気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか???   作:ぱんのみみ。

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 前回のあらすじ

 知らない部屋で目が覚めるが、体は青いマスコットキャラクターとなっていた。体の持ち主らしき存在については身体内部に意識を確認。現在意思疎通は困難で詳細不明。周囲の情報から鑑みるに、目覚めた場所はこれまで居た施設の過去である模様。6番(Case6)を名乗る赤い存在に連れられて、施設の案内と集団の構成員への紹介に回る。



58 Guidance

 

「エリアを見て回りながら、誰かに声をかけていこう」

 

 

 シックスはすたすたと歩みを進めている。追いかける私は速足になった。

 

「セブンみたいな子が、ほかにもたくさんいるの?」

「Case番号がある子と、他にもまぁ結構いるよ。後者ならそのあたりに誰かしらのブロブがいるはずだ」

「ブロブ?」

「うん。ジバニウムのブロブ」

 

 ブロブ。…、…かたまり?

 

 首をかしげながら、赤い姿を追う。

 進む先は、床の色が黄褐色だ。サボテンやヤシの木の点在するそこには、粒子の細かい砂が敷かれている。さらさらしたそれはさざめく波の模様を作っていた。

 ちらと、壁に掛かった看板が見える。「The Desert」…砂漠エリア。

 

 

「…おーい!こっちだ!ここに居る!」

 

 頭上から聞こえた声に、私は顔を上げた。

 同じく視線をそちらに送ったシックスが言う。

 

「ああ、あそこにいるのがさっき言ったブロブのひとりだ」

 

 壁から生えたブロックの上。薄緑のスライムのような姿の誰かが、跳ねている。

 私は、相手をまじまじと見つめた。

 ―――ジバニウムブロブ!なるほど、シリンジョンの街に居た市民の子に似ているけれど、形が違うようだ。かなり正確な球体だったあの子たちと比べ、目の前の彼は、なんとも柔らかそうな姿をしている。成形する前の粘土とかパン生地みたいな…。

 

 ブロブの彼は、体を揺らした。シックスの頭上と同じようにステータスを示す文字が浮かんでいるが、Case番号の表示はバグっていて読めない。

 

「なぁ、俺が飛び降りたらキャッチしてくれない?何時間も降りずにここでこうしてるんだよ」

 

 それは大変だったろう。私はすぐ頷いたが、相手へ返答する前にシックスが口を開いた。

 

「ちょっと聞きたいんだが、なんで僕に頼まないんだ?」

 

 頭上のブロブは顔を顰めた。

 

「こないだの俺のイタズラにまだ怒ってるだろ?」

「え?いや、全然」

 

 シックスは落ち着いた様子で続ける。

 

「もうすっかり忘れていた。君が飛び降りたらキャッチするよ。約束する」

「…OK、わかった。約束だぞ!」

 

 ブロブがぴょんとシックスの方向へジャンプする―――

 

 ―――赤い腕は宙へ持ち上げられることなく、ブロブはさっとかがんだシックスの上を通り過ぎた。駆け寄った私の手が届くこともなく、緑の体はそこにあったサボテンの上に着地する。

 

 

「おわ―――っ!?!?!?」

 

 

 叫んだブロブは伸びあがって、やがてぺちゃ、と力を失った。シックスの黒い瞳が無感動にそれを見つめる…。

 

 

「マイナス10000オーラ。―――決してイタズラをしてはならない」

 

 

「…いや待って…痛そう…痛いよね…?降ろそう…?」

 

 私は恐る恐る口を開いた…。シックスは小首を傾げる。

 

「もう少しこのままでいいとも思うけど。適切な扱いだ。―――でも君が手助けするのは自由だよ」

 

 どうも彼は面倒見がいいだけのリーダーではないらしい。

 

「君は知らないか。ブロブは体が柔軟だからそんなにダメージを受けないよ。多少痛みを感じはするだろうけれどね」

「…そう…。…あのちなみに、彼のイタズラはどんな…」

 

 私が気絶したブロブの身体と棘の間に手を差し込む間に、シックスはすらすらと告げる。

 

「うん、高い所から飛び降りて他のCaseの上に無断で着地しようとした。計3回だ。でも痛い目見たからこれで終わるかな?」

 

 …うーん…。もしかしたら順当かもしれない…のか…。でも早く助けよう…。

 

 慎重に持ち上げて棘から引っぺがした柔らかな体は、無事に地面に置かれた。サボテンのトゲが刺さった跡は現在進行形でじわじわと消えていっている。今はもう、ぽつぽつと微かに凹みがあるくらいだが…。

 

「…もしもし?大丈夫…?」

 

 そうっとした声掛けに、うめき声が返ってくる。

 

「―――…おあぁー…マジでいたい…あの鬼…悪魔…」

 

 いや、やっぱしっかり痛いんじゃないか。“そんなにダメージを受けない”とは?致命的じゃないから許容範囲ってこと?

 

 シックスが飄々と声をかける。

 

「懲りた?」

「…うーっわかったよシックス、二度としないよ!―――…だけど、そっちの、青いアンタ。助けてくれてありがとうな。いいぜ、アンタとはもう友達だよ」

 

「え?いえ、私は何も……」

 

 思わず視線を泳がせた先で、こちらを観察しているシックスと目が合う。

 …、…何か、物凄く先を促されている気がするな。

 

 ―――あれ、そういえば、と私はあることに意識が向いて、はたりと動きを止めた。

 そもそも『ぼく』でない私が彼らと仲良くなっていいのか?という疑問が浮かぶ。なんとなくいずれ私は消えるのでは、という予感があるのだし。

 しかしここで周囲と距離を取って冷たい関係を築きあげるよりかは良い気もする。『ぼく』に『おねがいね』と何か(詳細不明)を頼まれたからには…わからないけどそれなりに最善は尽くしたいところ…。…、…うん、『青い新入り』に対してそれなりに良いイメージはもっててもらって、良いはず…。

 

 数秒の思考の後、私はブロブに目線を合わせた。

 

「その…ありがとう。今日からよろしくね…?」

「おうとも。よろしく」

 

 ブロブの彼は気軽い様子で返事をした。彼の頭の上に浮かんだステータスは、ぱっと『Friend』と光ったのだった。

 

 

 

 手を振ってブロブと別れた私は、先にすたすた歩いていたシックスを追いかけた。

 横に並んで彼を見る。

 ええと、さっきの一連の出来事は…。

 

「…狙ってやった?」

「何が?」

 

 けろりとした顔で彼は言った。

 

「役割ってものがあるよね。…君は怪我を回避したし、彼は学びを得てより良い子に近づいた。僕はリーダーとしていい仕事をしたと思わない?…友達ができてよかったね」

 

「…ええと、あの―――シックス、ありがとう」

「いいえ」

 

 シックスは、気負うことなく前を向いて進んでいく。

 …、…。

 

「軽く残りのエリアを見て、次は上の部屋に行こうかな。壁に穴があるのが見えるよね、実のところあれは出入口で、梯子を登って行ってその奥へ進めるんだ」

「そう、なんだね」

 

 ……、……。

 

「…あの、その、シックス。ちょっとさっきのブロブと、話をしてきて、いいかな」

「別にいいけどなんで?」

 

 私はまごついた。

 

「言いたいことがあって。すぐ戻るからここで待ってて、くれる…?」

「いいよ」

 

 ふーん、と彼はこちらを眺めている。私は待たせないように急いでブロブの元へ向かった。

 

「―――あの!」

「お、なんだよ兄弟。早いお戻りだな」

「さっきの!こと、なんだけど」

「おうともよ」

「シックスは」

 

 私は息を整えつつ言葉を選んだ。

 

「貴方に、意地悪したんじゃなくて……危ないってわかってほしかったみたいで」

「はん?」

「まわりを良くしたいと思ってのことらしいので…鬼や悪魔じゃなくて…」

「ほーん」

「シックスのおかげで、私も貴方と友達になれたんだ…」

 

 …ぶふ、とブロブは吹き出した。

 

「なんだよ、そんなこと言いに来たのかよアンタ。―――はいはい、怒ってないよ!シックスはちょっと怖いけど悪い奴じゃないってわかってる」

 

 彼はぴょこぴょこ飛び跳ねた。あっけんからんとしている。

 …心配しすぎだったっぽいな、出しゃばった。はっず。

 

 けらけら笑うブロブと別れて、私はダッシュで元の場所へ戻った。シックスは手持無沙汰に足をパタパタして立っている。

 

「ごめんシックス、おまたせ」

「いや別に。聞こえていたし」

「聞こえてた…!?」

 

 私は背後を振り返りブロブの位置を確認した。距離は結構離れてるぞ、ほんとにか。

 

「この距離は聞こえるよ。でも、わざわざ彼に言わなくてよかったのに」

 

 ぎくり、と私は身を固めた。余計な寄り道、要らぬお節介。後ろ指が私を指す。

 

 恐る恐る視線を送った先のシックスは、なんでもなさそうな表情で言った。

 

「言わなくても、彼は僕を優れたリーダーだと理解して、尊敬しただろうからね」

 

 ―――そうかなぁ!?

 

「……そうかなぁ……?」

 

 二度見してしまったし口から洩れてしまった。シックスは自信に溢れている。

 

「はたから見て僕がそうなのは明らかだよ」

 

 シックスは見た目年齢よりずっと頭良さそうだし先が良く見えているリーダーなのは確かだと思う。私は頷いた。そして言葉を選んだ。ええと、

 

「…ブロブは痛かったから、もしかしたらそうとまで考えないことも、あるかもしれない…」

「そう?」

「うん…いや、そうかもって私が思っただけ、なんだけど…」

「そうかな?」

 

 うん…ひとの心って、難しいね…。

 思わず遠くを見つつ、さっきのブロブの様子を思い浮かべる。確かに、結局気にしてない様子だったしな…。

 正解は分からない。

 シックスの半分くらい、私も鷹揚に構えるのも大事かもしれない。

 

「うん、私の考えすぎだったかも…。待たせてごめんね」

「いや全然。君はブロブと更に仲良く話せたし、無駄じゃなかったんじゃないかな」

 

 …、…。私たちは、並んで、次のエリアを見に向かった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 4つのエリア…「The Desert(砂漠)」「The Polar(極地)」「The Ocean(海辺)」「The Forest(森林)」のエリアのごく軽い説明を受けた後。

 

 

 

 私は前方の景色を睨んでいた。

 

 

 

 壁からちょっとだけ突き出したブロック、その上面から真横に伸びた梯子の上に、私は立っている。

 見つめる先は、やや下方の壁から突き出した別のブロックだ。

 

 ……。……、……行ける行ける。大丈夫。体の調子自体はとてもいいかもしれない。

 私は助走をつけて力加減をしつつジャンプし―――あ、まって、いやだめかもやっぱちょっと(すべ)

 

 

 ずる、と足が梯子を踏み外す。

 

 

 一瞬の浮遊感。―――ビタン、と私は音を立てて床に落ちた。

 

 …、…。

 衝撃に世界がぼんやりして、それからまたゆっくり明瞭になってくる。

 上から降りてきたシックスが私の顔を覗きこんだ。

 

「―――平気かい。まだいける?」

「……うん……」

 

 私は手をついて立ち上がった。先ほどから滑り落ちてばかりの梯子のアスレチックを見上げる…。自分なりに試行錯誤しているのだが、なかなか上手くならない…いや、でも亀並みに前進している気は…しないでもない…?

 

 幸いにしてそれほど痛くないけど、でもすんごい時間を食っている気がする。一向にシックスが案内する先に辿り着けない…。

 

「…ごめんシックス…あの、ひとりで練習するから、何か、用事があれば行ってて…」

 

 気落ちしつつ口にする私に、シックスはやや考えた様子だった。

 

「いや。―――ちょっとこっちへ」

 

 

 腕をひっぱって連れてこられた先は、砂漠エリアと他エリアの境界線だった。

 彼は端へ私を立たせると数メートル程度離れて砂の上へ線を一本引く。

 

「ここまで跳んでみて」

 

 ええと、と私はよくわからないまま指示に従った。

 

 よく狙ってぴょんと跳んだ私は―――ずべん、と線の上に背中をつけて転んだ。

 

 …、…。

 

 小さくなる私を全く意に介さず、彼は砂に何か丸く印をつけた。ついで、線を書き足す…さっきの線より、かなり手前。

 

「ここを狙って跳んで」

 

 …立ち上がって指示に従う。先ほどより近いから軽く跳ぶ。

 着地は成功した。踵が線を無事に踏む。

 

 シックスは、私の踵の部分に印をつけると…再び私を引っ張った。

 

「これ、今の君の踵の位置だ。―――で、これがさっきの君の踵の位置」

 

 …、…。

 

「遠くを狙うと、君が狙った場所より足が前に行く。着地位置がずれて上体が追いつかなくて後ろに転ぶ。…わかる?」

「…は、はい…」

「この距離での感覚のズレは、これくらい」

 

 シックスが、印と線の間隔を示す。

 

「―――ズレを確認しながら、しばらくここで練習しよう」

 

 私は彼を尊敬の目で見つめた。

 

「わかりました監督」

「…カントク…??」

「コーチです」

「なるほど…」

 

 

 

 

 十数分後、私のジャンプ精度は着実に向上した。

 砂場のジャンプでは転ぶことなく、狙った場所に着地できるようになっている。

 

 私は喜びのまま、シックスに報告した。

 

「できるようになってきた!」

「うんいや見てたよ」

「ありがとう、貴方のおかげだ。…あの、次はあっちの梯子で自分で練習してくる。ちゃんと上手くなったらまた、」

 

 そこまで声を続けたが、ふと冷静な自分の後ろ指を感じて声が萎む。

 要らないこと、余計に踏み込むな。そう、かも。……シックスを窺う。

 

「…そしたらまた、一緒にきてくれる…?」

 

 見つめる先で……うん、とシックスは頷く。

 

「いいよ」

 

 どこか見た目相応の声だった気がした。

 

「ありがとう、シックス」

「うん」

 

 変わらず落ち着いた様子のシックスは、私のお礼にさらりと短い返事をする。

 

 背中側で組まれた赤い手の指先は、ちょっと、もぞもぞしていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「―――なぁなぁ、兄弟。なにやってんの?」

「おわぁ」

 

 シックスと別れて、梯子での練習中。

 足を持ち上げた瞬間に声が掛かって、私はバランスを崩した。

 危うく梯子を踏み外しそうになって慌てて手で掴む。

 

 

 声がした方を見ると…真横、樹上にブロブの姿が見える。

 悪戯気な彼はぴょんと一度その場で跳ねた。

 

「さっきからずっと登ったり跳んだりしてるよな。何?アンタ、ジャンプ好き?」

 

 先程のサボテンに着地したブロブだ。

 

「ええと。上手くないから練習中というか」

「へぇ、そうか。さっきから何回か落ちてるもんな」

 

 悪気のなさそうな言葉に私は苦笑いした。事実だ。

 

「貴方はジャンプが得意そうだね」

「俺?ジャンプもまぁ得意だぜ。ダイブの方が好きだけど!」

 

 なるほど、だから高い所に居る訳だ。

 私は樹上でぴょんぴょん跳ねる彼を見た。彼の動きに合わせて、作り物の木の枝もわさわさ揺れる。落ちないかちょっと心配になるな。

 

「…ん?というか、貴方はどうやってその場所に登って…?」

「ああ、ほら。こうだよ」

 

 ダイブ好きのブロブはぱっと笑った。

 ぴょん、と宙に体を放りだした彼は、歓声と共に地面に着地する。全然ダメージもなさそうだ。間もなく、彼は木に体をぺったりくっつけて幹を登り始めた。木肌へ体を滑らせながら螺旋を描くようにするすると登りきる。

 

「―――ほら!な?」

 

 ぴょん、と元の位置に戻った彼は体をやや後ろへ反らせた。胸を張ったようだ。私は拍手をした。

 

「すごい!あっという間だ」

「だろ!アンタとは違う登り方だぜ」

「うん。その体ならではだね」

「ちなみにジャンプはこう!」

 

 彼は、一度体をぎゅっと縮めて…それから勢いよく跳んだ。木から私のいる梯子まで跳んだ彼は、そのまま私の頭の上に登った。

 

「上手いね!」

「だろ?練習中のアンタはどこが上手く行かないわけ?」

「うーん…」

 

 分かったら直しようがあるんだけどなぁ。

 

「下でシックスに見てもらったときは、感覚がズレてるってことで練習して上手く行くようになったんだけど」

「…シックス?へぇ、アンタの面倒を!それでさっきからずっとこっちら辺を見てたわけだな」

「え」

 

 ブロブの言葉に辺りを見る。シックスがそこまで付き合うこともない。いや、待たせてごめんと声をかけるべきか。

 …が、それらしき赤い姿はぱっと見つけられない。あれ?

 

「まぁ、それよりさ。アンタ、ちょっとそのままさっきみたいに跳んでみろよ」

「え…でも落ちたら貴方が、」

「いや、だから言っただろ。俺、ダイブが好きなんだって」

 

 ブロブが笑う。

 

「こう、急にぐらっとしてひゅーん!ての、楽しそうじゃない?やってくんね?」

 

 …あれ?もしかしてなんかのスリル系アトラクションみたいに思われてるか?

 頭の上で、ブロブがもぞもぞ動く。

 

「なーほら、遊ぼうぜ。アンタもうちょっと何も考えずに跳んだら?」

「…なにもかんがえず…???」

 

 すっごい難しいことを…。

 

「んー、跳ぶ前になんか固くなってない?もしかして高いとビビる?怖い?」

 

 …、…。

 

「…そうかも…」

「やっぱそう?」

 

 うん。

 今の私の身体は、身の内で眠る『ぼく』のものだ。たぶんきっと、どこまで大丈夫なのか分からないから怖い。自分の体だったら失敗は自分の責任で腹をくくってやれるんだけど。

 

 …よく考えたら、今までは死ぬ直前に巻き戻ることが保証されてたから、躊躇なく全力出せてたところがあるかもしれない。捨て鉢だったつもりもないが、あんまり慣れてもよくない感覚だ。元の体に戻れたとしても気を引き締めよう。

 それはそれとして、現状の課題はブロブの指摘通りに不必要な力みかな…。意識して直せるものだろうか…。

 

「いやほら、またなんか考えてるだろアンタ」

「ごめん」

 

 かたいなー、と言いながら、ブロブは体をにゅっと伸ばして、私の顔を覗き込んだ。

 

「もっとこうさー、俺みたいに行こうぜ。どうせ落ちても怪我なんかしないんだから」

「貴方みたいに」

「うーん…。ぴょん!て」

「えらく感覚的な話だ…」

 

 身軽い彼は飛び跳ねた。

 

「ほら、楽しくないと先に行きたくないじゃん。体もギュってなるって」

 

 …、…。

 

 私は、ぱちぱちと瞬きしてその黒い瞳を見つめた。

 

 ―――最初。気が付いたら知らない部屋に立っていて、未知の施設を進み始めた時をふと思いだす。

 『進もう』『面白そう』と…。

 

 

 なるほど。

 初心を忘れていたな。

 

 

「…しばらく時間ある?貴方と一緒ならきっと楽しい」

「お!願ったり叶ったり!」

 

 えいやっと跳んだ一回目は、ものの見事に滑り落ちた。頭の上のブロブはテンション高く歓声を上げたので、私もそのまま笑った。

 

 練習は大いに捗った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「順調そうだね」

 

 下から声がかかって私はそちらを見た。赤い姿の相手がこちらを見上げている。

 

「シックス」

 

 私は途中まで登っていた梯子を下りて、彼のところへ急いで話かける。

 

「結構上まで行けるようになってきたんだ、そろそろ大丈夫かもって声をかけようと思ってた」

「そうか」

 

 シックスは私を見て、それからその視線は私の頭上に移動した。そこに居るブロブは、笑った。

 

「シックス、この新入りの世話をやいてるんだって?」

「まぁ、そうだよ。友達づくりも順調なようで何よりだ」

「へぇ。へぇー、そうか」

 

 ブロブは私の頭の上で悪戯気に揺れる。

 

「言っとくけどシックス、俺、この新入りの頭に着地した訳じゃないぜ。登ったんだ」

「そうみたいだね」

「ほーん、それは怒んない?」

「相手にも君にも不利益がないようだからね」

 

 さらっとされたシックスの返答を聞いて、どこか楽し気に、ブロブが笑った。

 

「へー、そうか、俺にも。ふーん!…そんじゃ、アンタらはもう上に行くんだろうし、俺はここでめいいっぱい遊んだからどっかで別の遊びでもしよっかな」

 

 彼は私の頭から跳んで、床に着地した。ぺた、と音が鳴る。軽やかな身のこなし。

 

「また遊ぼーぜ、兄弟」

「うん、ありがとう」

「お?ふふん、おうよ!…じゃあな兄弟、それからシックス、がんばれよー!」

 

 ぴょんぴょん跳ねながらブロブが遠ざかっていく。砂漠にジャンプの跡が軽快に伸びていった。

 

 それをちょっと不思議そうな顔で見ていたシックスは、首を傾げた。

 

 

「彼、あんなに気さくだったかな」

 

 

 




P1:良いマスコットを目指して努力しているが周囲との距離をやや測りかねている。可能ならばいい感じに元の体の持ち主へバトンタッチできればいいなと考えている。
 クリアはなんだ。子供発見でも謎解明でもなければ仲間づくりか?KASの高スコアか?

赤い男(幼体):新入りの世話を頼まれている。それはそれとして新入りがどんなやつかを観察している。リーダーとして。

薄緑の塊:落下する際の風とか音とか浮遊感とかの感覚が好き。高い所の景色も好き。そっぽを向いていたひとの目が、その瞬間めいいっぱい自分を映すのが好き。例え怒り顔であってもこっちを向いてくれるなら。

青い声の主:夢見心地。眠いが一応ぼんやりと見聞きしている。内外から情報のシャワーを浴びつつ徐々に覚醒度が上がり中。

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プロットや書き溜めた分に大きく変更なく進行可能な様子なので、予定通り投稿再開。ただ個人的事情で更新頻度は以前より低下し不定期になる予定。あしからずご承知おき願う。
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