魔法†少女ド屑オンライン   作:山下敬雄

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第15話 レベルアップ

▼あまがさきデータゾーン7▼にて

 

『希少貴重なミサイルロックパックをよくも泳げないたい焼きにしてくれたなあああははははは誤算エクセレント!!新しい追加カッチューだ焼いたり踏んだり好きに使いたまええええ』

 

「あなたという人は…救いようがない!」

 

鬱陶しい通信相手は使い方のレクチャーを1から10まではしない。

新しい追加カッチューは四角ではなく丸く平べったいピザのようである。

 

既に実戦にて実験は開始されている。

 

ピザ生地を指で回すように刀の切先の上で器用に回していく──

 

やがてまりょくコントロールで飛ばされた黒い円盤は高速回転しながら城下に派遣されたお玉杓子とカエルを切り刻んでいった。

 

『勘違いするな影よ、ワタシは世のルールに則りいいい一向に救わない怠けた神に救われるために下請けてやっているうううそれを人は神の啓示というじゃないかッははははははは』

 

「あなたはあなたの信じるそのヘンなものに救われてればいい、でも救うのは魔法ソード少女! 【ガトリングサークルスイッチ】マリティーいいいいいいいい!!!」

 

威勢のいい刃は目の前に位置指定し配置した円盤を貫き、円盤から幾多の黒剣は発射された。

 

尼崎城を根城にしていたストローは殲滅されていく。

 

ライトアップされていた夜の城は黒く塗り潰され、数多の剣に貫かれ陥落した。

 

『それでこそ本物の魔法ソード少女だああああエクセレント!! 天下無双のまりょく爆発だあああははははは』

 

「本物はこんなものじゃない…! やめて私は今の魔法ソード少女マリティーを正す!」

 

『オーケーオーケー冗談だ! ではァァァさっそくデータを持ち帰りィィィ私も影ながら正させてもらおうははははは』

 

酷使した追加カッチューである黒い円盤は何回りも小さくなり、

崩壊していく城がこのデータゾーンのクリアを告げる。

 

新しい追加カッチューと特殊刀を試しながらもスコアを稼ぎ怒涛の活躍をみせるマリティーブランは魔法ソード少女としての位MS5に、ルーキーでは異例のスピードでレベルが上がった。

 

 

 

 

▼かこがわデータゾーン9▼にて

 

 

オペレーターと協力ししっかりと敵ストローの数を確認し終え、使いどころの上手くなった大魔法は炸裂した。

 

 

今宵もあわあわと、

 

夜空を冴え冴えしくいろどる水色模様に連鎖爆破。

 

河原でバケモノたちとあそび、切先は正面まっすぐ、水飛沫したたるいい女がそこにいる。

 

 

『かこがわデータゾーン9制圧完了、お強くなられましたね』

 

「そんなミエミエおだてないでよね、ハッハッハーーー、ま、今のマリティーポップならもはやクッソ簡単な作業ね! なっはっははは」

 

『(このこチョロ単純すぎる……馬鹿なくらい魔法ソード少女向きね……なんかやけにやる気があるし。この調子でラジコンコントロールすればわたしも労せずお給金UP)』

 

「ちょっとなに黙ってんのよ? オペレーターがァ、仕事はどしたの。次よ次、はやくしなさーい」

 

『はい通信の繋がらなくなった魔法ソード少女が2人、現在マリティーポップのDSシールド値は72%、一度【バブルポップ】を使用していては次のデータゾーンに移るには厳しいかと思いますが? 一度本部に帰還して──』

 

「はぁ本部に戻ったらあんたの言ってた負荷とかいうので何十分何時間かかるのよそれ? ふっ、冴島あんたまた舐めてるわね、ここのところ窮地に次ぐ窮地を切り抜けてマリティーポップのまりょくもいりょくもりょりょくも大幅パワーアップしてるのよ! どうせしょぼいのが苦戦してるんでしょ? どっちでもいいからスカした黒いのが来る前にはやく転送しなさい! 5秒で片付けてくるわ」

 

『はい了解しました。では──1分後にかこがわデータゾーン12に転送可能予定です。のこり内在まりょく量にだけは気をつけてくださいね』

 

「あったぼー! あたぼーのターボシルエットよ!」

 

『──ターボシルエット? あたぼーは当たり前と分かりますが、ター』

 

「なんでヨ!? あんたツッコむタイプじゃなかったでしょ! 深夜テンションでなんか出たのよほっといて!(あるでしょ?そういうの)はははははやってやるわよ!」

 

『(そうねはいはいあるあるあなたはかわいい。あーこんなんでいいの、らくね──天職かもしれない)』

 

河原でひとりオペレーターと談笑する16歳。

魔法ソード少女は1人でも雇われのアイギスのオペレーターが彼女たちを彼女たちの盾として遠くから精一杯その声と頭脳と魂で支える。

共生関係ともいえる、不思議なものだ。

 

ニッと笑わせた顔とともにマリティーポップを夜の河原から消えていく。

 

誰かに負けじとデータゾーンを転々と好スコアをおさめていくマリティーポップはMS3にレベルが上がった。

 

 

 

 

▽堺市民病院特別個室▽にて

 

飾られている見栄えのいい花が増えていた。

 

その花を見る度にベッドにいる者は誰が来たか思い返して分かるものだ。

しかしなぜだろう、かなしい。

 

(夕空を見ているからかな)

 

 

「ふふ、──暇だ」

 

別に期待はしていない、

しかし命を賭けて助けたあの子がまだ見舞いに来ないのは、少しほんとうは寂しく思うマリティーシルブであった。

 

運良く生き抜いたエピローグにただただ流れていく自分だけの時間を魔法ソード少女はたそがれる、

 

病室の四角い枠からみえる夕空に浮かべてみるのは、────こんどは剣と剣、そしてギラつくあのダークガーネット。

 

 

マリティーシルブはMS4を維持。

ストローたちとのデータゾーンでの戦いは魔法ソード少女たちに強制されるものではない。各々責任を持ち、金か名誉か快楽享楽、あるいは使命。正義であるのかもしれない、少女たちが胸に秘めるおもいは簡単に他人は計り知れない。

 

 

 

 

▼いたみデータゾーン18▼にて

 

『おい、今回は私の指示があるまでそのウエストポーチの石もその大魔法も使うな、お前もこの前のようにカエルにしょんべんを引っ掛けられる石像になりたくはないだろ』

 

「んーーーー──!」

 

相変わらずのサムズアップ。

多用されるその立てる親指に、アイギスのオペレーターであるメリーガンは真田ふれいの扱い方が少しだけ…分かってきたようだ。

 

『……さっそくストローを殲滅しろぺーぺー』

 

「わかった! 斬るよ!」

 

『斬れ、寄るものはスベテ迷わずな、貴様自身を信じて誰も信じるな、私の声以外な』

 

路地の突き当たりで左右から鉢合わせた犬を、斬り裂く。

 

迷いのない刃は常人にはない武器になる。

若いが戦士として背丈は十分、脳足りんだが身体は丈夫健康。

 

 

右の赤犬は進入した首から真っ二つに斬り裂かれ、左腕に噛みついた青犬は肉とDSシールド値を噛ませてガラ空きの犬腹を刺す。

 

素人が何故そんなことができるのかは分からない。だが真田ふれいは本能でそんなことができるのだ。剣を持った真田ふれいには。

 

 

「んーーー、」

 

『戦果をあげれば、プリンひとつ』

 

「えーーー!? わかったーーー!!」

 

 

今宵もストローのいちばんあつまる公園を目指してお邪魔虫を斬り払いながら真田ふれいは剣を片手にゆく。

 

 

『(おそらくまりょくビームすら撃てないか……剣は常人かと思えばそれも魔法ソード少女の戦い方としては備わる能力まかせの不合格だな。できないことができて、できることができない……そんな人間もまさにいるか、この先脳足りんのこいつの善悪の天秤がどちらに傾くかなどは知らん。訳の分からんぺーぺー以前だな…フッ)』

 

 

ふれいは依然MS0のぺーぺーまま、オペレーターであるメリーガンの観察下に置かれている。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

▼マリティー本部アイギスオペレーションシステム個室710▼にて

 

 

深夜にぷかぷかと燻らせるタバコは彼女の勝手だ。

暴君で上司ならば誰も止められない、殴られないパルスガンで撃たれないだけタバコのニオイひとつぐらいはマシなものだ。

 

 

まだ謎の監視下で業務中であるアイギスのオペレーター長山透は、作業に集中できないほどに気になり続けていたことを黙した個室内で打ち明けた。

 

「そうだあの子、受け持ってるんですよね! 何やってるんですか! 片栗粉をつかった民間人に介入するのはルールいは!」

 

「だまれカス」

 

「ナ!? 信じられない…」

 

「お前のチョンボのせいでもう少しで他の魔法ソード少女組織に奪われていたぞ〝兵器〟が」

 

椅子に長い脚を組み、ギロっと睨む相変わらずコワイ黄色眼がじぶんと同じ空間にある。

そしてとんでもない発言を意図も容易くその妖しい唇から漏らしている。

 

「そ、そんなわけないじゃないですか! そうそうただの少女が見つかりませんよ! ぼくも騙されるぐらいにマリティーブランは完璧だったんですからァ」

 

「フッ、やはりお前は見ているだけのカス。脳内はしょんべんまみれのお花畑だな、よく育っている」

 

「ひどいことばかりを……って兵器!? 魔法ソード少女は兵器じゃないんですよその発言取り消してください!」

 

「いいだろう取り消してやろう」

 

「は、はい??(や、やけにあっさりだな…どうした?)」

 

長山は彼女たちを兵器扱いされるのがどうしても許せなかった、ずけずけと人の心の中に泥のヒールで靴跡をつけて歩くこのメリーガンとか偽名を名乗る上司が単純にいえばムカつくのである。

長山は上司でも関係なく一応許される限りのギリギリに歯向かってみる…意思はみせるのだ。

 

しかし返ってきたメリーガンの反応はあっさり。

そんなわけはないだろうと……長山は寄ってくる緑のオンナに注視した。

 

 

「見返りだ」

 

「あなたは……悪魔ですか……──」

 

「それがお前の上っ面だ、私は何もしていない。お前が今カスを、──選んだ」

 

(この人さいあくだ……なんでこんな悪魔が僕より偉いんだろう……魔法ソード少女マリティーの組織に似つかわしくない奴ナンバーワン!! きっと下への暴力と上へのごますりで成り上がったにちがいなァい!)

 

咥えた決断に微笑うライターの火は灯された。

 

取り消され……灯され…共犯者たちの口元は煙っていく。

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