気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか??? 作:ぱんのみみ。
前回のあらすじ
外科医に途中経過の報告を行い、いよいよ情報を得るためにモーテルに向かう。目撃者からの情報提供の交換条件として騒音被害解決の依頼を受け、音の元を訪れるが、そこには変貌した道化師の姿があった。こちらに襲い掛かろうとする相手から逃げようと、屋上を駆ける。
迷路のような屋上を走る。走り続ける、ひたすらに。
―――これ、どこまで逃げれば捲けるんだ?相手の視界から外れても、ほぼ一本道だから追いかけてくる。体力的にジリ貧かもしれない、別のアプローチが必要なのでは…。
物は試し。振り返って叫んでみた。
「―――貴方のジョークを嫌ってなんかいない!」
猛然と追いかけてきている道化師は吠えた。
「ウソツキ!『笑えない』って言いマシタ!」
……言った!確かに!いや発言の切り取り方!そんなにショックだったのかやっぱ悪いことをしたな!
「ごめん!どうにも心配になるジョークは笑うのが厳しい…!」
「ソレカラ批評シマシタ!『爆発力がない』ッテ!」
すごい、洗脳状態で理性がとんでるのかと思いきや、ちゃっかりしっかり記憶がある!
「それはそのジョークへの評論であって貴方のジョークを嫌っているわけではなく、」
「御託はイイデス!ナンデ笑ッテクレナインデスカ!!!」
すっげー怒ってる!でも心は傷ついて泣いてるやつだこれ!
ちゃんと話を聞きたいが、多分立ち止まったら死ぬ。死んだら話を聞けない。
こちらを追う彼は叫んだ。
「ヤッパリみんなワタシノジョークが嫌イなんダ!!!」
……、……。
―――別の屋上に飛び移った私は、そのまま体の向きを反転させた。対峙する相手をまっすぐ見る。
「…わかった話を聞かせてほしい!!!」
足に力を入れて立った私は、向こうから跳んでくるその黒と紫の姿を見、
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「ヤッパリみんなワタシノジョークが嫌イなんダ!!!」
死んだ!くそう、フィジカルが足りない!!!
歯噛みして走る。死んだら本当に何もできない。
説得は通じない、今は頭に血(ジバニウム)が上っている様子。一回何らかの手段で冷静になってもらって……でも洗脳状態なのにそんなことできる…???
やるにしても、信頼度とか友好度とか絶対的に足りてない気がする。万事休す。
いよいよ息が切れてきた。何度目かのトタン迷路の終わり、視界が開け―――
「―――こっちだ!!!」
良く知る声が響く。
視線を向けた先に、黒い帽子を被る姿。
やや離れた場所…前方のビルから身を乗り出して、腕を伸ばしている彼が叫ぶ。
「跳べ!必ず掴む!!!」
目が合ったとわかった。その瞳がまっすぐ私を見ている。
言葉はいらない。逡巡なく駆けて、力いっぱい地面を踏みこんだ。
身体がふわりと浮く。伸ばした手は―――確かに、その手に届いた!
大きな茶色の手がしっかりと私の手を掴み、体を引っ張り上げる。
「―――まさかンな仕事をする羽目になるとはな!」
「ありがとうシェリフ助かった!!」
「話はあとだ、中に隠れるぞ!」
走り出す保安官の背を追って、近くの部屋に飛び込む。まもなく扉が閉じられた。
「一体どうなってんだ、お前さん」
シェリフが油断なく扉を見つめつつ、私に話しかける。
「目撃者からの情報収集にモーテルに行くって仕事が、どうなったら洗脳されたビターギグルに追っかけられて屋上を跳び回るってことになるんだよ?」
「色々あって…」
「さてはお前さん、そういう星の元に居やがんな?」
シェリフが前を睨んだまま、にやと口角をあげる。緊張を忘れさせてくれる軽口だ。私は息を整えつつ苦笑した。
「否定しにくくなってきた。……貴方もそういうものがあるかも」
やや不思議そうにこちらへ視線を投げた黒い目と、目が合う。
「誰かの打倒でなく守護が貴方の
「―――……」
珍しく叩いた軽口かつ渾身のジョークにシェリフはただ呆けたようにこちらを見ていた。
―――なるほど傷つく。ごめんなビターギグル。
しばらく動きを止めていたシェリフが、ふいに口角をあげる。
「…それは、ひょっとして……ジョークで言ってるのか?」
「そうだよあと嘘じゃない」
やや拗ねて仏頂面になる私を見てか、彼はいよいよ笑った。
「口が上手くなったか?あぁいや、そういうのは上手いんだったな?」
「…どうも…」
シェリフの手が背を叩く。これから戦うことになるだろう相手を考えると、いい感じにリラックスしているんじゃなかろうか…じゃあ、いいや…。
「褒めてんだぜ、お前さん。…そんで、ビターギグルはお前さんひとりを狙ってるわけか?」
「少なくとも市民は標的にしなかった。…だからここに来る、と思う。うまく説明できないんだけど、怒ってたし泣いてる気がする。彼を止めなくちゃ…」
どん、と扉が叩かれる。
はっとしたシェリフが、一歩前に出た。
「俺の後ろに―――」
言い終わる前に、扉は蹴破られるように、無理やりに開かれる。
ひしゃげた扉が地面に音を立てて転がった。同時に飛び出してきたビターギグルが室内に居る我々を視認し…一度立ち止まった後に保安官に襲い掛かる。
「アナタもワタシのジョークをキラッテマシタ!!」
迫った牙を、両の手でかろうじて抑えたシェリフが叫ぶ。
「―――っ!おい何だってんだ一回止まれビターギグル!じゃなけりゃ法に訴えるぞ!?」
「ヤッテミタラどうデスか!アナタいーっつもソウデスよネ!キソクルールキマリゴトばっか!!!」
両者の力は拮抗しているが、双方ともに力を緩める様子はない。いつ崩れてもおかしくないほど緊迫した雰囲気だ。ビターギグルの攻撃が激しくなり、いよいよシェリフの手に武器が握られ…
―――いやいやいや!!!ちょっと待て!!!
「ビターギグル!!!」
私は叫んだ。目の前でみすみす2度目の犯行を見過ごすわけにはいかない。
噛み付こうとするビターギグルとそれを腕で止めようと取っ組み合っていたシェリフの2名はこちらを見た。―――見たのに、ビターギグルの標的は私へ移らなかった。シェリフの方が優先ターゲットなのだ。愕然として、私は彼を見た。
「なにを、何をやってるんだ貴方は」
「…ハァ?!アナタに何かヲ言われる筋合ハ、」
――――会話ができる。
反応を得て、私は続けた。
彼には思考がある、じゃあ、じゃあ、尚のこと…!
それは駄目だ、絶対に、だめだ。
「何か言う事があったんじゃないのか…!」
「何ワケわかんないコト言ってンですカ!」
大事な話をすっぽかされて、思わず、力を込めて彼を見た。シェリフを掌で示す。
「…『ごめんなさい』はァ!?」
「―――」
2名の視線が身に刺さるが、それを気にする余裕はなかった。湧いた熱のままに声を張る。
本来なら口出ししない領域の話だ。これは他者の選択で、私の出る幕のない話だ。
「シェリフに言うんじゃなかったのか。貴方が他人に取られると思って怒るほど大事なもので、笑ってほしくてでも壊してしまったものに対して、後悔して、謝るんじゃないのか…!」
『越権のおせっかい』『要らぬお世話』『お前には関係ない』―――冷笑、後ろ指が私を差す。
―――でも友と呼ばれたのだ。赤の他人ではなくそうと信じてくれたのならば、不可侵のその世界へ干渉する権利を微かでも与えてくれたのならば―――私は、友として叫ばねばならない!
震える身体を抑えて声を張った。
「貴方が信念によってあちらを仲間と選んだのなら止める権利はないと思ってた。でも、でもなんだその姿は、その振る舞いは。それが貴方のやりたいこと?…
ならば、今やろうとしていることは間違っている。
貴方の意思を裏切り、願いを踏みにじり、何より貴方を最も傷つける行為だ。
「貴方の大事な者の―――目の前の相棒の顔を、ちゃんと見ろ!!!」
『相棒』、と。その言葉に、2対の瞳は吸い寄せられるように確かに交わった。―――ほら見たことか、やっぱり互いにそれが唯一だ。
双方茫然とした様相は、目が合ったと気が付いた途端反応が分かれる。
一方は怖気づいたようにたじろぎ、もう一方は光を見たように目を見開いた。
一瞬の交錯。瞳に光が走ったほう、トードスターが動いた。
武器を持つ彼の手が翻る。手品のように、握られていた保安官バッジは仕舞われた。輝く金の星が身の内に消える。
何も持たぬその手は……代わりに、固く拳が握られた。
「―――歯ぁ食いしばれよ馬鹿相棒!」
重たい右ストレートがビターギグルの顔に突き刺さった。
重心を捉えた見事な拳は、良い音を立てて相手の身体をすっ飛ばすに至る。
床から浮いた道化師は、綺麗な放物線を描いて扉向こうにビタンと落ちた。
私はシェリフを恐る恐る見た。
「…て、てごころとか…」
「加えた!!…いやあのだな洗脳されてる以上気絶を狙うしかないし、あるいは衝撃で目が醒めるんじゃねえかと、―――…!」
我々が見やる先で、倒れて動かない真っ黒の身体に変化が起こる。
ジワリとそれは床に染み出すように、身体から黒色がゆっくりと抜けていく。
我々が駆け寄った時には、彼はもう、元の紫と緑の体色に戻っていた。
「おい、意識は戻ったか!?しっかりしろ!」
「……、…ああ、シェリフ…」
微かな声。
ビターギグルは目を開けたが…彼の身体はぐったりしたままだ…。周囲の床は、ジバニウムで汚れている…。
シェリフが、動けぬビターギグルの上体を支えて抱え起こした。
…ビターギグルが咳き込む。その口からジバニウムが零れて床を緑に濡らしていく。
「おい…!」
「…いいんです…。当然の、報いデスよ…」
「ばかな、そんな、そんなつもりじゃあ…」
揺れる保安官の声に、ビターギグルは、静かに、首を横に振った。
「…ゴメンナサイ…シェリフ…」
ぽつり、と声。
「…周りでどんなことが起こっても…ワタシは、たったひとつのことを考えずにはいられないんデス…」
掠れた、弱々しい声が、言葉を続ける。
「誰かを笑わせるために、もっと時間を使わなきゃ…。…ワタシたちは、それをちゃんと大切にできていませんよ…。酷い話ですけど、まだワタシは…そういう幸福な気持ちを、ちゃんと味わったことがないんです…」
鼻をすする音。涙声が続ける。
「ワタシはいつもジョークを言ってますけど、誰もワタシにジョークを言ってくれません…」
シェリフ、と彼は小さな声で言った。
「冗談を、ひとつ…言ってくれませんか…」
悲しい、寂しい声だった。保安官はうろたえたように…だが、懸命にその懇願に応えるよう頷いた。
「わかった……」
僅かな逡巡の後、それは紡がれる。
「―――…なぜ動物は、道化師を食べないのか?」
…、…。
「―――おかしな味だからな」
…、…。…そうだね。ビターギグル。貴方のジョークは、ちゃんとおかしかったんだ。きっとそんな幸福な気持ちで周囲の誰かを笑わせていた。
ビターギグルは…戸惑ったように瞳を揺らした。
「……わ…わかりません……いえ、でも、」
ゆるり、と彼の顔に微かな笑みが浮かぶ。
「それはなんだか……悪くない、話ですね……」
小さな笑い声が、響く。
弱々しいそれはやがて途切れて、―――彼の身体は力を失った。腕がぱたりと床に落ちる。
「……―――さよならだ、友よ……」
痛いほどの静寂の中で、保安官の声が空気を揺らす。
「……頼む、ひとりに、してくれ……」
悲しみに満ちた声に…私はただ静かに頷いて踵を返した。
…、…。
……、……。
………、………。
歩く。早歩き、小走り、私は現場から徐々に速度を上げて離れた。
脳裏をシリンジョンとした会話が過る。
ジバニウム。彼らの頑丈さと回復力。
――――別にあれ、死んでなくないか……???
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「ドクター!ドクターッ!!!」
「―――どうした急患か!?」
「黒紫で操られてた人が保安官の拳の衝撃で自我を取り戻して口内ジバニウム流出でぶっ倒れてます!意識不明!どうにかなりますか!?」
「―――なんだコメディアン共か、道化の方のスターにはジバニウムでも喰わせておけ!」
それで治る!とシリンジョンドクターは作業に戻っていった。
…勢いで済ませた可能性も大いにあるので、一旦落ち着いてちゃんと説明したところ、やっぱりドクターは全く興味なさそうな顔で、“ジバニウム不足だ”とおっしゃった。
…よかったね、シェリフ…。
悲しみに暮れる保安官を遠い目で想う私に、外科医の声が飛ぶ。
「カエルの方のスターには適当な仕事でも与えておけ!それで済む!」
すっげー雑に片づけられてる…。
「ついでだ。そのお騒がせ道化師に次会ったら、貴様のジョークはクソ程つまらんと伝えろ、そんくらい言わんと堪えんからなアイツ」
―――確かに、つまり死んだフリジョークをしたってことか彼は!そういうの笑えないって伝えたのに!?
あの空気でやりきるのは鋼の心臓だ…“どんな状況でも誰かを笑わせることしか考えられない”みたいな発言への信憑性が高まった。懲りていないというか、そのストイックさは尊敬の域に達するな…。
…、…。でも、まぁ…。
「一応、笑ってもらえないことに傷ついてはいたようなので…」
苦笑する。感情に任せてでっかい声も出したし、ちょっと自分的にはバツが悪い。今度会ったら謝ろう。
驚異的状況理解力のシリンジョンは、片目を眇めてやがて、フンと顔をそむけた。
「シェリフに話してきます」
「阿呆か、保安官は直に気が付く。貴様は貴様の仕事をしろボランティア」
…、…。たしかに市長にとって緊急性はそっちの方が高い、か…。
はい、と私は街に戻ろうと踵を返そうとした…
「―――いやちょっと待て貴様」
が、プライヤーが私の腕をひっつかんだ。
「…、…な、なんでしょうか…」
「―――座れ」
冷静で感情の感じられない声に、私は素早く手近な椅子に腰を下ろした。不思議と言う通りにせねばならないという気持ちになる。流石医者だ。
「動くな」
こちらをドリルで指差しつつ…彼は奥の棚から何か引っ張り出した。
…ビタン、と白い布が私の腕に引っ付く。特徴的なこの冷感と香りは…湿布?みたいなものだろうか?でもかなりヒンヤリする。
「足」
低い声に、早急にズボンの裾を引っ張り上げて足首を晒す。同じように湿布のようなものが貼られ、上から手早く布が巻かれていく。
「―――貴様らの脆弱性ときたら本当に苛々するな」
「…恐れ入ります…」
肩を縮めて私は彼をそうっと窺った。走ったり跳んだりした際、多少トタンにぶつかったり着地に失敗したりした自覚はあった。ちょっと動かすと痛い程度だったのでそれ程気にしていなかったのだが…。
彼は言葉通り苛々とドリルを回していたが、顔を上げて遠くへ呼びかけた。
「おい、鋏」
まもなく駆けてきた助手君がもってきたのは―――良かった鋏だ!
手に取ったそれで、彼は布を切ると結んで固定した。
「終いだ」
「あ、ありがとうございま、」
「立て。跳ねてみろ」
「…はい…」
大人しくいう事を聞いて、私はジャンプしてみた。―――すごい!全然痛くない!足首ががっちり支えられてる感じだ!
「調子に乗って何度も跳ねるな!鳥頭か!!」
「はい!すみません!!」
首をすくめて謝罪する。今のはアホだった。ちょっと感動してつい…。
「ありがとうございました、ドクター。…助手さんも、ありがとうございます」
ドクターは鼻を鳴らし、助手さんはちょっと視線をうろつかせた。
「―――いや、そうだなまだここで待っていろ。貴様がまた阿呆で哀れで嘆かわしい負傷をする前に手を打つ。靴を寄越せ」
「はい…」
手渡した靴は素早く回収され、彼は机に向かった。
助手さんと私が残される。……時間が浮いたな……。
「助手の貴方も普段は街に住んでいるのですか」
ぎょっとした様子でこちらを見た助手の彼は、ドクターに視線を飛ばした。
シリンジョンは椅子に座って作業をしていたが、面倒臭げに半眼でそれを受けて応えた。
「そうだが、そいつは静かで丁度良いので私の近くに置いている」
なるほど。市民の彼らは、見た目が似ているもののかなりの個性がある様子。
「ここでドクターの助手をするかたは、どのくらい街に、」
「声を掛ければ誰でもだな。そういうつもりで作った」
助手さんとコミュニケーションをとるつもりだったのだが、結局作業中のドクターと喋っている。邪魔をしちゃ悪いと思ったが、たぶん本当に邪魔だったら遠慮なく黙れと言ってくれるだろう。
「全員…。彼らは皆、作業の効率の為にドクターが自ら…」
「…、…まぁ、それもあったな」
作業をしつつ、振り返らぬままシリンジョンは続けた。
「―――求められた初めの主題に、私単体では不足だった」
静かな声。
「だから自分で生み出すことにした。研鑽と集積が究極を作る…作るはずだ、と兎に角そうした。私にできることはそれだった」
4本の腕はよどみなく動いている。
「解に到達するには、手が足りなかった、例え人より2つ多かろうとな。幸いにも過程の副産物は多少の手になった。―――いや、多少でも言い過ぎだな爪の先…つまり無いようなモンだが…とにかく使えるモンは使った」
助手さんはちょっと肩をすくめた。おや、意外な反応…。
「そのうちそれを、より良く活かせるとかなんとか言われ始めた。ああそうだ、数は力だと―――その力がぜひ欲しいとな。最初は胡散臭いから断ったが結局ヤツの熱意に折れて作ったよ、どうせ作るからな。そのついでだ」
…ヤツ。黒いあのひと。怒りに燃える復讐者。
「しばらくしてから自由と待遇改善を見旗にぶち上がったある戦いは…まぁ、色々あったが結論から言うと負けた。我々が思うよりクソ共はずっと賢しくて数が多くてしぶとかった」
…、…。
「我々は選択を迫られた。犠牲が最も少なくなる選択をした。私は…元の、作業に戻ったよ。クソ共から新しい仕事が舞い込んだので、それをする毎日だ。―――犠牲とされたアイツの無い腸が煮えくり返ってるなんてのは想像しなくても分かる。つまり、まぁ、そういうことだ」
作業の音が止まった。振り返らないまま、シリンジョンはこちらに靴を投げ渡した。
「―――昔話は終わりだ、さっさと次の使いに行ってこい」
「…、…。ドクター」
「なんだ人間」
「貴方の最初の題はなんだったのですか?」
背を向けている外科医は、一瞬の静寂ののち鼻で笑った。
「忘れた」
P1:ひとの話を聞くのは苦痛ではない。自分の話をするのは下手くそ。
余計なことをするな
道化師:笑いには命を賭けてもいい。顔面に拳が入った際、その立派な牙で思い切り舌を噛んだ。
保安官:思い込んだら直線。まだ事実には気がついていない。
助手:無口。ハンマーと鋏の見分けがつく。
外科医:自分の使う道具は効率の観点から手入れや改良をちゃんとする性質。
『傷ついた心の外科医になろう!』