気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか???   作:ぱんのみみ。

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ChapterⅠ
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 目が覚めたら知らん部屋にいた件。

 

 

「…、…。」

 

 そうか…、と私は遠い目をする。自分は自室のパソコンで、買ったばかりのゲームを起動しようとしていたはずなのだが。

 友人に薦められその熱量に負け、半ば強引に我がパソコンにダウンロードされたソレ。

 海外製だかで謎解きとアクション、世界観とキャラクターが魅力的だのなんだのと友人に早口でまくしたてられていたが、『感想を教えてくれ』と言われてやらぬわけにはいかなくなったゲームだった。

 ようやっと空いた時間ができた夜、ちょっとやってみようかと机に…向かっていたはずなんだが、…寝落ちしたかな?

 

 もしかすると友人のプレゼンを聞きすぎて夢に見ているのかもしれない。

 …軽く頬をつねってみる。夢でも普通に痛みを感じた経験があるので、これは私の助けにはならなかった。…ちょっとお約束をしてみたかっただけだ。

 

 脳裏にやらねばならないこと――つまり直前に見たゲームの説明文――がちらつく。

 たしか…良い教育をしたい親の味方だった幼稚園から、ある日ごっそり人がいなくなって…その謎を解くん…だったか…?友人曰く『事件の真相を求める親視点』…。

 『行方不明となった子どもの手がかりを探す』というそれが、現在の私の使命なんだろう…多分。

 

 ぼーっとしていても仕方がない。夢だとしても何もしないのはナンセンスだ。せっかくなので色々試してみることにした。

 自分の身を確認。…体に変わった所はない。記憶の通りの自分であることに間違いはなく、所持品は…と背のリュックサックを見てみる。ある程度の大きさのそれの中身は、…大したものは入っていない。自分の物ではない携帯端末があったが、アプリケーションはまるで初期状態だし、通信環境はこの手のお約束である圏外を示している。メモと録音録画くらいにしか使えなそうだ。後は底に小銭が少し。

 

 周囲を見回すに、ここは建造物の中の一室と判断する。至って現代的な様子だが、さて…。

 机やソファの感じを見るに待合室、あるいは正面受付のような印象を受ける。正面の壁には『BANBAN’s Kindergarten』とカラフルでポップな文字で描かれている。他の壁には、同じような色合いで謎のキャラクターが描かれていた。

 状況から鑑みるに、ここは「バンバンズ幼稚園」なる場で、私は消えた園児の手がかりを求めてここに居ることになるが…。

 

 部屋は、不気味な静けさだ。幼稚園と言うと、もっと明るい雰囲気でもよさそうなもの。

 受付するにも人がいないので、仕方なしに自分で周囲を色々見てみる。家探しのようだが、仕方がない。

 

 

 歩き回るうちに壁の絵と文字が嫌でも目に入る。手がかりを求めて自然それらを注視した。

 

 『野菜や果物を食べて強くなってね!僕のように!』

 

 壁の緑のキャラクターの吹き出しから考えるに、これらのキャラクターは子どもたちに教訓を伝える役割を担うようだ。ジャンボジョッシュ、と言う名らしい。野菜を食べろ、と言う通りに、立派な体格と歯がフィーチャーされた姿はかなり…個性的だが、意図はよく伝わる。

 

 『腕がたくさんあるから、多くの人を助けることができるんだ!』

 

 橙色のタコ、あるいはクラゲのような多腕に一つ目のキャラクターは、スティンガーフリン、と言う名前。こちらの台詞は教訓というよりキャラクターの説明の色が強いように思われる。あるいは手助けの大切さをこのキャラクターを通して説こうとしているのかもしれない。足の数は1、2、3…、6本足の生き物なら、別にタコというわけではない気もしてきた。Sting(刺す)の名前から考えてもクラゲモチーフの線が濃厚か。

 

 壁にはまだまだ多くのキャラクターが描かれている。赤い2つ耳のもの、それと似た形の白くてリボンを付けたもの、ピンクの鳥らしきもの、それからちょっと背の低い藤色のもの、残念ながら彼らの教訓は付近になさそうだ。

 

 周囲の扉は使い込まれたような様子。中央の穴からほんの少しだけ向こう側が見える。そばの壁にあるのは…照明ボタンではなさそうだ。開閉のためのパネルだろうか?押したところで変化はなく、しかしエラーっぽい音が鳴るからには通電はしていそう…。

 

 ふむ?と先程の受付らしき机へ戻る。机上に置かれていたものを思い出した。

 ―――青いカードのようなもの。

 再び扉の前に移動し、手にしたカードを近づける。ぴこん、と音が鳴り、パネルのライトは青から代わり―――青い扉はスライドして開かれた。

 

 ―――なるほど。かなりハイテクだ。脱出ゲームみたいなものか?と勝手がわかってくる。

 アイテムを見つけて先に進む、ということだろう。

 

 

 

 進んだ部屋にあったのは、4つのプロペラがついたドローンとリモコンだった。…ボタンがたった一つなのは少し心もとない気がするが、複雑すぎても操作できないだろうし受け入れよう。

 ―――いや電池入っとらん。

 

 電池を探して辺りの荷物をあさる私の目に、とある一枚の紙切れが映った。

 

 子どもの字だ。ママへ、の書き出し。

 

 『ぼくはへやにかくれているけど、もんすたーとたたかわなくちゃ。クレアにすきになってもらうためにはそれしかないんだ』

 

 手紙には、絵が付けられている。剣を持った子どもと、それに対するように、ピンクで描かれた…鳥?その後ろにクレア、と矢印で注釈がある顔。

 …、モンスター?

 …、…。なんだか唐突に不穏だ。矢印でモンスター、と書かれているそのピンクの鳥…は、ついさっきそこの壁の絵で見たような造形をしている。しかし絵の鳥の目はにっこりしていてかわいらしい、ので、不穏さは気のせいだろう。

 とにかく電池を見つけなければ、と私は探索を再開した。

 ―――あった。確かに先程見た場所に出現していたような気もしたが、まぁ、脱出ゲームはそんなものだろう。何らかのフラグが立ってから、のような。

 電池を入れてすぐに動き出したドローンを操作してみる。

 ええと?ドローンは緑に光っていて?スイッチを押すと進…進む??ちょっとまってどこい…どこ行くんだまっすぐ行かなくない??操作性どうなってんの???

 

 

 ある程度…かなり…結構…奮闘することしばらく。

 ようやっと操作に慣れて私は額の汗を拭った。スイッチが一つで良かった。二度と、たった一つだとか贅沢なことは言わない。シンプルイズベスト。

 リモコンで指し示した位置に、ドローンは自動的に直線で飛んで行って停止する、という事らしい。…これで、手の届かぬ位置にあるボタンが押せるようになった、というわけだ。

 

 私はドローンを使って、天井近くの赤い大きなスイッチを押す。

 ―――はたして黄色い扉は開いた。

 

 

 

 進もう。思っているより、ずっと面白い夢だ。

 

 




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