・クエスト更新
イズミの巡回に付き合いながら迷子の保護とついでに目撃情報を聞きながら歩いていると気づけばもう昼を過ぎている。
イズミのほうは実行委員会本部で昼食が用意されているらしいので一先ず休憩となり、こちらはこちらで適当に屋台の焼きそばやたこ焼きなどを摘まん昼食を終える。
「いや~思ったより話が聞けたね」
これもニンフィアのお陰だ、と頭を撫でて買ってきたチョコバナナを差し出せば2度、3度とニンフィアが匂いを嗅いでその小さな口でかじりつく。
「フィア~♪」
「美味しい? 良かったね~」
あまーい、と言わんばかりにご機嫌なニンフィアに笑みを浮かべながら先ほど迷子の子たちから聞いた話を思い出す。
それによるとそもそも祭り以前から夕方になると『スイナミタウン』にふらっと現れて子供たちと遊ぶこともあったらしい。
昨日の祭りにも現れて子供たちと遊んだり、どこから持ってきたのか屋台の料理を一緒に食べたりしていたのだとか。
「なるほど、夜のほうが出会いやすかったのかあ」
最初に出会った時が昼前だったので朝のほうが活発的なのかと思っていたが、どうやら日が暮れる頃のほうが出会いやすかったらしい。
大分情報が集まったのでスマホでクエスト画面を確認してみればしっかりと進展があったようで。
クエスト名『好奇心旺盛な鬼さま』
発生条件:7~8月に行われる『祭り』開催までの2週間以内に『山岳地帯』に超低確率で出現するオーガポンと1度以上遭遇する。
①夜になると山から下りてくるオーガポンと遭遇する(オーガポンは人間と遭遇した場合、確定で逃走する。また祭りの日が近くなるほどに遭遇確率が上がる)。
②遭遇したオーガポンの特徴から麓の村、または町で『鬼の伝承』または『鬼面の噂』を聞く(前者は年齢層の高い人、後者は年齢が低い人ほど話を聞ける確率が高い)。
③祭りの日以降に『山岳地帯』で低確率で出現するオーガポンと遭遇する。
④???
このような内容に更新されていた。
「うーん? 街に降りてくるんだからそっちで待てば良いのでは?」
ただクエスト内容が思わず首を捻るようなものだったのでそんな疑問が出てくる。
そもそもクエストって内容に従わないといけないものなのだろうか?
従わなかったらどうなるのだろう?
数秒、首を傾げて思考を巡らす。
そもそもクエストには謎が多い。
この世界がゲームなのだとすればそれはフラグ管理によってクエストチャートが作れるだろう、がここは現実だ。未だにこの世界がゲームの中だと思っているプレイヤーも掲示板にいるが、少なくとも自分はここが現実だと認識している。
もしそうだとするならばこのクエストというシステムは明らかに未来を予測したような指示が出ている。
「いやいや、ラプラスの悪魔*1でもあるまいし」
いや、逆にそれに近いのかもしれない。
少なくとも『運営』は明らかに超常的な存在だ。掲示板ではアルセウスが正体なのだと言われているが、少なくとも自分たちの精神をコピーしそれぞれを平行する世界へ放り込むという神と呼ぶにふさわしいほどに超越的な力を持っているのもまた事実。
故にこの世界で起きていることなど全て『運営』の把握している範疇なのだとすれば、条件が複数重なれば類似した出来事が起きることもまた必然的と言えるのではないか。
「となると一番重要なのはどこに着地するのか、かあ」
クエストが一つの結末への未来を示しているのなら、それはどんな結末になるのか。
例えばそれがこちらにとって都合の良い未来ならともかく、こちらにとって都合が悪いものを含むならばこのまま唯々諾々と従っているのはベストな選択とは言えない。
「さて……どうしたのものかなあ」
なんて呟いたところで、結局のところ結論は決まっている。
「決められた通りの道を歩いたところで面白く無いしね」
カナデの行動基準はいつだって楽しいことが優先なのだ。
・ぽにお
祭りも夕方になると賑わいを増してくる。
そんな賑わいに紛れるようにして、小さな影がちょこまかとあっちへ行ったりこっちへ行ったりと落ち着き無く歩き回る。
「ぽに~♪」
人ごみに紛れながら祭りを満喫した声を挙げながら、さてじゃあ次はどこに行くか、と足を止めて。
「そこな彼女、一緒に遊ばな~い?」
ふと背後から聞こえた声に振り返ってみれば、赤い鬼の面を被ったニンゲンが立っていた。
キラキラした宝石のついたその面に、一瞬目を惹かれたがすぐに気を取り直し、首を傾げる。
「ぽに?」
「やあやあ、ボクちんはカナデだよ~、こっちは相棒のニンフィア」
「フィア~♪」
「ぽに~♪」
ニンゲンの足元からちょこちょことやってきた青色のポケモンがよろしく~と手をちょこん、と出してくるのでこちらも手を差し出す。
取り合えず敵意のようなものは感じないので、多分大丈夫だろう、と楽観的に考えながら握った手をふにふにしているとニンゲンのほうも手を差し出してくる。その手には屋台に置かれていた美味しそうな食べ物が握られていて……。
「良かったら食べる?」
「ぽに~♪」
遠慮なく受け取り食べる。外側の甘い部分と中の果物の酸っぱさが良い塩梅で、口の中が幸せだった。
けれどまあ元々大した量ではないのであっという間に食べ終わり、無くなってしまったことにしゅんとしていると。
「一緒に屋台グルメツアーといこ~♪」
「フィア!」
「ぽに~!」
自分も! とニンゲンのポケモンが主張し、それに追随するように乗っかる。
そうしてニンゲンとポケモンと連れ立って歩きながらずらりと並ぶ屋台に置かれた美味しそうな品々にうずうずとしてきたので早速近くの屋台へと向かう。
「ぽに!」
「これ~? ニンフィアは?」
「フィア♪」
「お~隣の屋台ね~」
屋台に並ぶ食べ物を指さしてこれ、と言えばニンゲンが屋台に立つニンゲンに何かを渡し代わりと美味しそうな匂いのするソレらを受け取る。
山にいると忘れてしまうがニンゲンの世界で何かを得ようとするなら『オカネ』とかいうのがいるとか以前聞いたことを思い出す。もしかすると昨日屋台から勝手に取ってしまったのはまずかったかな、と今更ながらに思い始めたが……。
「ぽに~♪」
ニンゲンに渡された茶色くて丸いころころふわふわした甘い匂いのそれを前に先ほどまで考えていたことは一瞬で消し飛んだ。
ひょいと1つ食べてみれば口の中に広がる甘さに頬が緩む。
1つ、また1つと食べ進めていけばあっという間に手元は空っぽになってしまう。
「ベビーカステラなんて久々に食べたなあ~」
そして隣で一緒にニンゲンが同じものを食べていることに気づき、視線を向ければこちらの視線を感じたのかニンゲンがこちらを向いて……。
「食べたい?」
「ぽに!」
「はい、あ~ん」
「ぽに~♪」
指先に1つ、摘まんだ甘い甘いそれを差し出される。
口を開けて待てばすぐにころん、と転がって来る甘味に頬に両手を当てて味わう。
そうして食べ終わるとまた1つ、また1つとニンゲンが差し出してくるので食べているとニンゲンの分も全て食べ切ってしまったことに気づく。
「が、がお?!」
「ああ、大丈夫だよ~。また買えば良いからね」
やっちゃったか?! と焦るが、対称的にニンゲンは慌てた様子も無く大丈夫と繰り返すのでやや釈然としない気持ちになりながらも良いのかな、と納得しておく。
「ところで甘い物ばっかりだったし、そろそろしょっぱいもの食べたくな~い?」
「ぽに~」
たべたーい、と手を挙げればじゃあ行こう、とニンゲンが歩きだし、その背を青いポケモンが追う。
自らもまたその背を追おうとして、ちらりと一瞬山を見やる。
すっかり暗くなってしまっているが……まあ良いか、と気楽に考えてニンゲンを追った。
・ポケモン世界らしいお祭りイベント
なんか散々苦労した割にあっさり見つけれたなあ、というのが正直なところ。
無警戒に隣でタコ焼き*2を食べるオーガポンをこっそりと見ながらあまりにもあっけなく接近できたことに拍子抜けしてしまった。
とはいえまだ知り合っただけだ。
今一緒に来ない? と誘ったところで普通に来ないだろう。
まだそこまで深く関われていない。普通にバトルしてゲットするならともかく、バトル抜きでゲットするならばもっと仲良くならなければダメだろう。
だが知り合えたというだけでも正直非常に大きな進展だ。
昨日まで顔を合わせることすらできなかったのだから。
やっぱり『かまどの面』効果あったのかな?
最初に声をかけた時、滅茶苦茶お面に注目していたのをカナデは見逃さなかった。
単純に綺麗なお面だったらなんでも良いのか、それともやはりこのお面は特別なのか、それは分からないがこのお面のお陰でオーガポンの興味が大きく引けたのは確かだ。
そうしてオーガポンと一緒にお祭り屋台を巡って分かったことは、やはりゲームのオーガポンとは大きく性格が異なるということだ。
多分、ゲーム風に言うならば隣にいるオーガポンは性格が『ようき』と言ったところか。
人を怖がるような素振りは無いし、物を食べる時など普通にお面を外して顔を見せる。言葉は話せないが言葉は伝わるし、表情がコロコロ変わって感情が素直に表に出ているのでコミュニケーションにもそれほど困らない。
ただし野生のポケモンらしく最後の一線でほんの僅かな警戒心が見えた……最初だけは。
相当に人懐っこいのかこうして一緒に屋台を巡っている内にそんな警戒心もあっさり消えていた。
お祭り気分もあるのかオーガポンはこちらの提案に対して否とは言わない。
あっちに行こう、こっちに行こうと言えば子供のように素直にほいほいとついて来る。
いや、この言い方だと自分が悪い大人みたいだが……。
とにかく今かなりチャンスなのは間違いない。
このお祭りの間にもっと仲を深めておけば祭りが終わった後も山で会えるかもしれない。
こうなるとゲコガシラが住処を探し当ててくれたのも追い風だ。
といっても自分的にはこのお祭り中にゲットしてしまいたいのだが。
果たしてそこまで行けるか、と思いつつポケモン用の玩具を販売している屋台を物色するニンフィアとオーガポンを他所に他に何かあるとか周囲を見渡し、向かいの大型ショッピングモールの駐車場エリアの一角に設置された大きな舞台に気づく。
「ねえ、あそこ何かやるの?」
元の世界ではあのような場所で何かやっていた覚えが無いので屋台の店主に聞いてみれば、どうやら祭りのイベントの一環として毎年あそこでポケモンバトルの大会をやっているらしい。
「へえ~それ面白そうだね~」
個人的には結構興味があるが、今はオーガポンをエスコート中だ、さすがに勝手はできない。
ニンフィアと共にそれぞれお気に入りの玩具を見つけたらしいオーガポンがこれ、と差し出してくるのでお金を払って屋台を出る……うん、そろそろバトルでコツコツ稼いでいた賞金がやばいかもしれない、お祭り価格が懐に痛かった。
「あそこでポケモンバトルの大会やってるらしいんだけど、一緒にどうかな~?」
「ぽに?」
と誘ってみれば何それ? と言わんばかりに首を傾げられた。
ポケモンバトルというものがいまいち分からないらしいので多分楽しいよ、と誘えばじゃあ行ってみる、と頷くので会場へと歩く。
どうやらちょうど今はバトルとバトルの合間の休憩時間らしいが、もうすぐ始まる様子。
会場には舞台を囲うように客席が並んでいるがお祭り効果か大半が埋まっていた。
そそくさと自身とオーガポンの2席を確保し座ると、さらっと膝の上に登って来たニンフィアの背を撫でる。
もうすぐ始まるらしい会場のざわつきにオーガポンも何か楽しい雰囲気を感じたのかウキウキしながら待っている。
自分はその合間の時間にこっそりスマホで大会について調べるとどうやら朝から予選をやって今がちょうど決勝、最後の試合となるらしい。
「なかなかタイミングが良かったね~」
「ぽに~♪」
隣を見やればオーガポンが楽しそうにしているが、果たしてポケモンバトルというものをオーガポンはどう見るのだろう?
ポケモンだって争うのが嫌いな性格のポケモンだって存在する。
このオーガポンがそうだった場合、さすがにゲットしてバトルに、とは行かないだろうし、少しだけ心配だった。
そう、だった。
少しして始まった試合、こんな田舎の片隅で行われたとは言えれっきとした大会。
賞品もあるとあって近隣の腕の立つトレーナーたちが参加していたらしい、決勝戦は非常に見ごたえのあるものだった。
手に汗握る白熱のバトルに会場もまた熱狂に包まれる。
そして決着と共に怒号のような歓声が会場に響き渡り。
「ぽに~♪」
隣でオーガポンが大満足とばかりに手を叩く。
そうして。
「ぽにお!」
くい、くい、と自身の袖を引き。
古戦場お疲れさまでした(別ゲー感
最終日の土曜に朝7時から夜11時半まで15、6時間くらい極星器掘り続けてたせいで日曜日死んでたわ。
その内掲示板でやるネタではあるけど、クエストに従った場合の結果は基本的にベターエンド『以上』です。
最低でもベターエンド、つまり次善の結果となるけど、その次善がプレイヤーにとっての次善かはまた別の話なのでプレイヤーにとって一番良い結果が欲しいならクエストを無視して動くのもまた一つの選択となります。
ただし無視した結果より酷い結果になる可能性は普通にありますが。
カナデくんちゃんの最初のクエストのように普通に最良の結果になる可能性もあります。
次回でようやく6匹揃います。そしたらようやくプロローグ終了なのでジム戦、募集クエスト、サークル島開拓などが始まります。