嵐が丘買おうかな...という葛藤を恐らく全部の章でやるので本棚のスペースが順調に削れて行く予定です。ただでさえレンガブロックで一杯なのに...
“皆、お疲れさま“
先生は帰ってきた生徒全員に労いの言葉を掛け回っている。
…セリカは、学校に着いたと同時に床に倒れてしまったが。
誘拐された上にそこから連続で戦闘をしたのだ、疲労も溜まっているのだろう。
「何はともあれ、先生のお陰で追跡出来ましたね!」
“無事に見つかって良かったよ。”
それもまたそうだろう。あのまま見つからずネズミに荒らされるような者も多く見てきたし、手をつけられずに見つかったのは幸運としか言いようが無い。
先生の指示が無ければ見つからなかったかも知れないし、見つけた後ももう少し手こずっていたかも知れない。
何より一番疲労が溜まっているのは彼女自身だろう。
あまり寝れていないようで、隈が目立っている。その上体もふらついている。
生身の人間故か、疲労に対する耐久度も低いようだ。
………それにしても低過ぎる気はするが。
「先生も少々休んだらどうだろうか。」
”全然大じょぅ………ぶ………”
そう言いながら、案の定ソファに身を投げ出した。限界が来たようだ。
「先生もお疲れさまー。」
「毛布取って来ますね☆」
そう言いながら別室に毛布を取りに行ったノノミを背に、アヤネは持ち帰って来た戦車の部品と睨めっこをしている。
あの戦車の分析をしているようだが…
「何か分かったか?」
「えぇ…皆が集まったら話しますね。」
そうして倒れている二人を除いた全員が集まったとき、アヤネは満を持して口を開いた。
「戦闘中に回収した戦車の部品を回収したところ、キヴォトスでは違法機種だとわかりました。」
「裏に何かいる...ということか?」
「もう少し詳しく調べる必要はありますが...恐らくそうではないかと。」
チンピラたちを纏め上げる組織...黒雲会や、下手すると指レベルの組織が介在してくるかもしれない。
それに違法機種を取り扱えるなら、それなりに資金力も大きいと思われる。
何故そこまでしてこの学校を狙っているのかまでは分からないが...
「流通ルートを探し出せば、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せますね!」
「それじゃあ先生たちが起きたら、じっくり調べてみよっかー。」
高層オフィスビル最上階
全身を機械で包んだ男が、飲めもしないワインを片手に、優雅にアビドスの砂交じりの街を眺めている。
手元には、郊外で起きた戦闘の記録。資料にはなかった謎の男が、チンピラ共を蹂躙し戦車を叩き斬る、何度見ても目を疑うその映像に思わず苦笑してしまう。
「...格下のチンピラ達ではこれが限界か。主力の戦車も送り出したのに、このザマとは...。」
「...それにしても、あの男といい、『都市』には化け物しかいないのか...。」
再び映像を見返し、男は起こるはずもない頭痛に頭を抱える。
『都市』というイレギュラー。ある日突然現れた二人の男を、彼はまだ受け入れられずにいた。
結局、黒服と現れたうちの一人に言いくるめられて、渋々受け入れることになってしまったが。
だが、今は彼に味方している。相手に都市の人間がいるのなら、こちらだって同じだ。
「『都市』には『都市』、生徒には生徒を、か...。」
考えたくないことを一回押しのけて、目下の問題に目を向ける。
こういう問題は、専門家に依頼するのがマストだ。偶然にも、その専門家はこのアビドスにもいる。
(プルルルル...プルルルル...)
少しのコール音の後、直ぐに目的の組織と繋がる。
『はい、どんなことでも解決します。便利屋68です。』
「仕事を頼みたい、便利屋。」
誰もが寝静まった時間に、数人のヘルメット団たちの悲鳴が木霊する。
初めは多くあった仲間や物資も、度重なる戦闘で摩耗し擦り減っていった。
そして、それも彼女らにとって最悪の形で終止符が打たれることとなる。
「はあ...はあ...ここまでくれば...」
そうして腰を落ち着けようとした瞬間に、銃弾の雨が降り注ぎ、死をすら幻視する爆発に身を砕かれる。
断末魔を上げることすら許されず、見る見るうちにヘルメット団の山がアジトに積み重なっていった。
「こっちは終わったよー。」
「こっちも制圧完了したよ。」
爆風の中から、二人の少女の声がする。
もはや残っているヘルメット団も一人。そして彼女もまた、あと数秒であの山の一部になる運命に立たされてた。
こうなればと、差し違える覚悟で手榴弾を取り出したが...
背後から忍び寄るもう一つの影には、終ぞ気づけなかった。
ピンを抜く前に、鉛の弾丸がヘルメット越しに脳天を射抜く。
限界だった彼女にとって、その一撃は致命的なものだった。
「ぐっ...何者だ、貴様ら...」
「...ふふふ。」
微かに残った意識を以て、何とか言葉を振り絞る。
それに呼応するかのように、不敵な笑い声と共に足音が近づいてくる。
「ま、まさか貴様ら...アビドスの...」
その影の正体に気づき、声を上げるが...今更分かったところで、どうしようもないことではあった。
次に頭を巡るのは、何故という疑問だった。
「何故、こんなことを...。」
「そうね。...あなた達を、労働から解放してあげるわ。」
要するにクビってこと、女はそう付け加えて銃を再び頭に突きつける。
「アビドスは現時刻をもって、私たちが引き受けるわ。」
「ふ、ふざけた真似を...!一体なぜ...」
虚勢でそう怒鳴ろうとしたが...続きを言わせまいとするかのように、無慈悲な銃弾が再び脳天を貫いた。
地面に倒れこんだ者を尻目に、女はマントを翻して答えた。
「私たちは、便利屋
そう言い残し、4人の少女たちは、夜の街に消えていった。
保健室の扉を開けると、外をぼうっと眺める一人の少女...セリカがいた。
所々怪我は見えるが...軽傷で済んでいるようだ。
「はぁ...。」
溜息をつく様子を見て、話しかけようか思いあぐねていると...丁度、向こうがこちらに気づいてくれた。
「あ、れ...先生?どうしたの?」
"お見舞いに来たよ。"
そういいながら、手に持っていたリンゴを見えるように掲げる。
私が選んだわけじゃないけど、大切な生徒が選んでくれたものだ。きっと美味しいに決まっている。
「...私なら大丈夫よ。いつまでもこうしちゃいられないし。」
そう言いながら立とうとするセリカだったが、まだ傷が痛むのか直ぐに腰を下ろした。
"...本当に大丈夫?"
「だ、大丈夫よ!」
"ならいいけど..."
少しの間、沈黙が辺りを漂う。
流石にずっと立っているのも座りが悪く、セリカの近くにある椅子に腰を掛けた。
「な、何よ!?」
"リンゴでも剝いてあげようかなって...。"
「要らないから!!」
彼女がそう叫んだ直後、ぎゅるるという音が響き渡る。
"...剥いてあげるね。"
「ち、違っ...そんな顔するなぁ!!!」
"叫んだら余計にお腹空いちゃうよ?"
「うっ...」
もう手遅れな気もするが...そんな彼女の様子が、少し微笑ましかった。
きっと顔に出てしまっているんだろうな、そう思いながら不慣れな手つきでリンゴを剥いていく。
"...はい、食べる?"
「...ありがと。」
そう言いながら一切れを口に運び、美味しいという声を聴いて自分も一つ食べてみる。
"うん、美味しいね。"
その後、暫くの間心地よい沈黙が流れながら保健室を出ようとしたとき。
「あ、あの!!」
"どうしたの?"
「...え、えっとね...そういえば、先生にちゃんとお礼言ってなかったなって...思って...その...。
あ、ありがとう。色々と...。」
直後に照れ隠しするかのようにつっけんどんな態度をとってきたが、それで誤魔化しきれるようなものでもなかった。
"セリカちゃん...!!"
「ちょ、ち、近づくなぁ!!さっさと出てけー!!」
つい抱きしめてしまいそうになり、セリカに押し出される形で保健室を後にした。
でも、その時のセリカの顔はどこか嬉しそうで...私自身も、なんだか嬉しくなった。
キムサッガッの出番が少なくてすまない...(セクシーフォックス)
この世界の主人公は先生なので、先生なので!!!
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