気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか???   作:ぱんのみみ。

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 前回までのあらすじ

 死んだぜ!



3 Attack

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 はっと気が付くと私は意識を失う数十秒前、つまり取り返しのつかなくなる直前のタイミングで目を覚ましていた。

 

 眼前から、リフトに乗ったオピラバードが近づいてくる。私は落ちていた足元の紙切れをポケットに突っ込むと、周囲を見回して前方のスイッチを機能させるための手段を探した。オピラバードがこちらの足場に辿り着く。―――ぴこん、と唐突にスイッチが赤く光る。間髪入れずにドローンに指示を飛ばす。

 

 果たして、オピラバードがこちらに辿り着く前に、それは作動した。

 駆動音がなり、奈落の上に動く足場が現れる。一も二もなく走りだして反対側に辿り着いた私は緊急停止ボタンを連打した。

 

 音を立てて動く足場は消え失せ、こちらを追ってきていたオピラバードは通路に飛び移ろうとするも失敗、したたかに頭を打つ。えっ。

 

「あっ」

 

 激しい声を上げて、それは先の見えない暗闇に落ちていった。

 

「…えっ、なにも、そこまでは―――」

 

 大急ぎで大穴をのぞき込む。音が吸い込まれるような闇が続いていて様子は伺えないがこの相当な高さは―――

 …、…。

 良心の呵責。悲痛な叫びは、「あれは誰かが操作する機械かもしれない」という私の考えを否定し無くしていった。

 消えた声が私の自責の念を重くする。そんなつもりは…という自分の声は無力に空気にとけた。意図せぬ悲惨な事態に気持ちは沈んだが今はどうすることもできない。

 襲い来る理由、あるいは襲われない条件が何か分かれば他の対処法もあったのか…とは思えど、後の祭りだ。

 

 …後ろ髪を引かれながらも、私は先に進むことにした。

 

 

 

 ショッキングな出来事ですっかり意識の外へやっていたが、そうだ、確信が持てた。

 これは単なる脱出ゲームではないだろう、ホラーゲームだ。

 …海外製とか何とか言う前にもっと説明すべき事項があっただろう。脳内の友人は『言わなかったっけ?』ととぼけた顔をした。頭良いくせにそういう事は平気でやる、間違いない。

 悪意のない詐欺師である友人に、今度会ったら高い飯をおごらせることを決めつつ、私は感情を一旦横に置いて状況を整理する。

 

 オピラバードのおかげで事態はわかりやすくなってきた。

 つまり、主目的は「この幼稚園の謎を解き、行方不明の子どもの手がかりを探す」ことで、やるべきことはこの幼稚園の先に進んでいくこと。ただし、進むにはカードキーが必要で、それには謎解き、ちょっとしたアクションが必要らしい。そしてプレイヤーはそれらを、襲い来る危険を回避しながら行わなければならない。

 現状私を襲う危険は、事故死と脅威からの襲撃だ。事故死は言わずもがな落下死など、そして襲撃は先程のオピラバードの攻撃である。

 オピラバードがなぜ私を襲うのか理由は定かではない。威嚇か、縄張り意識か、憎しみか、恐怖か、あるいは本能的なものか…もしかしたらべたべた触りまくったセクハラに対する怒りかもわからないが、とにかく理由がはっきりしない現在のところ、遭遇したら逃走するほかないだろう。敵意が爆発したタイミングは謎だが。…うん、改めてあの鳥が意識のある生き物だったとすると、ちょっと考えようのない距離感で触っていた気がする。…相手の怒りももっともな気がしてきた。大人しいからって野生のダチョウにちょっかいかけまくって死んだようなもんだ。

 セオリーから考えて、壁に描かれていた他のキャラクターも同様にこちらに敵対する可能性は十分ある。幸いと言うべきか否か死んでも巻き戻る仕様らしいが、今後は周囲にさらに注意しつつ進むこととする。

 

 ひとまず謎解きの基本、情報収集だ。拾い上げてポケットにつっこんだまま確認していなかった紙に目を通す。

 

 子どもの書いたものか?左右反転した音符マークの下にカラフルな文章が続く。

 

『一人ぼっち』

『穴の鳥と遊びたいけれど、みんなが置いてった :( 』

『みんなはこっち抜きでパーティーをしてるよぉ』

『メイソンさんはこっちを見たけど、行っちゃった』

『穴がうるさいし友達が中で叫ぶから怖いけれど、鳥はおもしろいよ』

 

 ペンをいくつも併用して書いたのか、一文ずつ色が違う。穴、と言うのは、この紙を拾った場所の穴のことだろうか。『穴の鳥』がオピラバードのことを指しているなら、もともとオピラバードの居場所はあの大穴があるリフトの部屋?隣のミッションのある部屋から移動したわけでは…なく?

 大穴の壁にあった、オピラバードの足跡を思い出す。自立移動するとわかった今、あの跡はオピラが自力で登ってきたときのものと考えて間違いない。

 

 穴の中で何らかの騒ぎが起こる前後、『メイソンさん』なる人物はリフトの部屋を通りかかり、たった一人残っていたこのメモの書き手を見かけるも立ち去った…。

 その子どもは今どこへ?

 謎は深まるばかりだ。ともかく探索を進めよう。

 

 

 今後のため、手に入れたカードを使う前にもう一度壁の絵を見て回った。見た目を知っているのと知らないのとでは、心構えがだいぶ違う。

 キャラクターたちと名前がわかるものをしっかり記憶して回る私の目に―――まったく目新しいものが映った。

 

 

『For you

 

 

 部屋の中央の赤い机に、直接書き込まれる形で残されたメッセージ。

 最初にここを見たとき、絶対になかったと言い切れるソレ。

 

 テーブルの上には、矢印で示されたカセットと、再生レコーダーが置かれていた。

 

 …、…。

 

 注意してそれを観察する。文字は流れるように書かれており、震えは見られない。急いではいても、落ち着いて書かれた…。筆跡は、今まで見てきたものと、違う。

 カセットを再生する。

 

 

 …子どものはしゃぐ声、物音、賑やかな喧騒が聞こえる。しかし、しばらくして唐突に、それは破られた。

 何かが崩れる、破壊される音だろうか?轟音とたくさんの悲鳴が聞こえる―――

 

 

 ぶつ、と音が途切れた。

 

 確かにこれは「行方不明の子どもを探す者」へ向けた「手がかり」として間違いがない。

 これを残した第三者は、その目的を理解して、渡す目的でここに置いた。

 なぜ?と疑問はつきない。その謎は進めば紐解かれていくのだろうか、と私はやはり歩を進めることにした。

 

 橙色のカードで開かれた部屋には、リフト?エレベーター?が隠されていた。四方に壁の無い、手すりと床、中央のライトだけの簡単なつくりのものだ。

 近くに、職員の物だろうか、航空機のチケットがあった。日付は過去、カナダのモントリオールからスペインのマドリード行だ。ここはそもそもカナダなのか?使われなかったチケットを見るに、持ち主に不測の事態が起きたのだろう…。ざっと読んで資料としてポケットに突っ込む…のは個人の所有物ゆえ流石に憚られたので、携帯端末で写真を撮っておく。…バッテリーのことも考えて無駄遣いはしないようにしよう。すぐに画面オフにして鞄にしまった。

 

 やや手すりがボロっとした壁の無いエレベーターに乗りこむと、どうやら下の階へ進んでいく様子。

 

 …周りは暗くなっていくが、唐突にエレベーターは停止した。上を見上げるに精々まだ一階分も降りていないように思えるが―――

 

 

 

 低い、地響きのような音が聞こえた。

 短い唸り声のような。

 

 

 

 …ちょっと嫌な予感を覚えつつ周囲を見回した瞬間、けたたましい警告音とともにライトが赤く点滅する。本格的に嫌な予感。

 

 がん、という衝撃とともにエレベーターが揺れた。落ちないよう両手に力を入れる私が見る先で、暗闇の下から伸びた緑の巨大な何かが手すりを掴む。大きな顔が下から現れ、その黒い2つの目は明らかに私を向いていた。

 

 ―――――――――緑の巨人。その顔に私は覚えがある。

 

「―――ジャンボジョっ―――」

 

 ガガガン!!と激しく傾いだエレベーターは暗闇に落ち、舌を噛んで最後まで言えなかった私の意識も遠ざかって行った―――

 

 

 

 

 




P1:人間。ゲームをやろうとしていたが、気が付いたら知らない部屋だった。友人の説明から脱出ゲームの夢を見ていると思っていたが、オピラバードの襲撃によりホラーゲームであることに気がつく。遊具で遊ぶ姿はもちろん目撃されている。

ピンクの巨鳥:おこ。

緑の巨人:エレベータに手を伸ばす。
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