笠から覗く青空に   作:ひいろの鳥

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めっちゃ投稿が遅れたので初投稿です(懺悔)。

すこ〜しエンジンが切れてしまい中々書く気力が起きず(そもそもハーメルンすら開いてない)、取り敢えず何かしら更新しようと思ったはいいもののキムサッガッを書く気になれず、結果こうなりました。なので今回キムサッガッは出てこないしあんまり本編にも絡まない、所謂幕間です。

この数週間の間に色々ありましたね。私はヴァルプルギスで羽ばたきと餃子人格を取れたので満足なんですが、逆にブルアカに対するモチベが湧かずにそちらはイベントすら出来ていないです。アニメすらまだ見てません。
今から見てくるので許してください(再懺悔)


大人たちの夜

「…なるほど。これに書いてある通りに動けば、報酬は約束するんだな?」

 

「えぇ、その契約書に書いてある通りです。」

 

机を挟んで、二人の男が対峙しながら話している。一人は鉄塊、もう一人は骸骨頭の紳士だ。

契約書を読んでも尚猜疑心を持つ鉄塊の男の疑問に、骸骨は諭すように答えた。

 

「…俄には信じ難いな。本当にこんなものが用意出来るのか?」

 

「そういう能力ですので。もう一度見せて差し上げましょうか。」

 

そう言いながら骸骨頭が指を鳴らすと、近くにいた護衛用ロボの核が机の上に現れた。

ゴトリ、という音と共に自分のすぐ背後で誰かが倒れ込む音を聞き、鉄塊は元に戻すよう促した。

やはり、この光景は何度見ても慣れないだろう。出るはずもない冷や汗をかきながら、内心そう思った。

 

「ご覧のように、契約書を通じて、対価に見合うものを取り立てる能力を私は持っています。勿論、物理的な事象以外にもこちらの契約であれば概念的な事象も引き起こせますので…」

 

「分かった分かった、疑って済まなかったな。」

 

右手で骸骨頭の言葉を静止しながら、果たして本当にサインすべきか、カイザーPMC理事は悩んだ。

黒服が連れて来た男だ、何かあるかも知れない。あの魔法のような現象にも何か種があるだろう。この世界において、神秘を持つ子供以外にああいった芸当ができるものは居ないはずだ。

考えた。考えたが、やはり目先の利益の大きさに、目を塞がれてしまったか…。

 

 

 

「はい、これで契約成立です。こちらは契約書のコピーですが、紛失したとしても私の方で自由に取り出せますので。」

 

暗に逃げられないと仄めかす言葉を聞きながら、護衛達に合図して退室の準備をする。

都市の人間が皆ああなのかは分からないが、少なくともあの骸骨だけは長く話していたくない気分になる。

 

「騙された気分だな。」

 

ドサっと音を立てながら車に乗り込み、運転手に会社まで走らせるよう命じる。

夜景が右から左に流れていくのを見ながら、契約書を改めて熟読する。

アビドス関係は、便利屋に脅しをかけて動かせば済むだろう。最悪、私兵を使って無理矢理何とかしてもいい。

その他のことも、自分が手を出せる範囲で済む話ばかりだ。それだけで、更に上まで登り詰められる。

契約に書かれてある通りなら、多少の無茶をしても何とかなるらしい。

順調だ。怖すぎるほどに順調だ。

喜ぶべきなのだろうが、あまり感慨が湧かない。どうにも、嫌な予感が付き纏ってくる。

砂に塗れて寂れてから久しい街並みを見ながら、沈んだ心を晴らそうと契約書を乱雑に鞄に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

「くっくっく…。」

 

カイザーPMC理事が立ち去った後、影から黒いスーツの男がカツカツと足音を立てて骸骨頭の男…プルートに近づいて来た。

男の顔は黒く、白い亀裂が入っている。彼は自分のことを「黒服」と呼んでいた。

 

「いらっしゃったんですか、黒服さん。」

 

「えぇ、契約の様子も拝見させて頂きました。」

 

そう言いながら、プルートの持っていた一枚の紙を後ろから取り上げて読み始めた。

どういう感情なのかよく分からない感嘆符を漏らしながら、読み終えたのか机の上に契約書を置き直し、自分はプルートの向かい…先程までカイザーPMC理事が座っていたソファに座り、口を開いた。

 

「くっくっく…人のことは言えませんが、随分と悪趣味ですね。」

 

「悪趣味、とは?」

 

「惚けるつもりですか。まあいいです。」

 

この契約書、書かれていない事項が契約に含まれていますよね。

 

プルートに顔を近づけながら、黒服は自分の思ったことをそのまま口に出した。

 

「ええ。よく分かりましたね。正確には違いますが、どちらにせよあの方は読み飛ばしていたようですし。」

 

不正を指摘したにも関わらず、プルートは慌てるどころか後ろめたく思うような素振りすら見せない。

だが驚いてはいたのか、眼鏡を弄りながら疑問を呈して来た。

 

「何故分かったのですか?」

 

「これでも契約は専門でして。この労働にこの報酬は、些か見合っていないように思えたんです。

 まさか貴方のような人間が、これを等価と言うつもりは無いでしょうし。」

 

黒服がそう言うと、プルートは軽く息を吐いて、かけていた眼鏡と契約書を黒服に差し出した。

 

「これは?」

 

「私の特製の眼鏡です。倍率を弄ることで、どんなに小さい文字でも正確に読むことができます。」

 

それを使って読めと言うことだろう。そして、それこそがあの契約のトリックだったのだ。

書かれていない訳ではなく、ただ文字が極端に小さいだけ。余りにも馬鹿馬鹿しい騙しの手品に、黒服も思わず苦笑が溢れ出してしまう。

 

「くっくっく…子供騙しじみた手法ですね。」

 

「何分、目先の利益に眩んでいたり狡い人間には単純な方がよく効くので。」

 

そうやり取りをしながら、差し出された眼鏡をかけて契約書を再度読む。

本当に、最後にとても小さな文字で契約事項が書いてあった。

そしてその内容はーー

 

「…くっくっく。」

 

「不都合でもありましたか?」

 

「いえ、むしろ逆ですよ。有り難い限りです。」

 

「私共を拾い上げてくれた上に、手伝ってくださっているのですから、このぐらいは。」

 

どうにも胡散臭く聞こえてしまうその言葉を流しながら、次の話題を提供した。

 

「そう言えば、あちらの方はどうなっているのでしょうか。」

 

「ゼホンのことですか、繋げてみましょうか。」

 

そう言いながらプルートが不慣れな手つきで通信機器を操作すると、すぐに別の異形と映像が繋がった。

複数の目が無作為に散りばめられた無機質な頭。ゼホンと呼ばれた男は、先程まで作業をしていたようだ。

 

「お前らか。何か用か?」

 

「くっくっく…いえ、こちらは契約が終わりましたが、そちらは?」

 

「あぁ、こっちももう直ぐ終わりそうだ。」

 

ゼホンが指差した先には、ベッドに横たわった人間がいた。プルートやゼホンが来ているような刺繍の入ったスーツではなく、また違った見慣れない服装をしている。

その人間の頭上には、黄色い光輪がついている。あの時砂漠で発見した者のものだ。

…尤も、付いているとは言うものの、小さくだが頭と光輪の間に赤い糸が見えているのだが。

 

「結合は完了した。あとは命令系統だけだが、いつも通り糸と手板で動かせるだろうな。」

 

淡々と進捗を読み上げていく様子から、罪悪感などを感じているようには到底思えない。

都市の人間はこうも狂っていると言う証左なのだろうか。

 

「黒服だったか?そっちも『先生』とか言うやつの調査は終えてるんだろうな。」

 

「ええ、勿論。ただし、私の方でも掴めきれなかった部分がありますので、そこは推測で補いましょう。」

 

そう、先生。黒服の調べる限りでは、彼女は異常だ。

そして、その異常性が推測通りなら、やはり先生は手放せなくなるだろう。

 

「それじゃあ、作業を再開するから通信は切るぞ。」

 

「分かりました。私もそちらに戻りましょう。」

 

ゼホンが通信を切ると、プルートは直ぐに指を鳴らして何処かに消えてしまった。

本人は「魔法」と、その力を呼称していた。俄に存在を信じ難いが、神秘を研究している身であるため否定することは黒服には出来ない。

 

「…くっくっく。」

 

独りビルの最上階に取り残されながら、アビドス高等学校の方角を見遣る。

恐らく、あの二人も先生を欲しがっているだろうが、目的が黒服とは違う。

利用はすれど完全に仲間では無いと言う訳だ。全く面倒で、大人の世界の話だとつくづく思う。

 

そう考えていると、ドアが重い音を立てながら開く。

 

「…お待ちしておりましたよ。」

 

「うるさい。こんな時間に呼びつけて、取引には応じないって言ったばかりだと思うけど?」

 

「まあそう言わずに。この前の話の続きをしようではありませんか。」

 

小鳥遊ホシノさんー-。

 

そう呼ばれた少女は、刺すような視線を向けながら席に着く。

 

未だ夜は続く。大人による、子供を騙す時間。大人たちの夜だ。




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