ポケットモンスタージェネシス   作:水代

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活動報告に『クエスト募集』作りました。
もし作ってやっても良いと思ったら投げてもらえると作者が助かります。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=310449&uid=7917


『ロ』と『ケ』と『ト』のつくヤツら

・黒くて怪しいアイツら

 

 サヤマシティにある公認ポケモンジム『エイヒツジム』のジムリーダーの娘イズミと共に当初の目的地だったショッピングセンターへと向かう。

 いや本当は高架下でそのまま別れるつもりだったのだが、礼をさせて欲しいというのでじゃあお昼でも奢ってくれ、という話になったのだ。

 

 なんか小説にでもありそうな展開だなあ、なんて思うが、実際問題ポケモンという存在が文字通りの隣人、そして人によっては家族なことだってあるこの世界において無理矢理にポケモンを奪われそうになるというのはつまり元の世界で考えれば誘拐事件に巻き込まれているようなものだ。

 それを防いだのだからどっかの小説のように「いやあ大したことはしてないから礼なんて~」などというのはさすがに無理だ。

 というかどんな礼をするかは人によるかもしれないが、しないという選択肢は場合によっては助けておいてもらいながら礼に一つもしないやつ、というレッテルを貼られる可能性もある。

 なにせこの場合問題なのは当人同士の感情は問題では無く周りからどう見られるか、なのだから。

 

 しかも当人曰くジムリーダーの身内なのだ。

 

 必要以上に周囲の目を気にするのはある種当然と言えるかもしれない。

 

「しかし災難だったね~」

「はい……まさかヤツらに絡まれるなんて、迂闊に外でニョロゾを出したのが失敗でした」

 

 目的地までの道すがら、世間話程度に話題を振ってみたのだが、『ヤツら』なんて明らかに相手側を知っているような返事に思っていた以上にがっつりと情報が出てきたなと少し驚く。

 

「ヤツらって……あいつら何かの集団なの?」

「え……あ、ああ、ご存知ありませんでしたか。はい、そうですね。今このヒロシマ地区を中心として関西圏で勢力を伸ばしているとある集団がいます」

「関西圏……って思ったより……」

 

 広い。複数の県……いや、地区に跨って活動しているということはそれだけ規模の大きい集団ということになるわけだが。

 ふと先ほど絡まれた不審者を思い出す。

 

 ―――まさか。

 

「ロケット団……?」

「ろけっと……いえ、違いますよ?」

「あ、そうなんだ」

 

 なんだやっぱ違うのか、そんな事実にほっと一安心したところで。

 

「そう、ヤツらは……ケロット団!」

「……ん?」

「カエルポケモンを愛し、カエルポケモンを愛で、カエルポケモンを護り、カエルポケモンを集め、カエルポケモンを育む、その名もケロット団……すでに関西一圓にて危険犯罪組織(テロリスト)として指名手配されるカエルポケモン愛護団体過激派です」

「……かえるぽけもんあいごだんたいかげきは?」

 

 なんかとんでもないパワーワードが連続しているせいで脳が理解を拒否している。

 つまりえっと……カエルポケモン愛護団体とは、カエルポケモンを愛護する団体ということなのだろうか(混乱)

 

「ケロット団は元はただの一般的なカエルポケモン愛護団体でしたがある時『伝説のカエルポケモンを見た』と称する男がリーダーになってから途端にその行動が過激派へと変貌、カエルポケモンと見るや人のポケモンだろうと奪いにかかる危険団体になりました」

「……でんせつのかえるぽけもん」

 

 まず一般的なカエルポケモン愛護団体ってなんだよ?

 

「しかもあろうことかヤツらは『カエルポケモンたちの自由と解放』を謳いながらミエ地区とシガ地区にある忍ポケの里『イガの里』と『コウガの里』を襲撃、里にいた多くのケロマツたちを奪い去って行ったことでテロリストと認定、関西一圓にて指名手配される運びとなりました」

「……えぇ」

 

 名前からしてしょうもないネタ団体かと思っていたら割とガチの悪の組織やってる件。

 というか今思い出したのだが、あいつらボクちんのケロマツ見てなんか反応がおかしかった気がしたのはそういうことか。

 

「アナタもヤツらにケロマツを見られましたから、狙われる可能性はあります。十分注意してください」

「え、でもあいつらもう逮捕されたんじゃ?」

「そうなのですが、メンバーはどうやってか情報を共有しているようで、一度見つかるとヤツらの間で知れ渡ることになります」

「うわ……面倒くさ。というかヤツらってそんなに数いるの? カエルポケモン愛護団体が?」

 

 元の世界の基準で考えてもそんな需要がニッチな団体に数がいるとは思えないのだが。

 いやポケモン世界だと元の世界よりは需要が増えそうな気もするが、それでもカエルポケモン縛りはニッチ過ぎる気がする。

 

「理由は分かっていませんが、かなりの数がいるらしいです。少なくともこれまでに逮捕者は100人にも及ぶそうですが、それでも活動の縮小は見られないそうで……」

「なんじゃそりゃ……」

 

 やっぱカエルの皮被ったロケット団なのでは? いや、自分で言っててカエルの皮被ったロケット団というのも大分意味が分からないが、そんな気すらしてくるほどに規模が大きかった。

 そしてそんなやつらにうちのケロマツが……引いてはボクちんが狙われる可能性があるという事実を考えると頭が痛くなる、が。

 

「あの……もし何かあればうちのジムに相談してくれ構いませんので。私も助けてもらいましたし、父さんも力になってくれると思います」

「うん……そっか、まあ助かるよ」

 

 ふざけるな、という話だ。

 

「でもまあケロマツは()()のポケモンだ。だから誰にも奪わせたりしないよ」

 

 少しだけ強くなってしまった語気に、イズミが少しだけ目を丸くして。

 

「そう、ですか……大切なんですね、ポケモンたちが」

 

 隣から囁かれるによう聞こえたその小さな声に思わず顔を向け。

 

「当たり前でしょ? だってボクちんたちの友達で、家族なんだから」

 

 ほとんど反射で答えたその言葉にイズミが虚を突かれたように一瞬言葉を詰まらせて。

 

「……はい、そうですね」

 

 不機嫌そうな表情がゆっくりと笑みへと変わった。

 

 

 

・あつあつ、ほふほふ

 

 イズミの外見を簡単にそして簡素に説明するなら『お嬢様』みたいな子だ。

 薄い桃色の髪を肩のあたりまで伸ばし、片側をおさげにして前に垂らしている。

 しっかりと手入れされているのだろう艶のある髪に色白の肌。

 オフショルダーのワンピースを着て町を歩く姿はどこの良いところのお嬢さんだろうか、という感じ。

 

 で、そのお嬢様なのだが。

 

「この時間が待ち遠しくもわくわくしますよね」

 

 熱気が揺らめく熱々の鉄板の上でジュウと音を立てるお好み焼きをコテ*1を片手に楽しそうに眺めていた。

 

「庶民派だね~」

「えっともしかしてお好み焼き嫌いでしたか?」

 

 イズミの奢りであること、特に何が強烈に食べたいと言った拘りも無かったことから、ポケモンと一緒に食べれる店という注文だけつけてイズミにお任せしたのだが連れて来られたのは目的地であるショッピングセンターの一番外側にあるお好み焼きの専門店だった。

 

「いや、好きだよ? というか嫌いな人いるの?」

「ですよね……ああ、良かった」

 

 まあお嬢様然としたイズミの庶民派チョイスに少し驚いただけで別に文句など無い。

 当然ながら元の世界においても地元が同じ広島県民だったのでお好み焼きは割と食べ慣れた料理である。

 広島県民はお好み焼きが嫌いな人間なんていないと本気で信じている人種*2なので選択に困ったら取り合えずお好み焼きで間違いないだろうと思うのは県民あるあるだ。

 ただし大人になって県外へ出ることになると思ったより他所の県ではお好み焼きってメジャーな食べ物でも無いんだな、と知ることになる。

 

「ここよく来るの?」

「そうですね……時々、ですかね。ジムの人たちなんかと一緒に来ることもあります」

「ふーん……関西風ってあんまり食べないからちょっと新鮮な気分だなあ」

 

 なんて話に花を咲かせている間にも鉄板の上では順調に焼き上がっている。

 そろそろかな、なんて言いながら備え付けのソースをハケで塗りたくれば途端に鼻孔をくすぐる良い匂いがしてくる。

 自分の隣で大人しくソファーに横になっていたニンフィアが匂いにつられてかテーブルの上に顔を覗かせる。

 

「ん~? ニンフィアも食べたい?」

「フィア~♪」

「そっか、もうちょっと待ってね~」

 

 そわそわしているのはニンフィアだけでなく、店内に充満するソースの焦げるような匂いにポケモン用のスペースで待っているマンキーやケロマツ、果てはストライクまでが体を揺さぶっていた。

 

「これってポケモンたちも食べれるの?」

「そうですね、メニューにこの可食用のマークのあるものに関してはポケモンでも食べれる素材を使ったものになります」

 

 そうこうしている内に1枚目が焼き上がったので皿に載せて適当にコテで切り分けていく。

 次いで2枚、3枚と焼き上がったのでマンキーたちの元へと持って行く。

 

「お待たせ~これみんなで食べてね~」

「キー!」

「ケロ!」

「ラァイ!」

「うわ、すごい食いつきだ」

 

 皿を渡すとかき込む様に食べ始めた3匹を見て、余程匂いにやられていたのだろうと察した。

 確かに焼き上がったお好み焼きのソースの匂いは犯罪的な香りだ……これさえあれば薬物なんて世界から根絶する、きっと。

 

「こちらも焼けましたよ」

「ありがと~。ニンフィア~できたって~」

「フィア!」

 

 早く早く、と言わんばかりにテーブルの上に身を乗り出すニンフィアの頭を撫でてちょっと待ってね~と抑える。

 

「こうやってコテでカットして~はいニンフィア、どうぞ~」

「フィア~♪」

 

 未だに湯気が止まらない熱々のお好み焼きだったが、ポケモンたちは存外熱いのは大丈夫らしく「あつあう、ほふほふ」と言った感じで美味しそうに食べていた。

 

「あ~これ見てるだけで幸せになれるわ~」

「ふふ、分かります。可愛いらしいですよね」

 

 そんな会話をしながら目の前の熱々のお好み焼きを食べ始めると何だか夢中になってしまい、あっと言う間に食べ終わってしまった。

 食べ終わった後の腹の中に熱が籠ったような感覚を最後にキンキンに冷えた水を流し込んで体を冷やすと何だか無性にほっとする。

 

「あ~整う、整いそう」

「ふふ……お好み焼きを食べて整うってなんですか」

「でも食べると何だか体の調子が良くなることない?」

「あー」

 

 心当たりがありそうなイズミの様子にやはりお好み焼きは広島県民のソウルフードであると実感する。

 そうして腹ごなしも済み、人心地ついたところでイズミがふと思い出したように顔をあげて。

 

「そういえば、アナタのお名前を聞いてませんでしたね」

 

 そんなことを言うのであれ? と首を傾げて記憶を辿り。

 

「そういえば言ってなかったね」

 

 すでに1時間近く一緒にいて、歩いて、会話して、食事して。

 その上で実は未だにこちらから名乗ってすらいないという今更過ぎる事実に苦笑し。

 

「カナデだよ、よろしくね」

「はい……改めまして、イズミです」

 

 そんな改まった自己紹介に、何だか2人して笑ってしまった。

 

 

 

・黄昏色の憂鬱

 

 空が夕焼け色に染まるそんな中をイズミは1人歩いていた。

 朝にあんなことがあったばかりではあるが今度は油断はしないとすでにボックスから残りのポケモンは呼び寄せているので今度ヤツらが来ても返り討ちにするだけの備えはあった。

 

「……はぁ」

 

 夕焼け色に染まる町。

 シティ内において随一の都会と言えるこの町もけれど少し時間帯をずらせばこの通りすっかり人通りも無い寂びれた田舎町の本性を見せる。

 とはいえ別にそれが嫌なわけではない。

 イズミはこのサヤマシティが好きだから。都会への憧れのようなものが無いわけでもないが、田舎なこの町が嫌いというわけでもない。

 

「……はあ」

 

 先ほどよりも少しだけ大きな嘆息。

 思い出すのは朝助けてくれた少年……少女? カナデの姿。

 お礼に昼食を奢るだけのはずだったのだが何だかんだで気があってしまい先ほどまでショッピングセンターでトレーナー用品のあれこれを見ていたのだ。

 トレーナーなら必需品となるものをカナデは持っていないらしく、結局あれこれと長々と世話を焼いてしまった。

 

「押しつけがましかったでしょうか?」

 

 不快そうな表情では無かった、と思うがどうにも自分が正しいと思ったものを人に押し付ける性格であるのは自覚していたので無意識に失礼を働いていなかっただろうかと少し悩む。

 

 ただし嘆息の理由はそんなことでは無かった。

 

「……5日ですか」

 

 ―――随分と仲が良いんですね。

 

 ニンフィアを溺愛するカナデの様子に、それを受け入れ同じくらい全力の愛情表現をするニンフィアに。そしてその仲間たちにそんなことを思い、訪ねたのだが。

 

 ―――いや、まだ出会って5日くらいだよ。

 

 そんなカナデの答えに一瞬聞き間違いを疑ってしまった。

 ニンフィアやケロマツ、マンキーとは5日前に、ストライクにいたっては昨日捕まえたばかりなのだと言う。

 そんな言葉が信じられないほどにカナデのポケモンたちはカナデに懐いていた。

 捕まえたばかりだというストライクだってニンフィアほどべったりとはしていなかったが、それでも常にカナデのほうに意識を向けて、トレーナーであるカナデを気遣っていた。

 

 ―――当たり前でしょ? だってボクちんたちの友達で、家族なんだから。

 

 ポケモンという存在をカナデは『友達』で『家族』と呼んでいた。

 きっとカナデにとってそれが当たり前なのだ。

 ニンフィアは、マンキーは、ケロマツは、そしてストライクだってカナデにとってはそういう存在なのだ。

 そんなカナデの思いはきっとポケモンたちに伝わっている。

 だからあんな風に好かれているのだろう。

 

「私は……」

 

 翻って私はどうなのだろう。

 

 かつて友達と呼んだはずのポケモンと決別してしまった私は。

 

 勝手に『彼』に嫉妬して、勝手に嫌って、勝手に羨んで。

 

 そして『彼』がいなくなって、初めて自分の間違いに気づいた。

 

「……私は」

 

 カナデを見ていると心が暖かくなる。

 ポケモンとをあれほど真っすぐに大切だと全身で表現しているのは本当に見ていて暖かい。

 

 カナデを見ていると心が冷たくなる。

 ポケモンを友達だと、家族だと言い切り、そして全身全霊で愛情を注げるその姿は見ていて本当に妬ましく、憎々しい。

 

 そしてそんな自分の矛盾した心を理解して苦々しい感情が止めどなく溢れてくる。

 

「無様だなあ……」

 

 呟く言葉もまたどこか空々しく黄昏色の町へと消えていく。

 

「……はぁ」

 

 嘆息一つ。

 

 そのまま足早に歩き去り。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

*1
焼きそばやお好み焼きなどをひっくり返すヘラのこと。

*2
誤解である。




はい、というわけで「ご当地悪の組織」ロケット団ならぬケロット団です。
因みにマルチプレイ解禁されると掲示板で書く予定だが他にも『Magma団』『アクアンズ』『デリシャスギンガ団』『メタリックプラズマ団』『フレアッー団』『透ケルトンスカル団』『スターダストクルセイ団』などのご当地悪の組織、或いは謎のグループがあります。別に全部が全部悪いことしてわけでもないです。ただの熱血ソング好きの同好会とかもあれば「【ホモ】サピエンスは全部ホモ」な集団もいますので。





見なくてもいいあとがき


……。


…………。


……………………。


なんか自分でも意識してないけど飯の話題で話作るとちょいちょい無意識でお好み焼きになってる時がある(過去3回くらい
だって書く前までは喫茶店みたいなとこでパスタでも食ってんじゃねえのって思ってたはずなのに書き始めたらいつの間にかあいつらお好み焼き屋に入ってるし(自分で書いてる
お好み焼きを語る時、広島県民は饒舌になる。
これはもう習性みたいなものなので仕方ないね(中盤のグダりの言い訳

あと広島風は許す。
でも広島焼きは許さない。

これも仕方ないことなんだ(何の話
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