気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか??? 作:ぱんのみみ。
前回のあらすじ。
なるほど謎解き脱出ゲーか!
OK。だいたいわかった!
ドローンを操作して扉を開けることに成功した私は先へ進む。
手ごたえを感じつつ、揚々と踏み出した私の目線の先にはピンクの何かがいた。
…おぉん。
至って作りものめいたそれは、真っ黒の両目をこちらにじっと向けている。よくよく見るに、壁の絵のピンクの鳥のキャラっぽい。
びっっっくりした…。マスコットキャラのぬいぐるみでも配置に悪意がある。
扉を開けて真っ先に目が合うように置くなんて、脅かす意図を勘ぐられてもおかしくな…
進みだした私の目の前で、ソレはすっと、曲がり角へ引っ込んだ。
…、…。
えっ、動いた??
ダッシュでソレが引っ込んだ曲がり角を確認する。
…そこには、暗がりが広がっている。すぐ横のパネルは青い光を灯していた。
…、…。
脳裏に先程見た子どもの手紙が浮かぶ。「モンスター」…。
現実的に考えるなら、さっきのアレは幼稚園の子どもを楽しませるギミックか、あるいは誰かがぬいぐるみを動かしている可能性だが…
いや、誰かいるなら声くらいかけてくれないだろうか…肝試しじゃないんだから…。
ぽち、とちょっと慎重になりつつパネルを押してみる。何かの扉のスイッチかと思ったが、今回それは部屋の照明のものだったようだ。
ぱっと部屋が明るくなる。
広がっていたのは…子どもたちの遊び場、らしき場所だった。
かなり広い室内には、いくつも遊具が置かれている。滑り台やブランコ、シーソー…幼稚園のプレイルームと言った様子だ。
ぐるりとその場を見回して、私は一番奥に、目当てのものを発見した。
ピンク色のそれに慎重に近づく。
床に鎮座しているそれは、近くで見るとぬいぐるみというより、もう少し固そうな質感をしていた。伸びた首をなぜて触ると、室温よりも温かい印象を覚える不思議な素材だ。触った箇所は所々凸凹している。目を凝らしてみるとつなぎ目らしきものがほんのり見えた。固いシリコン、タイヤ、べたべたしない油粘土…それらに近くとも少しずつ違う触り心地だ。あえて言うなら微かな弾性を感じる確かなつくり。手作り感がある体には、いくつか絵の具でつけられたような子どもらしきものの小さな手形がある。園児のための遊具だろうか。
…廊下で見たとき、嘴はこんなに開いていただろうか?驚いていたので記憶は定かではない。あるいはあの時見たものは、目の前のこれではなく同じキャラクターを模った別のものだったのかもしれない。
近くの壁の文字が目に入る。『Opila Bird Misssion!』でかでかと主張するその文章を注意深く読んだ。
この鳥はオピラバードというキャラクターで、おなかが空いているから卵を探せ、という事らしかった。全部で6つ見つけたら、景品として何かを貰えるらしい。子ども用のアトラクションだろう。
…子どもでもないし別にやらねばならない道理もなさそうだが、先へ進むためにとりあえずやってみる価値はありそうだ。
…、…ええと。
…鳥って、卵食べんの…?栄養補給に…?そっか…。
若干のショックを受けつつ広い遊び場を探し回って、無事6つの卵と「友達紹介デー」なるシールを発見した私は再びオピラバードの前にいた。ちょっとした間違いで滑り台にスライディングするというトラブルがあったものの、無事に。…、…成長したって、誰しも唐突に遊具で遊びたくなる時はある…あるよね?誰の目もないからと跳んだり跳ねたり登ったり降りたりして、ちょっと楽しかったのは秘密にしておきたい。
オピラバードは口を開けて上を向いているので、卵をここに入れろという事だろう。
1,2,3,…6,とすべての卵を入れると、にゅっと何かが出てきた。
―――黄色のカードだ。ありがたくお礼を言って手に取る。
これは一体どこで使うのか?
捜索のために明かりのついている他の場所にも行ってみることにした。
まず廊下に向かう。
壁には絵が描かれていた。片耳にピンクのリボンを付けた三角耳の白いキャラクター。バンバリーナ、という名の下に吹き出し付きである台詞を読む。
『親切はフリーよ、だからどこでも振りまいて!』
なるほど優しそうなキャラクターだ。彼女(もしかしたら彼かもしれないが)が猫のキャラクターだと、やや世界的に有名な子猫ちゃんに似ているような気がしないでもないが、それはそれとしてわかりやすいメッセージだ。世話焼きなキャラクターかもしれない。
反対の壁には藤色のキャラクター。他のキャラクターより小柄な印象で口元には小さな牙が2つ描かれている。キャプテンフィドルズ、という名前の下には台詞。
『オーガ ボーガ!ボーガ オーガ!』
…ふむ?このキャラクターは何かこう…メッセージ性というよりリズム遊び的な意図を感じる。子どもたちに教えを授ける大人というより一緒に遊ぶキャラクターかもしれない。
廊下の先にある扉…は開かない。紫の扉とオレンジの扉のすぐ横にはパネルがあり、それぞれ同じ色をしたランプが光っていた。
私は、持っていた青いカードを見た。戻って先程の遊び場の入り口を見る。…ランプは青だ。なるほど、同じ色のカードでしか、扉は開かないようだ。とすれば次探すべきは今持っているカードに対応する、黄色のランプの扉だろう。
…、…複雑すぎやしないだろうか?これは子どもが自分の意思で移動できるか?いや、もしかしたら普段使用するときは全部屋オープンで出入り自由なのかもしれない。今は使ってないから防犯上そうなっている…、…おや?では私は…。
不法侵入、の4文字が思い浮かぶが、いま常識は棚の上にあげておくことにした。
魔法のワード「これは夢」を思い浮かべつつ、遊び場の反対のスペースに進む。
カラフルで小さな椅子が並べられ、それらはいくつかのグループを作っているようだ。…はしっこに反省部屋を見つけてちょっとセンチな気持ちになった。ちょこんと一つだけ置かれた青い椅子に哀愁を感じる。
…特に意味はないけど集団に戻して置いた。使うときにまた移動させればいいだろう。
離れた壁には、また教訓らしきものが書かれていた。2つの三角耳の赤いキャラクター。最初の部屋の壁にも描かれていたものだ。…よくよく見るに耳にはカラフルな被り物をしている。バンバン、という名前の下に吹き出し。
『分かち合うことは思いやることだよ!君の膵臓は僕の物だ!』
独特なセンスの教訓だ。文章の関係と状況から読み取るに…取り合いはやめて分け合おうね、お互いに仲良くしようね、という教訓で良いだろう。このキャラクターはそして、相手の膵臓、生命に重要な臓器の所有権を主張している。なんで???
…いや、苦労はするが解釈しようとするなら…反面教師のような意味が?つまり分け合いを主張しながら相手のものを自らのものとする「お前のものは俺のもの」精神の体現…。目の前の台詞がジャイア〇の声で再生される、が…うーん、ちょっとしっくりこない。
いや?と思いつく。
このキャラクターはつまり、そうしないと膵臓を貰っちゃうぞ!という、ちょっとした脅かしをするキャラクターではないか。もったいないおばけ、しまっちゃうおじさんのような。そう考えると、ちょっと舌を出したその顔は愛嬌たっぷりに「たべちゃうぞ!」としているように感じる。うん、先程よりしっくりきた。
腑に落ちた私は再び探索を続ける。
無事に黄色のランプを発見し、カードをかざす。軽快な音が鳴り響き、ホワイトボードに『The End is here 』と急いだような撚れた字と線で示された、奥の棚が開いたようだった。
中にはハンマーと、一枚の破れたような紙切れ。『Distraction at 1』と書かれたそれを一応ポケットにつっこんでおく。1の時間?場所?の破壊?現時点ではうまく読み取れないので頭の隅に留めておく。
手に入れたハンマーの使い道に見当はついていた。ボールピット封鎖中の看板が立っている近く。オピラバードの横、木の板が張られて閉じられていた場所だ。…自分がいる側から打ち付けられた板なので、封鎖の目的ならあっち側が危険であるのだろうが、進行のため仕方がない。
難なく板をはがして先に進む。
進んだ先は…ひらけてはいるが薄暗かった。中央に巨大な穴があいた四角い部屋だ。あっちとこっちに足場がある。…ボールピット?ボールないが?それともこの先にあるのか?
手すりの先は真っ暗で見えないが、かなりの高所のように感じる。踏み外したら大怪我は免れないだろう、と予測出来て、同時にここが板で閉じられていたことにも納得した。幼稚園児がこんな所にきたら危険だろう。…その割にはちょっと管理がずさんな気がする。木の板は仕方なしの応急だったのだろうか。
壁にはオピラバードの絵が描かれていた。
『笑いは最高の薬、だから笑顔を忘れずにね!』
最初の部屋の壁と違い、ここの絵は目がにっこりとしている。子どもの手紙に描かれた鳥の絵は、こちらの方が似ているだろう。
歩を進めてスイッチを押す。出てきたスキー場のようなリフトに乗って反対側の足場に行くが…やはり足元の暗闇は先が見えない。シートベルトもなしに足をぶらぶらさせるのはちょっと背がむずむずする。
無事に反対側に辿り着いたが、帰り道も確認しておこう…とそのままリフトに乗り続けている途中、壁に目を引くものを見つけた。
この部屋の入口のすぐ横の壁。そこに付けられた、足跡。
…、…。
リフトから降り一度部屋を戻って、私はオピラバードの近くにしゃがんだ。床に投げ出されている足をよく見てみる。インクのようなものの付着は今のところ見られないが、3つ指のそれは、足跡と同じような大きさに見える。自分の手の大きさと比較してもやはり足跡と一致しそうだ。しかしこの足で体を支えて壁に立たせるのは難しいと思われるが…?壁に開いた穴が、嘴を突き立たせてできたものであるとしても何故そんなことを?誰が何の意図で?
もしや羽が大きく広がって飛行するのかと翼部分の構造を見ようと思ったが、短い翼があるのみで見つからなかった。私はただこのオブジェクトを無駄にさわさわしただけで終わった。物理的に可能に思えないということは、あの足跡はただの飾りなのだろう。動物園内の地面に動物の足跡をペンキでつけておくとか、よくある話だし。
再びリフトで移動する。反対側の足場の壁には絵が描かれていた。なるほど今まで見てきたキャラクターの絵だ、『私の色は何?』と書かれたそれに従い、難なくそれぞれの下部にあるランプの色を切り替える。
バンバンが赤、バンバリーナが白、ジャンボジョッシュが緑、オピラバードがピンク、キャプテンフィドルズが藤…というか青のランプ、そしてスティンガーフリンが橙色。
正解を示す軽快な音が鳴る。
スイッチを見やるが、目当てのそれは赤く光らず灰色のままだ。おや、と思ううちに、何か音がした。
それは金切り音のような。高い、何かをひっかくような音。
―――まるで、鳥の鳴き声のような。
うん?と音の聞こえた方を見やる。
いつのまにか反対の足場にピンク色の―――そう、オピラバード、それが出現していた。おや、と見つめる間に、リフトの上に立ったそれはこちらに運ばれてくる。
一体いつの間に出てきたのかとそれをよく見る。真っ黒いその瞳は、こちらを見つめているかのような錯覚をもたらす。一旦私の立つ場所に近づいたそれが、こちら側足場の降り口に向かうために横にスライドして離れていく。
―――いや違う、あちらも私を凝視している!首の可動域そんなにあるのか?あの固さで!?
降り口に辿り着いた瞬間、それは自らの動きでリフトから降りてこちらに向かってきた。
ここまで呑気にそれを観察していた私は流石に違和感を覚える。ちょっと友好的な接近というには動きがこう…切迫していた。
なぜか一度それは歩みを止めてこちらを凝視。―――見つめ合うこと3秒。
間抜けに固まっていた私に、次の瞬間その何かは激しい鳴き声を上げながら、勢いよく飛び掛かった。
視界が激しく揺れる。
急激に薄れゆく意識の中、私は薄々感じていた違和感を心の中で叫んだ。
――――――――――――ホラゲーだコレ!!!!
P1:たいていわかっていない
ピンクの巨鳥:おこ