笠から覗く青空に   作:ひいろの鳥

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6章ティザーが公開されたので初投稿です。

父親が実家から集英社刊行の嵐が丘を引っ張り出してきたので来週木曜までに頑張って読みたいと思います(白目)


とてもゆういぎなかいぎ

「戻ったわ。」

 

"おはよ~。"

 

12時を少し過ぎたあたりで二人が部屋に戻ってきた。

アヤネはそれを待っていたようで、二人が席に着くと早速口を開いた。

 

「それでは、アビドス対策委員会定例会議を始めていきたいと思います。」

 

定例会議。この学校が抱えている借金をどうやって返済するかを話し合う場だ。

直後のいつもより真面目な議論が出来そうだというアヤネの呟きから察するに、今までは余り意味のないものだったようだが。

 

「は~い☆」

 

「ん、勿論。」

 

「何よ、いつもは真面目じゃないみたい...。」

 

「うへ、よろしくねー先生とキムサッガッさん。」

 

"よろしくね。"

 

「...私も意見を出した方がいいのか?」

 

"もちろん!"

 

この世界について詳しい訳じゃないし、何か言えるような気もしないが...先生にせがまれてしまい渋々だが付き合うことにした。

 

「早速議題に入ります。本日は、私達にとって非常に重要な問題...『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な議論をします。ご意見のある方は、挙手をしてください!」

 

その言葉の直後に早速手を挙げたのは、セリカだった。

 

「はい!はい!」

 

「はい、1年生の黒見さん、どうぞ。」

 

「...あのさ、まず名字で呼ぶのやめない?ぎこちないんだけど。」

 

「でも、せっかく会議なので...。」

 

「いいじゃ~んお堅い感じで。珍しく、先生と護衛もいるんだしさ。」

 

「珍しくというよりも、初めて。」

 

「なんだか委員会っぽくていいと思いま~す☆」

 

「...ま、先輩たちがそう言うならいいけど...。とにかく!会計担当としては、わが校の財政状況は破綻寸前としか言いようがないわ!」

 

借金...それも9億も抱えているのだからそれはそうだろう。

 

「毎月の利息分だけで788万円!私たちも頑張って稼いではいるけど、正直利息の返済も追いつかない。」

 

毎月約800万円という額を聞いて、先生がまた椅子から転げ落ちそうになった。裏路地の人間をいくら襲ったところでそんな額はそう捻出出来ないし、むしろ毎月それだけ返せているだけ凄いのだろうが、それでもどうしようもないらしい。

 

「これまで通りじゃ埒があかないってこと!何かこう、一発でっかく狙わないと!」

 

「でっかくって…例えば?」

 

アヤネがそう聞くと、セリカは自慢気に一枚のチラシを取り出して嬉々として話し始めた。

 

「これこれ!街で配ってたチラシよ!」

 

「…ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金、ねえ。」

 

「これでガッポガッポ稼ごうよ!!」

 

その場にいる全員が押し黙ってしまった。

セリカだけはそれに気づかず、嬉々として説明を続けているが…。

 

“ねえ、キムさん。“

 

「どうした。」

 

先生の小声の呼びかけに同じく小声で返答し、セリカに気づかれないように意思疎通を取る。

 

”キムさんの世界にも、ああ言うのってあった?”

 

「あった…のだろうな。裏路地でそれらしき集まりは何度か見た事もある。」

 

結局、そう言ったものは文字通り斬り捨てて来たのだが。

そうじゃなくても引っ掛かった人間に明日が訪れるとは到底思えない。あからさまな釣り針に食いついた時点で命運は決まっているものなのだ。

 

「…どうしたのみんな、黙っちゃって…」

 

「却下かなー。」

 

「えーっ!どうして!?」

 

「セリカちゃん、それマルチ商法だから……。」

 

「儲かるわけ無い。」

 

“典型的だね…。”

 

「へっ!?キ、キムサッガッさん!これ嘘じゃ無いよね?!私2個も買っちゃったんだけど!!」

 

「…一つ貸してみろ。」

 

「え、あ、はい…。」

 

そうして手渡されたブレスレットを宙高く放り投げて…そのまま両断した。

殊の外柔らかく、その勢いのまま刀身が床に刺さりかけたが何とか抑え、ブレスレットだったものをじっくり見る。

運気を閉じ込めるといえばJ社の特異点が有名だが、そのような技術が使われているようには見えない。気づいていないだけかもしれないが、路地で売っているものなら高が知れているだろう。つまり…

 

「偽物だな。」

 

「そんなぁ……。」

 

「そもそも方法を他人に教える人間はいない、メリットが無いからな。明日の日の光が拝めるだけマシだと思えばいい。」

 

「セリカちゃんも世間知らずだね〜。気をつけないと、悪い大人に騙されて取り返しのつかないことになっちゃうよー?」

 

「うぅ……これを買うためにお昼抜いてたのに……」

 

「大丈夫ですよセリカちゃん。お昼、一緒に食べましょう?私がご馳走してあげるから。」

 

「ぐすっ…ノノミせんぱぁい……。」

 

ノノミに泣きつくセリカを横目に、会議は続いていく。

 

「えっと……他に意見のある方はいませんでしょうか?」

 

「はい!はい!」

 

次に勢い良く手を挙げたのはホシノだった。

アヤネは不安そうな顔でホシノを指し示した。

 

「えっと...3年生の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが...。」

 

「うむうむ、えっへん!我が校の一番の問題は、全校生徒がこの場にる数人だけってことなんだよね~。」

 

生徒の数が学校の力であるというのはどこかで聞いたことがある。5人という人数は、この学校や地区の広さから考えても少ないといえるだろう。

 

「生徒の数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいに生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金だけでもかなりの金額になるはずだよ~。」

 

「そ、そうなんですか...?」

 

「そうそう、だからまずは生徒の数を増やさないとだねー。」

 

「確かに理にはかなっているが...当てはあるのか?人攫いでもするつもりなのか?」

 

「お、鋭いねー。他校のスクールバスを拉致れば良いんだよー。」

 

「はい!?」

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入届にハンコを押さないと降りれないようにするのー。うへ~、これで生徒数が増えること間違いなしだー。」

 

「だが些か非効率的な気もするな。ジャックまでの手間は勿論だが、契約後に違約されないように契約事務所を使う必要も出るだろうし、他にも退路を断つ必要はあるだろう。その労力と費用に見合った成果は出せるのか?」

 

「うーん、それもそっかー。」

 

「いやいや、そうじゃなくて!そんなことしたら各学校の風紀委員が黙ってませんよ!?」

 

"却下かなー...。"

 

「うへ、やっぱりダメかー。」

 

ホシノの提案も二人に却下されたところで、次はシロコが手を挙げた。不安が前面に押し出た表情で、アヤネが続きを促すと、無表情ながらどこか高揚した声でシロコが口を開いた。

 

「ん、銀行を襲うの。」

 

余りにも自然に出たその言葉から、この世界では強盗が当たり前なのかと一瞬錯覚してしまった。

直後のアヤネの反応から、流石の異世界といえどもそれは違うと分かったが。

当のシロコは、驚くアヤネを他所に、強盗計画を矢継ぎ早に話している。

 

「さっきから熱心に読んでたのって、計画書ですか!?」

 

「5分で1億は稼げる。覆面も準備しておいた。」

 

そう言いながら裏から引っ張り出してきた段ボール箱の中には、色とりどりの覆面が用意されていた。

それぞれ1から5の番号が振ってあり、形状が違うことから誰がどれを着けるかはあらかじめ決まっているようだった。

 

「護衛のだけは無いけど...ずっとそれ()で顔隠れてるし大丈夫かな。」

 

「いや、これはそういう用途のものではないのだが...。」

 

「うわー、これシロコちゃんの手作りー?」

 

「わあ、レスラーみたいです!」

 

2年生以上の彼女たちは楽しそうにはしゃいでいるが、対称に1年生の二人は少し引いている。

 

「ダメよ!却下よ却下ー!!」

 

「そっ、そうですよ!犯罪はいけません!!」

 

二人からそう拒絶され、シロコは不満げな顔で覆面を静かに脱いだ。

少し咳払いしたのち、再度アヤネが話を戻す。今までもこうやって回してきたのだろう。

 

「皆さん、もうちょっとまともな提案を...。」

 

「はい!次は私が!」

 

最後に満面の笑みで手を挙げたのはノノミだ。

犯罪でも詐欺でもない、クリーンかつ確実な方法があると豪語している。

アヤネはそれを聞いて一瞬期待したが、すぐに突き落とされる結果となった。

 

「アイドルです!スクールアイドル!!」

 

「ア、アイドル...!?」

 

「そうです!アニメで観たんですけど、学校を復興するにはやっぱりアイドルです!私たち皆がアイドルとしてデビューすれば...」

 

「却下ー。」

 

「あら、これも駄目ですか...。」

 

「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに。」

 

「こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩はダメでしょー。」

 

「...偶像崇拝(アイドル)ならもう見たくはないな。」

 

「えっと、皆さん、そろそろ結論を...。」

 

「やっぱりバスジャックじゃなーい?」

 

「ん、銀行強盗すべき。」

 

「アイドルプロデューサーになってみませんか~☆」

 

アヤネを無視して好き勝手言い散らす先輩たちが、もはや彼女には耐えられなかったようだ。

肩を震わせながら、口から言葉が漏れ出てくる。

 

「...です...」

 

「うん?」

 

 

 

「全部却下ですよぉ!!!!」

 

その日、ちゃぶ台が一つ、ものの見事にひっくり返った。




キムサッガッの影が薄い気がしますが日常パートは仕方ないんです...ユルシテ...

それとアンケートに関してですが、ギリギリ無くてもいいが多かったので補足説明は無しとさせていただきます。投票ありがとね。

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