リィンカーネーションへ鎮魂歌を   作:向緑亭 覇天皇

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開眼

 「クソッ!こっちも行き止まりかよ!!」

 

 路地裏に男が一人、その首からは血のように赤い花弁を舞わせていた。

 

 

 「クソッ!クソッ!クソッ!!!」

 

 「やっと俺は才能を得たんだ!俺はこれでアイツを見返してやるんだっ!!俺はッ」

 

 ドンと大きな音を出し、建物の壁を叩く 

 

 「口を閉じろ下郎、屍如きが俺の仕事時間を引き伸ばすな」

 

 路地裏の入口の方から声がした。それは先程まで男を追っていた賞金稼ぎの声だった

 

 「な…なんでここがッ」

 

 「やっぱ屍だから頭まで血が回ってねぇのかな?」

 

 「質問に答えろォォ!!!」

 

 男が声を荒げ、賞金稼ぎは質問に答える

 

 「俺に付けられた傷から流れ出てる血、お前の血のゴミより酷い臭い、極めつけに壁ドンの音、三点セットで王手だ」

 

 男は体中の血液が抜けていくような感覚とともに体温が低くなるのを感じた。応急処置すらせずに逃げた、その決死の判断すら、追跡者に情報を与えてしまったのだ

 

 「頼む、何でもする、だから、だから……」

 

 男の命乞いは死神によって一蹴された

 

 「『助けてください』ってか?」

 

 「お前は財を奪い、女を犯し、命を弄んだ。諦めて魂と引き換えに才能を得た屍如きがこの期に及んで命乞い?」

 

 

 「自分の価値を見誤るな、その罪(さいのう)、万死に値する」

 

 

 賞金稼ぎの持つ拳銃から火花が散る。

 

 男は花弁となり散った

 

 

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 俺の名はペーター・アッヘンバッハ。この裏社会の集会所、斡旋所である『マハト・ズーヘン』の職員だ。

 

 

 「おいペーター、依頼されてた『ジュゼッペ・タルティーニ』の屍の始末、終わったぞ」

 

 事務的な受付窓口に『廻り者を殺す男』として裏社会では有名な賞金稼ぎ『榊原央貴(サカキバラ・オウキ)』の姿があった。

 

 

 「お疲れさん央貴、今回も早かったな?」

 

 

 「嗚呼、なんとたったの1時間、能力もショッボイ、期待はしてなかったが、まさか予備の弾丸を使うまでもなく終わるとは思わなかった」

 

 不完全燃焼だ、とでも言いたげな不満そうな表情を浮かべるこの男がこの『力を求める者(マハト・ズーヘン)』と呼ばれる暗殺者達の集会所に来たのは1年前、激しい大雪の日だった。

 

 

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 雪が降りしきり、道路を凍結させる、ある寒い日。傷や出血から歩くのがやっとといった風貌のこの少年がここを訪れた時、ここの連中は驚いた。

 

 顔が血で見えないほどボロボロだったからではない、腰に拳銃を携えていたからでもない。この少年は十本以上の「輪廻の枝」を持っていたからだ。

 

 この集会所の連中は、一度廻り者に敗けていた。だからこそ、廻り者という存在の力を知っていた、ここの暗殺者達が全員で戦っても1、2人殺すのが限度だということを本能で悟っていたから、少年の異常性に気付いた。

 

 

 暗殺者達はこぞって「どうやって」「本当にお前がやったのか」と騒いだ。しかし、声を上げた一瞬、少年が信じられないほどの殺気を放った。皆、気絶しそうなほどの殺気に耐えながら理解した。

 

 この少年が殺したのだ、自分達では到底勝てない『才能の塊』を

 

 場は静まり返り、少年が受付窓口までやってきて一言。

 

 「ここで『コレ』を換金してくれると聞いた、早く換金を、頼…む」

 

 そう言い終わると少年はほぼ気絶に近い形で寝た。その後、俺は周囲にいた職員たちと共に男を治療し、言われた通りに換金の手続きを行った。

 

 コイツは上手く使えれば金になる、そういう確信が、俺の中に確実に存在した。そのために、コイツを生かさねばならない。俺の野望のために、生き延びてくれ

 

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 そんなこんなで、目を覚ました彼は俺に礼を言いたいとのことで、俺は看護室に向かった。

 

 看護室、職員や依頼をしに来る者や偶に来る政府の役人、そして暗殺者達が傷を追った場合に治療を行う場所、そこの職員であるヤブ医者の医療費払え医療費払えという鳴き声を無視しながらベッドの方へ向かう。

 

 「昨晩は助かった、ありがとう」

 

 大したことじゃないさ、と告げて少年の素性を聞く。

 

 

 少年の名前は榊原央貴、この街があるドイツに来たのは2年前で数週間前に両親を廻り者に殺害され、途方に暮れていた時にここの存在を知ったという。その後の行動は早く、親の残した財産で銃とナイフを買い、親の仇である廻り者を気づかれる前に射殺したという。しかし、その廻り者の仲間に襲われ、不意をついて仲間の廻り者も殺害、そんな事を繰り返していたらこんな事になっていたという

 

 「マジか…………………恐らく、お前はここらへんの廻り者からとてつもない恨みを買っているだろう、いつ殺されるか分からない、いくらお前の戦闘能力が凄かろうが数で押されれば負ける」

 

 そこで俺はある契約を持ちかけた

 

 「お前の今後使う銃や弾薬は俺…というか俺達『マハト・ズーヘン』が保証しよう」

 

 話を聞いていたらしいヤブ医者が「何を勝手にそんな事を!」と声を上げる。しかし、俺はその声を聴かずに話を続ける。

 

 「その代わり、お前が殺した廻り者の『輪廻の枝』………昨日お前が大量に持ってきたアレだ、アレはなぁんでか軍の役人どもが高値で買っていく。お前の力を見込んで、その『輪廻の枝』、俺達に買わせてくれないだろうか」

 

 契約は二つ返事で締結され、俺のクソッタレた未来に一筋の光が差し込んできたような気がした。

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