気が付いたら幼稚園らしいけどここ暗くないか???   作:ぱんのみみ。

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 前回のあらすじ

 広場に外科医が訪れ、接触。体の主の助力もあり、ひと悶着のあと誰も連れて行かせず帰らせた。昼寝の時間のため、割り当てられた部屋に戻る。



66 Clandestine meetings

 

 照明の消えた部屋。

 部屋のモニターがうっすらと光って、文字を浮かび上がらせている。

 

 

『昼寝の時間です。目を閉じて、体を休めましょう』

 

 

 ベッドで横になっている私は、天井を見上げて、それから目を閉じた。

 自分の内側を意識する。

 …、…。

 ……、……。

 息を、吸う。吐く。

 

 

 よし、言おう。

 

 

 ―――ねぇ、“ぼく”。大事なことなんだ、話をきいてほしい。

*―――なあに、“わたし”。どうしたの?

 

 気負わない返事が返ってくる。落ち着いているし眠くもなさそうだ。大丈夫。

 

 

 ―――ねぇ、“ぼく”、もう知っているかもしれないけれど、

 

 

 私は、一度言いよどんだ。言わねばならないと覚悟していたから、これは単に言葉を選ぶ逡巡だった。

 

 

 ―――私、貴方に、もうすぐさよならを言わなきゃいけない。

 

*―――…、…。そうなんだね。

 

 

 予想に反して、相手の雰囲気に動揺は感じられなかった。のんびりしている。…伝わっていないかもしれない、とむしろ私が焦った。

 

 ―――貴方の体に、私がお邪魔していたから、私は時間で、出ていかなきゃならないんだ。

*―――うん、そうなんだよね。でも、“わたし”?君は、さよならのままって考えてない。…でしょ?

 ―――…、…。

 

 えっ…と…。

 私の思考は止まった。柔らかでゆったりした声は、それでもどこか自信ありげだ。

 

*―――ねぇ、“わたし”。

 

 胸のうちの青い星は、言う。

 

*―――君はぼくのなかから消えてしまうかもだけど…いつかまた会える。そうでしょ?

 

 …、…。

 

*―――イレブンが教えてくれたんだよね?そして君は未来をちょっとだけ知ってるんだ。…大きくなったぼくと本当の体の君が、未来で出会うと、君はそう考えてる。君が、思ったり感じたりしていること、ぼくにも沢山流れてくるよ。全部はわからないけど…でもぼくだって、ちゃんと考えてるんだから!

 

 彼は胸を張ったようだった。

 …、…。私は相手の成長速度に驚いた。あんなにふわんふわんしてて『ぼくはだれ…?』とか『ねむい…』とか言っていたのに…。いや、私という存在が邪魔をしていただけで、これが元々の彼なのだろうか…。

 

*―――また考えてるね、“わたし”。君が邪魔だなんて思わないでよ。

 

 内心の言葉に突っ込みを入れないでほしい。もしかしてもう全部筒抜けなのか??

 

*―――ふふ、ううん、全部じゃないよ。

 ―――いやでもその返事が返ってくるなら相当だ…。

 

 私は息を吐いた。相手が、思ったより前向きに事態を理解しているようで、少しだけ肩から力が抜けた。

 

 

 ―――ねぇ、“ぼく”。もう一つ言わなくちゃ。

*―――シックスがぼくと代わらずにリーダーを続けるってこと?

 

 

 私は内心で横転した。

 

 ―――どうしてそんなにさらっと理解を!?!?

*―――君が考えてることは流れてくるんだってば。

 

 相手は可笑しそうに笑う。

 

*―――イレブンがぼくのことを「あまり見たことがない」と言ったんだから。それから君は大人のシックスや他の仲間を知ってるのに、まだ大きくなったぼくを見たことがないんだよね?リーダーの椅子が一つしかないなら、シックスが残って、ぼくが引っこんだ側だ。

 

 相手は…堂々としている…。

 

 ―――あの、

*―――気にしないでね。ぼくがリーダーの役を貰えなくなるんだとしてもさ。…未来で、大きくなったぼくと、君が、一緒にいるんだよね。楽しみだな、君とぼくはどんな風にもう一度会うのかな。

 

 青い星は、微笑んだようだった。

 

*―――大丈夫。シックスはいいリーダーだし、未来だときっともっと良いリーダーになるよ。大丈夫だよ、“わたし”。

 

 …事態を話して何とか彼の意見や決定を聞き出そうという覚悟だった私は唖然とした。

 自分は説明をする立場だったどころか、相手に気遣われて慰められようとしている。

 一日前に「おはよう」と「おやすみ」を混乱して使ってたのが嘘みたいだ…。大きくなってまぁ…。

 

 でも、と私は思った。立場を追われると分かっているのに、笑って受け入れようとする相手を想った。

 

 ―――でも、だって、“ぼく”、貴方は…

 

 それでいいの、と、それは言葉にならない。

 

 大丈夫、と青い星はのんびり笑った。世界に対する肯定と信頼の声が言った。

 

*―――なるようになるよ。

 

 

 

 …、…。

 ……、……。

 

 

 

 いや。いいや???

 

 

 

 ―――作戦を立てよう、“ぼく”。

 

*―――あれ?そう?なんかいい感じに閉じるところじゃなかった?

 

 私は深々と頷いた。あんまりにも物分かりが良いので、予定は変更にする。

 認識を改めよう。"ぼく”は歩き始めの唯の幼子ではない。猛烈な勢いでダッシュして並んでくるアキレスだ。思考力と精神力がそれほどあるなら、変な配慮はいらない。

 ちゃんと話をしよう。

 

 ―――うん、まだ流れに身を任せるのは早い気がする。よしんば“ぼく”がシックスがリーダーになるで全然ウェルカムでも、このまま流されると貴方の存続が危うい。

*―――…ええっ?そうなの?

 ―――うん。シリンジョンがやる。でも貴方が頑張りすぎると今度は他の研究者によってシックスが危ない。

*―――ええー!それはいやだなぁ!

 

 そうだよね。『いっしょに楽しくがいいな』って思ったんだもんね。

 

 ―――ので、一緒に考えよう。

*―――OK、わかった。おねがい!がんばる!

 

 ほんとはシックスも混ぜて話せたら良いのだが、タイミングが限られている。あとで共有して相談するのが次善策だ。私のタイムリミットが明日の午後あたりのはずだから、()()()()()()()()()()()()()言おう。

 

 ―――先に触れておくけれど、“ぼく”が、未来において表立って活動していない、というのは重要な決定事項だと思う。

*―――そうなの?それは変わらないってこと?

 

 ―――私もスロウセリーヌも観測しているから、現在から連続した世界の形として確実だろうということ。

*―――ええっと…何をしても未来は変えられない、ってこと…?

 ―――いいや。その決定している事実に辿り着くまでの過程には、可能性が沢山ある、ということだ。

 

 …すごい!自分で言っていてなんだが、とっても詐欺っぽい!どっか冷静な私が『そんなわけないだろ!』ってすんごい勢いで否定してくる!でも諦めない!!!

 

 ゴールが決まっていても、そこへ行くまでのルートは選べるはずだ。どんな景色を見て何を拾って得たって、良い!

 

 ―――未来を大きく変えようとすると無理が出るし、無理を通すと破綻するだろうけれど。道中をより良くする努力はまぁ成果を見込めるのでは…ないかなって…。

*―――うーんと、えーっと…つまり…達観と希望の、せっちゅーあん?だね!

 

 そんな高尚な言葉でくくれるものでは…ないな…。もう少し俗っぽいやつ…。

 

*―――現実的な理想論?みたいなことかな。とってもいいね!って思う!

 ―――わぁ…まだちょっと堅いけど、ここ数時間で驚異的な言語能力の成長だ…。すごいね“ぼく”…。

*―――さっきから前よりいっぱい流れてくる!まだ“わたし”の中にある言葉をなんとなくで使ってるから変かも。でも褒めてくれてありがとう!もっとうまく使えるようにがんばるね!

 ―――うん…応援しているよ、すごい勢いだから応援要らないかもだけど…。

*―――必須じゃないかもだけど欲しいな、うれしい!

 ―――そうかもね、そういうものだよね応援って。

 

 脱線した。話を戻そう。

 

 ―――ええと。状況を整理しよう。現在の研究者たちの考えでは、“ぼく”がリーダーになってシックスがそこから降ろされる流れなんだろうけれど、未来はそうなっていない。シックスがリーダーのままで“ぼく”が見当たらない。ここまで大丈夫?

*―――うん、わかる!OK!

 

 ―――貴方は何らかの形で表舞台に出ないことになる。少なくとも未来で私に会うまでの間は、なかなか他人の目に付かないようにしている…。

*―――君に会うまで…。…つまり…スパイみたいなことかな!?ぼく、もしかしてヒミツのヒーロー!ニンジャ!?すごうでエージェント…!

 ―――うーん…、いやちょっと待って。忍者、知ってるの?

*―――“わたし”の中にある!ええと、しゅりけん!へんそう!ひっさつしごとにん!じごくからの使者!ねおさいた…あっどうして見えなくしちゃうの???

 

 よかった、物によって閲覧禁止が私側で出来るんだな!?仕組みは全然わかってないけど!

 

 ―――入門編の忍者とかスパイとかレンジャーとかヒーローから見よう。あの、色々あるから。N○Kとかニチアサあたりから始めよう。

*―――わぁ!…そう、こういうの!かっこいいね!

 

 ―――うん、ええと…可能性は、なしじゃないかも…。つまり“ぼく”が退場したよう見せかけてシックスをリーダーとすることでどちらも研究者たちに連れて行かれないようにしつつ…、その実“ぼく”はシリンジョンと手を結んで他のCaseたちを裏から守る…みたいな…。

*―――わぁ!いいな!そしたらぼくとシックス、いっしょにいられるね!

 

 ―――でもそれにはシリンジョンの説得と協力が要るね。彼はシックスをリーダーにしたいはずだから旗色は悪くないと思うけれど…話をするなら私や“ぼく”からよりシックスがいいかな。

*―――あれ、そうなの?“わたし”、フォースのこと、『味方だと信じます』って言ってなかった?

 

 ―――彼は彼の抱えるCase集団全体の味方である、と信じたんだよ。集団の中で害があると判断したら素早く切って除こうとするだろうとも信じている。今の所、私も貴方も害判定な気がするな…。

*―――そっかぁ、わかった。じゃあやっぱりまず、さっきの案をシックスに相談してみよう!作戦の1つ目はそれとして…もしフォースがいいよって言ってくれなかったらどうしようかな?

 

 ―――…ドクターの協力が得られなかった時は、もう少し難しい話になる。長い間表に出ないで活動するなら、あなたは誰か別の味方を作ることが望ましいと思う。それを考えると、シリンジョンに始めから全部を話すのはリスクかも。そこも一緒に考えよう…――――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 …音が、聞こえる。眠い。

 

 ぼんやりした意識の中で、壁に掛ったモニターの文字が目に留まる。

 

 

 

『あなたは昼寝をしているはずだ。これを読んでいるなら、寝るように』

 

 

 …、…。

 話し合いをし終わって、いつのまに眠りに落ちていたらしい。

 

 

 聞こえる音は、扉を叩くノックの音だ。

 

 …、…。起き上がって歩く。

 眠い。

 

 扉を開けた先に、赤い姿が見えた。

 

 でも、まだ、活動する時間じゃない、ようだけど…、

 

 

「『BOO!』―――…驚いたかい?今練習中なんだ。ほんとに怖がらせなきゃいけない時のためにね」

 

 

 …、…。こわがらせる…かれにはやっぱりそういう…やくめも…。…ねむ…。

 

 

「まぁともかく、今日起こったことは悪かったと思ってるんだ。ここへ来て君は早々に好きじゃないものを見たんじゃないかと思う。それで、サプライズを…、……君?…ねぇ君、聞こえている?」

 

 …ねむい…。

 

 

「―――君…。…“わたし”?…“ぼく”?」

 

 ……、……。

 

 

「―――シックス。今、ぼくになった。おはよう、どうしたの?」

「…、…“ぼく”。…“わたし”は?」

 

「眠いみたい。すごく」

「…、…。…そうか」

「…シックス?」

 

「“ぼく”。…君は知っている?“わたし”の…時間のこと」

「…時間。もう少しでぼくの中からいなくなっちゃうってこと?うん。知ってる」

「―――」

「あ、でもね、シックス。さよならじゃないんだよ」

「――なん、」

「すごく遠くに行って、会えなくなっちゃうけど。ぼくが大きくなったら、また会えるんだって」

「……、……。…それ、“わたし”が言ったの」

「え?言って…は、ないけど、でもそうだってお話したよ。だからね、シックス、さよならじゃなくて、『またね』なんだよ」

「……、……、……あのね、“ぼく”、それは、」

「なあに?」

「……、……フォースが、」

「うん?」

 

「……。――――ううん。…君には…難しい話かも、しれないね、」

 

「えっ?…、…んっ?あれっ…?!」

「…ん?」

 

 

「あの、今…もしかしてぼく、ちっちゃい子あつかい、された…!?」

 

 

「―――あぁ、はは、『ちっちゃい子』!それは、そうだろう、君、目が覚めてまだ2日も経ってない」

「…そうかも!?で、でも色々わかるよ…!“わたし”が教えてくれたから、ぼくも色々知ってるし考えてる…!」

「そうかな。知っているのと体験するのは違う。試験も実験も―――…うん。だって、君、きっと。…注射の一本でだって、きっと泣いちゃう、だろうな」

 

 …、…。

 

「えっ…ちゅうしゃ…。注射?…注射…!?し、しってるよ、だいじょうぶ…」

「へぇ。…本当?怪しいな」

「ほんとう!」

 

「へぇえ。ちょっとどうやって我慢するか言ってみてくれないかな」

「…いじわるだ!いじわるって言うんだよシックス、それ!」

「心外だな、確認だよ」

「口が笑ってる!」

「いやいや元々だ。それに、2時間前に君は僕を優しいと言った」

「…やさしいけど!ちょっといじわるだ!だって“わたし”はいじわるしない『やさしい』だもん!」

「将来のために言うけど基準値をそこにしない方が良い」

「それに、ぼくが『ちっちゃいこ』ならシックスもだよ。『どんぐり』って言うんだ、ぼく知ってる」

「どんぐり?何?」

「背比べ!……ちがうよ、こんな話じゃなくて。ええと!用事があったんだよね?」

 

 

「…ああ、そうだ、用事はね、“ぼく”。君と“わたし”への歓迎パーティだ。とっておきのものだよ」

「えっ!へぇ、すごい!」

「“ぼく”。“わたし”にも直接はなしをしたいんだが、いま代われるかな」

「うん。代われる。―――ねぇシックス?」

「なんだい」

「…ううん。えっとね、ぼく、ちょっとこう…頑張って縮こまるから、その間、“わたし”といっぱいお話したらいいよ。さみしいもんね」

「は?」

「うん、会えない時間の分も、お話したらいいと思う!…じゃあ、またね!」

「いや、え?」

 

 

 ……ぐん、と突然背中を優しい力で押された感覚で、私ははっと目が醒めた。

 びっくりした、いつの間にか随分ぼんやりしていたようだ。

 

「…あ…ごめん、半分寝てた…?おはよう、シックス。まだ昼寝の時間、だよね?」

「…、…おはよう。うん、そうだね、本当なら昼寝の時間だ」

 

 シックスはゆっくり続けた。

 

「実は、君たちに、サプライズを用意した。少し歩くけど、絶対にその価値がある。僕を信じてほしい」

 

 私は眠い目をこすって頷いた。

 

「もちろん」

 

 




P1:やることが多い。容量はギリギリ。…寄り道が過ぎれば到着先が致命的に異なる可能性もあるだろうに?それを希望と見るか否かが問題だ。
…、…こう…いや、こうか…いいや?…――ああ。  こうだ。

青い声の主:ポジティブと鷹揚。特異的境遇から、自他への肯定感が高いのと世界への信頼が厚い。まだ負の感情をあまり体験していない。ちょっと人の知識を覗いてみた感じ、2人で1人の仮面ヒーローが気になるかもしれない。

赤い男(幼体):時間がないと考えている。

紅い外科医(若):決断はもう済んでいる。今夜に自分が決行予定。

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