左議政様を盛大に誤字り散らかしていたので腹を切ります。毎度のことながら誤字訂正ありがとうございます…(土下座)
評価・感想も本当にありがとうございます...(土々下座)
今回は先生視点のほのぼの()回です。本来挟むつもりはなかったけど書きたくなったので書きました(計画性/ZERO)。
柔らかい…
寝惚けながらもそう感じた。
少なくとも寝袋のそれではない。ソファに寝転がっている様な…。
そもそも、何で寝転がっているんだ?さっきまで仕事をしていて、それで…
あぁいや、そうか、終わったと同時に寝落ちしたのか………
作業をしていた教室にソファなんて無かったし、きっとキムさんが運んできたのだろう。
「やはり気づいていたか...」
声が聞こえる...誰かいるのだろうか。
だが中々目を開けようという気にならない。まだ寝ていたい...でも起きないわけにもいかないか。
「…信用しろと?よりによって」
取り敢えず体を起こそう、そう思った時だった。
「お前みたいな大人なんかを!」
唐突にホシノの怒号が聞こえてきた。昼間のおっとりしている雰囲気からは想像できないほどの怒りが、語気の強さだけで伝わってくる。
その余りの剣幕に少し驚いて飛び上がりそうになったが、何とか抑えた。
気配からして、今この場にいるのは私とホシノ、そしてキムさんだろう。
何があってこうなっているのかは分からないが、流石の私でも察するぐらいの空気の悪さ故に、起きるタイミングを失ってしまった。
先生としては失格だが、こうなってしまってはキムさんに頼らざるを得ない。
頼む、どうにかホシノを落ち着かせてくれ、そして私の起きるタイミングを作ってくれ…ただそう祈っていた。
「俺はお前と同じだ。」
何言ってるんだこの人。
ホシノも同じくそう思ったようで、素っ頓狂な声を上げていた。
これでは火に油を注ぐだけではないか。もうこの辺りで起きて無理やり終わらせるべきなのか…?
「お前は…誰か、大切な人を失っているな。」
祈りも虚しく、キムさんは止まらない。
だが、その言葉はホシノに取って図星だったようだ。
「何で、それを…」
「俺も同じだからだ。」
さっきから情報の波が凄い。このままでは溺れかねない。
キムさんもホシノも、過去に大切な人を失っているということなのか…?
そんな事、欠片も知らなかった。二人ともそんな様子を表に出さないとはいえ、それで知らなかったでは先生失格だろう。
その後暫く二人の問答が続き、そして
「なら先ず武器を下ろせ。少し…俺自身の話をしよう。」
というキムさんの言葉で、何とかその場は収まった。
…収まったはいいが、このままではキムさんの話を盗み聞きしてしまう事になる。
でもそれをどうにか出来る私では無かった。まさかここで起きて話を中断させる訳にはいかない。
それと少し好奇心が勝ってしまった。キムさんの事を、自分も知りたくなったのだ。
そうして、キムさんの話を半ば不本意ながら盗み聞きすることになった。
その後は信じられないことのオンパレードだった。
キムさんが別の世界から来ていると言うのは何となく信じていたし、生身の人間なのに人間離れした戦闘能力と耐久力を持っている時点で相当過酷な世界から来ているのかとは思っていた。
思っていたが、実際にキムさんの口から出てきた話は自分の想像を遙かに超えていた。
『都市』...人を殺さなきゃ自分が死ぬ、悪意に満ちた世界...自分には到底想像できなかった。
幸い、この世界の人達は皆頑丈だが、そうじゃなかったら...この人は、また誰かを斬り殺していたのだろうか。
私は、それがどうしても耐えられなかった。
この世界で誰かが死ぬことか、或いは誰かが他人を害することか、とにかく厭だった。
そして話を聞くうちに、一つの疑問が浮かび上がる。
どうしてキムさんは、私の護衛を買って出たのだろうか。
一度失敗して、それでもなお誰かを護ろうと彼は動いているのだ。
普通の人間なら、諦めてしまってもおかしくない。それなのに、彼は折れていない。
強い。ただ戦闘能力だけを指して言うのではなく、この人は人として強い。そう思わざるを得なかった。
私は、彼という刀を取るのに相応しいのだろうか。
そんな事を考えているうちに、ホシノも自分の過去について話し始めた。
ホシノの話も、これまた衝撃的だった。
大切な先輩を亡くして、大人に騙されて、大人というものが信用できなくなっていた、か…。
きっと、キムさんや私のことも不審がっていたんだろうな。
最後の方の大人に対する怒りは凄まじかったが、話し終えて暫くすると落ち着いたみたいだ。
それにしても……私は本当に何も知らないのだと改めて痛感した。
異世界から来たキムさんはともかく、生徒であるホシノのことすら何も分かっていなかったのだ。
それに彼女は、そんな態度を表に出すまいとしていた。私だけだったら気付けなかっただろうし、もしそうなったらこの子は道を踏み外しかねなかった。大人としての直感がそう囁いている。
キムさんには、感謝しても仕切れなかった。とは言っても狸寝入り中な上、起きるタイミングを失ってしまったせいで実際に伝えられはしないのだが…。
さて、どうしようか。いっそこのまま起きていた事を伏せて二度寝と洒落込んでしまおうか…
「ところで先生、いつまでそうしているつもりだ?」
“!?”
「うへ!?」
何とバレていた。というか口振り的に途中から気づいていたようだ。
ホシノの方は気づいていなかったのか、驚いた声を上げているが。
「いつから起きていたんだ?」
“…ホシノが怒ってたところ、から?”
誤魔化そうとかの考えも浮かばずに、馬鹿正直に答えてしまった。
案の定ホシノは焦ってしまっている。キムさんは……顔が見えないから分からないが、少し面食らったような感じはしている。
「えっと………じゃあ、おじさん達の話も…?」
“盗み聞きは良く無いよね………ごめん………”
こうなってしまっては正直に謝るより他はない。
怒られても仕方ないとは思ったし、そうなったら甘んじて受け入れよう。そう思っていたが…
「いや、おじさんは良いけど…キムサッガッさんは?」
「構わない。いずれは話さなければならなかったからな。」
何と許された。心が広くないかこの二人?
キムさんの方は少し困っているようにも見えたけど……気のせいだということにしておこう。
「此方こそすまない。先生にとっても、余り良い内容では無かっただろう。」
何なら謝られてしまった。盗み聞きしていたのはこっちなのに。
咄嗟に否定したが、時間帯のせいか頭が働いてなかったのかつい余計なことも溢してしまった。
その時のキムさんの恥ずかしがっている態度は何だか可愛くさえ見えた。会ってまだ1日も経っていないのに、日中の毅然とした態度とのギャップに思わず笑ってしまいそうになる。
そして、その後はホシノが
「時間も時間だし、今日はおじさんもここに泊まろうかな〜」
と言い出したため、3人で泊まることになった。
なったのだが…
「「最初はグー!じゃんけんっっ!!」」
いつの間にかソファの取り合いになっていた。このソファの寝心地が無駄に最高なのがいけない。
最終的にジャンケンで決めることになったのだが、あいこが連続して何故か白熱した戦いになっている。
「「ポンっっ!!!!」」
私がチョキなのに対して、ホシノはグー。
私の負けだ。大人しくホシノにソファは譲るか…。
ところでキムさんはと言えば、
「私は椅子で寝るから大丈夫だ。」
と言ってそのまま刀を抱えた状態で椅子に腰掛けて俯いてしまった。
本当にちゃんと寝れているのか不安になるが、寝ているのを起こすのも忍びないしそのままにしている。
寝袋を部室に運び、再び睡眠の体勢に入る。
とは言ったものの、中々寝付けるものではない。さっきまで寝ていた訳だし。
それはホシノも同じようで、眠くなるまで暫く雑談することになった。
互いに趣味や仕事の愚痴などの話をして、少しずつ距離を詰めていくようにする。それが、先生として出来る最低限のことなような気がした。
「そう言えばさ、先生。」
“どうしたの?”
「先生はここに来る前、何をしてたの?」
おじさんの事も話したし、先生も話しなよ〜と小突かれる。
“しょうがないなあ…”
そう言って、話そうとした。
でも。
“………あれ?何だっけ……“
思い出せない。
記憶に靄がかかっている。
「うーん、大丈夫?」
確かにここに来る前にも何かをしていた筈だ。二十数年の過去の積み重ねの末に私がいる筈なのだ。
でも。
分からない。
連邦生徒会に連れて来られる前まで、私は何をしていたんだろう。
確か、誰かといたような…。
” ███ちゃん…?”
誰の名前だろう。顔も思い出せないのに、その名前だけが過った。
「………ま、無理に思い出さなくてもいいよ〜。」
“ごめん、気を遣わせちゃって…。“
「おじさんこそごめんねー。」
その後、少し気まずくなりながらもタイミングよく眠気が来たので、それに乗じることにした。
「おやすみー。」
”うん、おやすみ。”
そうして微睡みながら、私の視界と意識はゆっくりとブラックアウトしていった。
---翌朝、7時過ぎ---
目を覚ますと、外で銃を撃ち合っている音が聞こえる。
不良が攻め込んできたのだろうか。だとしてもホシノもキムさんも居るし、大丈夫だと思うが…
それでも先生としてやはり様子は見ないといけない。直ぐに階段を降りて校庭に出た。
外でやり合っていたのは、まさかのキムさんとホシノだった。
二人とも私に気づいたのか、挨拶をしてくれた。
「おはよう、先生。」
“二人とも何やってるの…?”
純粋に疑問に思った事を口にしてみた。未だに状況が飲み込めていないのだ。
「いやぁ、この人がもっと強くなりたいって言い始めてね〜。」
「私のいた世界に銃火器は殆ど無かったからな。早いところ慣れておかなければいけなかった。」
“そのままでも十分強いんじゃ…”
「武の道に終わりはない故。」
そう答えたキムさんは、やはり毅然としていた。
「さてホシノ、もう暫し付き合ってもらってもいいか?」
「いいよ〜。…おじさんも、強くならなきゃだしね。」
そして、再び二人の鍛錬が始まった。
散弾銃を絶妙な間合いでいなしながら、隙を逃さず近づいては的確に首元を狙うキムさん。
それに対して咄嗟に銃で受けながらキムさんを突き飛ばして脇腹に銃を撃ち込むホシノ。
互いに人間離れした力でやり合っていたけれど、次第にホシノが押され始めて…
「っ!」
「勝負ありだな。」
ホシノの首元に刃が当たったところで、その場は幕引きとなった。
…やっぱり銃弾を数発撃ち込まれても生きているのはおかしいような気がする。が、それをわざわざ口に出そうとは思わなかった。
その後は、キムさんからホシノにアドバイスをしているのを眺めながら、皆が学校に来るのを待った。
「先ず呼吸を整えるんだ。このように…。そうすれば、自ずと隙を見出せる。」
「呼吸…。」
「そう、そのまま思考を澄ませて…肉を斬るとは、即ちそういうことなのだ。尤も、銃で斬ることは叶わないが…。」
「うん、何となくわかった気がする。」
時折物騒な単語が飛び出していることには目を瞑りつつ、片手間で出来る仕事を済ませる。
少しすると、タイヤが地面を削る音と共に、シロコが学校にやって来るのが見えた。
今日も1日が始まろうとしていた。
呼吸の勝手な解釈として、
「呼吸を整え思考を澄ませることで、相手の弱点や隙を的確に突く」
というものだと思っています。
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