ポケットモンスタージェネシス   作:水代

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リアルポケモンバトルの仕様変更をお知らせします

 

・平成イシツブテ投げ合戦……?

 

 ポケモンの技とは一体何か。

 この世界におけるバトルがゲーム時代とは全く異なる可能性があることは『カナデ』の記憶を受け継いだ瞬間から理解していたが、その差異の一つとして技が挙げられるだろう。

 

 例えばゲーム時代、技とはポケモンが使える行動の一つでしか無かった。

 

 技とはポケモンごとに覚えれる物、覚えれない物こそあれど、覚えさせることができれば次の戦闘からだって使えて、仕様通りの効果を発揮した。

 

 けれど昨日のケロマツの例を見れば分かるようにポケモンの技とは『未完成』のままでも使うことはできる。

 だが結局それは『未完成』であり、例えば『みがわり』のような自分のHPを消費して発動する技なら余計な消費が起きたり、発動した技の耐久が低かったりするわけだ。

 

 とは言えそれならそれで完成させることができるように何度も練習すれば良いわけだが、そのためにもとっかかりというものが必要になる。

 そのとっかかりというのがイシツブテとのバトル……正確に言えばイシツブテの使う『いわ』タイプの技を見ることだ。

 

 幸いにして別にマンキーは山の他のポケモンたちとバトルすること自体は問題視していないらしいのでイシツブテを探してバトルをしかけた。

 

 ただ一つ心配だったのはイシツブテが『いわ』技を使えるかどうかだ。

 というのもゲームにおいてイシツブテが『いわ』技を覚えるのは意外と遅い。レベル10になっても『たいあたり』しか使えない、なんてことも普通にある。

 

 だが群れで暮らしていれば『いわ』技を使えるイシツブテがそれを教えることで他のイシツブテも使える可能性もある、と考えてバトルをしたわけだが、まあこれは意外となんとかなった。

 『いわおとし』を使える個体が何体かいたのも幸運だったし、『ころがる』を使える個体は結構な数いたので十分に『いわ』技を見ることができたはずだ。

 

 その上で『ストーンエッジ』とか『いわなだれ』とか覚えてくれたら嬉しいが、さすがにそんなの無理だろうことは分かっているのでケロマツとマンキーの2匹に覚えて欲しいのは『うちおとす』だ。

 ケロマツならレベルアップで覚える範囲の技だし、マンキーだってわざマシンがあれば覚えるので行けるはずだった。

 

 とは言え新しい技を覚えるというのはそう簡単な話でもなく、イシツブテとのバトルで『いわ』タイプの技の出し方のようなものは何となく分かったらしい2匹だったが、いざそれを自分の手で技にしようとすると難航した。

 

 両者ともに『いわ』タイプの力を発揮しようするところまでは行けるのだがそれが具体的に技という形にはならないらしい。

 

 ―――何が足りないのだろう?

 

 そう考えて一つ思ったことがあるので早速試してみることにした。

 

「そ~れ! 次行くぞ~!」

 

 掛け声を共にその辺にいたイシツブテくんを強制連行してその片手を握り、ぶん回す。

 そうしてマンキーやケロマツに向けて投げつけた。

 

「今だ! 撃ち落とせ!」

 

 そんな無茶振りな指示にマンキーが応え、その両手に『いわ』タイプのエネルギーを溜めて。

 

「キー!」

 

 殴りかかるようにして飛び上がって……失敗して顔面にイシツブテが激突した。

 

「次はケロマツだよ~」

 

 さらにまたその辺にいる別のイシツブテちゃんを捕まえてぶん回す。

 まあ滅茶苦茶抵抗してくるが所詮足も無い踏んばりも効かないポケモンなので、手首のあたりを握ると何もできずに投げられる。

 

「ケロォ?!」

 

 冗談だろぉ?! みたいな感じでマジビビりしてるケロマツだったが、やるしかないと覚悟を決めてその全身に『いわ』タイプのエネルギーを溜めて。

 

「今だ!」

「ケロォ!」

 

 飛来するイシツブテを『うちおとす』ように両の手を叩きつけ……純粋な重量に押し負けて吹き飛ばされる。

 

「次、マンキー! やるよー!」

 

 そう告げるとマンキーがはっとなって構えるのでまた別のイシツブテを捕まえて投げる。

 幸いにしてこの辺は群れがあるのかそこら中にイシツブテがいるので球の補充には苦労しない。

 ついでに言えば頑丈な体のお陰かぶん回して投げても別にイシツブテには大したダメージは無いらしいので遠慮せずに行ける。

 

「さあ、球はまだまだあるからどんどん行くよ~!」

 

 これが伝説のイシツブテ合戦かあ……多分違うけど。

 

 そんな頭の狂ったノックみたいなことをその日一日やり続けていた。

 

 

 

・この世界のポケモンバトル

 

 イシツブテとのバトルやイシツブテ合戦をしていて気づいたことがある。

 それはポケモンの非常に強力な物理耐性だ。

 イシツブテの体重は公式では20kgだったはずだ。そんな石の塊をぶん投げられて顔面キャッチしたマンキーは軽く体をぶるぶると振るだけで復帰していた。見ていた限りであの顔面キャッチによるダメージはゲーム風に言うならば『威力2』くらいだ。

 

 初めて出会った時、強烈なカウンターを食らわしてしまい焦ったが、あれだって恐らく『威力5』あるかないか*1

 

 だがその辺のポケモンの使う『たいあたり』や『ひっかく』攻撃ですら『威力40』ある。

 つまり投げられたイシツブテを顔面で受けるのと、イシツブテの『たいあたり』を体で受けるのに約20倍の威力の差があるわけだ。

 

 なんだそれは? という疑問を抱くのはある種当然の話だった。

 

 その上で仮定を推測するならば、これはポケモンという種自体に強力な物理耐性があると考えられる。

 

 例えば『カナデ』の記憶の中でも元の世界とほぼ変わらない文明の世界においても車などの交通事故というのは毎月のように起こりニュースとなったりもするわけだが、交通事故にあったポケモンのニュースというのはほぼ皆無に等しい。

 今ボクちんが考える仮説が正しいとするならば時速60kgを超える速度で動く1tを超える重量の鋼鉄の塊と激突してもポケモンは死亡するようなダメージを負わない、ということになる。

 

 勿論全てのポケモンがそんなにも非常識的な耐性を持つとは思わないが、それでもポケモンという存在自体にある程度強力な物理的衝撃に対する耐性があるのは間違いないと思っている。

 

 その上で、じゃあ何故『たいあたり』でダメージを受けるのだ、と言われるとそれは恐らく『たいあたり』がポケモンの技だからなのだろう。

 この世界において、ポケモンが技を発動する時にはアニポケのようにエフェクトが発動する。

 『たいあたり』ならば薄っすらと全身を包み込むようなオーラのようなものが確認できる。

 

 『たいあたり』自体はやっていることは全身でぶつかりにいく物理攻撃なのに何故こちらはダメージが大きいのか、と考えればつまりこのエフェクト……或いはオーラなのだろう。

 ポケモンには20種を超えるタイプがあり、それぞれのタイプごとに複数の技が存在する。

 つまり各タイプごとのエネルギーというものがポケモンの中には存在して、それを引き出して『技』という形に整えることでポケモンの技として成立するのではないか?

 

 まあこの辺りを考え始めると無限に時間が足りないのでこの辺りにしておくが、実際のところこの発見はかなり大きかった。

 

 ポケモンには物理耐性があることではない。

 

 ポケモンの技の考察でも無い。

 

 ―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実こそが重要なのだ。

 

 これは今まで自身の頭の中で考えていたポケモンバトルのやり方を一新するくらいには大きい事実だ。

 簡単に言えば今までカナデはポケモンバトルとはアニポケやゲームのような互いに技を撃ち合うものだと思っていた。

 これ自体は間違ってはいない、間違ってはいないが()()()()()()()()という事実に気づかされた。

 

 究極的に言えば()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 もっと言ってしまえばポケモンバトルをターン制RPGのバトルのように考えていたが、もっと自由なアクションゲーのようなバトルだった。

 そんな例えで表現できるくらいに、そう……根本的にジャンルを勘違いしていたのだ。

 

 ポケモンのアニメで『かわせー!』の一言で弱点技を回避してゲームでやったら絶対に負ける対面を制するような場面がいくつもあったわけだが、こんなことされたら読み合いなんて成立しないだろ、と思うようなことがリアルに起こるわけだ。

 

 つまりこの世界において読み合いとは格ゲーのそれであって、ゲームのような読み合いを前提にしている時点で致命的に間違っている。

 

 物理攻撃は微細ながらもダメージは入るし、相手の急所を突けば怯ませることもできる。

 

 逆に技はエフェクトやオーラによって何をしてくるのかが分かりやすく、回避に専念すればかわせなくもない。

 だからポケモンの技というのはつまり格ゲーにおける『大技』であり、決めるためには物理攻撃等の小技で相手の隙を作っていく必要ができる。

 

 だが格ゲーじゃないのだ。

 手元のコントローラーでキャラクターは自分の意思通りに動く世界ではない、実際に動くのはポケモンであり、トレーナーはポケモンへ事前に指導や育成をすることはできても、バトル中にできるのは大雑把な指示だけだ。

 

 アニメのように十秒くらい長々と喋っていても実際には一秒、みたいな意味の分からない現象が現実に起きない以上ポケモンへの一度の指示は単語一つ二つ、と考えるべきだろう。

 

 これらのことを全てひっくるめると『トレーナー』という存在に要求されるのはゲームとは大きく異なる可能性がある。

 

 少なくともバトル時におけるポケモンの相性とはゲームとは全く異なっていることは想像に難くなかった。

 

 

 

・準備完了

 

 それから丸二日かけて『うちおとす』の技を完璧に仕上げた。

 やはり実際に物を撃墜することで熟練度的なものが溜まりやすいのか、虚空に向かって技を素振りさせるより投げた物を技で撃ち落とすほうが成長が早いことが分かったのは大きな収穫だった。

 先に習得したのはケロマツだったが、技自体を使いこなしたのはマンキーだった。

 ケロマツはどうも『みずでっぽう』のような遠距離攻撃のほうが性に合っているらしく、物理技……それも接触技*2はいまいち合わないらしい。

 

 この時に実はケロマツの特性が『へんげんじざい』だったことが判明したりもしたが、現状だとそれほど意味があるわけでも無いので置いておくが、将来性の高さには本当に期待している。

 

 技ができたのでじゃあこれで早速戦いにイクゾー……とはならない。

 それからしたのはケロマツとマンキーの連携だ。馬鹿正直に正面から殴り込んでも速度と火力で負けてるのだから普通に返り討ちにあうだけなので戦略を練る必要があった。

 そのためにもまずは両者に連携してもらい、その間にストライクの様子を見に行くことにした。

 

 今日も今日とてストライクは山の上で暴れ、近くにいた群れは逃げ出していたが中には逃げずに立ち向かうポケモンたちもいた。

 きっと山のカーストにおける上のほうの強者はプライドのようなものがあるし、逃げるとカーストが下がってしまうのかもしれない。

 なんと中にはゴローンもいたので、これは期待できるのでは? と思ったのだがなんとあのストライク『くさわけ』が使えるらしい。タイプ相性的に4倍弱点。いかにゴローンの『ぼうぎょ』が高くてもこれはとんでもない痛手だ。

 しかも『くさわけ』で自分の『すばやさ』を上げ、『でんこうせっか』で攪乱することで鈍重なゴローンでは攻撃を当てることすらできなくなっている。

 完全にヒットアンドウェイのカモにされ、ゲームならこれ勝てるのでは? という組み合わせだったが普通にストライクが圧勝していた。

 

 ―――やっぱりあの速度が何よりも厄介だな。

 

 幸いにして手順は組み上がった。元の世界にいた頃からこういうのは割と得意だったのだがこの世界にも持ち込めて何よりだ。

 

 ところで今日確認したところ、あのストライクまた強くなっていた。

 ゴローンも倒していたし経験値たっぷりだったのだろう。

 推定でレベルは20近い。

 

 マンキーとケロマツもイシツブテ相手のバトルで12くらいまでは上がっている。

 速いようにも感じるが実際のところ丸一日イシツブテ相手にバトルしていたのだからそのくらいにはなる。

 二日目以降も技を仕上げるためにも実戦で特訓したし、まあ戦った回数を数えればそのくらいにはなるだろう。

 

 因みにニンフィアまで育成している余裕が無いのでそちらはまだレベル5くらいだ。

 

 この件が終わったらちゃんと育成したいので待っていて欲しい。

 

 とまあニンフィアのことは置いておくとしてもの三日で成果は十分に上がった。

 勝つための道筋も大よそつけることはできたし、準備完了。

 

「あとは勝つだけだね」

 

 そう告げたボクちんに、2匹が頷いた。

 

 

 

*1
さり気に20kgの石の塊を顔面で受けるより2.5倍の威力があることが判明した黄金の拳。

*2
相手を直接攻撃するタイプの技。




ストライクLv18 VS ゴローンLv26
実機なら一発耐えていわおとし、かうちおとす、で行けそうな感じあるけど、リアルポケモンバトルの仕様だとこうなる。
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