ポケットモンスタージェネシス   作:水代

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キャラクタークリエイト

 

 

 VR(ヴァーチャルリアル)というコンピューターの中に存在する新たな世界が作られてから早くも十年数年。

 当初はゴーグルで覗くだけだったはずの仮想世界はやがて全身で感じることのできる限りなく本物に近いものとなっていき。

 

 そしてついには人の意識……精神を仮想世界へと接続する『ダイブ』を実現した。

 

 意識を仮想空間に移し、現実における肉体の感覚をシャットアウトすることによってまるで別の世界にやってきたかのように錯覚させる……いわゆる『フルダイブ』技術がゲーム業界に普及されたのはここ数年のこと。

 

 そして古くから愛され続けてきたいわゆる老舗のゲーム会社もまた自社のヒットタイトルをフルダイブゲーム……VRゲームとして制作。

 

 数々の名作タイトルが新作VRゲーとして並ぶ中にポケットモンスターの名もまた存在した。

 

 『ポケットモンスタージェネシス』

 

 某社が発表した完全フルダイブ対応ゲーム。

 当然ながら往年のファンは狂喜し、発売前から高い期待が寄せられていた。

 

 そしてその日、ついに待望の新作は販売される。

 

 

 

 

 ―――誰の予想もしない事態を巻き起こして。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 『アナタ』が目を開くと視界は真っ暗だった。

 床も天井も真っ暗な世界で『アナタ』は目覚め、そうして起き上がった『アナタ』はここがどこなのか、どうして自分がここにいるのかを考える。

 

 『アナタ』の最後の記憶はポケモン待望の新作を遊ぶためにバーチャルコンソールへと入り、ダイブインをした瞬間までだった。

 

 だとすればこれはゲームの中なのだろうか?

 

 そんな『アナタ』の疑問はけれど即座に否定される。

 確かに昨今のVRゲームの『フルダイブ』機能はまるで別の世界へと迷い込んだようなリアリティを持つが、同時に現実との区別が曖昧にならないように僅かな違和感を残すように義務付けられている。

 

 だが今の『アナタ』にその違和感は一切無い。

 

 妙な現実感の無い世界で、けれど奇妙なほどに『アナタ』の感覚は現実を訴えていた。

 

 そんな現実感のギャップに困惑する『アナタ』だったがふと視界の端に光が映ることに気づいた。

 

 この真っ暗な世界で唯一の光へと視線を向ければそこにあったのは一台のパソコン。

 

 それもVR技術が浸透するほどに進化した現代のものとは思えないほどに古い古いデスクトップPC。

 

 真っ暗な画面に緑枠のウィンドウ。

 

 レトロチックな雰囲気すら感じさせる画面に書かれた文章はたった一つ。

 

 

 >>『アナタ』のパートナーとなるポケモンを選択してください。

 

 

 その一文に目を通した瞬間。

 

 光が瞬いた。

 

 光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。光が瞬いた。

 

 『アナタ』とパソコンを囲うように光が瞬き、次の瞬間にはそこに見覚えのある姿をした生物が現れる。

 

 ピカチュウ、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネ。

 

 『アナタ』が遊ぼうとしていたはずのポケモンというゲームに登場するキャラクターたち。

 それが生命の息吹を宿し、そこに確かに存在していた。

 そしてそんな光景に『アナタ』が驚いている間にも光の瞬きは止まらず次々とポケモンが増え続ける。

 

 その数が百を超え、二百を超え、三百を超え……『アナタ』には数えきれないほどに光が瞬き続け、やがて千近い数となったところで光が止まる。

 

 いくら見知ったキャラクターとは言え、さすがにこの数の生物に囲まれている状況に『アナタ』が恐怖を感じているとパソコンのモニターが明滅する。

 

 

 >>『アナタ』のパートナーとなるポケモンを選択してください。

 

 >>『アナタ』の希望する条件を選択することで絞り込むことができます。

 

 

 そんな文章と共に検索用のウィンドウが浮かび上がって来る。

 

 『アナタ』は周囲のポケモンたちが大人しくしていることに気づき先ほどまでの恐怖を沈めると、それでも多少ビクビクとしながらパソコンの前に座り備え付けられたキーボードに条件を入れていく。

 

 どんな条件が付けれるのか確認してみれば、どうやら本当に絞り込みのためだけらしく、ポケモンのタイプや特性など簡単な情報での絞り込みのみのようだった。

 

 パソコンで絞り込みをかける度にそれと連動するようにその場にいたはずのポケモンたちは光となって虚空へと消えていく。

 

 そして絞り込み終えた中のたった一匹を『アナタ』は選択する。

 

 

 >>『アナタ』のパートナーとなるポケモンが選択されました。続いては『アナタ』の情報を教えてください。

 

 

 同時に画面の文字が変化する。

 

 

 『アナタ』の分身となるキャラクターの名前を入力してください。ただし入力に使用できるのはカタカナのみとなります。また性別の変更はできません。

 

 『アナタ』の分身となるキャラクターの年齢を入力してください。ただし最低値は12歳からとなっています。

 

 『アナタ』のこの世界での『目的』を入力してください。無ければ無しと入力してください。

 

 

 そんな文章がつらつらと、いくつか表示されその一つ一つに解答していく。

 

 

 『アナタ』はポケットモンスターシリーズをプレイしたことがありますか? 無ければ無しと入力してください。

 

 『アナタ』はポケットモンスターシリーズの中で好きなキャラクターはいますか?

 

 『アナタ』はポケットモンスターシリーズの中で好きなジムリーダーはいますか?

 

 『アナタ』はポケットモンスターシリーズの中で好きな四天王はいますか?

 

 『アナタ』はポケットモンスターシリーズの中で好きなチャンピオンはいますか?

 

 

 長々と続く質問その全てに入力を終えると。

 

 

 『アナタ』自身の情報の登録が完了しました。続いて『アナタ』の分身となるキャラクターの外見を設定してください。最初に設定された年齢などからデフォルトが算出されます。

 

 

 そんな文章が表示された直後、『アナタ』の真後ろで光が溢れる。

 驚き振り向けばどこか『アナタ』に似た雰囲気を持ちながらも『アナタ』ではない人型がそこにいた。

 

 虚無的で色の無い瞳が虚空を見つめ、呼吸のために僅かに口元が動いてはいるが何の意思も感じられないそれはどうにも人型、としか形容のしようが無かった。

 

 そうして突如現れた人型を『アナタ』が見ていると、ふと人型の隣、虚空に仮想スクリーンが表示されていることに気づく。

 そこには髪型、髪色、身長、体重など詳細な情報が記載されており、それは『アナタ』の意思一つで変更できることに気づく。

 

 それに気づいた『アナタ』は時間をかけ一つ一つ比べながら理想の形を作っていく。

 

 やがて全ての項目を弄り、完成度に満足した『アナタ』はパソコンの画面へと視線を戻し。

 

 

 外見設定を完了しますか?

 

 >>はい

 

 >>まだ

 

 

 >>はい、を選択すれば画面には『Now loading』と何度か表示され、やがて―――。

 

 

 全ての設定が完了しました。これより『アナタ』をポケットモンスターの世界へと案内いたします。

 

 

 ―――パソコンの画面から光が溢れ出す。

 

 

 この世界において『アナタ』は常に自由となります。

 

 『アナタ』に使命はなく。

 

 『アナタ』には宿命はなく。

 

 『アナタ』には因縁も、しがらみもまたない。

 

 『アナタ』は旅に出ても良い。

 

 『アナタ』は留まることを選んでも良い。

 

 『アナタ』はトレーナーとして大成することを夢みても良い。

 

 『アナタ』はまだ見ぬポケモンと出会うことを望んでも良い。

 

 けれど決して忘れないでほしい。

 

 『アナタ』の選択が『アナタ』の運命を導きます。

 

 これは決して『空想』ではないのだから。

 

 ―――どうか後悔のない『選択』を。

 

 

 最早『アナタ』には何も見えなくなってしまうほどに白一色に染まった視界の中で。

 

 

 では、準備はよろしいですか?

 

 夢と冒険の世界に、レッツゴー!

 

 

 そんな言葉だけが、どうしてかはっきりと見えた。

 

 

 

 

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