笠から覗く青空に   作:ひいろの鳥

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プロムンユーザーの9割はおじさん(ダブルミーニング)が好きだと思うので初投稿です。

正月フウカは無事に天井しました。それと正月じゃない方のハルナと何故かキャンタマが3人出ました。何で???
ガチャマウントを取ってくる人間はもれなくく・へ・し・ぶします。(固い決意)

※今話にはキムサッガッの過去に関する捏造要素があります。
後々公式から詳しい設定が公開されたら鏡の世界に逃げ込みます。


護れなかった男と守れなかった少女

ーきっと、彼女は私と同じだ。

 

私と同じで、誰かを失っている。

 

私は手に掛けていた刀を…投げ捨てた。

 

「…何故武器を捨てた。」

 

「敵意が無いことを示したかった。」

 

そう、それだけだ。別にこの行動に特別な算段があった訳ではない。

今銃を撃たれても数発程度なら耐えられるだろうし、その時はまた刀を手に取って反撃する。

だが、目の前の少女は銃を構えたままだ。

 

「落ち着け。私が敵じゃないことは知っているだろう。」

 

「…信用しろと?よりによって」

 

お前みたいな大人なんかを!

 

昼間の様子からは想像できない怒号が飛び出す。

静寂の夜を切り裂く声は、微かに震えていた。

 

「…熱く熱した怒りは冷まさなければならない。」

 

「お前に何が分かると言うんだ!!私は」

 

「俺はお前と同じだ。」

 

「………は?」

 

余りに突飛だったせいか、ホシノは手に持っていた銃を落としそうになっている。

だが、私の中では、その事実は確信に変わっている。

 

「ホシノ、お前はー」

 

誰か、大切な人を失っているな。

 

その言葉を聞くや否や、ホシノは直ちに銃を構え直した。

だが、動揺している。呼吸の乱れや目から見え隠れする焦燥が目立つ。

 

「何で、それを…」

 

「俺も同じだからだ。」

 

私と同じだった。

その目の奥に佇む諦念と後悔、そして怒り。

誰かを失い、過去に囚われ、未来への展望を失った目。

静寂の中、独白は続く。

 

「俺も、この手から、護るべき人を溢れ落としてしまったんだ。」

 

ホシノはまだ信じられないという目をしている。

それでも、私は言葉を紡ぐ。そうしなければならないような気がした。

 

「ホシノ。かつては俺も、お前のように果てしない怒りと後悔に囚われていた。」

 

「…」

 

「それ等に目を覆われ盲目になってしまっては、己が何を為しているのか、何を為すべきかすらも見えなくなる。」

 

かつての俺のように。

彼女には、そうなって欲しくない。

 

「その果てには……全てを失う事になる。お前はそれでいいのか、ホシノ。」

 

「…良くない、でも」

 

「なら先ず武器を下ろせ。少し…俺自身の話をしよう。」

 

「…分かった。」

 

未だに不信感は感じ取れるが、渋々と言ったふうに承諾してくれた。

武器を下ろし腰を落ち着けたを確認すると、私自身も席についた。

 

「少し、刺激に強い話になるかもしれない。聞きたくなかったら止めてもらって構わない。」

 

ホシノが小さく頷いたのを見て、私も己の過去と向き合う決心を付けた。

 


 

俺は、『都市』という場所から来た。こことは違う異世界だと思ってもらっていい。

 

『都市』はこの世界とは程遠いほどに残虐で、残酷な世界だった。

 

その中で、俺は裏路地…溢れ者達が集まる掃き溜めのような所で生まれた。

 

両親の記憶はほとんど無い。斬り殺されたからだ。

代わりに、年老いた男が私の面倒を見ていた。

その人は『剣契』という組織に所属していて、俺の両親を斬り殺した男だった。無論、当時の俺はそんなことを知らなかったが。

その人の元では、文字の代わりに剣を、知識の代わりに力を教わった。

親代わりと言うよりも、むしろ師と言った方が適切かもしれない。そういった関係性だった。

 

そして、俺はその人と共に斬り続けた。

初めこそ、肉を切る感覚や血の温度に何度も嫌気を覚えていたが、次第に慣れていった。

人を斬ることが、俺の生活の一部になっていった。

別にそれに快楽を感じていたわけではない。ただ、必要だっただけだ。

師が言うには、人は流れゆく様に生きているのだと言う。

その流れの途上に障害があったときに、流れに沿って斬っていくのだと。

常々そう言っていた。故に俺自身もそれを胸に刻んでいた。

 

そして二十歳になろうという時に、俺は師を斬った。

彼の言葉通り、流れの途上にその人がいたからだ。

そのことに対する後悔は抱いていない。ただ、そう教わってきたからだ。

 

その後は、当ても無く放浪し続けた。

流れ行く様に生きて、障害を全て斬り捨てた。

敵も、味方も、名も知らぬ誰かも、果ては親友でさえ、斬った。邪魔だったからだ。

もはや積んできた死体の数も、身体中に刻まれた傷の数も、数えても仕方がないという事は分かっていた。

 

ー分かっていた筈だった。

ある時、ふと己の辿ってきた道を振り返ってしまった。

親しかった彼等、憎しみあっていた彼等、何も知らなかった彼等、

死体が混じり合い、山となり、私の行先に立ちはだかった。

怖くなった。

進めなくなった。

人を斬る度に大きくなっていく山を見て、俺は怯え上がってしまったのだ。

きっと、これ等は己の罪の証なのだと、これから先に失い、奪われていくものの大きさなのだと思い、

とうとう、人を斬ることすら出来なくなった。

 

 

 

 

ある雨の日のことだった。

その時、俺は来る日も来る日も雨に打たれながら裏路地を彷徨っていた。

そんな俺に、手を差し伸べる人がいた。

左議政と言う名の、S社…翼と呼ばれる大企業の一つ、その要人だった。

不信感に満ちた俺は、その手を払い除けようとした。

だが、その人は俺の元に通い詰めてきた。

頭がおかしいのかと思った。実際にそう言ったかもしれない。

それでも、左議政様は来る日も来る日も来続けた。

 

ある時、その人が俺に提案してきた。

私の護衛にならないか、と。

見ず知らずの人間に護衛を頼むなんて命を捨てたいのかと俺は言った。

だが、左議政様はこう答えたのだ。

 

「お前の目を見て確信したんだ。お前なら、私の目指す道を共に歩んでくれるとな。」

 

その時、初めてその人の目を見た。

真っ直ぐ未来を見据える目。過去に囚われ絶望していた俺にとって、それは光の様だった。

否、その時はただ、剣を振るうだけの名分が欲しかったのかもしれない。

それでも、俺はその手を取る事にしたのだ。

 

 

その後は、俺自身も変わっていった。

かつて俺がそうされた様に、捨てられた者を拾い、師範の真似事をした。

それまでは考えられなかったような、他者と呼吸を合わせる事もした。

そして…流れ行く事を止めた。

この目で見た光に向かって、この足で確かに地を踏み進もうと決意した。

だが………都市は、それを許してはくれなかった。

 

ある日、左議政様が仰った。

S社に上訴を挙げる、その時まで私を守ってくれ、と。

左議政様程の人物が上訴を挙げるとは、即ちその翼をひっくり返すも同然の事だった。

勿論、俺も命を賭して守ろうと決意した。

この方が見る光に向かって、共に歩まんと剣を取った。

 

だが…S社の政敵が差し向けてくる刺客と謀略は、想像を遥かに超えていた。

冷たい雨の日、優に50を超えるであろう数の実力者達と、息を潜めて静かに首元を狙う暗殺者に囲まれてしまった。

俺と、俺について来た仲間達は必死に戦った。

斬って、斬って、その道を阻まんとする全てを斬ろうとした。

それでも、護れなかった。

残された骸を抱えて、悔やみ、憎み、怒った。

その時、俺の目は光を失い、何もかもが見えなくなってしまったのだ。

 

…その後の話は、悲惨と言わざるを得ない。

S社の裏切り者を追い詰める、チュノックンと呼ばれる者達による追及

終わりの見えない放浪の旅

疲弊し、次々と死に行く仲間達

彼等は、俺が殺したも同然だった。方向を見失った導なぞ、彼等の前に立つ資格すら無かった筈だったのにな。

そして、最後の頼みの綱すらも切れてしまい、俺自身も命を落としてしまった。

 

 

 

 

 

「…そして目が覚めたら、この地に降り立っていた。」

 

「…そうだったんだねー。」

 

「すまない、こんな話に付き合わせてしまって。」

 

「いいよ、元はと言えば私のせいだから。」

 

そう言いながらも、話を聞いていたホシノは終始沈んだ顔をしていた。

 

「…もう一度言うがな、ホシノ。今のその目では、また大切なものを失いかねない。

 少なくとも、先生と…俺については、信じられないだろうがな。」

 

「いや………うん、先生と、貴方のことも信じてみるよ。」

 

ホシノの口からは、少し予想から外れた答えが出て来た。先生はともかく、私は信じられなくても仕方が無いと思っていた。

それでも、彼女は信じる事を選択した。

その目からは、先ほどまでの不信感は感じられなかった。

 

「本当か?」

 

「嘘にしては精巧な上に突飛すぎるからね。嘘ならもうちょっと現実味がないと。」

 

そう言いながら、彼女は少し笑った。

そして、再び静寂が両者の間を覆う。

しかし、そこに先ほどまでの緊張感は無い。ただ、今はこの静寂の中で、互いに向き合う時間が必要なのだ。

 

 

暫くして、時計が午前1時を回ろうとする時、ホシノが口を開いた。

 

「……………すよ

 

「…今、何と」

 

「話すよ。私のこともね。」

 

「…私が聞いても良いのか?」

 

「うん、むしろ貴方に話さなきゃいけないと思って。私も、過去と向き合わなきゃだしねー。」

 

そう言いながら、ホシノは自らについて話し始めた。

 


 

ユメ先輩や砂漠化、借金、そして大人………成る程。全てを踏み躙られて、奪われて、信用が出来なくなったのか。

もはや、最後の辺りの大人に対する怒りは絶叫のようだったが…一通り話し終えると、すっきりした顔で柔らかく笑っていた。

 

「いやあ、誰かにこうやって話すと楽になるもんだね〜。」

 

そう言う彼女の言葉は少し震えていた。

今まで目を背けて来た過去と向き合った為だろう。やはり、整理をつけるのには時間がかかるものだ。

だが………もう、その目に曇りは見えなかった。

確りと未来を見据えられる目をしている。

後は…

 

「ところで先生、いつまでそうしているつもりだ?」

 

“!?”

 

「うへ!?」

 

部屋の奥の方に声を掛けると、案の定反応があった。いつの間にか起きていたようだ。あの空気で起きない方がおかしいのかも知れないが。

 

「いつから起きていたんだ?」

 

“…ホシノが怒ってたところ、から?”

 

かなり最初の方では無いか。ホシノも少し焦っているようだ。

 

「えっと………じゃあ、おじさん達の話も…?」

 

“盗み聞きは良く無いよね………ごめん………”

 

「いや、おじさんは良いけど…キムサッガッさんは?」

 

「構わない。いずれは話さなければならなかったからな。」

 

本来はもう少し落ち着いてから話す予定だったが、早いに越したことは無いか。

 

「此方こそすまない。先生にとっても、余り良い内容では無かっただろう。」

 

“そんな事ないから!それと…“

 

「それに…何だ?」

 

先生は暫し逡巡した後、呟いた。

 

”キムさんの素の一人称、俺なんだなって。”

 

「………すまない、それについては忘れてくれ。」

 

自分でも気づかないうちに素が出てしまっていたらしい。久しく感じていなかった恥ずかしいと言う感情を味わった。

その後は、ホシノもこの学校に泊まる事になり、先生とホシノのどちらがソファか寝袋で寝るかを決め合っていた。

その光景は微笑ましく、ついぞ私が見ることなぞ敵わないと思っていたものだった。




ぼかぁね、普段一人称が「私」の人間がの素の一人称が「俺」なのが好きなんだ…(唐突な性癖展開)

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