気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか???   作:ぱんのみみ。

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 前回のあらすじ
 
 プログレッシブセクターに辿り着く。
 カメとカメレオンとの戦闘を回避。
 アクアティックセクターに寄り道しつつ、引き続き謎解きを進めていく。




22 Slippage

 

 

 私はアクアティックセクターから、プログレッシブセクターの元の位置に戻ってきた。

 カボブマンとも再会して、さて、次に何とかなりそうなのは…目の前の雛だろうか?

 

 カボブマンと共に行ってみよう、と彼の背を押しながら進む。

 部屋に入って数歩で、音声に反応したのか、ピンクの小さい塊が身じろぎしたのが見て取れた。

 

 ぱっと雛が顔を上げ、周囲を見回した。その丸い瞳と目が合う。

 

 ―――ぴよ!と声を上げ、雛はこちらへ駆け寄ってきた。

 

 うわぁ、かわいい。かわいいけどちょっと君のお父さんが恐いので待ってほしい。

 

 私は素早く鞄から上着を出す。足元でこちらを一生懸命見上げる雛を、それで包みつつ持ち上げた。自分から寄ってきたという事は、たった一度会っただけのこちらを覚えていてくれたのか。抱き上げられた雛の機嫌は大変麗しい様子。かわいい。

 

 上空を警戒する私の目の前で、奥の扉がひとりでに開いた。

 

 現れたのは…水色の巨鳥だ。

 

 ―――特急でお迎えが来てしまったぞ、しかもすでに猛ダッシュだ。

 

 また問答無用でシバかれる前に、階段を駆け上って高台を死守する。お父さんの目は完全にこちらをロックオンしているが姿はまだ階下だ。

 

 えいやっと、その上にジャンプする。

 

 …、着地。タルタバードはしばらくその場でくるくる回っていたが、ふいに正気を取り戻したように緩やかに立ち止まった。

 …長い首でこちらを振り向いて見ている。

 

 …いや…そんな『なにしてんだコイツ…?』みたいな目で見られても…。

 

 私は彼に、雛の姿を見せた。私の上着に包まれた雛は、機嫌よくひと声鳴く。

 

「こんにちは、お父さん。私は、ええと、この子らの知人です。…どうぞ、よしなに…?」

 

 しばし彼はこちらと雛を交互に見ていたが、やがて諦めたのか納得いったのか、視線を前方に戻しつつ移動し始める。

 …タルタバードに乗っかったはいいが、次やるべきことがわからないことに気が付いた。ついつい壁の説明に従ってしまったがこの後どうするんだ…?

 意外としっくりくるタルタバードの背に揺られ、私は首をかしげる。

 彼はすたすたと、開いた扉の先へ進んだ。

 

 …なぜかオピラがその先で待機していた。タルタは彼女の横に並び立つ。

 …、…自然、私はオピラの隣にいるわけだが、彼女は雛を抱えた私を目にして、続いて首をくいっと動かして自らの背を示した。え?

 くえ、と短い鳴き声。また首を動かす。…全然合っているかわからないが、私は雛をその背にそっと乗っけた。雛が嬉し気にひと声鳴く。オピラの力強い声。

 …正解らしい。しかしこれ、どういうこと?

 

 

 全然よくわからないながらも、緩やかな雰囲気の状況は―――唐突に、破られる。

 

 

 暗闇から、声が聞こえた。

 

「―――…なるほど。鳥に乗る、か…その斬新なアイデアはお前に譲ろう。いくらか愉しい時間を過ごしていたらしい」

 

 するりと眼前の暗闇から橙色の手が伸び、ゆっくりと巨大な体が現れる。

 黒々とした一つの目が、こちらを冷ややかに見つめていた。

 

 

「―――我々は時間を無駄にしたようだな、人間」

 

 

 地の底を這うような声に私は硬直した。

 

 いいえ、と答えるだけのカードが手持ちにない。貴方の邪魔をするつもりは本当にないのです、と弁明が…できるか?

 自身の動きを振り返る…。

 

「『手を引け』と、私は伝えたつもりだったが―――お前は進んだ。それも長時間にわたって」

 

 むりっぽい…。

 お怒りだ…。

 

「さて、申し開きはあるか?」

 

 最後通告だぁコレ…。

 

 頭いい人に『お前は敵だ』と宣言されそうな時どうすればいいだろうか?下手なことなら言わない方がましかもしれないが、とはいえ必死に弁明一択だろう。でも物凄い勢いで、ポケットに入れておいたメモが紙くず同然と化していっている気がする。

 

「無言は敵対と見なすが」

 

 なんでもいいからすぐ喋らねば死となった。時間は待ってくれない。

 

「ごめんなさいあのお邪魔をするつもりはなくて」

「ほう」

「進むなという貴方のお話はよくわかっていました。しかし進まねばならない事情が」

「私は、お前と子どもの身の安全の保障を伝えた。不服か?」

「いえ、あの、大変ありがたい話です。貴方がその気になれば、今すぐ私を排除可能だろうというのもわかっています。今の状況が、貴方の温情であり、事を荒立てまいとする貴方が理性的に解決を図ろうとしていることも重々承知です…」

「それで?」

「あの、あの私は…進まねばならないようなのです。なので、出来る限り貴方の計画の邪魔にならないよう、静かに、大人しく進みます」

「今までが証明しているが、お前の進行はこちらの計画の妨げになる。だが、不要な犠牲は避けるべきだ。互いが満足できる結果は後に余計な軋轢を生まない。…ゆえに私はお前に引き返せと伝えた。選択の余地を残した。…何がお前を動かす?可能な限り、悪くはしないと約束しよう。―――最後にもう一度聞く。なぜ進む?」

 

 物凄い譲歩を繰り返してくれているのを感じる。言葉選びも、この阿呆にどう言ったら理解できるかと考えて直接的物言いにしてくれている気がする。

 圧倒的に力ある者が私のような貧弱な生き物に対してこんなに心を砕いてくれているというのに…。しかも自由になりたいという滅茶苦茶に慎ましい願いを叶えるために。可能ならその手助けをしたいくらいの思いだったにも関わらず、そんな話をできる状況ではない。「なぜ進むのか」…私は自分が言える精一杯の嘘のない返事に吐きそうだ。

 

「…先に進めと…心が騒ぐので…」

 

 

 沈黙。

 目の前の存在に殺される前に罪悪感で心臓がどうにかなりそう…。なんで進むかなんて、なんか進まなきゃいけない気持ちになる、以外になんて答えればいいんだ…。

 どうやらゲームの世界の夢みたいで!たぶんクリアを目指したらいいんじゃないかと思うんですけど!とかほざいたらそれこそぶっ飛ばされるだろ常識的に考えて…。

 ―――…ほんとに夢だと思う?目の前でこれほど切に怒る存在が?―――

 囁く思考をゴミ箱に放り込む。今それどころではない。

 

 短くも長い沈黙は、息を吐く音で途切れた。

 

 再び目が合ったスティンガーフリンの瞳は、もう、こちらを対話の相手として見ていなかった。そりゃそうだ、私の返答はまともな交渉を拒否したように思えるだろう。失望を越えて排除するべきバグを見る目だ…ちょっと泣きそう…。

 

「…なるほど、お前を動かすのは決して親としての本能だけではないようだ」

 

 …申し訳ない…親ですらない者です…。訂正も言えずに私は縮こまる。

 

「何がお前を駆り立てるのか。分からずじまいだが、一つ確かなことがある。誰かがお前に偽りの希望を与え、そして私より先にお前に望むものを約束した―――しかし奴らは、たった一つのことしか頭になかったようだな?」

 

 …は、と思考が止まる私の目の前に、それは晒される。

 

「―――膵臓だ」

 

 赤い姿、パーティーハットをかぶったその人物。

 

 辛うじて声を出すのを堪えたが、スティンガーフリンは私の反応をよく見ていた。赤い彼を知っているのだとバレただろう。

 触手に持ち上げられた体には、力がない…。いや微かに動いている。生きてはいるだろう、外傷もなく無事っぽい、よかった。

 …いや、まってくれ、膵臓しか頭になかったって?うん?しかしそうだとしたら生きている私はもう用済みでとっくに死んでいるはずでは?

 

「初めは、ここを知らないはずにも関わらず、全てがお前にとって有利に進んでいることに困惑した…そして気が付いた…誰かがお前を導いていると…」

 

 彼の思う通りかはさておき、狙い通り私を混乱のさなかに叩き落したスティンガーフリンは続ける。

 

「そしてそれは正しかった。お前は助けを得ていた。…短い時間でよくやる。いつの間に交友を深めた?」

「いえ、彼とは初対面で後頭部を殴られて気絶させられた仲です」

 

 赤い彼を開放してあげてくれないかと仲良くないアピールでささやかな抵抗をしたが、「よくその相手を信じる気になったな」とさらりと流された。駄目か、確信をもたれている…。

 

「…ここにいるお前の()()は、大いに私を助けてくれた。おかげで重要な情報を知ることにもなった」

 

 友人、と見せつけるようにその触手が揺れる。赤い体とその口からちょっと出た舌もゆらゆら揺れた。…目は開いてるんだけど、意識はあるのか?いや、発言がないところを見るに気絶中だろうか。彼が自力で脱出が困難なら、どうにかしてスティンガーフリンの気を…

 

「…。さて、誰かの心配をしている暇があるだろうか」

 

 めちゃくちゃに観察されている…。私は身体を固めた。

 

「重要な情報、といったが。…まぁ、私の番がきたら、()()()()()にならないようにするだけだ」

 

 ぱっと、その橙色の手が赤い姿から離される。あっと、声をあげるまでもない。急いで落ちて行っただろうその姿を探そうとタルタバードから降りようとして―――

 

 

 

 ――――がしゃん、と大きな音を立てて、何かが、目の前の柵に跳び付いた。

 

 

 

 赤い姿。しかし、私の知るその様相とは異なっていた。

 引きつったように大きく開いた口には鋭い牙がずらりと並んでいる。捻じれたような2本の赤黒い角。

 開かれたその白い目に、正気があるとは、判断できない。

 

 舌が垂れたその口から、低い掠れた声で、膵臓、と嗤う声が聞こえた。

 

 

 

 思考が停止する私は、オピラバードの高い声で我に返った。

 弾かれたように、私と小鳥を乗せたまま2体の鳥は走りだす。

 

 

 衝撃に呆然としてしまったが、ひとまず逃げねばなるまい、殺されるわけにはいかないのだ。私は頭を振る。あの姿は、スティンガーフリンの幻覚でも見たが報告書にあった凶暴化した彼に違いない、理性を飛ばしている相手に話し合いは野暮だ。

 

 走るオピラバードとタルタバードを…いや、膵臓が目的であるなら私を、であろうが…あの赤い姿は追いかけてきている。

 

 前方に見えてきた閉じられた扉を見て、壁の文字を素早く読む。道を開くにはどうしたらいい?

 …『レースルール』を把握。ライトの色で示された通りに、オピラとタルタのどちらかが先頭で扉前のセンサーを通過せねばならない。ちら、と後ろを確認する。距離はまだそこまで縮まっていない。

 …追加ルール。後ろから来る彼に追いつかれないようにしながら。

 

 ―――――チェイスだ。

 

 最初のライトは水色を示している。タルタバードが先頭で走り抜けた。

 次の扉はピンクのライトだ。

 

「―――オピラ!」

 

 振り返って叫んだ声に返答するように、オピラバードが力強く鳴いた。ぐん、と彼女の速度が上がる。

 意思疎通が…できているのだろうか?言葉が通じているかはわからないが、心は通じている気がする。俄然心強い。

 

 扉を越えると彼女はスピードを合わせてこちらと並走した。目が合う。

 …もしかしなくても、オピラバードさん、思ってたより相当に賢いんじゃなかろうか?…ええと、あの、あの…べたべた触った件は本当に申し訳…

 

「クエ―――ッ!!!」

「おわ―――ッすみません集中しますタルタさん前に!!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 扉が続く長い廊下を走り抜け、不意に広い空間に辿り着く。

 背後から赤い姿が迫ってくる。

 

「―――逃げたところで、膵臓の匂いがどこまでも導くぞ…」

 

 かくれんぼはこちらの分が悪いらしい。目の前の彼が正気を取り戻すまで、永遠に追いかけっこということか。

 私はタルタバードの様子を伺う。激しい恐怖や緊張は見られない。疲れも…現在のところ読み取れないが、しかし無理をさせてはならない。狙われているのは私単体だ。

 

 ふいに、赤い彼が顔を上げて周囲を見回した。地面が音を立てて揺れる。私にもその特徴的な音が聞こえる。

 

 それはまるで地響きのような、低い―――

 

 

 前方の暗闇から、緑の巨人…ジャンボジョッシュが、姿を現した。

 

 

 赤い彼の視線がこちらから外れる。その隙を縫って、タルタバードは横の階段を駆け上がった。ぐんぐんと上へ移動する私の眼下で、赤と緑が相対する。

 

 

 …いや待ってほしい、なんでそこの間で一触即発の空気が生まれているのか。 

 ジャンボジョッシュとスティンガーフリンは手を組んでいたのでは?フリンの思惑である赤い彼の襲撃を妨害する理由があるか???

 

 さすがに疲れた様子のタルタから急いで降りて、彼の背をさすりつつ下を見つめた。

 混乱する私を置いて、状況は素早く変化していく。両者はしばらくにらみ合った。先に動いたのは…赤い彼だ。地面を蹴ると、ジャンボジョッシュの首元に飛び掛かる。そのまま拳で殴りつけ―――ちょ、やめ、

 

 ジョッシュは張り付いた赤い彼を片手で軽々引っぺがし、床に叩きつけた。あれっ!?

 間髪入れずに上から拳が振る。あっ。

 

 赤い彼は…床で大の字に伸びている。…おわぁ…。

 

 動かぬその姿をジョッシュはじっくり見つめ…攻撃の手を緩めるかと思いきや―――彼は再び、拳を振り上げた。

 

 思わず声を上げかけた私は、しかし突如橙の触手がジョッシュのバランスを崩させ動きを止めたことにより、口を閉じることとなる。

 

「―――やめろ二人とも!」

 

 制止の声と共に、スティンガーフリンが現れる。

 やはり彼の狙いとは別に起きていた喧嘩のようだ。…ジョッシュは見るからに機嫌が良くない。おもちゃはいつの間にか無くなっているし、探して歩いてたら赤いのが飛び掛かってくるしで散々だろう。さらに自分を邪魔したスティンガーフリンをじっと見ている。

 

 スティンガーフリンが再び触手を伸ばし、しかし今度はジョッシュに手を掴まれる形で阻まれた。

 

 ぐっと、その緑の手に力が入ったのが見え、―――いや、駄目だ!

 

 今度こそ、私は口を開いた。

 

 

「っこら―――――ッ!!!」

 

 

 ぐわん、と空間に私の声が反響した。介入するには今だ、今しかない。

 息を大きく吸って腹から声を出す。

 

「思い通りにいかないからって!人や物に!当たっちゃだめだ!!」

 

 視線が集まる感覚に身が震えるが、物理的高さの勢いも使って言い切ろうと叫ぶ。

 

「…貴方を、助けてくれる人が、」

 

 ―――駄目だ、こんな言葉で伝わるはずもない。ジャンボジョッシュを見つめる。

 

 

「…お友達が!!!いなくなっちゃうでしょうが!!!」

 

 

 時間が止まったような錯覚。ジャンボジョッシュは―――狙い通り固まっている!

 私だって突然人形に叱りつけられたら思考が停止する。…ほんとのところ圧倒的に悪いのは先に手を出した赤い男の方だがそっちは今そこで伸びている。

 ともかく動きが止まった!!

 

 私はスティンガーフリンを見た。今こそ、その沢山の腕の使い時だ、こう、ジョッシュが呆然としているうちにぐるっとしてバチっと…、…なんで貴方までこちらを見て止まってるんです??

 

「っスティンガーフリン!」

 

「―――は、?」

 

 いえ「は」ではなく!今しかない!注目すべきは無力な私より!そっち!!

 

「拘束を、」

 

 ―――眼下で、緑の巨人の身体が震えた。

 あ、と思うまでもなく、ジャンボジョッシュは、いつもより若干高くて短い声と共に両腕を上げ…。

 

 振り回された腕はスティンガーフリンの横っ面をはっ倒した。

 

 衝撃音と振動。バランスを崩したタルタバードの身体が宙に投げ出された。あっ、と伸ばした手は間に合わない。何とか掴もうと乗り出した体はオピラに咥えられたことによってそれ以上進まなかった。

 

 地面が揺れて照明が明滅し、眼下のフロアはとうとう暗闇になる。バタバタと暴れる音と泣き声っぽく聞こえなくもないジョッシュの声がして、そして遠ざかっていく…。

 

 

 …、…。やがて音は聞こえなくなった。

 

 

 …、…。

 嘘みたいな状況だ…。

 私は呆然と眼下の暗闇を見つめる…。

 

 全然全く意図せず漁夫の利みたいになっている…。もうスティンガーフリンに嫌われる要素しかない。ジョッシュにも人形が叱りつけてくる衝撃を与えただけで終わりになっている。自分はあの暴力に訴える惨状を止めようとして…なぜなんだ…??

 

 動かぬ私の周りを、オピラバードが興奮したようにくるくる回る。その小さな翼でばしばしと私の背を2度ほど叩いた。

 

 抗議の意かと思ったが、彼女は立ち止ってこちらを見つめると力強くひと声鳴き、ぴょんと、自ら暗闇の中へ飛び込んでいった。人間だったらサムズアップでもしてそうな雰囲気だった。…なんで…?どういうこと…?

 

 …、…いやわからん…。…何も…わからん…。

 

 

 たった一人きりになった私は、やはり呆然と暗闇を見つめた。

 …、…。

 何が起きたのか、ちょっと…整理…しよう…。納得を探して私は考え始める。

 あのままだとおそらく、スティンガーフリンもジャンボジョッシュに攻撃されて、そのまま乱闘になるだろうからそれを止めたくて…。あの時あの場ではジョッシュが、一番止めなければならない相手だと思った。で、当然純粋な力では私に何もできっこないので、ジョッシュに「それはよくないことなのだ」と伝えると同時に時間稼ぎを…。

 …、…。最後をなんの打ち合わせなしにスティンガーフリンに丸投げして押し付けてしまったのが良くなかったかもしれない…。彼にとっては私こそが排除すべき相手だったろうから、もっと素早く狙いを端的に伝達すべきだった。速さも言葉も信用度も何もかも足りなかったな…。

 次にスティンガーフリンにあったら…もうどんな顔をして頭を下げればいいかわからないが、ともかく謝罪だ…。その後にやっと予定していた提案だ…。それからジョッシュにも、叱るだけ叱ってその後フォローもしていない。何が駄目か言ったならどうなら良いかを言わなきゃ嘘だ…そっちもやらなきゃな…。

 

 次はええと、オピラバード。彼女はなぜあんな感じで自ら下に落ちて行ったのか。

 揺れによってタルタバードが落ちて、それを掴もうと乗り出した私を、彼女は咥えて助けて――お礼をまだ言っていなかったな――ともかく、彼女は完全に揺れが収まってから、私を見つめて飛び降りた。

 タルタバードを心配して追ったのだろうか。もはや彼らの頑丈さを疑うべくもないが、乱闘に巻きこまれるのは避けたいだろう。彼女は暗闇を気にして一度のぞき込んでいた。…先の予測をせずに飛び込んだわけでは決してない。だって彼女はレースのルールとどうすれば円滑に進めるのかを理解していた。ボールピットの足場が消えて落下する際は声を上げていた。落ちるという状況を正しく認識する知能をもってして―――しかし、飛び込んだのだ。

 

 ―――あ、と、その姿にこれまでに読んだ資料の内容がちらつく。彼女が本来の居場所ではない下層に出現したのは…彼女が居た部屋の隣から聞こえた子どもたちの悲鳴を追って、崩落した暗がりに飛び込んだのではないか―――その飛べない羽や底の見えない高さに構わず、今のように―――

 

 …、…。それを…その献身を、愛と呼ばずになんと呼ぼう?心ある人間にだってできるとは限らない、その輝く勇気と思いやりを…。

 

 …オピラバード…。

 

 沸き上がった感情を胸にしまい、私は立ち上がった。彼女の力強いあの声を、称揚として受け取る。進め、と言われた気がした。…私は私のできることをするべきだ。

 

 

 

 ―――振り返った先には、ピンクのちびっこがちょこんと立ってこちらを見ていた。

 

 …、…。

 ‥‥‥、‥‥‥。

 

 

 お母さん、あの、すみません…お子さん、ここに居らっしゃるんですけど…。

 

 

 私の心中を察することのない小さき命は、ぴよ、とかわいらしく鳴いた。鳴いた、だけだった。

 

 

 

 




P1:程度の差はあれ多くの人間に当てはまるが、怒られている時は思考力が著しく低下する。なんとかしようとした。サボテン衝突事故をなぞるように、結果は遅延のち収束。

雛:ご機嫌。

水色の巨鳥:父親。背中がしっくりきたので怒りを忘れた。バランスを崩して落ちた。

ピンクの巨鳥:母親。庇護すべきものへの情が強い。
       鳥リンガル(関西風) [よう言うたでアンタ!][きばりや!]
       製品の開発は期待される翻訳精度を保証できず中止されました。

緑の巨人:衝撃を心に受けた。

橙のクラゲ:衝撃を横っ面に受けた。

赤い声の主:全身打撲。


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新チャプターの話をちゃんと理解してからプロットを組み直す予定なので、次回更新は結構先になる予定。
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