・ポケモンジム
ポケモンジムには『公認』と『非公認』の2種類がある。
簡単に言えば『公認ジムバッジを渡せるジムか否か』という意味であり別に非公認だから違法性があるとかそういうことでは全く無い。
非公認ジムというのはつまり『個人経営』のポケモンジムだ。
なので別に施設や役職について経営者側で勝手に作っても良いし、何だったら勝手にジムバッジを作っても何も問題ない……そのジムバッジを公認と偽ったら一発アウトだが。
対して公認ジムというのは『公営』のポケモンジムだ。
ただし公認ジムと一言に言っても『新設』か『認定』かで所有権などがややこしい。
簡単に言えば行政側が新しくジムを作り、ジムリーダーを用意するのが『新設』。
そして『非公認』ジムに話をもちかけて『公認』ジムとするのが『認定』。
後者の場合、ジムの所有権自体はジムリーダー個人に帰属したりしていてややこしいのだが、まあそんなややこしい話はさておき、そのどちらであろうと結局のところ公認ジムとしての役割は変わらない。
ゲーム時代の知識からポケモンジムと言えばジムリーダーに挑戦してバッジを獲得する場所、という印象があるわけだが現実にはその地域におけるポケモントレーナーの教導の役割を請け負っている。
ポケモンスクールが『知識』などを重点的に教えるのに対してポケモンジムというのは『実践』を重視している。
誤解を恐れず説明するならばネトゲにおける『チュートリアル』のようなものだ。
なんで今更と言われるかもしれないが、先も言ったがプレイヤーとしての固定観念というべきか、ポケモンジムなんてバッジ取りに行くとこだろ、みたいな考えが前提としてあったので、ポケモンジムにそんな初心者御用達しな役割があるとは全く気づいていなかったのだ。
イズミやトクサと出会い、ジムやジムリーダーというものについて多少興味を持って調べている内に実は公認のポケモンジムというものがそういう新人育成の一環としての役割を持つことを知った。
そういうわけで、ハッサムを連れてジムへと向かう。
今回一番知りたいのは『人型ポケモンの動き』だ。
ポケモンと一言に言っても姿形は様々ではあるが、人と同じ2本の足で立って走り、2本の手を器用に動かし物を掴むような人と同じ動きをするポケモンというのは一定数存在する。
うちで言えばマンキーやゲコガシラ、ハッサムにオーガポンなどがその類と言える。
こういうポケモンに関してはある程度だが『人の体を動かす技術』というものが参考になる場合が多々ある。
―――そういう意味では近くのジムが『かくとう』タイプのジムで良かったと言える。
『かくとう』タイプのポケモンというのはある意味、人の技の恩恵に最も
ゲームにおいて『かくとう』タイプを専門とするトレーナーが自身もまた格闘家だったり、スポーツマンだったりするように、人と同じ体の動かし方をするポケモンだからこそ、人の技に対する適性が高い。
体の動かし方1つとっても『技術』というものが存在する。
技術とはつまり『理』の活用であり、それが人間であろうとポケモンであろうと身体の形状が酷似し、同じ動きをする以上、そこに使われる技術が流用されるのもまた自明の理だ。
特にマンキー、ハッサム、オーガポンの3体に関しては
―――オーガポン、これ以上強くなるのか……ハッサム追いつけるかなあ。
そんなことを内心考えながら、ジムの門戸を叩いた。
・ポケモン式真剣ゼミ
『公認』のポケモンジムではだいたい1~2週間に1回くらいの頻度で初心者向けの講習が開かれる。
これは先も言った通り、初心者育成を目的とした国のトレーナー支援の一環であり、『公認』のポケモンジムならばどこでもやっていることだ。
当然ながら『エイヒツジム』でもやっているわけだが、この内容に関しては半分くらいはどこのジムでも共通なのだが、残り半分はそのジムごとの『専門』が内容となる、ということをジムの一室で説明される。
室内には自分の他にも10人前後の子供たちがいる。
時期的にもちょうど夏休みシーズンなので来ているらしい。
因みにこの世界における『ポケモンの所有』は12歳から。ただし『正規トレーナー資格』を得てトレーナーとしてリーグに参加することができるようになるのは15歳……正確には中学校を卒業してからになる。
なのでこの世界においてゲームに出てきたようなあからさまに10歳にもならないような子供がバトルを仕掛けてくる、という状況は基本あり得ない。
話を戻すと講習というだけあって最初は座学からだった。
と言ってもゲームをやっていればだいたい知っているような初歩的な内容が多かった。
まあ初歩的といえど例えばタイプ相性。ゲームを長くやっていれば自然と覚えるようなものではあるが、現実に座学として学ぼうとするとパターンが多すぎて頭がパンクしそうになる人間が多いらしい。
まあそれはそうだろう20……この世界だと18種のタイプがあってそれぞれに『ばつぐん』『等倍』『いまひとつ』があってさらに複合タイプまで存在するのだ。
タイプ相性の組み合わせだけで100通りを優に超え、さらにそれぞれの組み合わせに対しての18タイプそれぞれの通りを考える……となるとそのパターンは1000を超えるわけで、ベテラントレーナーでも時折タイプ相性が抜けることがあるくらいには複雑だった。
それ以外でも『どく』『もうどく』『やけど』『ねむり』『こんらん』などの状態異常の効果。
さらにはポケモンごとの種族的な能力傾向、得意不得意、覚える技、技の効果。
さらに言えばステータスそれぞれの意味。
プレイヤーたちの世界でポケモンというゲームが1つの世界を形作るまでに積み重ね続けてきた『基本』はまさしく膨大だ。
しかもデータとして全てが設定されたプログラムに基づいて計算されていたゲームと異なり、この世界は現実だ。能力を数値とすることも、体力を具体的に示すことも、ダメージを視覚的に捉えることもできないわけで。
そんな世界にトレーナーに求められる能力はゲーム時代よりも圧倒的に増えるのもまた自明の理だった。
そういうわけでゲーム時代の知識との差異を確かめながらも1つずつ基礎知識を学んでいく。
その中でも面白いと思うのは掲示板でジムトレーナーになったというトレーナーも語っていたことだが、ポケモンの生態が育成に絡むということだ。
まあ現実的に考えて絡まらないはずがないのは当然と言えば当然なのだが、それでもゲームではポケモンの育成とは『レベルを上げる』『基礎ポイントを振る』『技を覚えさせる』『特性や性格を変化させる』『個体値を上げる』などどんな種のポケモンだろうとやること自体は変化がない。
同じことを現実でやらないわけではない、だがそれだけならば『訓練』や『練習』といった言葉で片付く。
だがトレーナーに求められるのは『育成』だ。その言葉の違いはもっと根本的なところにある。
つまり『性質』や『体質』といったものすらも『育成』は変えてしまうことができる。
分かりやすい例を挙げるならばゲームにおいて複合タイプのポケモンに対して両方のタイプに対して『こうかはばつぐん』となるタイプ相性の攻撃技が命中した時、それは通常の4倍のダメージを与えていた。
これはつまり『こうかはばつぐん』=2倍のダメージであり、それが2タイプ分重なったが故のダメージ計算となる。
言い換えれば4倍弱点持ちは『特定タイプの攻撃を4倍の威力で受ける体質』と言い換えることができるわけだが、現実においては育成によってこれを解消……とまではいかずとも緩和することができる。
つまるところ『体質の改善』だ。
最大でも4倍弱点にハードロック互換*1をつける程度だがあると無いで全く意味が変わって来る。
自分のパーティでいうならばモノズとハッサムがこれに当たるわけだが、特にハッサムが『ほのお』技を3/4にできれば普通ならば耐えられない攻撃も耐える可能性が大幅に上がる。
数値で管理されたゲームでは絶対にあり得ないようなことだが、現実において『血統』や『食事』によって体質を変えるというのは元の世界でも行われていたことであり、ポケモンとは『適応』し『進化』する存在であるが故に必要に応じて『適応』させ、短期的により強く『進化』させることが可能なのだ。
そしてただレベルを上げるだけではない、ただ技を覚えさせるだけではない。
それこそポケモンという存在の根本すらをも必要に応じて変じさせる、それこそが『育成』だ。
そして話を戻すが『どうやって変じさせるか』という『育成の方法』を見つけることこそが
そのポケモンはどんなポケモンなのか、そのポケモンはどうやって生きているのか、何を食べて糧としているのか、進化はするのか、種族の平均的な大きさと比べてどうなのか、体重は、手足の長さは、能力値はどうだろうか、どんな技を覚える、体内構造はどうなっていて、どういう場所で生きている、どういう環境を好むのか、厭うのか、他にも知るべきことはいくらでもある。
何を変化させればいいのか、というのは結局のところ何が基本的なのかを知っているからこそ決定できるのだから。
―――これは面白いなあ。
なんて講習を聞きながら考える。
実機の時にこれがあったらプレイヤー対戦がさらに複雑化したことは間違いない。
つまりリアルタイムバトルの現実においてはより複雑化する。
恐らくゲーム時代の感覚で挑んだプレイヤーは悲鳴を上げるだろうし、この講習の内容を掲示板に流せば阿鼻叫喚となるのも間違いない。
4倍弱点持ちが特に挙げられるが、そもそもの話として普通に弱点タイプに対して耐性がつけれるというのはかなり大きい。
まあ講習を聞く限り、全ての弱点に対して耐性を持たせて―――なんてことはできないみたいだが。
特に興味深かった『育成』の講習だったが、他にも『状態異常』なども実機との差異があった。
例えば『どく』状態。ゲームだとダメージを受ける以外のデメリットは無かったが、現実的に考えて全身が『どく』に蝕まれてるのに平気なわけないだろ、ということで虚脱感でだいたい全能力が1割くらい下がるデメリットがあるらしい。
『もうどく』になると時間経過と共に加速度的に虚脱感が増していき、3分ほどで立つことすら儘ならなくなり5分もすればそのままダメージで『ひんし』になるという恐ろしい効果となっている。
5分もあれば、と思うかもしれないがようは『どくどく』を当てて180秒逃げ回っていれば理論的にはそれだけで勝てるということになる。
勿論プロトレーナーたちならそんなことはさせないと即座に交代したり或いはそもそも逃がさないと果敢に攻撃をしかけたりするのだが、ゲームの時のように『どく』くらい、と侮っているととんでも無いことになりそうだった。
因みに『マヒ』状態はゲームの時のように確率で行動不能とかではなく、シンプルに『体を使った動作が極端に遅くなる』……つまり『すばやさ』の低減なのだが、現実仕様だとこれが本気でエグイ効果を持つ。
つまり直接攻撃の類がスローモーションになって簡単に避けられる、実質的に無効化されている上に遠距離攻撃しようにも痺れた体のせいでどうやっても後手になる。
下手すればヒットアンドアウェイで削られ続けて抵抗もできずに負ける可能性まである。
『やけど』は『ほのお』技を食らうと症状が悪化する。ゲームでは最大HPの1/16ダメージだったが、『ほのお』技を受けると激化し1/4ダメージくらいまでダメージ量が跳ね上がる。
『ねむり』状態は状態異常そのものに変更はないのだが『めをさました』直後は意識がはっきりとせず必ず後手になるし、体が上手く動かず攻撃を回避することができないらしい。
そして『こおり』状態は恐ろしいことに初代仕様……『ほのお』技を受ける、或いは自ら使用するまで永続で動けなくなるのだとか。『ほのお』技が無いなら実質戦闘不能のようなものである。
『こんらん』ならば『前後不覚になり、トレーナーの指示を一切受けなくなる』というものだ。
この状態になると敵味方の区別がつかなくなる、どころか敵の認識すらできなくなり勝手に虚空に向かって攻撃したり、わけもわからず自分を殴りつけたりするらしい。
当然隙だらけなので攻撃し放題なのだがダメージを受けるとほぼ確定で意識を取り戻す。当然自傷でも良い。
こうなると状態異常そのものが強力過ぎるし、どんな状態異常をも解消できる『ラムのみ』の価値というものが大きく上がって来る。
パーティのエースにはラムを持たせろ、なんて教訓があるくらいには。
持ってきたノートに必要と思う情報をメモっているとやがて講習も終わりを迎える。
そうして。
「次はジムの道場で実技となります」
そんな教師役のジムトレーナーの言葉に、待ってましたと立ち上がった。
大変長らくお待たせしました。
引っ越しによる環境の変化、新しい職場の激務で早々に寝てしまう生活、どうしてもネタが出てこないスランプなどが重なって一か月も更新できませんでしたが、これからはなんとか……ぼちぼち更新していきたい……いけたらいいなあ……。
育成に関しては現実でも普通にやってることですね。犬とか猫とか馬とか血統の掛け合わせ、食べさせるものの変化、などで都合の良い種と作り出してるし、通常の動物が年月と血筋を辿っていきつく先ではありますが、ポケモンは環境に適応し、単体で進化することができる存在なのでトレーナーの腕次第で1代で行きつくとこまでたどり着けます。
状態異常に関してはアニポケで「どく」の状態異常が「マヒ」みたいな行動不能効果持ってたんですよね。そこから逆に考えて『どく』状態なのに正常に動けるわけないよな……みたいに考えて全体的にリアルポケモンバトル仕様に変更しました。
因みにまだ状態異常は隠し効果とかありますが、まあそれは後のネタということで……。