻想郷に及ぼした影響は大きかったし、幻(・)想(・)郷(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)か(・)け(・)た(・)ことは許せるものではないわ。でも――」

 

 

 紫は笑みを浮かべながら幽々子の手を握る。

 

 

「――異(・)変(・)解(・)決(・)が成り、こうして宴会をしている。異変の首謀者(敵)と異変の解決者(味方)の関係はもう解消されているわ。だから、貴女はこれからも私達のかけがえのない親友で居ていいの」

「――幻(・)想(・)郷(・)を(・)滅(・)ぼ(・)し(・)か(・)け(・)た(・)事実が消える訳ではないが、これからも"冥界の管理者"として、幻想郷を護ることに寄与してくれれば償いになる筈だ。――無論、俺も親友であることを今更断とうとは毛頭思わない」

「――あぁ...本当、私は素晴らしい親友に恵まれたわね」

 

 

 幽々子は一瞬呆けた表情を浮かべ、安心した笑みを浮かべる。

 

 

「――改めて、これからもよろしくね」

「えぇ、改めてよろしくね幽々子!――幽と生前の幽々子(嘗ての親友二人)の分も合わせてもっと仲良くするから!」

「――改めてよろしく頼む、幽々子」

 

 

 幽々子が差し伸べた手を握る。―――"亡霊"故に人肌より冷たいが、不思議と温もりも感じる手だった。

 

 

「――さて、俺達の間で話すべきことは話し終えた。改めて宴会に加わるか?」

「是非ともそうしたいけど...妖夢がこのまま起きないようなら寝室に寝かせてから行くわ」

「私は影政と一緒に行くわ。文(ブン屋)も阿求も、私達から話を聞きたいでしょうしね。...んー、これとあれと...これくらいあれば大丈夫かしらね...これだけじゃ間違いなく貴女のお腹は満たせないでしょうけど、会場から持ってきたわ。一応妖夢の分も含めてるから、独り占めはダメよ?」

 

 

 紫はそう答えながら"スキマ"を通して会場から肴や料理、酒を適当に見繕って取り分け、盛り付けた皿や小鉢を"スキマ"から出して置いていく。―――凡そ男二人の腹を満たせそうな量だが、普段の幽々子ならす(・)ぐ(・)に(・)平(・)ら(・)げ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)だろう。

 

 

「ふふ、それは妖夢(この子)次第ね。でもありがとう。大事にいただくわ」

「じゃあ、私達は行くわ。――多分藍が『幽明結界』を調べている筈。まずはその報告を聞かなきゃね」

「春(・)を(・)吸(・)収(・)す(・)る(・)結(・)界(・)を無理矢理構築していたからな。その影響次第では――」

 

 

 幽々子と別れ、"スキマ"を通って会場に戻ると―――

 

 

 

 

幻神「飯綱権現降臨」

「橙を泣かせた罰だ!潔く受けろ!」

 

 

霊符「夢想封印・集」

「マヨヒガ(あそこ)には偶然入っただけだし、橙(あの猫)から襲ってきたんだから私は悪くないっての!」

 

 

「いいぞー!やっちまえ霊夢ー!」

「ら、藍様頑張って...!でも大丈夫かな...弾幕で桜が散ったりしちゃったら...」

「いい画ですねぇ。満開の大桜と弾幕の組み合わせがこうも噛み合うとは...!」

 

 

―――酔っているのか少(・)し(・)顔(・)が(・)赤(・)い(・)霊夢と藍が『西行の大桜』の上空で『弾幕ごっこ』を繰り広げ、それを肴に魔理沙達が飲み食いをしている光景が広がった。

 

 

「――君達が戻ってきたってことは、親友同士話すべきことは話したのかな?」

 

 

 紫と揃って状況を飲み込めずにいると、俺達に気付いたルーンが話しかけて来る。

 

 

「――ルーンか。その通りだが...何故『弾幕ごっこ』が始まっているんだ?」

「...藍の式神――橙がどうやら異(・)変(・)の最中に霊夢に手酷くやられたらしくてね。――その仕返しだって藍が霊夢に絡んで、霊夢がそれを受けて今現在拮抗中。魔理沙が二人の勝敗で賭けまで始めて、今の所は霊夢の勝利に賭けてる方が多いよ」

「...霊夢は兎も角、藍は何してるのよ...橙が可愛いのは解るけど、らしくもない...」

 

 

 ルーンの説明を聞いて紫は呆れと困惑が混ざった表情を浮かべてため息を吐く。

 

 

「二人共、そこそこ呑んでいたからね。藍は酔って理性で抑えられなかったんだろうと思う」

「大(・)桜(・)へ(・)の(・)被(・)弾(・)を避けている辺り、まだ理性は残っているようだが...紫、どうする?」

「...少し見守りましょうか。宴会だし、皆楽しんでいるならそれに水を差すのも無粋だしね。...でも、大桜まで巻き込んで桜(・)が(・)散(・)る(・)事態にまでエスカレートしそうなら止めるわ」

 

 

 紫はそう言って"スキマ"を通して酒瓶とグラス二つを取り寄せる。

 

 

「藍にお説教して報告を聞かなきゃいけないからあまり飲めないけど、『弾幕ごっこ』と『西行の大桜』を肴に楽しみましょうか」

「あぁ、そうしよう」

「僕はお邪魔虫になるね。二人も宴会を楽しんで」

 

 

 俺達の傍を離れるルーンを見送り、紫からグラスを受け取って互いに酒を注ぐ。

 

 

「――幻想郷を、親友を護れたことを祝って」

「――全身全霊で幻想郷と親友を護ってくれた大切な人達を想って」

 

 

―――グラスの縁を軽くぶつけ、酒を呷る。

 

―――喪ったものは大き過ぎたが、最(・)悪(・)は避けられた。願わくば、この様な事態が起きない事を。

 

 

―――春雪異変 終幕―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~冥界上空~

 

 

―――サァァ...

 

 

「――幽々子のヤツ、とんだタイミングで異(・)変(・)を起こしたな。宴もたけなわのこの時期に...これじゃ宴会が少なくなっちまう。結局影政の目覚めを祝う大宴会もやる気はなさそうだし――やれやれ、私が動くしかないか」

 

 

...サァァ―――

 

 

Next dream...東方萃夢想

 

 





春雪異変、終了!そして続けて萃夢想編!

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