ポケットモンスタージェネシス   作:水代

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はじめてのポケモンバトル(ポケモンがバトルするとは言ってない)!

 

 あ、と思った瞬間には時すでに遅く、振り抜いた拳がマンキーの特徴的な豚鼻を捉え、殴り飛ばしていた。*1

 

「やっべ、一般通過マンキー殴っちゃった? いや、さっきキックしようとしてたよね? ねえ、ニンフィア、今の正当防衛だよね?」

 

 思わず傍に立つニンフィアへとしゃがみ、視線を合わせ問うてみたが肝心のニンフィアはなあに? と言わんばかりにのんびりとしていた。うん、可愛い。

 

「キミ今の見てたよね? 全く動じてないあたりのんびりやさんなのかそれともひたすらに大物なのか」

「フィア?」

 

 すっとぼけているのかそれともただの素なのか、不思議そうに小首を傾げるニンフィアを見てまあ可愛いからなんでもいいや、という気分にされられた。く、あざとい……。

 

「キィー!」

 

 そんなことをしていると前方から怒ったような声が聞こえ、そういやマンキーのこと忘れてた、と思いながら視線を向ければこちらを睨み、両方の拳を振り上げ、それはもう大層なお怒り模様だった。

 

「これは完全に目を付けられたなあ、いや最初からか? うん、だってキックしてたしね」

 

 今にも襲い掛かってきそうなマンキーを前に、よし、と一つ頷き。

 

「初ポケモンバトルだー! よし、ニンフィア! キミに決めた!」

 

 どっかの歴代アニポケ主人公さんの真似しながら指を突き出してニンフィアに声をかける、が。

 

「フィア~♪」

「あのニンフィア? ニンフィアさん?」

 

 が、ダメ! ニンフィア、まさかのマンキーの飛び降りて来た木に咲いていた藤のような紫色の花がマンキーが飛び降りて来た反動で舞い落ちる景色に夢中。

 こいつ、大物過ぎる?! なんて衝撃を受けている間にも衝動をこらえ切れなかった*2のか怒りの声をあげながら襲い掛かって来る。

 

 ―――マンキーの拳を振り上げての『ひっかく』!

 

「仕方ないなあ~もう!」

 

 アニポケでもそうだったが、攻撃しようとしている部位がエネルギー的な何かで光っているので何をしようとしているのか非常に分かりやすい。

 さらに言えば怒りのままに襲い掛かって来るので非常に直線的なこともあって足を伸ばせばリーチの差で簡単に止められた。

 

「キィ!」

 

 蹴り抜くのではなく差し出して勢いを止めるようにしたので目の前でマンキーが立ち止まり、瞬間片手でひょい、とマンキーの真上にニンフィアのおやつ用にと持ってきていたポケモンフーズを投げる。

 こうなると人間もそうだがだいたい投げられた物に一瞬視線を持っていかれるのでそのままマンキーの裏に回って……。

 

「よし、捕まえた」

 

 ひょい、と0.5メートル……つまり50センチという小さな体を持ち上げる。

 

「ブキィ?!」

「よーしよし、怒らない怒らない」

 

 じたばたと暴れるマンキーだったが、後ろから捕まえているので手足が届かない。唯一届くのは尻尾くらいだがマンキー系統に尻尾を使った技は無い。

 そうしてマンキーを抱えたままニンフィアの前に連れて行き。

 

「ニンフィアさーん? おーい」

「フィア?」

「あ、やっとこっち見た、もうのんびりした子だなあ」

 

 ようやくこっちを見たニンフィアの前にマンキーをずいっと差し出す。

 そうして怒りのままにじたばたと暴れるマンキーを見るとニンフィアがリボンをするするとマンキーへと向けて……ぼんやりとした光が放たれる。

 手足を振り回してバタバタと暴れ回っていたマンキーだったがその光を受けると徐々に落ち着いてきたのか抵抗が無くなって来る。

 

「うん、よし。確か図鑑説明で戦意を削ぐとか書いてあったけどホントだね。ニンフィアえらい!」

「フィ~ア♪」

「うんうん、褒められて嬉しい? 可愛いね。でもキミさっきボクちんが戦ってるの普通に無視して花見てたの忘れてないからね?」

「フィア?」

「も~すっとぼけやがって、可愛いな~こんちくしょう」

 

 すっかり大人しくなったマンキーを降ろしてやると、よしよしと頭を撫でる。

 野生のポケモンのようだが意外と毛皮がふさふさしている。ニンフィアのようなふわふわとは違う少し固めだがこれはこれで悪くない手触りだった。

 

「ほら、これ食べるかい?」

「ブキ!」

 

 先ほども投げたポケモンフーズをポケットから出して差し出すとお腹が空いていたのか嬉しそうに食べる。

 

 ―――小柄、二足歩行、特別な身体的特徴も無い。

 

 ふとマンキーなら別に家でも普通に住めるのでは? とそんな思考が過る。

 自分も自分もと可愛くおねだりするニンフィアと一緒にポケモンフーズを食べている様子を見れば二匹の相性も別に悪く無さそうだし。

 

 気軽に増やす気は無かったが、それはそれとして出会いは大切にしたい所存。

 

「よし、マンキー。良かったらボクちんと一緒に来ない?」

「ブキィ?」

 

 モンスターボールを片手に差し出し、マンキーを誘ってみる。

 野生ポケモンだろうが何故か知らないがモンスターボールの存在を知っていて友情を育むと入ってくれるのはアニポケで履修済だったので試してみたのだが、どうやら法則自体は同じらしい。

 マンキーはそれが何なのか、どういう意味なのか理解している様子で悩んでいた。

 

 行ける? 行けるかな? と思っていたが、しばらく悩んだ末にマンキーは首を振った。

 

「ダメかあ……なら仕方ないね」

「ブキ! キキィ!」

 

 振られたことに残念と思いながら別れようとするとマンキーが声をあげて何かを伝えようとしてくる。

 

「うん?」

「ブキ! ブキブキィ!」

「うーん」

 

 ダメだ、さっぱり分からん。

 と言いたいのだが、何となく伝わって来るものはある。

 身振り手振りも合わせて読み解いてみたが……。

 

「要するに住んでるとこの近く? に強いやつがいるからそいつに勝ちたい? あと仲間がいるから自分だけ行くなんてできない?」

「キキィ!」

 

 そうそう、って感じで頷くマンキー。まじかよ、ボクちんポケモンとコミュニケーションできてるわ、N様かよ。

 今度からカナデ・ハルモニア・グロピウスって名乗ろうかな、なんてアホな思考は横に置いておいて。

 

「そっか~、うーん」

 

 カナデの手の中で大人しく撫でられて気持ちよさそうに目を細めるマンキーを見やりながら考える。

 ここまで仲良くなったのに、じゃ、後は頑張ってね、は少し寂しい気がする。

 何よりこんなアニポケでありそうなイベント見逃したら何のために転生したというのか。

 

「よし! 決めた」

 

 一つ声を上げ、マンキーを置いて立ち上がる。

 こちらを向くマンキーにぐっと拳を握って見せ。

 

「そいつに勝てるようにボクちんも協力するよ」

 

 握った拳をマンキーに突き出す。

 

「だから、そいつに勝てたら、一緒に来ない? 仲間に関しては……まあ簡単には一緒に連れてくなんて言えないけど応相談で」

 

 そいつに勝てたら、と言ったらマンキーが僅かに驚いた様子を見せる。

 もしかするとマンキー自身、勝ちたいと思っていても勝てる未来が見えなかったのかもしれない。

 実際問題マンキーの勝ちたい相手がどれだけ強いのかは分からない。

 だがマンキーは本気で勝ちたい、そう願っているのは分かっているから。

 

()()()()()()()!」

 

 そう告げるカナデに、マンキーが少しだけ躊躇して……。

 

 ―――それでも。

 

「ブキ!」

 

 ぐっと握った拳を突き出し、こつんとぶつけあった。

 

 

 * * *

 

 

 マンキーの仲間を見せてもらうために一緒に山を登り、マンキーたちの住処へと向かう。

 山の中は幾多ものポケモンたちが住んでおり、それぞれにナワバリのようなものがあるらしい。

 どうやら山のポケモンたちは平地のポケモンよりも野生味が強い、というかナワバリ意識が高いらしくこのナワバリに足を踏み入れると容赦なく襲い掛かって来るらしい。

 

 で、道中にマンキーに聞いたところ、件の強いポケモン、というのはこのナワバリをあっさりと無視してあちらこちらに出没してはナワバリを守るために襲い掛かって来るポケモンたちを返り討ちにしているらしい。

 そんなことをしている割にはそのナワバリを奪うわけでも無く、しばらく居座ったらまた別のナワバリへと転々としているらしく山のポケモンたちにとっては災害のような扱いとなっているらしい。

 

 そんなに強いポケモンなのか、とも思ったのだがどうやらこの山、ゲームでいうところの初期エリアのようなもので、要するに平均的なポケモンのレベルが低いらしい。

 つまりここに住んでいるポケモンの大半は未進化ポケモンたちであり、稀に見る進化ポケモンたちもラッタやクルマユのような進化しても生態系の上位に立てるような存在ではないポケモンたちばかり。

 

 で、肝心の災害のように暴れ回っているポケモンが何なのかと言えば。

 

「ブギ! ブギィ!」

「うーん、さっぱりわかんね」

 

 何かこう腕をひっかくような動作が多いのだが、ニャースが招き猫してるような動作にしか見えない。

 でもマンキー曰く羽があるらしいのでニャースではないらしいのだが……。

 まあそんな道中を得て山の中腹あたりまで進む。

 マンキー曰くこの辺りが住処らしく、手招きされるままに山道を逸れて草木の茂る獣道を進んでいく。

 

「お~」

「フィ~ア♪」

 

 そうして見えたのは小さな池だった。

 山の中腹の窪地に湧き水が沸いてできた小さな池で、それほど深くもなく、恐らく水深1メートルも無いだろう。

 だがポケモンたちにとっては憩いの場所のようで、池の中でミズゴロウが泳ぎ、水辺ではケロマツが寝転がって鼻提灯を作り、周囲では数匹のマンキーたちが楽しそうに踊っている。

 池の周りをニドランたちが追いかけっこをしていたり、プリンが楽しそうに歌っているのをピッピやピィたちが囲んで合いの手を入れていたり、と何とも楽しそうな光景が広がっていた。

 

「ポケモン世界っぽいね~いいね~」

 

 記念に写真でも一枚撮りたいところだが、あいにく『カナデ』はスマホを所持していないらしく、今度絶対に買ってやるとカナデは内心で決めていた。*3

 

 マンキーの帰還にも気づいたようだったが、一緒に自分たちがいることにも気づき一瞬驚いた様子を見せるが、すぐに好奇の視線が向けられる。

 

 わらわらと集まって来るポケモンたち*4だがマンキーがばっと手を突き出してストップをかける。

 

「ブギギィ!」

 

 言いたいことがあるんだ! みたいなニュアンス。

 そんなマンキーの姿にポケモンたちも首を傾げ。

 

「ブキ! ブキブギィ! キキィィ!」

 

 オレは! アイツを倒したい! 勝ちたいんだ! ……多分そんな感じ。

 で、肝心のポケモンたちの反応だが……。

 

「うわあ……見事に」

 

 滅茶苦茶ビビってた。

 後で知ることになるがここにいるポケモンたちは(一部例外を除けば)その暴れ回ってるポケモンにナワバリを追われ、そのポケモンがナワバリから去っても怖くて山の下のほうに逃げて来たポケモンたちらしい。

 そんなポケモンたちをマンキーが迎え入れてた影響で、ここは一種の避難場所のような感じになっているようで、日に日に新しいポケモンたちが増えているらしかった。。

 

 でまあそのポケモンにトラウマ植え付けられたポケモンたちに、あいつ倒したい! なんて言ったもんだから冗談じゃねえ、触らぬ神になんとやら、でマンキーはポケモンたちから一瞬で距離を置かれていた。うーん、この心無さ……ポケダンかな?

 だがまあ当のマンキーはそんなことを一切気にした様子も無くすたすたと池のほうへと歩いて行き……寝こけているケロマツを蹴っ飛ばした。

 

「ブギ! ブギギ!」

 

 いつまで寝てやがるんだよ、てめー。みたいなニュアンスを感じる。

 

「ケーロ……ケロ?」

 

 いきなりなにさ、どしたの? 的な感じ。

 

「ブギギ! キキイ!」

「ケロケロ?」

 

 やるぞ! アイツ倒すぞ! え、マジでやんの? みたいな。

 その後も鳴き声での応酬がしばらく続き、やる気の収まらないマンキーに最終的にケロマツが仕方がないな~、みたいな表情で頷き、それからこちらへと視線を向けて。

 

「ケロ?」

「ブギキィ!」

 

 あいつは? オレたちの仲間だ! みたいな会話があったっぽい。

 

「ケーロ……ケロ!」

 

 そ、じゃあまあよろしく、みたいなクールさでケロマツが片手をあげた。

 

 

 

*1
余談だがマンキーの図鑑での体重は28kgである。

*2
そもそもマンキー系は種族的に怒りを抑えることが無い。

*3
因みにこの時点のカナデが気づいてないだけで自室に邪神フォンがある。記憶の中でそれが無いと知っていただけに自室が盲点になって気づいてない。

*4
ただしケロマツは未だに寝こけている。




そいやメーカーで作ったカナデくんちゃん


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