・嫁自慢スレはレスが多すぎてすでに各タイプごとにスレが分割されました
「フィア?」
傍から聞こえたニンフィアの声にふと視線を向ければ、何してるの? と言わんばかりに首を傾げるニンフィアがいてまだどこか眠そうに小さく欠伸をしていた……可愛い。
そうして一度スマホから視線を外してしまえばすでに空が明るんでいることがカーテン越しに分かる。
時計を見ればすでに7時を過ぎている。掲示板での情報収集ややり取りに熱中して3時間以上過ぎていたらしい。
全く気付かなかったが、家の外でマンキーが何やら張りきっている声やらストライクが朝から素振りをするような声が聞こえる。ケロマツはどうせマンキーが起きているなら起きているだろうし、まだ寝ぼけ眼を瞬かせているニンフィアで最後だったようだ。
「んー」
一度視線がスマホに落ちる。
まだ朝も早くから住人が活発に交流をしていたが、どうやら朝になって皆起き出してくるとそれまでの比ではない速度でレス*1が流れ出す。
この世界にやってきて5日……今日で6日目。たった5日というべきか、されど5日というべきか。
すでに『おとくなけいじばん』に集まった情報は多岐にわたる。
全て見ていては時間にキリがないのも事実だが、知っておきたい知識が多すぎるのもまた事実であり……。
「フィ~ア?」
どうしたものかとスマホ片手に唸っている自身にニンフィアがどうしたの~? とじゃれついて来る……めっちゃ可愛い。
「なんでも無いよ~。朝ご飯にしようか」
まあ後でもいいか、とスマホを置きじゃれついてくるニンフィアを抱き寄せて頬擦り。ゲームだと分からなかったがイーブイの進化系だけあってか毛がふわふわで柔らく、抜群に撫で心地が良い。
ボクちんの相棒超可愛い! とそんな気持ちが伝わっているのかニンフィアが嬉しそうに鳴き、向こうから頬擦りする。やばい、可愛すぎる!
いますぐスマホを開き、嫁ポケ自慢のスレにのりこみたい気持ちを抑えながら二度、三度とニンフィアの頭を撫でてから部屋を出よう……として机の上に置かれた金属の塊に目が行った。
「あ~」
メタルコート。よく分からないうちに終わっていた『クエスト』の報酬。
あの後図鑑機能を使って詳しく調べてみたのだが、通信交換とか無くてもストライクに持たせるだけで使った扱いになって進化させることができるレジェアル系の仕様らしい。*2
「……まだ、だよね~」
実際のところ、今すぐにでも使いたい気持ちはある。
ストライクを手に入れた時から、できればこれが欲しいと思っていたし、これを使って進化させたいと思っていたのだから。
けれど
掲示板を眺める裏で何度も考えたのだが、今進化させると問題が起こる、と結論が出た。
まず前提としてストライクが仲間になったのは『自分のところならもっと強くしてやれる』と説いたからだ。
あの山で暴れ回っていた頃の行動から推測してストライクにはそれが最も有効だろうと考えた言葉だったが、実際ストライクはだからこそ今ここにいる部分が大きい。
マンキーとケロマツという本来ならばストライクが歯牙にもかけないはずの2匹を指揮して勝利した、その結果を見せた上で自分ならばストライク単独で戦うよりもっと効率よく、遥かに強くしてやれる、そう言ってストライクが信じたからこそ今ここにいる。
このメタルコートは自身の観点からすればまず間違い無く強化パーツとなる。
進化先であるハッサムは『むし』と『はがね』という『ほのお』以外に弱点を持たず、8タイプを半減以下にし1タイプを無効という実に9タイプの相手に対して有利に立ち回れるポケモン界屈指の優秀なタイプを持つ。
その優秀なタイプ耐性に合致した非常に高い耐久力は生半可なポケモンに突破を許さない。
対戦において対策必須ポケモンの1体に数えられるほどの超強力なポケモンになれる。
けれど反面、ストライクの時にはあったはずのスピード感は無くなる。
全身を鎧で固めたがっしりとした守りで相手をの攻撃を受けきり、反撃に転ずる。
その鈍重さは恐らく今までのスピードに慣れ切ったストライクの感覚を一変させるし、まず間違い無く最初は不便さも感じるだろう。
その上で、ストライクはどう思うか。
今まで積み上げてきた戦い方を昨日出会ったばかりの人間によって捨て去られてしまったことに対して、ストライクはどう思うか。
まず間違い無く不信感を抱く。
まだ自分とストライクの間にはそこまでの絆は無いのだから。
怒って襲い掛かるくらいならまだ良いが、ついていけない、騙されたと見捨てられたら自分はそれを説得する術を持たない。
実際スピードを重視した戦術は弱体化してしまっているのだから。
いくら自分がハッサムであることの利を説いたところで、ストライクからすればどこまで信用できるだろうか。
それにもし、万が一ストライクがそれを受け入れたとして。
今度はきっとその強さに驕る。
要するにアニポケのサトシのリザードンである。
ハッサムというポケモンはその耐性だけで強い。本気で強い。マジで強い。
そしてこんなに強いならトレーナーとか別にいらないだろう、とか思われた時に自分の手持ちにハッサムを抑止できるポケモンがいないのだ。
とまあそんなもろもろの事情を考えると、今はまだこのメタルコートはお預けするしかない。
これがゲームだったら……まあ何も考えずに速攻で使ってしまうのだが。
「ままならないなあ」
なんて嘆息しながら、階下まで降りると玄関のカーペットの上でケロマツがすやすやと眠っていた。
「……なんでこんなとこで寝てんの?」
「……ケロォ」
どうせ気配に気づいているのだろうと声をかけてみれば案の定半目を開いたケロマツが気怠そうに鳴いた。
マンキーがやたら元気過ぎるみたいなニュアンスだったが、玄関の外から聞こえるマンキーのはしゃぎ声になるほどあれから逃げ来たんだな~、と察する。
「そろそろ朝ご飯にしようか」
「ケロ」
あいよ~了解、みたいな返事に満足するとニンフィアと共にその場を後にした。
・いっぱい食べるキミが好き
ポケモンにも結構食事の好みというものがある。
ポケモンフーズはポケモンの完全栄養食品みたいなところがあるので、これを食べさせておけば取り合えず栄養不足で体調不良という心配がないのは安心だが、かと言ってポケモンだって味覚のある生物なので毎食毎食ポケモンフーズ三昧では味気ない。
というかニンフィアに聞いてみたのだがポケモンフーズは主食的な感じのもので、確かに毎食食べても飽きは来ないが、これしかないというのも困るみたいなものらしい。
要するに人間の……日本人的感性でいうならばおむすび的な感じらしい。
そう言われると確かにイメージしやすい。毎食白むすびのみ……白米だけならともかく一応塩気はあるので無理かと言われるとそうでも無いが、それでもおかずは欲しい。
折角スマホがあるので調べてみたが、その辺は好みに合わせた『きのみ』をあげるのが一般的で、偶に人間と同じ物を食べさせることもあるらしい。ただ元の世界におけるペットと同じくポケモンごとに食べれるもの、食べれないものというのがあるので調べる手間はあるらしいが。
『きのみ』はその辺りどのポケモンでも食べることができる不思議な食物だそうだ。
まあ確かにゲーム時代、ポケモンごとに食べれる『きのみ』、食べられない『きのみ』なんて無かったが。
ゲームだと『きのみ』ごとに5種類の味があって、ポケモンの性格によって好みが変わっていたりしたが、現実だと別に性格で一律同じ味が好きになるとかそういうのは無いらしい。
ただし『嫌いな味』というのは本能的に忌避するらしく、ゲームだと嫌いな味でも条件を勝手に満たせば食べて『こんらん』したりしていたが現実だと『そもそも食べない』のだとか。
まあ手持ちのポケモンたちがそれぞれどんな味が好みなのか分からないので庭で取れた『きのみ』を平皿に並べて好きなの持って行って、で済むのだからそれはそれで楽な話だ。
何せ『きのみ』はゲームと同じく半日~3日くらいで育つ。しかも朝と晩にしっかりと水やりすれば結構な数をつけてくれる。
まあ偶に鳥ポケモンが勝手についばんで持って行ったりしてるが、数はあるし別に良いだろう。
ムックルやヤヤコマやココガラとかいたらちょっと欲しいけど、ポッポやオニスズメだとあまり食指が動かないのは好みの問題だ。マメパト? 可愛いね(欲しいとは言っていない)。
因みにうちのポケモンたちだとニンフィアは甘い『モモンのみ』がお気に入りだ、可愛いね。
ストライクは辛い『マトマのみ』、ケロマツは酸っぱい『ナナシのみ』、意外なところでマンキーは渋い『カゴのみ』がお気に入りだった。
基本的な5種の味の『きのみ』は家に成っているのでそれとポケモンフーズでひとまずポケモンたちの食べる物に関しては困らなさそうだった……まあそれでも毎度毎度同じ物をあげていると飽きるだろうから何か考えておく必要はあるだろうが。
考えることが多いなあ~。
・町にでかけよう!
「今日は町まで行くよ~」
というわけでポケモンたちをボールに入れて外出である。
足元にはとことことニンフィアがついてきているが、ニンフィア的にはどうも基本的にはボールの中よりトレーナーと一緒にいたい、とのことでそんな可愛いこと言われたらしょうがいなあ~(デレ顔)と言うしかないので一緒に歩いている。
まあサトシのピカチュウみたいなものである。*3
さて、大前提として自分たちのいるイズミマチタウンはサヤマシティ範囲にある。
以前にも言ったがタウン=町。シティ=市くらいの感覚だ。
つまりサヤマシティの中にいくつものタウンがあってそれら全てひっくるめてサヤマシティと呼んでいるのだが、それでもどのシティにも中心となる町というものがある。
ヒロシマ地区の中心がヒロシマシティであるように、ヒロシマシティの中心はヒロシマ駅のあたり……から少し離れたカナヤマタウンやルセンタウンなどが最も人通りも多く栄えた町となる。
同様にサヤマシティも中心となるシロン、コミナト、カナメイ、オキノミヤタウンなどの隣接したいくつかのタウンがいわゆる都心とされており、サヤマシティの住民が『町の方へ行く』というとだいたい先の4つの町のあたりを指すことが多い。*4
自分のいるイズミマチタウンからだと車でも2,30分かかる距離、つまり徒歩だと軽く1~2時間くらいはかかるのでバスを使う。
元の世界における地元とその辺りは変わらないようで、田舎らしい30~60分くらいの間隔の長いバスを待ちながら合間にスマホで調べものをしておく。
「ポケモンセンターの位置はって」
チュートリアルでも指示されたポケモンセンターは掲示板でも言われていた通り『タウン』以上……正確には『シティ』内でもある程度以上大きなタウン、つまり先に挙げた4つのタウンのような人の多いところにしかないらしい。
というのもゲームだと全く気にされていなかったが、現実問題ポケモンセンターというのは1つ建てるのにかなりの費用がかかる。
ゲームでもそうだがボールを機械にセットして十秒足らずの曲が流れている間に回復が完了するとかどう考えてもおかしい。現実にはだいたい3~40分くらいはかかるらしいが、それでも1時間足らずで『ひんし』のポケモンが元気になるその技術はちょっとおかしいと言わざるを得ない。
つまり回復用のマシンの性能が規格外に高い。そしてそんなマシンを導入するのに安いわけが無い。
さらに言うならばポケモンセンターは基本無料営業だ。
この世界にも『ポケモン協会』はあるらしいが、ポケモンセンターは全て『JPA(japan Pokémon association=日本ポケモン協会)』の管轄であり、これは国家機関のような扱いらしいので、ポケモンセンターは実質公営だ。
つまりどばどばと金を注いであっちこっちで赤字経営するわけにはいかないのだ。
なので1つの地区(県)でだいたい20件あるかないか、というのが普通らしい。
サヤマシティには2つのポケモンセンターがあるが、その1つがシロンタウンに存在する。
「場所は……うん、あそこかあ」
元の世界とのイメージでだいたいの位置は分かる。
駅の真向かいなので間違えることはないだろう。
そうして調べものを終える頃にはバスがやってきて……。
「じゃ、いこっか、ニンフィア」
「フィ~ア♪」
ポケモン同伴でバスに乗ると扉が閉まり、そしてバスが出発した。