・サークル街
街にたどり着き街の人に話を聞きながら中央の城でプレイヤー登録できるらしいのでそちらへと向かう。
たどり着いた城は、城といっても思ったよりこじんまりとしていたがそれでも10階建てくらいの高さはあった。
城の周囲は掘りが掘られ水が流れており、それがそのまま街中を通って水路となっているようで、西洋の街並みを彷彿とさせてとても美しい。
まあアルトマーレ……そのモチーフとなったイタリアの都市のように街の中をゴンドラで行き来できるほどのサイズではないようだが。
水路には小さな『みず』ポケモンたちも泳いでいるようで、先ほどはコイキングが跳ねているのを見かけた。
城の中はどうやら二階までは解放され区役所のような区域となっているらしく、街中で出店する人たちが行政への手続きに来ていたり、自分と同じプレイヤーたちが登録しに着たりしているらしい。
入口を入るとすぐに大きなホールとなっており、正面に受付カウンターのような場所が、その両隣に二階への階段。左右にはいくつもの部屋が並んでいた。
正面のカウンターには十数人ほど人が並んでおり、その全員がプレイヤーのようだった。
理由としては簡単でアルセウスフォンを持っているからだ。
昨日街に出た時も観察してみたが、自分以外の人のスマホはどうやら普通のものらしく、偶にロトムが入った機種もあるらしいが、それでも自分と同じ機種の人はいなかった。
さらに一般のインターネットにも接続できるらしいこの邪神スマホを使って調べてみたが、同じ機種というのは販売されていなかった。
そこから考えるにどうやらこのアルセウスフォンを持っているのはプレイヤーだけ、と現状では考えて良さそうだった。
故にあそこに並んでいるのは全員プレイヤーなのだろう。
そしてプレイヤーだけがあそこにずらっと並んでいる、ということは自分の目的地もあそこで良さそうだった。
そうして15分ほど手元のスマホで時間を潰しながら待っていると人が減っていき自分の番となったので手続きを行う。
名前や年齢などの個人情報を紙に記入して渡せばそれを手元のパソコンで入力してカードを発行。それで終了の簡単な手続きだった。
カードには先ほど登録した情報が載せられていて、さらに右下にQRのようなものがある。
受付の人の説明によれば『サークル島』アプリを起動するとQR認証の画面があるのでこのQRをかざせば登録完了となり、あとはアルセウスフォンがあれば街の中の各機能が使用できるようになるのだとか。
ただし事前に聞いていた通りこの街では固有通貨として『FC(フェスコイン)』が用いられており、初期FCは0なので街の機能の大半が仕様できない。
なのでまずは『売却』か『依頼』でこのFCを溜めなければならないのだが、手持ちに現在売る物は無いので『依頼』を受けに行くことにする。
『依頼』は街にある『斡旋所』というところで受けることができ、お遣いクエストから街の外へ赴く危険なものまで様々だ。
ただし難易度が高いと判断される依頼を受けるには信頼が必要になる。受けたはいいけどやっぱ無理でした、ばかりでは依頼が回らなくなるからだ。
なので最初にできるのは主にお遣いクエスト*1がメインになる。
こういうのが面倒という人は結構いると思うが、自分はマップ埋めついでに街中を歩き回るのは嫌いではないのでいくつかこなしているとやがて街の外の依頼というものが混ざりだす。
街の地図は一通り埋め終わったと思うので街の外……島のマップ埋めをしようと思っていたのでちょうど良かったとそれらに手を出す。
内容としては街の外、平原を超えて山のほうへ向かうと森があるのでそこで『きのみ』を集めてきてほしい、ということだった。
・いざ街の外へ
そんなわけで街で依頼を受けて外へ出れば広がるのは平原の景色。
妙な話だが島の奥側から山があり、その周囲に森があり、それが西側。それに対して東側は平原があり街があり、街より東は砂浜になっている。
街より東か西かで草が生え茂っているとかいう以前に土が違うのがあまりにも不自然な気がするのだが、それが何故かなんて当然分かるはずもなく、検証スレッドに情報を投げて考証の材料としてもらうに留める。
それから景色を眺めながら歩いていると一見何も無い平原に見えてポケモンが確かに住んでいることが分かる。
例えば遠くで穴の周囲を数匹のミネズミが座って周囲を見渡している。
確か図鑑説明で警戒心が強いポケモンだとか言っていたはずなので恐らくあの穴が巣なのだろう。
森との境目のあたりでデデンネを見かけた時は本気でボールに手が伸びそうになったが、なんとか堪えた。
あとは鳥ポケモンたちも平原で餌を啄んでいるようで、何匹か見かけた。
さすがに2進化ポケモン*2は地上にはいなかったが、それでも空を飛ぶピジョットやムクホークの姿は見えた。
そんな平和な景色を見ながら森へ近づくと来た時にも見えたグラードンの眠る姿が。
こんな平原のど真ん中で悠々と寝こけているその姿には王者の貫禄のようなものを感じる。
まあ寝ている今ですらとんでも無い力を感じるのだから同じ伝説のポケモンでもない限りグラードンが脅かされることなど無いのかもしれない。
それはそれとして大分興味があるのだが、近づいても大丈夫だろうか。
そんなことを考えながらも無意識に足はグラードンへと近づいていく。
そうして目の前まで来てもグラードンは動かない。だが先ほどまでと違い僅かに意識が向けられている感じがする。慢心はあれどそれでも野生のポケモンということだろうか。さすがに無防備というわけでもなさそうだ。
恐らくそれでも反応しないのはこちらに害意が無いのを感じ取っているのか、それとも自分たちでは話にすらならないと思っているのか、まあどちらでも良い。
とにかくグラードンは反応しない。
それだけ分かっていれば十分だった。
まあさすがに触れるほどに近づけば敵意も剥くかもしれないのでこれ以上は近づけないが、ここからでもスマホで写真を撮るくらいならできる。
そうして数枚写真を撮ると良い物が撮れたと満足してその場を静かに立ち去る。
そうして森の外周をなぞるように南へ向けて歩いていると大きな川があった。
どうやら山のほうから続いているらしく、これを辿って行けば山まで行けそうではあるが先に島の外周を把握したかったので川の周囲をぐるっと回りながら渡れそうなところを渡っていく。
川は比較的穏やかな流れで、川の中を見やればヒンバスが悠々と泳いでいる。
水面ではマリルやルリリが楽しそうにぱしゃぱしゃと水遊びしており、川底をミニリュウが蛇行しながら泳いでいる。
さらに水面にはドラメシヤがぷかぷかと浮かんで横切っていく。
どうやら生態系も穏やからしい。
ギャラドスの1匹でもいればこうも穏やかな雰囲気はないだろうし。
ただし道中の森ではピカチュウがミミッキュに襲われていたので、案外森のほうが危ないかもしれない。
そうして川を渡り、さらに森の外周を歩きながら外周に生えた『きのみ』をついでに集めていく。
アルセウスフォンの不思議機能で『道具』というアプリを入れておけば集めた『きのみ』を画面の中に落とすと収納でき、荷物には苦労しない。
掲示板でそういうのがあると聞いた時は本当か、とも思ったが今こうして現に画面の中に消えていく『きのみ』を見ているとどういう原理なのか気になったがまあどうせ謎技術だろう。
そうして森を一周して元の平原に戻って来る頃にはすでに昼をとっくに過ぎていた。
途中森の木陰でポケモンたちと一緒に『きのみ』を食べはしたがさすがにこの島を一周したとあっては空腹を抑えられない。
まだ森の中や山のほうも気になっていたのだが、さすがに今から調べに行けば日が暮れるのは免れないだろう。
それにちらと見えた山の麓にはヨーギラスやセビエたちがいて、それらの親らしいバンギラスとセグレイブがたむろしていたりと行けば無事で帰ってこれるとも思えない危険地帯だったので諦め、街に戻ることしにた。
・マジカルミラクル『ふしぎキッチン』
そうして街に戻ってきて集めた『きのみ』を渡し、報酬をもらう。
今日一日の合計額が6000FCくらい。
さすがに朝からずっと歩きっぱなしで疲れたので適当な店に入って夕飯にする。
ポケモン4匹+人間1人分で1000FC。
今日一日の儲けの6分の1が吹き飛んだことにさすがに顔が引きつったが、提供された料理を食べた途端に勿体ないとか高いとかそんな思考は吹き飛ぶ。
―――美味しい!!
これが料理漫画なら『うーまーいーぞー!』と叫びながら口からビームが出ていたところだ。
そのくらいに美味しい料理に舌鼓を打っていると気づけば全身の疲労が抜けていた。
そのことに気づき驚愕するが、この料理の効能はそれどころでは無い。
なんと一緒に食べていたケロマツがいきなり進化しだした。
え、なんで、という疑問は食べ終わった後の手持ちのポケモンたちを見て氷解する。
何となくだが明らかに強くなっている。夕飯前と夕飯後で今一戦ポケモンバトルしてきてましたか? と問いたくなるほどに内包する強さが膨れ上がっていた。
後で聞いた話だがポケモンがバトルによって『戦う体』に適応する、これをレベルアップすると表現するわけだが、いくら体が適応しようとしても適応するために『素材』が無ければ適応は遅れる。
要するにパワーが必要だと体が感じたところでパワーを生み出す筋肉を作る栄養素が必要となるのだ。
勿論それらは普段食べているものである程度補うことができる程度のものだが、それでも補いきれない部分は適応しきれていない部分として残るのだ。
そしてこの店で出た料理はそういうポケモンにとって不足しがちな栄養素を効率よく吸収できるらしく、不足していた栄養素を補ったポケモンたちは栄養不足で適応しきれていなかった部分を急速に適応させていく。
ゲームのほうのポケモンで確か7世代くらいに『ふしぎキッチン』とかいう食べるとレベルの上がる料理屋があったが、つまりそのあたりの種がそれらしい。
ゲームでも一定以上のレベルだと使用に制限がつく料理が多かったが、それはつまり『補っても意味がないほどにすでにその肉体の部位が適応している』という状況なのだろう。
逆に言えば今までの食事ではこういう『不足』、つまり成長余地が存在しているからこそこういうことが起きるのだろう。
ゲームのように食べると固定でレベルが上がるわけではなく、摂取した栄養素が体に不足していた場合、つまり成長余地が残っていた場合にだけ強くなれるのだが、それでもこの店のメニューがどれもお高いのはそういう特別なメニューなのだからこそ、というわけだ。
恐らく体感だが全員レベルが5~7くらいは上がっている、と考えると1000FCというのは決して安い金額ではないが払うだけの価値はあった。
食事を終えて何故かすっかり疲れが消し飛んでしまった軽い体を揺らしながら夕暮れの街を散歩する。
この島が世界のどこに存在するのか分からない不可思議な島ではあるがプレイヤーが多く訪れているためか非常に活気があった。
散歩しながら街の情報を掲示板で入手し、しばし思考し、一つの結論を出す。
「これは、後回しだなあ」
依頼をしていた時から気になっていたのだが、どうにも依頼の難易度というのがこちらに合わされている気がする。
いや斡旋所の人からすれば適性や実力で振り分けているのだろうが、それはつまり弱いままだとその程度の実力でできる仕事しか紹介してもらえないということだ。
だから逆を言えば一端後回しにしてもっと実力をつけてからやってくればもっと危険度は高く、けれど報酬も良いものを紹介されるのではないだろうか?
さらに掲示板によれば売買でもなにやらお得意様のようなものがあるらしい。
けれど今の自身の手持ちには売れそうなものがない。
唯一あるのはメタルコートくらいか?
だがこれを手放すなどあり得ないことだ。
だから正しくは自分の手持ちには売っても良いものがない、だ。
となるとやはりこれはゲーム的に言えばストーリー中盤から終盤にかけて行うやり込み要素の類ではないだろうか?
信頼、貢献、売買、どれもこれも現状では不足している物ばかりだ。
もっと実力があれば危険度の高く報酬も良い依頼を回してもらえるだろうし、なんだったらログボなどでもらった換金アイテムなどを貯め込んできても良い。
現状ではまだ早すぎるだろう。
「一旦帰ろうか」
ちまちまと依頼をこなすプレイヤーたちが駆けずり回るのを横目にスマホのアプリを開き、『帰還』ボタンをタップする。
そうして一瞬にして景色が切り替わり。
―――気づけば、自宅の前に立っていた。
「便利だなあ……」
なんて呟きながらも目の前の家へと帰る。
明日何しようかな、なんて考えながら。
クエスト募集及び掲示板ネタ募集どちらもたくさんご意見いただきありがとうございます。
お陰でなんとか作れそう……。