ポケットモンスタージェネシス   作:水代

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チュートリアル6日目

 

 

・目指す先は

 

「疲れた~」

 

 そう呟き、一度ベッドに横になればもうくたくたの体はあっという間に動かなくなった。

 今日も一日ハードだったなあ、なんてうつらうつらとしてきた頭で思い返す。

 

 早朝からストライクとバトルをし、最終的には捕まえることができた。

 明確に格上のポケモンとのバトルは初めてだったが、あれは相当に精神的に疲労する。

 寧ろあそこまで仕込んでハメたのに、という感じだが、実際問題考えただけのことが全てその通りに起こるのなら誰だって苦労しない。

 何もかも予定通りなんて顔していたが、それでもちょこちょこと細かく修正をしていたからこそおおよその想定から外れることも無く終わった。

 

 というかあそこでストライクが欲しくなってしまったのが最大の想定外だったので、自業自得と言えなくも無いが。

 まあそれでも良い結果となったと思う。

 

 捕まえたストライクとは後で対話した……いや、別に言葉を交わしたわけではないが。

 他所に移ってもらうか、それとも自分の仲間になるか。

 身振り手振りを使ってどうにか意思疎通した結果、ストライクは自分の仲間になることを選んだ。

 

「良い根性してたからね~、あれはきっと強くなるよ」

 

 カナデの勘がそう囁いているので()()も見据えながら育てる予定だ。

 その後、マンキーとケロマツに付き合って山のあっちこっちに行ってきた。

 ストライクがもう山で暴れないことを知りあい各所に通達しに行ったらしい。

 結果的に山のあちこちで移動が起こっていたのは中々に面白かったが、広い山のあっちこっちと歩き回ったせいでやや疲れてしまった。

 

「まあそれでも正式に2匹ともうちに来たし」

 

 ストライクとマンキーは庭の木で、ケロマツは庭の池で寝ている。

 別に家の中でも良かったのだが、まだ野生だった時の感覚が抜けないのだろう。

 まあそれでも平地で見晴らしも良いので周囲に敵がいないかピリピリと警戒せずに寝れるというのは喜んでいた……うーん。

 

 まあ色々あったがこれで手持ちのポケモンが4匹。

 

 まだ5日目と考えれば良い出だしと言えるのではないだろうか。

 

「というかよく考えてみればこの世界のこと全然知らないんだよねえ」

 

 『カナデ』としての15年分の記憶はあるのである程度常識的な部分は理解しているつもりだが、『カナデ』の記憶はどちらかというとポケモンの生態的な知識やポケモンバトルのための知識など実践的な部分に偏っていて、この世界における制度などについてはあまり知らないようだった。

 

「まあ取り合えず当面はニンフィアたちのレベル上げだね~……」

 

 言葉を遮るように欠伸を一つ。

 どんどん重たくなってくる瞼、襲い来る眠気に逆らうことも無く目を閉じれば、あっという間に意識は闇に飲まれていった。

 

 

・リアルポケモンリーグ

 

 これはまあ後日調べて分かったことだが、この世界にも『ポケモンリーグ』は存在する。

 

 まず一番大きなものが4年に一度開かれる『ポケモンワールドチャンピオンリーグ』。

 世界中の『州郡内予選』によって選出されたその地域における最強のポケモントレーナーたちによる『世界最強(ポケモンマスター)』を決めるための戦い。

 これに優勝したトレーナーはその年から4年間の『チャンピオン』として栄誉を与えられ、同時に『殿堂入りトレーナー』として永遠に歴史に記録されることになる。

 

 他にも2年に一度開催される『ポケモンチャンピオンシップトーナメント』というものもある。

 こちらは名誉もそうだが、それ以上に賞金が凄まじいく優勝者には10億単位の賞金が贈られる。

 

 因みに前者は『国際リーグ連盟』主催。つまりポケモンリーグの国連版みたい組織であり、ゲームでの『殿堂入り』はこの世界においてはこちら側のほうが近い。

 リーグ戦……つまり総当たり戦で最も勝率の高いトレーナーを優勝とする形式上、まぐれの一度や二度で優勝できるものでない、確かな実力こそが勝利へと繋がるが故に、この戦いに勝利したトレーナーを『世界最強(ポケモンマスター)』と呼ぶことに誰も否は唱えない。当然参加への敷居は非常に高い。

 

 逆に後者は『企業連合』が主催であり、参加の敷居は低いがその分バトルの回数は非常に多く長期間に渡ってのバトルを強いられる。ただトーナメント形式という都合上、優勝候補がまぐれ負けしてこけたり、波乱が多い。そのため実力が劣っていたりしても組み合わせの妙によって勝ち上がることもあったり、とにかく予想がつかないバトルが展開される。

 

 そして最後になるがこちらもまた4年に一度の祭典『ポケリンピック』である。

 ただしこちらは少し他2つと趣きが代わり、『ポケモンバトル』ではなく、ポケモンの運動会といった感じだろうか。

 足の速さを競ったり、障害物競走をしたり、あとはポケスロンなども競技として存在し、純粋なバトルではなくポケモンのアスリートとしての能力を競うようなものが多い。

 ポケモンバトルにはあまり関係ないのだが、この『ポケリンピック』を開催する『ポケリンピック委員会』は先も名前を出した『国際リーグ連盟』によって編成された組織なので実質的には『ポケモンリーグ』主催と言えなくもなく、バトルが好きでない、というトレーナーはこっちを目指したりもすることが多い。

 

 とまあ世界規模で見れば3種の大きな大会が存在するのだが、もう少し規模を縮小すると『国内規模』の大会なども存在する。

 

 『ヒノモトリーグ』はカントー地方最大の都市、トウキョウシティで毎年行われる、国内最強のトレーナー『国内王者(チャンピオン)』を決めるための大会だ。

 さらにこれに参加するために『地方リーグ』優勝者の称号が必要になる。

 そして『地方リーグ大会』に参加するためには各『地区』内における全てのリーグ公認の『ポケモンジム』を巡りバッジを集める必要がある。

 

 つまり自分がこの地方リーグ大会に出ようとすると最初に『ヒロシマ地区』にある全ての公認ジムを巡り、バッジを集める必要があるわけだ。

 公認ジムは全て『シティ』に存在し、自分たちの住む『サヤマシティ』にも『エイヒツポケモンジム』があり、ジムリーダーに勝てば『エイヒツバッジ』を獲得できる。

 

 というわけで自身の最初の目標はまずこの『エイヒツポケモンジム』に行き、バッジを獲得することになるのだろう。

 

 

・邪神フォン

 

 朝目が覚めるとまだかなり早い時間だった。

 午前3時半、夏とは言えさすがにまだギリギリ日は出ていない。と言ってもあと1時間もしない内に明るみ始めるだろうが。

 昨日くたくたに疲れて寝たのが夜8時前だったのもあるが、それでもこんな時間に目覚めて全く眠気が無いのだから若さとは良いものだ、と年寄りみたいなことを考えながらゆっくりとベッドから起き出す。

 

 部屋の端ですやすやと眠るニンフィアの寝息にほっこりしていると、ふと机の引き出しの中がうっすらと光っていることに気づく。

 閉められた引き出しは、けれど隙間から僅かに光が漏れている。

 

 一体何が?

 

 そう言えば初日は机の上に置かれたモンスターボールに気を取られて引き出しは見ていなかったような気がする。

 多少の警戒をしながら引き出しを開けばそこにあったのはピカピカと光を放つスマホ……っぽいもの。

 

「あれ? これって……」

 

 暗くて色は良く分からないがその妙な形をしたスマホをどこかで見た覚えがあった。

 妙な突起のようなものが上に2本、下に1本。そして両側には車輪のような輪っかが2つ。

 それは配色はともかく形を見れば……。

 

「アルセウスフォン?」

 

 手に取ってみれば途端に暗かった画面が点灯し、一つの文章が表示される。

 

 ―――アナタの最初のパートナーを教えてください。

 

 まるであの空間で表示されていたパソコンの文章そのもの、そんな質問に対してニンフィアの名を入力するとまた画面が切り替わり、次の文章が表示される。

 

 ―――アナタの名前を教えてください。

 

 カナデ、その3文字を答える。

 

 ―――初期設定中、しばらくお待ちください。

 ―――初期設定中、しばらくお待ちください。

 ―――初期設定中、しばらくお待ちください。

 

 数度そんな文章が断続的に表示されて。

 

 

 ―――ようこそ、ポケットモンスターの世界へ。

 

 

 それが起動画面だったのか、直後に画面が切り替わりホーム画面と共にいくつかのアプリが表示される。

 

「……『電話』『メール』『カメラ』『図鑑』『ポケモン』『道具』『クエスト』『おとくなけいじばん』『設定』『データ』」

 

 元の世界にもよくあるスマホのアプリからポケモン世界特有のアプリまでごちゃまぜになって表示されているのだが。

 

「……『チュートリアル期間中』?」

 

 画面の上にでかでかとそう表示されていることだ。 

 チュートリアル。この場合ゲームのチュートリアルという意味だろう。

 ゲームの操作方法や進め方を教えてくれる期間。今時のゲームならばだいたいどんなゲームでも存在するわけだが。

 

 自己主張の激しいチュートリアルの文字をタップしてみれば画面が切り替わり、チュートリアルの内容が表示される。

 

 

======【チュートリアル】======

 

この世界の住人としての記憶を受け継ごう 1/1

自分のパートナーとなるポケモンをボールから出そう 1/1

新規にポケモンを1匹以上ゲットしてみよう 3/1

ポケモンバトルをしてみよう 1/1

ポケモンセンターに行ってみよう 0/1

フレンドリーショップに行ってみよう 1/1

『おとくなけいじばん』を起動してみよう 0/1

この世界で7日過ごそう 6/7

 

【報酬】『機能解放』

 

 

「……な~んだこれ~」

 

 色々謎な部分はあるが一番謎なのは報酬の部分。

 『機能解放』とは一体何なのか。解放される機能があるということは逆に言えば『チュートリル中は解放されていない機能がある』ということだ。

 ホームボタンを押せばすぐにホーム画面まで戻って来るのでもう一度アプリの一覧を眺める。

 それから一つずつアプリを起動してみる。

 

 電話、メール、カメラは元の世界と同じだ。いたって普通のアプリ。ただし一つだけどうしても気になるのは電話とメールに一つだけ最初から登録されていた存在。

 

 それは―――。

 

 『運営』

 

 ―――そんな名前で登録されていた。

 

 

 

・クエスト

 

 通話してみたい気持ちはあったが同時に何か怖かったのでやめておいた。

 いや本当に繋がったら何を言えばいいのかも思いつかない。別に自分は元の世界に戻せーとかそういう要求も無いわけで。

 

 というわけで次に気になったアプリ『クエスト』をタップする。

 というのもさっきから画面でピカピカ点滅していかにもお知らせがありますよ、と主張しているのだ。

 

 【クエスト】

 New『山の暴れん坊を止めろ!』

 

 表示されていたのは一つだけだったのでタップしてみる。

 

 

 クエスト名『山の暴れん坊を止めろ!』

 発生条件:『山岳地帯』が乱入状態にある。当該地帯のポケモンと交流し、友好を深める。

 ①麓から山の中腹までのどこかで山のポケモンと出会う。

 ②出会ったポケモンと交流する。

 ③②で友好を一手以上深めると確率で相談される。

 ④山の頂上付近で乱入状態のポケモンとバトルする。

 ⑤④で対象のポケモンを捕獲、または追放する。

 ⑥山の状態を復帰させればクエストクリア。

  ┗対象を追放した時、確率でチェインクエスト発生。

 

 報酬『メタルコート』もしくは『くろのきせき』どちらか1つ

 

   『メタルコート』 ≪受け取る≫

 

   『くろのきせき』 ≪受け取る≫

 

 

「……またゲームみたいな」

 

 少し考え、恐る恐る『受け取る』をタップすると。

 ことん、と軽い音をたてながら机の上に片手で持てるくらいの金属の塊が現れる。

 と同時にぴろん、と手元のスマホが音を立てる。

 びっくりしながらも画面に目をやれば。

 

 ―――対象の道具の詳細を知りたい時は『図鑑』を開き、『道具解析』を使いましょう。

 

「…………」

 

 黙って図鑑をタップ。

 図鑑画面が起動すると『図鑑を見る』『ポケモン解析』『道具解析』などのメニューが出るので『道具解析』をタップするとカメラモードが起動して。

 

 ―――対象物を画面内に収めてください。

 

 表示されたそんな指示に従って目の前の金属の塊をカメラに収めると。

 

 対象:『メタルコート』

・ポケモンに持たせると『はがね』タイプの技の威力を上げる。

・一部のポケモンの進化に使える。

 

 簡素ながらそんなデータが表示される。

 

「いや、マジで……?」

 

 今どこから出てきたのこれ?

 そんな疑問を飲みこみながら、手元のスマホをじっと見つめる。

 

 そうして。

 

「あとは……これかな」

 

 『おとくなけいじばん』と書かれたアプリをタップした。

 

 

 




というわけでこの後二話目に続きます。
次は掲示板ネタになります。それから一話、七日目のチュートリアル終了の話やったらいよいよ他のプレイヤーたちも出てくる……多分。
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