~幻想郷上空~
side-萃香
―――サァァ...
「――さーて、そろそろ始めるか」
幻想郷中に散らばる自分自身を萃めて実体化し、軽く伸びをしながら呟く。眼下に広がる幻想郷を一目見回せば深緑の景色―――春の気配が過ぎ去っているのが見て取れる。
―――『春雪異変』として記録された冬が春まで長引く異変。紫と影政の親友である幽々子が、『西行妖』の封印の依代を暴く為に幻想郷中の春を吸収するというとんでもない手段を取った結果起きた異変だが、霊夢や影政の尽力で解決と成った。―――紫と影政にとって悲しい事もあったみたいだけど、それを詮索するつもりは無い。
―――『――隠岐奈、それは事実か?』
―――『残念なことにな。あるべき季節の流れに戻す為に春の気を無理矢理消費させたことで四季のエネルギーバランスが崩れてしまった。――還暦は来年に持ち越しだ』
―――『そうか..."仕事を増やすな"と命が怒るだろうが、仕方ないか』
―――『...紫様でも手の施しようがないのですか?』
―――『結界の曖昧化が全体に及んでいるから、戻すには"幽明結界"の再構築が必要よ。でも――一時的であろうと、生者と死者の境界そのものを無効化することは許されない』
―――『そうなれば..."彼岸"の方々に負担を掛けることになりますね』
―――『映姫に小言は言われるでしょうけど、その位は甘んじて受け止めるわ。ちゃんと理由を説明すれば彼女も解ってくれるでしょうし』
―――『春雪異変』は幻想郷全体に影響を及ぼした。本来なら今年来るはずだった還暦は来年に持ち越されたし、紫が主導して『彼岸』の連中と話し合い、曖昧化した『幽明結界』はそのまま放置し、崩壊を防ぐ為に監視する事になって『彼岸』の連中の仕事が増えてしまった。
―――何より一番大きな問題は、春の到来が遅れた上、春の終わりは例年通りという事だ。農家連中は本来なら終えている春の作業に追われたし、長引き過ぎた冬で備蓄が枯渇寸前に陥って人間達はその補填にも追われた。それが意味する事は―――
「――全く、幽々子も酷いことをしたもんだとつくづく思うね。一番宴会が多い春を短くしてくれちゃって...おかげでこっちは欲求不満だよ」
―――仕事や異変の後始末で誰もが宴会をする暇が無く、例年と比べて活気が無かった。大勢集まって飲んで騒ぐ宴会を愛する"鬼"としては、不満な事この上無い。
―――だから、私は行動を起こす。『春雪異変』よりはずっと穏当―――幻想郷では当たり前の様に催されているものをちょっと頻度を上げて催させるだけだ。
「紫や影政はすぐに気付くだろうけど...やろうとしてることは穏当だし、親友として大目に見てくれる筈」
脳裏に紫と影政の姿が浮かぶけど、大丈夫だと自分に言い聞かせる様に頭を振る。―――鬼は嘘が嫌いだ。やると決めた以上、反故にはしない。
「――さぁさぁ萃まれ数多の意思よ。宴に人間も妖怪も関係ない。しがらみ越えて飲め騒げ。――その喧騒を地の底の仲間達まで届けておくれ」
サァァ...
―――能力で自身を限りなく疎にして幻想郷の住人達の周りへ漂っていく。後は―――
~博麗神社 境内~
side-霊夢
「いやー飲んだ飲んだ。こう宴会が多いと飽きが来そうだが、結構楽しめるもんだなぁ」
「宴会なんてあまりいい思い出はなかったけど...最近何度も参加したせいか楽しみになって来たわね」
「夢美とちゆりも宴会の楽しさが分かってきてるみたいで何よりだ。私達もそろそろ帰るか。――じゃあな霊夢、三日後の幹事は任せとけ!」
「はいはい。次からはアンタ達二人も持つもの持って来なさいよ」
そう言って箒に跨って月夜に飛び立つ幼馴染と元人間の"魔法使い"二人を見送る。さっきまで酒の臭いと喧騒に満たされていた境内はすっかり片付けられ、普段通りの静寂が場を支配している。でも―――
「――やっぱり、おかしい」
―――前回、三日程前に『紅魔館』で催された宴会の時以上に妖気を濃く感じられる。宴会の参加者が人間より妖怪の方が多いせいだと見做す事も出来ない程に妖気が濃い。
"桜の見納め"だと幽々子が催した宴会以来、短い春で出来なかった分を補う勢いであちこちで宴会が行われる度に、妖気は濃くなっている。これは間違い無く―――
「ここまで濃いと、私以外に気付ける連中も出る筈...三日後の宴会――これがタイムリミットになりそうね」
―――スゥッ...
「――明日から動き出すつもりかい?」
「そのつもりだけど――もし、アンタがこの妖気の元凶なら今すぐこの場でぶっ飛ばすわよ」
「おぉ、怖い怖い。――でも生憎、この妖気は私じゃないね。幻想郷全体で感じられる程の妖気を使える奴はかなり限られる。流石に私でもそんな妖力は出せない」
「幻想郷全体で感じられる、ねぇ。幻想郷中を見ているつもりかしら」
私の隣で実体化した魅魔は肩を竦めて答える。どうやらこっちで宴会の後片付けをしている最中に幻想郷中を見て来た様だ。速攻異変解決は無理そうだけど、幻想郷中でこの妖気は感じられるという情報を得られた。
「――とは言え、妖気を放っているヤツの意図が読めないね。妖怪共の気が立って暴れるってことも無いし、今の所は怪しい場所も無い」
「大した問題じゃないわ。分からないなら虱潰しに怪しい奴をぶっ飛ばすだけよ」
「...相変わらずだねぇ」
私の方針に魅魔は呆れた表情を浮かべる。魔理沙からも偶に『もう少し考えて動けよ』と言われたりするけど、自分の感覚が外れた事は無いからそれを主体にする事の何が問題なのか未だに分からない。
「...兎に角、私は明日から異変解決に向けて動くわ。それに備えてさっさと寝るとしましょうか」
「あぁ、そうするといいさ。――そうだ。私も明日から霊夢について行くよ。偶には身体を動かさにゃ腕が鈍るし――この妖気の元凶がどんな奴か気になる」
「――珍しいわね。別に私一人でも解決はできるけど...ま、ついて来るなら精々足手纏いにならないでよ」
魅魔が私に同行すると宣言し、珍しさで眉を上げながらそう返して母屋に歩き出す。―――魅魔が私について来るなんて『博麗の巫女』就任当初の頃以来だろうか。あの時は右も左も分からなかったから頼りになったけど、今回は出来れば魅魔を支援に徹させて充分一人でもやっていける所を見せ付けてやりたい所だ。
「言うようになったねぇ。ますます明日から楽しみだ。巫女就任当初みたいに、不満たらたらで私に助けを求めてきたら大いに笑ってやるよ」
魅魔の冗談めかした挑発を聞き流しながら歩いていく。
―――さて、明日はどこから調べて行こうか。
~幻想郷西方 上空~
side-魔理沙
「...うーむ...」
「魔理沙、さっきから唸り続けて...どうしたの?」
「あぁ、すまん。――ここ最近の宴会の頻度の高さが妙だと思ってな」
『魔法の森』への帰路。推理がまるで纏まらないもどかしさで唸っていたのが聞こえていたのか、夢美が私の顔を覗き込みながら尋ねて来る。
「...あー、確かに考えてみれば今までより頻度が高い気がするな。でも、それって春が短かった分を取り戻す為じゃないのか?」
「――そんな単純ならよかったんだがな。――二人は宴会で感じてないか?何というか...こっちを見ているような薄い妖気を」
ちゆりの言葉に対してそう質問を返すと、二人は思い出す様に考え込む。
「...そう言えば、魔力とは違う希薄な力を前回の宴会から感じ始めてるわ。成程、あれは妖気だったのね」
「...あぁ、そうか。あれは妖気か。それなら私も教授と同じ時期から感じているな」
考え込んで数秒、二人揃って感じていると答える。私しか感じていなかったら気のせいの可能性があったが、この二人も感じているというなら―――
「――これは異変だ。妖気なんて宴会には必要ないものが存在しているのはおかしいだろ?」
「確かにおかしいけど――異変と判断するには理由が弱くないかしら?希薄な妖気と頻度が高い宴会の因果関係の有無も分からないのよ?」
「それを明日から調べるのさ。普段と違うものが存在する――仮に異変じゃなかったとしても調べて解決する価値はあると思うぜ?」
私の判断に夢美が異を唱えるが、私は明日から動くと今決めた。異変ではなかったとしても、妖気が日常的に漂う様な状況が続けば不安になる人間も出るだろうし、妖怪が影響を受ける可能性もある。
「...確かにそうね。――丁度いい機会だし、ちゆりを同行させていいかしら?」
「「――は?」」
私の反論に頷いた夢美の提案に、ちゆりと揃って変な声をあげる。
「やっぱりそっくりだわ...この二人が一緒に行動すると面白そうね...二度起きた異変と違って、今回は情報がかなり少ないのが現状。一対の目、一つの口、二本の足よりその二倍あった方がより早く、効率的に情報や手掛かりを得られると思わない?」
「確かに人手があれば助かるが...夢美は一緒に来ないのか?」
「私は私で調べてみるから大丈夫よ。――ちゆりには研究の息抜きがてら外で何か行動して欲しいの。買い出しとかおつかい以外だと、文句を言いつつもずっと私の助手として付きっ切りだったし、前に影政からも研究以外に興味を持てるものを見付けろって言われたしね」
どうやらちゆりに研究の助手以外の事をさせたくて私に同行させようとしているらしい。確かにちゆりが魔法の研究や買い出し以外で外に出ている所は殆ど見た事が無い。それに、ちゆりが『弾幕ごっこ』でどんな風に戦うのかも気になる。異変解決となれば『弾幕ごっこ』で戦う可能性も充分にあるしな。
「成程な。――ちゆりはどうする?夢美が良くてもお前自身がダメなら無理強いしないが」
「――研究ばっかの教授が、私にそんな気配りをするのは初めてだな。でも教授、一人で大丈夫か?助手が居ないとなると実験でミスった時のフォローはできないぜ?」
「大丈夫大丈夫!長期間にはならないでしょうし、最悪『る~こと』に頑張ってもらうから」
「アイツ魔法使えないだろ。なんでそんなに自信満々なんだか...」
ちゆりの確認の問いに夢美は自信満々に答えるが、ちゆりは呆れと不安が混ざった表情を浮かべる。『る~こと』―――嬉しそうにニコニコ笑いながら岡崎魔法研究所で家事を主に行っている、あの"アンドロイド"なる機械仕掛けの人形が魔法を使っている所は私も見た事が無いが大丈夫なのだろうか。
「...でも、折角の機会なのは確かだしな。――魔理沙。『弾幕ごっこ』も大してやってない未熟者でもいいなら、一緒に行かせてくれ」
「異変解決を争う間柄になるとちょっと問題だが、共闘する分には大歓迎だぜ!明日からよろしくな、ちゆり!」
ニカッと笑ってちゆりが差し伸べた手を握る。素直に共闘するなら大歓迎だ。今回こそは私の手で異変解決を成し遂げたい。それに、少なくとも霊夢は確実に気付いているだろうし、更に他にも出るかもしれない異変に気付くヤツらよりも先に異変解決を為にも―――
「――三日後の宴会がタイムリミットだ。私が異変解決して、宴会で霊夢に報告してやって鼻を明かしてやるぜ!」
―――私達を照らす月夜の空にそう宣言した。
~紅魔館 レミリアの私室~
side-咲夜
「――二人共ごめんなさいね。宴会の酔いもまだ醒めていないのに呼び出してしまって」
「お嬢様が謝られる必要はございません。お嬢様のご命令とあらば如何なる状況、状態であろうと馳せ参じますから」
「私も咲夜さんと同意見です。――しかし、珍しいですね。私まで一緒に召喚されるとは...」
お嬢様の私室。椅子に座っている、お酒での酔いで仄かに頬が赤いお嬢様の謝罪にそう返す。―――しかし、美鈴の言う通り彼女も一緒に呼び出すというのは珍しい。
―――『――咲夜。フランを寝かせたら美鈴と一緒に私の部屋に来てくれる?二人に頼みたいことがあるの』
―――『博麗神社』での宴会を終えた帰路でお嬢様から頼まれ、お酒での酔いと宴会での演奏ですっかり疲れてしまわれた妹様の就寝前のお世話をして就寝を見届け、こうして美鈴と共にお嬢様の前に居る。
「――さて、二人共。ここ最近の宴会で違和感を感じたことはない?どんな些細なことでもいいわ。気になったことがあったら挙げてみて」
「違和感ですか...」
「違和感...うーん...」
お嬢様の問いに美鈴と揃って考え込む。
―――『春雪異変』が解決されてから、ここ『紅魔館』や『博麗神社』、『白玉楼』、『牙門邸』。人が集まれる場所での宴会が度々―――大体三日おきに催されてきた。お嬢様は妹様と揃って欠かさず参加していたし、勿論私も欠かさず随行した。宴会が楽しかったのは当然だけど、違和感があったかと問われるとすぐには―――
「――宴会の参加者が人間より妖怪の方が多いせいだと思いますが、宴会の度に妖気が濃くなって漂っているのは何となく感じています。少し集中しなければ感じられませんし、何か影響を及ぼす程に濃い訳でもありませんが...」
「――その妖気が、私と近しい種族のものだとしたら、どう思う?」
―――美鈴が挙げた違和感が聞きたかったのか、お嬢様はニヤリと笑ってそう疑問を投げかけて来る。
「お嬢様と――"吸血鬼"と近しい種族となると...『太陽の畑』の中心にある館に住んでいる同族の方以外には...」
「その娘とは面識が薄いから何とも言えないけど、違うでしょうね。――私もぼんやりとしか解らないけど、宴会の度に濃くなるあの妖気には親近感があるの。――二人には、その"妖気の正体を突き止めて欲しい"」
お嬢様は真面目な表情で私達を見据えて頼みたい事を明かす。
「――それに私も参加してよろしいのですか?門番としての役目上穴を空ける訳には...」
「つい居眠りする位には暇で平和でしょう?せいぜい魔理沙が偶に図書館に突っ込んでくる程度で、妖怪が襲撃することなんて今まで一度もない。――だったら、小悪魔か適当な妖精メイドでも立たせておけばいいわ」
「うぐっ...で、ですが...私程度で咲夜さんのお力になれるのか...」
お嬢様の頼み事に難色を示すけど、現状門番の仕事が暇である事を突かれて怯みながらも美鈴はまだ食い下がる。
「貴女が自分の実力を実戦で確認できる数少ない機会だから、こうして頼んでいるのよ。門の傍で暇に過ごし続けるより、実際に戦う様を見せ付けて"紅魔館の門番"の実力を周りに見せ付けるいい機会にもなるでしょうし」
「...分かりました。微力を尽くして咲夜さんと共に異変解決に臨みましょう」
「よろしい。――咲夜も大丈夫ね?『春雪異変』解決に貢献している異変解決の先達として、美鈴をお願いするわ」
「正直春雪異変で貢献できていたのか自分では疑問に思いますが...お嬢様のご命令とあらば否やはありません」
お嬢様の言葉にそう返す。―――春雪異変を解決に導いたのは妖夢と幽々子に深く関わる方々であり、私はせいぜい怪しい妖怪を倒し、邪魔をして来た騒霊達を迎撃した程度だ。
―――でも、お嬢様からの頼み事はいい機会だ。今回こそは私...と美鈴の手で異変解決を成し遂げたい所だ。
「じゃあ、明日からお願いね。二人が居ない間の代行は私が適当に見繕っておくから。――三日後の宴会。そこで良い報告が聞けることを願うわ」
私達が頼み事を引き受けたと確認したお嬢様は、期待に満ちた笑みを浮かべてそう期限を設定した。
~牙門邸 居間~
side-カニン
「ん~、美味しいわ~♪」
「口に合ったようで何よりだが...俺手製の肴が目的ではないだろう。――もうすぐ日付が変わる。できれば早く用件を教えてほしいんだが」
主様が手早く作った筍と豚バラ肉を醬油で炒めたおつまみをお酒と共に美味しそうにいただく幽々子様に対して、主様は呆れた表情を浮かべながら催促する。夜更けに食べると増やしたくないものが増えてしまう可能性が高まるけど、"亡霊"である幽々子様には関係無い問題だ。―――時々そんな幽々子様の体質が羨ましくなる。
―――閑話休題。
―――『影政。宴会が終わったら、牙門邸にお邪魔していいかしら~?ちょ~っと、貴方にお願いしたいことがあるの』
―――『博麗神社』での宴会を終えて帰ろうとした時、妖夢さんを連れた幽々子様が主様にそう頼んで来た。主様は珍しいそうな表情を浮かべながら引き受け、こうして牙門邸の居間に集まっている。幽々子様が頼みたい事とは一体―――
「...ふぅ、ご馳走様~。美味しかったわ~♪――さて、本題に入るわね~。妖夢、カニンちゃん。二人はここ最近の宴会で何か違和感を感じたことはないかしら~?」
おつまみを食べ終え、最後の一杯で喉を潤してご満悦な表情を浮かべた幽々子様は口調は普段通りのまま、私と妖夢さんを見定める様な眼差しで見つめて問いかけて来る。
「違和感ですか...宴会の度に妖気を感じられること、とかですかね?」
「妖気は私も感じています。少し集中しなければ感じ取れない程に希薄で、妖怪に影響を及ぼすものでもありませんが...それから、妖気に関わるか否かは分かりませんが――宴会に参加するという意思が自分のものではないように感じられます」
「――成程ね~。何故そう感じるのかしら?」
妖夢さんの言葉に頷き、加えて私自身が感じた違和感を挙げると、幽々子様は呟いて満足そうに目を細めながら私に尋ねる。
「"玉兎"は個人差はあれど波長を操る特性を持っています。私も彼女に比べれば限定的ですが、波長のパターンや変化を読み取ることができます。
――桜の見頃が終わった頃から増えている宴会の頻度。これと同時に、意識を宴会に向けさせるような微弱な波を感じられるのです。
最初は強く意識しなければ分からない程に微妙で希薄な変化でしたが...今では少し意識すれば分かる程には強くなっています」
幽々子様にそう答えると、感心した様に頷き―――
「――流石カニンちゃんね~。貴女だからこそ気付けた違和感。実に有益な情報だわ~。――これなら、安心して明日から妖夢と一緒に解決をお願いできるわね~」
「――それが頼みたいことか」
―――続いた言葉を聞いて妖夢さんと揃って瞳を点にする隣で、主様が察した表情を浮かべている。
「その通りよ~。...妖夢には、他者との協力を通して新たな経験を積んで欲しいのよ~。その一歩として、妖夢と同じように従者としての役目を負う、同業の先輩であるカニンちゃんとなら、と思ったの。
この"頻度の高い宴会を取り巻く妖気の正体を突き止め、解決する"。...妖夢は兎も角、カニンちゃんが他にやるべきことがあるなら無理強いはしないけど、どうかしら~?」
―――どうやら、幽々子様は異変...とはまだ断定出来ない今の妙な状況を解決するに当たって妖夢さんと私とで協力させたいらしい。その理由には納得出来るし、私が力になれるのなら協力したい。でも―――
「――カニンが協力したいなら、俺は止めない。寧ろ、妖夢が幽々子の傍を離れることの方が不安だ。...主に食の面でな」
「そこは大丈夫よ~。私が使役する霊魂を使えば普通に食べられるものはできるから、少しは我慢できるわ~。...あ、そうだわ~!何だったら影政が作ってくれても――」
「――断る。常日頃お前の為に料理や菓子を作っている訳ではない。冥界の庭師は妖夢だ。解決したら存分に作ってもらえ」
「む~、相変わらず平等な腕の奮い方ね~...」
―――あっさりと私の意思に任せると言ってくれた主様が、幽々子様と会話を交わす隣で妖夢さんと顔を見合わせる。
「――いきなり協力しての解決を頼まれましたが、カニンさんはどうしますか?私は幽々子様のご配慮を無下にしたくありませんし...吸血鬼異変のように、従者としての先輩であるカニンさんと共闘できるのであれば嬉しいです」
「――主様が任せて下さいましたし、私で良ければ共に解決に臨みましょう。よろしくお願いしますね」
「――はい!よろしくお願いします、カニンさん」
幽々子様の頼みを受ける事を決め、妖夢さんと握手を交わす。『弾幕ごっこ』での異変解決は初めてだけど、妖夢さんを支えられる様に出来る事をしていこう。
「頼みを受けてくれてありがとう~。――じゃあ、三日後の宴会が普通に楽しめるように頑張ってね~」
私達が解決を引き受けた事を見届けた幽々子様は、笑みを浮かべて解決の期限を設定する。―――ここ最近の宴会を取り巻く妖気の正体は一体何なのか。そして、霊夢さんや魔理沙さんもあの妖気に気付いて動き出す筈。もしかしたら―――
side-影政
「じゃあ影政、妖夢はしばらく預けるわ~。お着替えや日用品は明日紫辺りに頼んで送るからね~。...私は春雪異変を起こした前科があるから、間違いなく問い質しに来るであろう他の解決者の相手をして妖夢とカニンちゃんをサポートするわ~」
「あぁ、任された」
妖夢がカニンに連れられて客室に向かったのを見届け、改めて幽々子から任される。
―――妖夢とカニンが幽々子から頼まれた"宴会を取り巻く妖気"の解決を引き受け、態々『冥界』から行き来するのは手間だという理由で妖夢はしばらく牙門邸に泊まる事となった。
「――さて、そろそろお暇しましょうか~。少しの間味気ない食事にはなるけど、それくらいは我慢しないとね~」
「二人にも大丈夫だと言ったんだからな。ちゃんと我慢しろよ?」
幽々子が立ち上がり、見送る為に玄関に向かう。
「――あぁ、そうだわ~。ねぇ、影政――」
「――もし動くなら、三日後の宴会にしてほしいわ。予感だけど、貴方と紫が動けばすぐに解決してしまうと思うから。妖夢とカニンちゃんだけじゃない。他にも出てくるであろう解決者に経験を積ませる為にもお願いね」
「――あぁ、分かった」
「それじゃあまたね~」
―――普段の雰囲気を払った幽々子の忠告を受け入れ、普段の雰囲気を纏い直してふわふわとした笑みを浮かべて夜空へ飛び立っていく幽々子を見送る。
「――やはり、幽々子は気付いているか」
彼女の姿が遠くに見えなくなり、呟く。
―――俺と紫はここ最近の宴会を取り巻く妖気の正体を知っている。最初は気付かなかったが、今は少し集中すれば感じ取れる程に強くなっている。
「――俺と再会した時のように我慢できなくなりつつあるようだな。だが、幽々子が言った通り俺と紫はまだ動かない」
彼女は俺と紫が気付ける事は分かった上でこの異変を起こしているだろう。誰も気付けなくても、俺と紫が動けば最終的に解決されると見越して動いている筈だ。だが―――
「――見限って繋がりを断った"人間"が、嘗てのように真っ向から戦うとなれば満足だろう。今の幻想郷には、強力な能力、素質を持つ人間が数人居るからな―――頼むぞ、霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢。お前達ならアイツを満足させる事が出来る筈だ―――」
―――Demystify Feast.
―――to be continued―――