来週には6章が来るんだ...今最終編を始めてみろ、(情緒が)トぶぞ。
そんなこんなで最終編を始めるのはもう少し先になりそうです。つまりまだ設定がGABAり散らかす余地があるということです、ご許して
「いやぁ、悪かったってばアヤネちゃん。ラーメン奢ってあげるからさ、ね?」
「別に怒ってません...。」
あのちゃぶ台返しの後、アヤネの機嫌を直すためにまたもや紫関ラーメンで少し遅れた昼食を摂ることになった。
セリカが店の奥で困惑した表情を浮かべているのが見えたが、気にする者は誰一人としておらず、当のアヤネは怒りながらもシロコから叉焼を貰っている。それとこれとは別、ということなのだろう。
"キムさんも食べなよ~。"
「いや、いい。特段腹が空いているわけでもないしな。」
また奢らせてしまうことを申し訳なく思ったのもあるが、腹の虫が鳴いていないのもまた事実である。
隣で先生が押し付けてきている叉焼を避けながら、和気あいあいと食事を楽しむアヤネ達を眺めていると、店の戸が音を立てて開いた。
入ってきたのは、紫髪の少し顔色の悪い少女だった。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「...こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらでしょうか...?」
少女は初めて口を開いたかと思えば、対応していたセリカにそう聞いた。
その事に少し困惑の色を見せながらも、セリカは笑顔で聞かれたことに答えた。それを受けて、少女の方は感謝を示しながら店を出て行った。
...かと思えば、彼女は再び入店してきた。...追加で三人を連れてきて。
「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ほら、何事にも解決策はあるのよ。全て想定内だわ。」
「な、何でも知ってるんですね...流石社長...。」
「はぁ...。」
「四名様ですか?すぐ席にご案内しますね。」
「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫。」
「一杯だけ...?でも、どうせならごゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いてる席も多いですし。」
「おー、親切な店員さんだぁ!それじゃあ、お言葉に甘えて。」
その後付け加えられた、箸を四膳頼む言葉に驚愕しながら店の奥に行くセリカを横目に、四人組は案内された席に向かっていった。
アヤネを茶化しながら食事を楽しむ生徒たちをよそに、キムサッガッの視線は入店してきた四人のほうに向けられていた。
目の前の茶番に飽きていたというのもあるが、一番の理由はリーダー格の少女が纏っている雰囲気にあった。
堂々としている割に威厳は感じられないが、実力は確かにある。ホシノ程かは定かではないが、戦うことになれば少々面倒になるかもしれない。
幸い警戒心のようなものは微塵もないようなので、奇襲を仕掛けようと思えば仕掛けられるが...今この場ですべきことではないし、それは護衛の範疇から逸脱している。
...何より、ラーメンを待ち望むあの顔から光を奪うのは些か躊躇われた。
そうして動向に注目していると、自然と会話の内容も朧げに聞こえてくる。
眼前の喧騒のせいで聞こえづらいが、強化施術の作用で少し良く聞こえるようになった耳が、その内容を拾い集める。
「今日の襲撃任務にほぼ全財産使っちゃったし...」
「ふふふ...。」
「全財産をはたいてまで対策しないといけないほど、アビドスは危険な連中なの?」
「多分アルちゃんよく分かってないと思うよ?」
「...あらゆるリソースを総動員して臨む、それが便利屋68のモットーなのよ!」
会話の内容から、今日のどこかで彼女らがアビドスに襲撃してくるということは明白だった。
更に、多くの人員も加わるという。ヘルメット団のような烏合であればいいが、大金を使っている以上真っ当な傭兵を雇っているのだろう。無論ヘルメット団よりも強いに違いない。
それに一層警戒心を上げて、今からでも奇襲しようかと懐に手を忍ばせていると、横から脇腹を突かれた。
「...キムサッガッさん、あの子達が気になるのー?」
「あぁ。...気を付けておけ、彼奴等、今日中に襲撃してくるようだ。」
小声でホシノに聞かれ、同じく小声でそう返す。
その言葉に、ホシノも反射的に銃を手に取りかけた。
キムサッガッはそれを無言で制し、自分もまた手に持った暗器を静かに懐に戻した。
「やめておけ。ここで事を起こしたほうが面倒だ。」
便利屋...その言葉が真実なら、依頼した人間が必ずいる。
便利屋を今ここで一つ潰したところで、また同じように襲撃依頼が下るだけだろう。
「ホシノ、あの狙撃銃の奴はどう見える?」
「...強いねー。おじさん、サシだと負けちゃうかも。」
彼の見立ては間違っていなかったということだろう。…それにしては、本人の威厳は全く見えてこないが。
或いは、周囲の者達も同等に強いのかもしれない。それを見抜けなかった己の眼を静かに恨んだ。
その後も話を盗み聞こうと耳を傾けていたが、とうとうラーメンが彼女らの眼前に運ばれ、会話は一時中断となってしまった。
「お待たせしました!お熱いのでお気をつけて!」
笑顔でそう言いながらセリカが卓の上に置いたものは、便利屋たちが注文したものより数段サイズの大きいものだった。
それを前に驚愕する四人と、あくまで注文通りだと言い切る店主。都市なら並サイズであのラーメンと同じ値段を取るなんでざらにあったので、その光景は珍妙なものに映った。
各々が文字通り山のように積まれた面を皿に取って啜り、感嘆の息を漏らしている。盗み聞くまでもなく、表情でそれは明らかだった。
「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?」
気づけば、ノノミが笑顔で便利屋たちの元に近づいていた。自分のものではない筈だが、まるで自分が作ったかのように自慢気な顔をしている。
それに乗じて、他の面子も続々と集まっていく。止めようかと思ったが、不思議と警戒心が働かずにただ暗器を手元に忍ばせるだけに終わり、結局席から一人様子を窺うことになった。
「うんうん、ここのラーメンは本当に最高なんです。遠くからわざわざ来るお客さんもいるんですよ☆」
「ええ、わかるわ。色んな所で色んなものを食べてきたけど、このレベルのラーメンは中々お目にかかれないもの。」
「えへへ...私たち、ここの常連なんです...。他の学校の皆さんに食べていただけるなんて、何だか嬉しいです...。」
「その制服、ゲヘナ?随分遠くから来たんだね。」
(あれ...連中の制服...)
(あれ、ほんとだ...アルちゃんは気づいていないみたいだけど。)
(...言うべき?)
(面白いから放っておこ)
小声で話していた内容もついでのように拾ってしまった。
どうやらリーダー...アルちゃんと呼ばれていたか、彼女は今会話している相手が襲撃相手だと気づいていないようである。対称に、白髪の二人は気づいているようだが...教える気はないらしい。
彼女らの目的が学校の占拠なら、確かにここで揉め事を起こす意味もないはずだし合理的だが...単にアル本人の反応を楽しみたいだけのようだ。
片方は愉快気な顔を、もう片方は憂鬱な顔色を浮かべながら、押し黙ったままただ上司と敵の和気あいあいとした雑談を眺めていた。
逆に、全くそのことに気づいていないアルも凄いものである。ここまで察しが悪いのも、この世界が平和であることの証左なのだろうか。
先ほど抱えていた疑問...実力の割に本人の威厳が見えないというのも、恐らくあのどこか抜けている人間性によるところが大きいのだろう。
ああまで勘が鈍いと背中からいつ刺されたり利用されてもおかしくはないのだが...大方、他のメンバーがそこを補っているのだろう。
ある意味、便利屋としてあるべき姿なのかもしれない。そう感心しているうちに雑談が終わり、会計を済ませて店前で解散する運びになった。
別れ際の笑顔は、この後敵対する人間のものとは思えないほど純粋だった。
アルちゃんは強いんです!ポンだけど!!ポンだけど!!!
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