キュウリと陰謀   作:布団は吹っ飛ぶのか

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次回からほのぼの回。
書いたことないけど…。


大戦の余波

「吸血鬼から和平の提案が届きました。私達は受けたいと考えています。」

その一言に鞍馬天狗は大きく驚いた。

これが、飯綱丸などであれば、もう少し落ち着いた判断が出来たのかもしれない。

しかし、彼は何度も述べたように軍事部門の担当であったのだ。

故に思考は、あまりまとまっているとは言い難い状況になる。

 

鞍馬天狗には政治のことは、分からぬ、しかし謀略には人一倍敏感であった。

それに彼は賢明であったのだ。

そんな彼が一番最初にしたことは言わずもがな、

 

「…詳しい説明を求む。」

 

情報請求と思考する時間の確保だった。

 

「承知しましたわ。まず、先ほど吸血鬼側より和平の申し入れがなされました。」

この間、鞍馬天狗は考え続けている。

出来れば紅魔館を落城させて権威をより確かなものにしたいからだ。

 

「その際、かなり具体的な和平案が提示されまして、これは、天狗としても恐らく受けれるものでしょうし、何よりこれ以上血を流すことは望んでいなかったので、受けようと考えました。」

 

強かだ。そう思った。まず、前半に関してはより具体的に聞かないと分からないが、後半に関しては、絶ッッッッッッッッッ対そんなこと考えているはずが無い。

相手はあの八雲紫だ。鞍馬天狗が生まれる前から活動していて、今までに数多の陰謀を行ってきた者だ。そんなことを考えているはずが無い。

しかし、理由としては現在の流行に乗っている。

そして、そんなことを刹那の内に考えた後、次に考えるべき事は、どのように返答を行うべきかだ。

こういう時は場合分けをして考えよう。(筆者は青チャート信者です。)

まず、ここで八雲に同意せず、兵力を紅魔館に進めた場合。

先ほど話した内容を鑑みるに、吸血鬼の一部と八雲は結託している。

結託していなければ、具体的な和平案など出てくる筈がない。

そうすれば最悪の場合、単独和平を結び、天狗に対抗してくる可能性がある。

逆にメリットは、天狗の成果を強調出来、威信を大きく高められる点だろうか。

 

そう考えているとき、一つの可能性が脳をよぎった。最悪の可能性を考えさせるために、あえて交渉云々のことを話したのではないかと。

彼は軍事部門の者だったので、驚いた。それはもう驚いて槍に込めていた揚力が2/3になるくらい。

しかし、彼は天狗であった。すぐに思考を切り替えてもう一つの可能性を考える。

次に、八雲に同意し講和会議に出席するという案。

この案のメリットとしては、あまりない。

八雲に譲歩したいう事実が出来てしまう。

それに、講和会議では、恐らく吸血鬼と八雲が中心となって話が進むだろう。

その時に天狗が付け入るスキは恐らくかなり少なくなる。

河童と協力すれば相手に譲歩させることは可能だろうが、河童と天狗の利害は必ずしも一致しない。

 

前者はハイリスク・ハイリターン、後者は損切りといった内容だろうか。

鞍馬天狗は、かけ事が嫌いであったし天狗のことを思えば、天狗を危険に晒すようなことは出来なかった。

何より、八雲のことだ。先ほどまで戦っていた相手と同盟を組む、くらいのことは息を吸うように出来ると、

鞍馬天狗も八雲のことを深く知るわけではなかったが確信できた。

 

しかし、天狗としては譲れないラインがあることも確かだ。

特に、今回の吸血鬼異変は天狗、引いては妖怪の山が中心となって解決したという事実だけは、譲れない。

何故なら、妖怪の山は権力はあるが権威が不足しているという状態にあると言ってよかったからだ。

 

その為、賢明な天狗としてするべきことはただ一つであった。

 

「わかりました、私たちも自ら血を流そうとするほど老いたわけではない。講和を受けましょう。」

八雲に何か言われる前に言葉を紡ぐ。

 

「しかし、確認しておきたい事がありまして、この戦は天狗、引いては妖怪の山が中心となり

解決した物と認識していますが、よろしいですかな?」

これは譲れない。そう無言の内に語る。

 

「え!そうなのですか!?」

少女は、信じられないという目をしながら語る。

 

「私はてっきり、河童が最も大きい貢献をしたものかと。」

 

その時、鞍馬天狗は一つ理解したことがあった。八雲紫と河童の一部は通じていると。

河童に外交をしようとする人材は極めて限られている。とすると、その一部とやらは、3日あればわかりそうでもあった。

 

しかし、八雲の言葉はかなり的を射ていたことも事実である。

あの、良く分からない名前の吸血鬼を倒したのも、河童であるし、最も派手な攻撃を行ったのも

河童であった。

確かに他の者から見たらそう映るのかもしれないが…最も大きな損害を出したのは我等天狗なのだ。

もっとも大きい配当を受け取る権利くらいはある筈なのに。

 

しかし、まずい。このままだと妖怪の山自体の権威を上げることにより、妖怪の山の勝利となるかもしれない。

しかし、それは天狗の勝利ではなく河童の勝利である。

そのことが許せなかった。

それに、河童の技術力の向上はここ500年で目を見張るものがある。

これ以上力を与えれば、我々の脅威となる可能性がある。

そのような危険を前に、「天狗」として一言言った。

 

「失礼、私が間違っておりました。」

 

一呼吸置き、

 

「此度の勝利は幻想郷の全員の協力のもと、成しえたモノでした。」

 

鞍馬天狗は八雲紫の目が喜色と軽蔑の色に染まったことを決して見逃さなかった。

 

「賢明な選択をしていただきありがとうございます。では、講和会議の会場に移りたいと思います。」

 

「吸血鬼側より、河城にとり様、鞍馬丸僧正様、そしてその従者を歓迎するとのことです。」

 

その一言は、鞍馬天狗に、吸血鬼と河童と八雲の関係性についてある一定の確信を抱かせるには十分だった。

 

 

そして場は会議へと移る。

 

「此度の戦争は、従弟のノスフェラトゥ·スカーレットが独断で始めたことであり、私たちは幻想郷との戦争は望んでいなかった。」

少女が演説する。

 

「しかし、アイツが居なくなった今、戦争を続ける道理はないということで講和会議を提案させていただいた。」

 

「案については手元に資料を用意した、説明しよう。」

 

全員が紙を必死の形相で眺め始める。

 

「まず、ノスフェラトゥ·スカーレットに組した物は公開処刑とする。」

「次に、吸血鬼は幻想郷のルールを守ることを約束しよう。」

「最後に吸血鬼は、幻想郷の寛大な処置に期待している。」

 

まとめると、非常に緩い内容で講和を締めくくろうとするものだった。

吸血鬼が負けたことは暗に認められているが、対象は幻想郷である。

 

「一つ質問をよろしいだろうか?」

鞍馬天狗が話す。

 

「どうぞ。」

 

「私では決めかねる問題でもある。後日、講和会議を開きなおすというのはどうだろうか?」

間違いなく鞍馬天狗は賢明だった。

その為、外交武門の飯綱丸にバトンタッチをしようとした。

しかし、その声は耳からかすかに聞こえてきた声によって否定を余儀なくされようとしていた。

「講和会議を間違って続けてしまうかもしれませんわね。」

 

「いや、後日改めてというのもよろしくない。せっかく各勢力の代表が集まっているのだから。」

そういうことしかできなかった。

この日以上に、外交武門担当の大天狗を呼ばず、河童の裏切りを気に掛けず、切り札である天魔様すらも切らなかった妖怪の山という組織に失望した日もなかった。

 

「私としては、その内容であれば全面的に同意しましょう。」

八雲が同意を示した。

と同時に河童に目配せをする。しかし

「私も同意するね。」

望みは絶たれた。鞍馬天狗は、目の前が真っ暗になった。

 

その為、鞍馬天狗は、渋々条件を認めるしかなかった。

 

「……同意しましょう。」

 

「ではこれで会議を終わりにしましょう。内容が履行されているかどうかを確認する委員会を後日開きます。日程は…」

 

結局、鞍馬天狗は疲れた表情で山に変えることになった。

 

「契約の履行は完了した。そう認識して大丈夫だよな?」

妖怪の山の勢力が退出した後に残された二人は話し始める。

 

「ええ。申し分ありませんわ。」

一息置いて、

「これで幻想郷は3つの積極的な勢力による勢力均衡が生じます。」

 

「であれば、私が要求する残り一つの契約事項もきちんと理解してくれるのだよな?」

 

「ええ、勿論。悪魔との契約です。しっかりと履行します。」

 

堅苦しい話は終わりだと悪魔は雰囲気で告げる。

 

「にしても、とんでもない提案をしてきたものだ。私にも利益があったから良かったが。」

 

「まあ、貴方は反乱分子を殲滅できた。私は幻想郷をより安定させることができた。」

 

「そして、貴方の協力者の河童は妖怪の山での勢力を拡大できたと。」

 

「ふふ。」

 

「何でしょうか?」

 

「いや、幻想郷の勢力図はヨーロッパに似ているという話だ。」

 

「といいますと?」

 

「私達がフランス、妖怪の山がドイツ連邦、天狗がオーストリア公国、河童がプロイセンのようだというただの与太話さ。」

 

「なるほど…であればロシア帝国も必要ですかね。」

 

「また、外部から勢力を入れるのか?」

 

「幻想郷は全てを受け入れますから。」

 

「なるほど…」

 

「まあ、ともかく私としては例の契約の履行を後でやってくれれば良い。」

 

「わかりました。たしか狂気と正気の境界線をいじり、限りなく正気に近づけるというものですよね?」

 

 

「合っている。日時は後で通達する。」

 

「分かりました。では良い日を。」

 

そう言って八雲紫は異空間に消えていった。

 

「もうすぐよフラン。」

 

 

吸血鬼大戦は幻想郷を大きく変えた。

そして、その講和会議において幻想郷の勢力均衡は新しいものへ向かう。

 

「十分ね。」

独り言をしたい気分になったようだ。

 

「幻想郷は平和でなくてはならない。」

 

「平和を達成するには覇権国が生まれるか勢力均衡が成されるかの2つしかない。」

 

「妖怪の山という事実上の覇権国を大国まで貶めることができた。」

 

少女は笑う。

 

「後は起こる戦争を戦争とは言えないレベルのものにしてやれば良い。」

 

幻想郷が完成するまで後僅か。

 

「にとりー」

 

「なんだい?」

 

「バルカン砲改造していい?」

 

「いいけどもう多分使わないと思うよ。」

全く八雲も良い仕事をしてくれたものだ。

 

「兵器はロマン。」

「わかる。」




休日だったからちょっと書きました。
次回ほのぼのさせます。
本当です信じて。
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