気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか???   作:ぱんのみみ。

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 前回のあらすじ

 保安官と共に隠れ家に辿り着き、今後の方針を共有する。王笏の力によって女王の袋の中身たちを封印し直すため、王笏の間の扉を開くカギとなる4つのボタンを押しに行くこととなる。ひとまず安全な探索のために明かりを探し、なんとかドローンの部品であるライトを発見、保安官と合流する。



35 Stumble

 

 こっちにも成果があるぜ、とシェリフに連れてこられた先には、ある人物がいた。

 真白い体、ピンクのリボン。

 

「先生!ご―――、」

「転入生!!!」

 

 駆け寄ってきたその人が私を持ち上げてくるくる回ったことで、私は口を閉じた。舌を噛みそう。

 

「転入生!無事だったのね!よかったわ!もちろんそうだと思ってたけどね!」

 

 約3回転半した彼女は私を地面に下したあと抱擁した。勢いあまって彼女の身体に思い切り頭が押し付けられやや焦燥。あと少しでもぎゅっとされたら多分窒息する。流石欧米のスキンシップは熱烈だ…。

 

「上は大変なことになってるみたいね。私は…ほら、そこの保安官が扉を開けて逃げろって…言われて移動したんだけど…、そうだわ!転入生、あの男を知らない!?」

 

 …あの男?首をかしげる私に補足が入る。

 

「こちらの貴婦人は何者かに拉致監禁されていたと仰せだ。そんな男に心当たりがあるか、相棒?」

 

 心当たりも何もマッチポンプだな。

 

「そうなの!顔が見えなかった例の男よ」

「犯人はおそらく信じられないほど賢く全てを上手くこなし、とてもハンサムな気がするな」

「そうは言ってないわよ」

「俺の勘は決して外れない。そして何かが、そいつはとてもハンサムだとささやいている…」

 

 私は、平気な顔でつらつら喋る保安官を見て笑った。先生に伝える。

 

「相手は勤勉なひとで間違いないです、先生。彼も仕事を全うしただけだと思いますが、見つけたらどうします?」

「そりゃあ一発文句を言ってやらなくちゃ!いきなりレディの頭を殴ることないでしょ!」

 

 ごもっとも、完全同意だ。経験済みの私は頷いた。

 

「機会があれば確かに伝えますよ、先生」

「お願いするわ。…あ、そうだわ。ねぇ、転入生?」

「?はい」

 

 身をかがめて…彼女はちょっとこちらを伺うように見た。

 

「私…ちゃんと大人しくして、待っていたのよ?」

 

 …そういや私は彼女に、『ここで待っていてくださいませんか』とか軽率にも言った、な…?私は落ち着いて答えた。

 

「…はい、直接迎えに上がれず、すみません。ご無事で本当に良かった」

「…」

 

 …彼女はこちらを見つめてまだ何かを待っている。

 なんかこの返事は違うらしいな…弱ったぞ…。理由を考えずに謝罪を重ねるのも不誠実か…?

 

「あの、ええと、先生…」

「…」

「…もしかして、怒っておいでですか。私が、その…甲斐性がなく全く助けにならなかったから…」

 

 彼女の瞳はまだこちらをじぃっと見ている。身長差を物ともしない完璧な上目遣いだ、すごい。

 …、…。

 

 ―――やっぱりなんか違うっぽいな!?!?おしえてシェリフ!!

 

 僅かな視線移動のみで助けを求めた先、保安官は目を細めてこちらを見ている。見ている、だけだ。蒔いた種は自分で何とかしろ、がんばれって顔だ…。

 いよいよ狼狽え始めた私は懸命に言葉を探す。

 

「…貴女の身を案じていました…ほ、ほんとうに、無事な姿をみれて、うれしかったんです…」

 

 しどろもどろの私を、しばらくじぃっと見て彼女は…じわじわ、花がほころぶように微笑んだ。

 

「いいわよ、怒ってないわ」

 

 …よ、よくわからんが許された…?その笑みは非常にキュートだがどうすれば良かったんだ…?

 

「もしかして正解がないやつ…?」

「そうかもな相棒。―――あんまりうちの若いのを苛めんでやってください、メイソンさん」

 

 シェリフが苦笑しつつ言―――――めいそんさん!?!?!?

 

「やだ、人聞きが悪いわ。私ばかりが心配してた訳じゃないって確かめてもいいでしょう?」

 

 先生はにこにこ笑う。私は恐る恐る口を開いた。

 

「せ、先生…」

「なぁに、転入生」

「…W・メイソンさん…?」

「いやだわ、そんな他人行儀な呼び方。いつもみたいに先生って呼んで?」

「メイソン、先生…?」

「ウェバリー先生でもいいわよ」

 

 うぇばりーせんせい!?!?

 

「まぁ、とにもかくにも。―――貴女は正しい場所に来ましたよレディ。今のところ、ここは安全だ」

「そう。―――生徒の責任は私が取るわ、いない子を自分で探しに行く。出席簿が完璧じゃなくちゃ教えられないもの。そんなことをしたら校長もひどく怒るでしょうし」

「承知しときますよ。…さて、相棒。俺はスティンガーフリンの奴をこっちに運んでくるつもりだが。スイッチの方を任せられるか?」

 

「―――え、あ、りょうかい…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 め…めいそんさん…。つまり先生の遺伝子情報提供者が…ちょくちょく書類に載っていたW・メイソン氏…改めウェバリー・メイソン氏…。ウェバリーという名は、上階の出勤形態の成績表で見たな…彼女はやっぱりこの施設の職員だ…。

 

 個人的には衝撃の事実だった。ちょっと整理しよう。

 ウスマン・アダム氏とウェバリー・メイソン氏は、ええと、この施設の職員で、アダム氏の遺伝子情報を受けて生まれたのがCace6の赤い彼。で赤い彼がメンタルブレイクされて、唯一話したいと面会を望んでいた対象がメイソン氏。安全上の理由からそれを却下されて、そしてしばらくしてからCase6の『同伴者』として新たなCaseが生み出された。それがメイソン氏から遺伝子情報を受けた、ピンクリボンの先生だ…。改めて彼と彼女が面会したときの心情を思うと言葉が…見つからない…。

 赤い彼と先生は、自分を遺伝子提供者である人間そのものだと認識している…。それでは、二人はお互いのことをどう思ってるんだ…?自分を人間だと思ってて、でも相手のことはマスコットに見えてるのか…?どうなんだ…?

 

 今、深く掘り下げるべきでない問題な気もする。ともかく複雑で繊細な部分であると認識しておこう。

 

 私は気持ちを切り替えて、周囲を見回した。

 

 隠れ家のエリアで見たフロア地図によると、この階には、「イントロダクションセクター」「ポテンシャルセクター」「コンディショニングセクター」、そして隠れ家のある「ストレージベイ」がある。ストレージベイから暗闇をドローンで照らしつつ、イントロダクションセクター…の入り口と思しき場まで辿り着いたのだが。

 

 近くのブレーカーらしき場所に、見覚えのある姿。

 

 パイプに三角帽子の彼…カボブマンだ。

 

 相変わらず謎の出現に驚きつつ、無事を喜んでおく。その鉄の堅い肩をぽんと叩いて、…、…よく考えたら彼は、敵に齧られる心配がなかったりするか…?

 

『三石一鳥!』

 

 経費削減の結果得られたその一鳥は、かなり貴重なアドバンテージだ。ぜひとも逃げ延びてほしい。

 

「もしよかったら、一緒にくる?」

『いい子にしてないとバンするぞ!』

「そっか…お互いまた無事で会おう」

 

 お断りされた。彼に別れを告げつつ、足元にあった黄色のキーカードをありがたく頂いて、スイッチを入れた。

 

 照らされた入り口へ向かい、ついでに落ちていた紙を拾う。…、子どもの字。手紙だ。

 

『ママへ

 メイソンさんのいうとおり、かお とはおしゃべりしないよ!』

 

 添えられた絵は、笑顔のスティンガーフリンと、『me』『claire』、『scared miss maison』…。4名は『Party』の部屋に居て、その外に…これは…泣いているゾルフィウス…???

 

 メイソン氏は…何を恐れているのだろうか?順当に考えれば、ゾルフィウスか?

 私は鞄にしまっていた資料をめくった。ウスマンにその名を聞く前に、一度だけ目にしているはずだ…あった、アダム氏宛ての手紙の一文。―――『ゾルフィウスは誰も調査に行かなければ眠り続ける』。

 

 ぱっと見、ゾルフィウスは寝ているようには見えない。誰かが彼を起こしたのだ。

 …、…ゾルフィウスが起きているという事態が、メイソン氏にとって何か非常にまずいのだろうか?…しかし、アダム氏の記憶を有しているはずのウスマンは、彼と平気な顔で話していたな…いや、まずいからこそ問題解決のためにカボブマンを友達として渡そうとしたのか…?

 

 確証がない―――探索に戻ろう。私はキーカードで、イントロダクションセクターの扉を開いて進んだ。

 

 吹き抜けの広い一室だ。一人がけのソファ4つに囲まれたテーブルが…全部で6つ。そして巨大なスクリーン。すぐそばには青い扉。

 なるほど、イントロダクション…導入として従業員が何かの説明を受けるための施設なのだ…と納得しつつ、私は周囲を探索する。近くのカウンターテーブルに置かれたビデオテープを回収し、階段を上る…壁に格言っぽいものを発見。

 

『貴方の一日分のモチベーション

人生とは、正しい順序で進行される一連の出来事である』

 

 …、ちょっと読み取りにくいが、含蓄がありそうな言葉だ。

 人生の中で起きる出来事に間違いなんてないんだよ、という事なのか、はたまた毎日のルーティーン的な意味なのか。読む者によって、受け取る意味が色々あるかもしれない。

 文字の横に描かれたイラスト…スティンガーフリンが泣いている絵なのが気になるが、それが何の感情の涙なのか判断が困難だ。悲しみでなければいいが。

 

 2階部分を進む。吹き抜けから中央のスクリーンが見えるように、通路がコの字に型になっている造りだ。…巨大なライトが1階に向けて設置されている様子。青いキーカードを拾って一階に戻る。ひとまずこれで開くようになった扉はスクリーン横のここしか…。

 

 軽い音で扉が開いた先に、緑と紫の人型が見え―――

 

 

「―――か、彼ら、もうどっか行きました?」

 

 

 私は素早くセクター入り口の扉を確認し―――くそ、閉じてやがる!相手から視線を外さないまま数歩後ずさって大きく息を吸った。

 

「シェリ」

「待って待って待って!」

 

 二色の人型…道化師は慌てた様子で腕をばたばたと振った。

 

「ノータイムで保安官を呼ばないでくださいアナタを攻撃する気はありまセン!今見つかったらワタシ蜂の巣になっちゃいますよ!見たかないでショそんなの!!」

 

 見たいか見たくないかで言ったら、確実に見たくはないな…。

 私は視線を外さないままに、いったん叫ぶのをやめる。

 

「…何か用事が?」

「こ、こっちのセリフですよソレ。…ああ、いえ、わかりました。スイッチを押しに来たんですね?王笏のやつ」

「…、そうだ」

「こっち、ここの部屋にありマス」

 

 …、また閉じ込められたりとかしないか?

 

「…、…」

「…、…流石に4回目ともなると警戒心が…じゃなくて。ワタシこっちに避けてるんで!邪魔しません!」

 

 視線を外さぬまま…部屋を出た彼を中心点として円周を描くように移動し部屋を覗く…行き止まりの小部屋だ。万が一相手が扉前に陣取ったら、脱出は困難を極めるということである。

 

 …、私は部屋に片足の先のみを入れたまま、相手を見た。

 

「…えーと、どうしました?罠とか種とか仕掛けとか何にもありませんヨ…?」

「…、…」

「ワァ……あのですね、いたずらっ子達にいつ襲われるかって今、非常にピンチ、ですよね?お互い邪魔しあってる時間はない…ってことでスイッチを押しに来たアナタをどうこうする理由は無いんです。ね?そうだと思いません?」

 

 結果的にノーティワンズを解き放った本人に言われると釈然としないが、一応まともなことを言ってるっぽい。少なくとも、ちょっと前にあった狂気は感じない。

 

「…、…」

「―――わかりました、わかりましたよ!もう少し離れて大人しくしてマス!」

 

 ビターギグルは両手を上にして、下がっていった…彼を強く疑うというよりどうしようかと考えていただけなので、ちょっと申し訳ない。

 

 今度こそちゃんと小部屋に入る。手前に閉じられた黒い棚。奥に、謎の装置があった。なぜかヘッドフォンが置かれていたので一応回収…して、装置をよくよく見つめる。

 

 装置の前面には見慣れたパネルが3つ付いている。その内2つはライトが点いておらず反応しない。そのうえに描かれたイラストを見るに、照明の点灯と消灯を表しているかもしれない。あちこち検分して、一旦戻ることにする。

 

「…スイッチ、何か分かりました?」

 

 部屋から出ると声が掛かった。…やけに下から声がするなと思ったら、壁に背をつけて体育座りをしている…。高身長を折り畳んで小さくなっている彼はぼそりと言った。

 

「…、…さっきも言いましたけど、アナタを傷つけるつもりはありませんよ。もう十分ダメージを受けました…」

 

 ダメージ…。

 

「…先ほど貴方は『彼らは行ったか』と口にした。ノーティワンズとは仲間じゃないのか」

「……まぁ遡ればそうでしたね。今は…少なくとも向こうは仲間と思ってませんよ」

「…、…」

「見つかったらワタシも齧られちゃいマス。個人的に何とかしようとこのスイッチの場所に来ましたけど、どうしたらいいのか、サッパリ」

「…、…」

「自分が何をしたのかは分かっています、アナタにやったことも。決して埋め合わせにはなりませんが、本当に、申し訳なく思っています…」

 

 …、…。謁見の間で目の当たりにした彼とは…雰囲気が全く異なる…。会話が十分に可能そうな様子に私は逡巡した。

 …、…聞いてみる価値は、あるはずだ。

 

「―――貴方も、ノーティワンズ達を再び封印しようと思っている?」

 

 ぱ、と彼は顔を上げた。

 

「そう言おうと思っていました。アナタにとってワタシはまだ敵かもしれませんが、少なくとも、共通の敵に対して力を合わせることはできると思いマス。…罪滅ぼしにもならないと思いますが…それでも…」

 

 …、…。信用…はまだできないが、一時共闘、みたいなものか…?

 

「…、…貴方がまたジョークを言って私に突然襲い掛かってくるという可能性は…」

「―――」

 

 目ぇ逸らした…。

 

「…この話は無しということで…」

「いやいや待ってください!説明させて!」

 

 必死な様子で彼は主張をした。

 

「自分でもわからないんです!ただ、本当に時々抑えられなくなってやっちゃうんですよ!」

「笑いながらの強襲を…?」

「いえ、いえ、破滅に向かう選択をというかジョークそのものを―――ええ、あの時だって、ワタシがアレを言えばどうなってしまうかよくわかってたんです!でも…でも、あの馬鹿げたジョークを言ってしまった…!」

 

 彼は項垂れた。

 

「ワタシのせいで、女王陛下が…ご崩御なさったかもしれないと、わかって、います…」

 

 …、…。状況を正しくわかってしまう理性が相手にあると知って、私は苦い気持ちになった。正気と狂気の反復横跳びは精神的に大ダメージに違いない。自分で制御できないとあらば、なおさら。

 

「…、…わかっ…た…」

 

 絞った声に、道化師はこちらを見た。

 

「今の貴方にその気がないことは信じる…そうするならとっくに出来ているだろうから…」

 

 ただ、と私は言葉を選んだ。

 

「すぐに信用は…できない。ごめん。とはいえ、貴方もまたノーティワンズに襲われる危険があり、解決を図ろうとしている、ということは留意しておく」

 

 脅威と目的を共有できるかもしれない、というのは非常に重要な可能性だ。

 

「私たちは、ノーティワンズ達に襲われないように、という目的でそれぞれ問題に取り組む。OK?」

 

 道化師は、ゆっくりと頷いた。

 

「…わかりました…ワタシもベストを尽くします…」

 

 




P1:流石に警戒レベルが上がっている。任された仕事をちゃんとやろうとはしている。

保安官:まぁ任せていいだろうと役割分担して相棒に仕事を振った。

先生:…ね、あなたも心配してくれた?を目で訴えていた。慌て始める相手を、少しばかり楽しく見つめていた様子。

¥型のもの:自分の役割を全うしている。録音された音声のみが彼の言葉。選択肢は少ない。

道化師:ハイテンションから戻ってきて現在は凹んでいる。
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