ポケットモンスタージェネシス   作:水代

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チュートリアル終了

 

 

 

 

・運営がサービス開始より7日目をお知らせいたします

 

 『アナタ』が目を開くと視界は真っ暗だった。

 床も天井も真っ暗な世界で『アナタ』は目覚め、そうして起き上がった『アナタ』は以前にも同じようなことがあったと思いだす。

 いや、以前なんて言うほど長くも無いたった一週間前のことだ。

 

 一週間前に『アナタ』はこの場所でキャラクタークリエイトを行い、そしてポケモンの世界へと旅立ったはずだった。

 

 にもかかわらずまたこの場所にやってきていることを『アナタ』は疑問に思い、首を傾げる。

 たしか夜も遅くなり、就寝したところまでは覚えている。

 ではこれは夢なのだろうか? だが自らの体を動かす感覚は現実のそれであると告げている。

 

 そもそも『アナタ』はどうしてまたここにいるのだろう?

 

 そうしてその理由を探すため視線が闇の中を彷徨っていると……。

 

 ぶん、と突如暗闇の中に鎮座していたパソコンのディスプレイが起動した。

 

 放たれた光に『アナタ』が気付き、パソコンの前までやってくると途端にディスプレイに文字が表示される。

 

 >>プレイヤー各位に運営よりご挨拶申し上げます。

 

 >>平素よりポケットモンスタージェネシスをプレイいただきありがとうございます。

 

 >>運営がサービス開始より7日目をお知らせいたします。

 

 >>このお知らせは7日目現在において『チュートリアル』を完了されたプレイヤーにのみ通知されております、『チュートリアル』を未完了のプレイヤーへの通達は『チュートリアル』完了後となりますことをご了承ください。

 

 『チュートリアル』を完了いただきましたプレイヤーの皆さまに『機能解放』のお知らせをいたします。

 

 ①ログインボーナスが実装されました。手持ちの端末に『ログインボーナス』アプリがインストールされていますので毎日欠かさずゲットしましょう。

 

 ②全プレイヤー交流エリア『サークル島』への入場が解禁されます。手持ちの端末に『サークル島』アプリがインストールされていますのでこちらのアプリを起動することで『サークル島』への転移が可能となります。

 

 ③『サークル島』の解禁に伴い、『サークル島』にて『レイドバトル』が実装されます。『サークル島』には時折非常に強力なポケモンが出現しますので、プレイヤーの皆さまで力を合わせて撃退しましょう。

 

 ④『サークル島』では街にて買い物などを楽しめる他、プレイヤー同士の交流、ポケモン交換、ポケモンバトルを楽しむことができます。

 

 ⑤皆さまの世界の各地に強力なポケモンが出現するようになります。また珍しいポケモンと出会えるようになりました。世界を巡り、様々なポケモンに出会ってみましょう。

 

 >>これらの情報は手持ちの端末に『アップデート』のアプリがインストールされておりますので、そちらより再度ご確認いただけます。

 

 >>以上で運営よりのお知らせを終了いたします。

 

 >>プレイヤーの皆さま、良い夢を。

 

 

 

・ログインボーナス

 

 はっと目が覚めて、真っ先にやることはスマホの確認だった。

 夢と切り捨てるにはあまりも鮮明な内容に、まるで今の今まで起きていたかのように記憶ははっきりとしていた。

 

「あった……」

 

 邪神フォンを起動させてホーム画面を調べれば確かに新しく『ログインボーナス』『サークル島』『アップデート』の3つのアプリがいつの間にかインストールされていた。

 

「まずはこれかな~」

 

 ひとまず『ログインボーナス』を開いてみれば7月のカレンダーが表示される。

 そうして最後の週の日付……つまり今日の日付がピカピカと光っているので指先でタップしてみれば。

 

 ―――ログインボーナスを受け取りました。

 

 その一言と共にぽん、とスマホから光が飛び出して机の上で四角形へと変じていき。

 

「なにこれ……DVD?」

 

 すでに数十年も昔に廃れたような記憶媒体にも似た円盤状のアイテム。

 ゲームでもこんなものは見た覚えがないと思いながらこんな時は図鑑で調べてみようと道具解析を起動したスマホをかざす。

 カメラモードに切り替わったので円盤が中心となるように画面に映せばすぐに読み取りが開始され表記されたのは次のような文章。

 

 対象:『わざレコード:XXX』

・ポケモン預かりシステムと連動したパソコンで使える。

・好きな番号を打ち込むことで対応した番号のわざレコードとして使うことができる。

・レコードに記録された技をポケモンに覚えさせることができる。

 

「うっそぉ!?」

 

 とんでもない神アイテムだった*1

 惜しむらくは『わざレコード』のため使い切りなのだろうということだが、それを差し引いても数多くあるだろう『わざレコード』のうちの好きなものと交換できるというのはこれからトレーナーとしてバトルをすることになる自分にとってとてつもない値打ち物であることは間違い無かった。

 

 さらにアプリの詳細を見てみると画面に表示されたカレンダーの下に連続ログインボーナス1日目という文字、それから連続ログインボーナス報酬、ログインボーナス内容、ポイント交換の3つがあってので先にログインボーナス内容の確認を行う。

 

「あーなるほど、そういう感じなんだ」

 

 何日にこれ、とかではなくログボを受けったら『技レコード1/10』『きずぐすり類』『モンスターボール類』『換金アイテム』『LP(ログインポイント)』の順繰りとなるらしい。

 技レコードの横の1/10というのは文字通り10個集めると『わざレコード:XXX』が1個もらえる、ということになるようで、つまり50日に1回『わざレコード:XXX』が手に入るという計算になるらしい。

 今日は初日ということで特別に丸々1個もらえたらしいが、次からはそう簡単に手に入ると思うなよ、ということなのだろう。

 

 それから『LP(ログインポイント)』というのは集めると一つ前の画面のポイント交換で使えるポイントだそうで、内容を見ると対戦で使うような持ち物から進化の石に道具、あとはゲームで『ひみつきち』などで使っていた家具類などもあり、現実となった今となっては中々に面白そうなものが充実していた。

 あと書いてある内容を見るに定期的にラインナップが更新されたり、稀にレアなアイテムが一覧に並ぶこともあるのだとか。

 

 最後に連続ログインボーナス報酬の確認をすると連続ログイン日数分のログインポイントがもらえるらしい。

 さらに一定数のログインポイントを集め、消費することでログインボーナスのランクアップやポイント交換のランクアップなどができるらしい。

 ランクアップすると例えば『きずぐすり』をもらえていたのが『いいきずぐすり』にグレードアップしたり、交換所に出てくるアイテムも倍率1.2倍のタイプ技強化系のアイテム*2までだったのがきあいのタスキやこだわり系のアイテムが並ぶようになるらしい。

 さらにわざレコードの横の数字も最初は1/10だったのがランクアップしていくと2/10になったり3/10になったりするらしい。こうなると効率が倍々に増していくのでかなり重要な要素なのは間違い無かった。

 

「うーん、交換したいものもあるけどまずはランクアップ優先かなあ、これは」

 

 ゲームでもそうだったが、特に現実となった今では『換金アイテム』がもらえるのが恐らく今自分が思っている以上に意味が大きいだろう。

 ゲームほど気軽に金策ができるとは思えない。現実となった世界は当然ながら経済が働いているのだから誰でも簡単に金が手に入る手段なんてものが早々あるはずがない。

 どれほど強化する必要があるかは不明だが、でかいきんのたまは無理でもきんのたままで出てくるようになれば5日に1回1万円相当のアイテムが虚空から湧いて来ることになるわけだ。

 

 ゲームのように売れば5000円になるのかそれともうまくやれば1万円で売れるのかは知らないが、収入の無い今の自分にとって5000円だろうがそれなりに大きな額となる。

 特にカナデは最初から拠点となる家があった反動か、所持金は2000円と文字通りのお小遣い程度だった上にそれもフレンドリーショップでボールや薬を買って消費したので実は結構金欠だった。

 

 まあ『カナデ』の記憶によれば月初めに滅多に家にはいない両親から生活費が送られてくるようなのでそれを使えば良いだけなのだが収入は複数あって困るものではない。

 ゲームならばお金というのはポケモンのためだけに、或いはトレーナーの着せ替えのために使えば良かったが現実には生活費というものがある。それはトレーナーだけではない、ポケモンだって同じなのだ。

 

「まあ元から無かったものなんだし、あまりアテにしないようにはしないとね」

 

 一体誰かから、そしてどうやって支給されている品なのかは不明だが、ログボを当てにしながら生活などしていればいざという時破綻しそうなのでもらえてラッキー、なくても当然くらいの心持でいたほうが良いだろう。

 

 元よりログボなんて無くたってこの世界で生きることはできるのだから。

 

 

・いざ、サークル島へ

 

 掲示板に昨夜の夢からログボの情報までを書き込みながらすでに一足先に『サークル島』へと向かったプレイヤーからの情報へと目を通していく。

 

 曰くアプリを起動すると『入場』ボタンが出てくるので押すとテレポートみたいに一瞬で景色が切り替わって『サークル島』に到着するらしい。

 室内からだと靴を履かずに行くことになるので必ず外出の準備をしてから来るようにとの注意があった。

 『サークル島』でアプリを開くと今度は『退場』ボタンが出てくるので帰る時はそれを押せば『入場』した場所に戻れる仕様らしい。

 

 肝心の『サークル島』は上から見ると楕円形になっており、東半分が平野で中央に街があり、西半分は森で中央には大きな山があるらしい。

 初めて『入場』する時は街近くの海岸線に現れるのでまずは街に行ってプレイヤー登録をするほうが良いとのこと。

 登録することで『サークル島』アプリに追加機能が現れ、『ポケモンバトル』『ポケモン交換』の2つの追加アプリが使えるようになるらしい。

 

 この島唯一の街は独自の通貨である『フェスコイン』を使用しており、通常の金銭は一切使えないらしい。両替もできないというのはかなり徹底している。

 故にプレイヤーが買い物しようとするならばこの『フェスコイン』を入手しなければならないのだが、入手方法は主に2つで1つは売買だ。

 島以外と同じように手持ちの道具や換金アイテムを売ることで『フェスコイン』を入手できるらしい。因みに『フェスコイン』のレートはだいたい円と同じくらいだそうだ。

 

 ただし需要の問題か売れば売るほど買い取り額は下がっていき最終的には買い取り拒否もされるらしいので基本的にはもう1つの方法での入手となる。

 

 その方法とは『依頼』だ。

 

 これもクエストのアップデート機能として追加されるらしいが、クエストと同じように島の住人から依頼を受け解決することで『フェスコイン』を獲得できる。

 依頼は難易度によって報酬が変わるらしく、お手伝い系の依頼では大した額にはならないらしいが、難易度の高い依頼を受けるには小さな依頼をこなして信頼を受けなければいけないらしく、まだ受けることができたプレイヤーはいないそうだ。

 

 そして肝心の『フェスコイン』だが、これで買えるラインナップが中々に凄まじい。

 

 『めざめいし』や『ひかりのいし』に『やみのいし』などの珍しい進化石。

 それに『ジュエル』系の持ち物など。

 果ては『メガストーン』や『Zクリスタル』『ダイスープ』『テラピース』まであるらしいのだから驚きである。

 当然『メガストーン』や『Zクリスタル』『ダイスープ』『テラピース』に関してはかなりの額がするらしいが。

 

 ただし『キーストーン』や『Zリング』『ダイマックスバンド』や『テラスタルオーブ』などの肝心のものは無いらしい。

 

 『カナデ』の記憶によれば地区規模での大会などの商品となっていたりするらしいのでそちらで手に入れろということなのだろう。

 

 その他街では様々な店や屋台が並んでおり、祭りのような気分を味わえるのだとか。

 何より他のプレイヤーと実際に会うことができ、気の合ったプレイヤー同士でグループが出来上がることもあったらしい。

 

 で、そうやってグループを作ったプレイヤー同士だったがサークル島ならともかく、現状では島の外で合流する方法が無いらしい。

 ただ街の中心にある城でプレイヤー同士の互助会らしい『サークルギルド』を結成できるらしいのでこれを結成することで合流することができるかもしれない、だとか。

 

 何だか曖昧な話ばかりだが、『サークルギルド』結成には大量の『フェスコイン』が必要らしく、検証勢が何人か今必死に依頼をこなしている最中なのだとか。

 

 それから街の外の様子なのだが……。

 

 これに関しては実際に見たほうが良い、とだけ書かれていて情報が無い。

 

「ん? 何があったんだろう?」

 

 ここまで詳細に書いてくれているプレイヤーが何故か街の外に関してだけは全く情報を落とさない。

 一体何があるのか、気になって仕方ないが起きてきたらしいニンフィアが朝ごはん食べたいとねだってくるので仕方なく後回しにする。

 

 そうして全員の朝食を終え、外行きの準備を整えると。

 

「じゃああとは入場っと」

 

 スマホでアプリを開き、表示された『入場』の文字をタップする。

 

 瞬間。

 

 ほんの一瞬、眩暈のようなものがしたかと思えば、気づけば砂浜の上に立っていた。

 

「……本当に一瞬だなあ」

 

 なんて呟きながら、周囲を見渡し、街の見つけそちらへと向かおうとして。

 

 ざぱぁぁぁぁと後ろのほうで水音がしたので振り向けば。

 

 ―――カイオーガが海から飛び跳ねて、直後に着水してそのまま海へと消えていった。

 

「……は?」

 

 今なにか凄いものを見たような気がすると止まりかけた思考を無理矢理に動かしながら視線を揺らすと。

 

 びゅう、と凄まじい風を巻き起こしながら何かの影が自身の真上を通って行った。

 視線でその影を追えばそこには西の山へと向かって飛び立つレックウザの姿。

 そしてその足元の森と平野の境目あたりではグラードンが当たり前の顔をしながら体を丸めて眠っていた。

 

 否、それだけではない。

 

 山のほうではアグノムが、ユクシーが、エムリットがふわふわと浮かびあがりながら飛び立つ姿が見えたし、何だったら今現在進行性で空からホウオウが降りたち、海からルギアが飛び出してきた。

 

「えぇ……なにこれぇ」

 

 伝説、伝説、伝説尽くしで場の戦力がインフレ起こしかけていた。

 

 確かにこれは自分の目で見なければ信じられない情報だったかもしれない。

 

 そんな呑気なことを考えながら街へと歩いて行った。

 

 

 

*1
また髪の話してる……。

*2
例:もくたん、しんぴのしずくなど




次回おとくなけいじばん予定。
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