笠から覗く青空に   作:ひいろの鳥

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カルバノグ一章が終わったので初投稿です。
カンナさんにビール二杯ぐらい奢りたいよ...。

アンケートは花嫁おじ実装したタイミングか、遅くても今週一杯で〆ようかなと思ってます。
現状丁度半々でどうしようか悩ましいので...。


肉を斬り、

セリカが攫われた。

その言葉に、場の空気が凍りつく。

アヤネの様子から、冗談ではないと思われる。

 

「誰に、何処に攫われたか分かるか?」

 

「い、いえ...」

 

”とりあえず、皆を呼ぼう!”

 

 

少しすると、シロコとノノミ、ホシノが学校に駆けつけてきた。

三人とも、少し顔が青い。急に後輩が攫われたと言われれば、誰だってこうなるだろう。

アヤネに至っては、もう泣き出してしまいそうだ。

 

「電話はしてみましたか?」

 

「は、はい...でも数時間前から連絡がなくて...」

 

「店にも聞いたが、定時で店から出たらしい。」

 

「まさか...ヘルメット団の連中?」

 

「...人質か。」

 

聞いた話だと、ヘルメット団はこの学校を奪おうとしているらしい。

その交渉材料に生徒を誘拐したということなのだろう。裏路地でもよく見られた手法だが...よりにもよって巣を相手にやるのかと思うと少し呆れてしまう。

だが、実際に困ったことではある。今ここで一人欠けるのは不味いだろう。

 

「とりあえず待とう。先輩と先生が調べてるから...。」

 

シロコがそういうと同時に、タイミングよく二人が教室に戻ってきた。

 

「どうだった?」

 

”セリカちゃんの連絡が途絶える直前の端末の場所が分かったよ。”

 

そう言いながら、先生は地図を指差す。ここは...砂漠か?このような地区もあるのだろうか。

 

「これは...市街地の端の方ですね?廃墟になっているエリアだと思いますが...。」

 

「このエリア...確か以前分析した際に、カタカタヘルメット団の主力があると確認された場所ですね...。」

 

「とすると、先ほどの推測は当たっていたことになるな。」

 

とはいえ、このまま素直に近づいてもいいのだろうか。

何らかの罠が無いとは言い切れない。実際、それに嵌められた者も数多く見た。

 

「急いで助けに行きましょう!」

 

「うん、急ごう。」

 

「そんじゃ行ってみよー!」

 

だが、目の前の彼女らは既に発つ準備を終えて学校を発ってしまった。

実際急がなければならない問題だ。形振りは構ってられないだろう。

 

「...先生、今回はここから指示をしてくれるか?罠があるかもしれない。」

 

”...分かった。”

 

「よろしく頼む。」

 

そう言い残し、私も彼女らを追って夜の学校を抜け出した。

 


アビドス郊外。地図で見た通り、辺り一帯に砂漠が広がっている。

所々廃墟や壊れた電車が放置されているここは、確かにアジトとして使うのに適しているのだろう。

そして、その砂漠の中を一つのトラックが緩慢な動きで走っていた。

 

「あれ...だよね?」

 

「分かり易いな。」

 

見たところ、運転席周りの装甲は大して厚くはない。砂に車輪を取られているのか速度も出ていないし、これなら...

 

「わっ、キムサッガッさん!?」

 

全速力で走り、後輪を自身の射程圏内に収める。

懐に忍ばせていた小刀を取り出し、狙いを定め...

びゅん、と風を切る音とともに、後輪に穴が開いた。

足が潰れて思うように動けていない内に、運転手がいると思わしき部位に標的を移す。

 

「うわっ何だおm

 

騒がれる前に、車窓越しから一突き。丁度首を貫き、運転手のヘルメットはその場に倒れこんだ。

同じ瞬間に、生徒たちも荷台からセリカを救出出来たようだ。

 

「セリカちゃん発見!生存を確認しました!!」

 

「あ、アヤネちゃん!?」

 

「こっちも半泣きのセリカを発見!」

 

「!?な、泣いてないから!!」

 

「いや、私はちゃんと見た!」

 

「うちのセリカちゃんが泣いてただとぉー!?そんなに寂しかったんだね、ママが悪かったわー!」

 

「私たちがその涙を拭いてあげます!!」

 

「だから泣いてなんかー!!」

 

「お前たち、安心するのはいいが、ここはまだ敵の陣地内だ。油断はしないように。」

 

現に人質を乗せた車両が破壊されたし、こちらに敵が向かってきてもおかしくない。

予想通り、前方から多数のヘルメット団たちが押し寄せてくるのが見える。市街地で戦った時よりも明らかに数が多い。

それに、奥から妙な気配がする。

 

「気を付けて。あいつら、改造した重戦車を持っているわ。」

 

戦車...恐らくあの気配の正体だろう。

放っておくとこちらにも被害が出かねない。速攻で叩き潰すのが吉だろう。

 

「...ホシノ。」

 

「なあに、キムサッガッさん?」

 

「あの戦車までのサポートを頼む。」

 

「...何とかなるの?」

 

「あぁ、任せてくれ。」

 

「分かったよー。」

 

”それじゃあ皆...突撃!”

 

先生の指示によって、戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

前に戦った時よりも明らかに格の違う装備品と、それに裏付けされた銃弾の威力。

だが、それらはすべて、キムサッガッの脅威にはなり得ない。

縦、横、突きとあらゆる手法によって、彼に正面から向かってくる弾丸は弾かれ、或いは掠りすらしないものもあった。

 

「何でヘイローもないのに弾けるんだよ...?!」

 

「...もはや何度聞いたか分らんな。」

 

無駄口を叩く者を、只管無言で斬り続ける。

目の前に立ちはだかるヘルメット団たちは、彼の舞うような剣技によって悉く斬り伏せられていった。

 

「クソッ、これでも食らえっ!!」

 

「させないよっ!」

 

死角から放たれた弾丸は、盾を構えたホシノによって肉を抉ることすら許されず、逆に彼女の散弾銃の餌食となった。

 

 

 

「こうなったら...これならどうだ!!!」

 

カタカタヘルメット団の用意した秘密兵器、Flak41改良型。

その砲身から放たれる砲弾は、神秘を持つ人間にも少なくないダメージを与え、並大抵の人間なら跡形もなくなってしまう。

 

その砲身は、キムサッガッに向いていた。

硝煙の臭いと共に放たれる、必死の弾丸。

思考を一瞬巡らせ、直ぐ様剣を構えなおす。

少し前の彼なら、弾くことを諦めていただろう。

だが、

 

(カァン!!!)

 

鉄のぶつかり合う音と同時に、真っ二つに割れた砲弾が、砂漠を転がりゆく。

 

「ひっ、ほ、砲弾を斬りやがった!?」

 

殺しを主る彼の、肉を斬る一撃。それに、砲弾如きが敵うはずもなかった。

 

そして、彼は再び動き出す。

最速、無駄のない動きで、戦車の懐に潜り込み、再び呼吸を整える。

ここに至るまでの道程で、彼の思考は限界まで澄み渡っている。

 

 

振り下ろしていた刀を今一度納め、見極める。

一撃、それで事足りるように、

最小限、而して最大限の力が出るように、

静かに、力強く刀を振り下ろした。

 

骨     断

 

骨を断つかの如く、戦車は瞬く間に両断され、不穏な煙を全身からあげ続けている。

 

悠々と歩いてくるキムサッガッの背後から鳴り響く爆音によって、戦いは閉幕した。

 


 

「終わったか。」

 

正直、ここでこの技を使うとは思わなかったが...骨を断つ感覚を、漸く掴み直せた気がする。

感情の揺らいでいたあの時、失っていた感覚を。

刀を納刀し、残っているホシノ達に近づく。

 

「大丈夫だったか?」

 

「いや...私たちは大丈夫だけど...。」

 

「ん、戦車を斬ってた。」

 

「何なら砲弾も斬ってましたね☆」

 

「うへー...。」

 

流石にあの装甲を斬ることはこの世界であっても常識の埒外だったらしい。

心なしか、画面の向こうの二人も同じような反応を見せている気がするが...。

少し引き気味の彼女らを背に、最初に投げた暗器を回収しながら帰路に就く。

すっかり夜も明け、朝日が全身を暖かな光で包んでいた。

 

 

 

 

帰り道

 

そういえばと、思い立って言ってみる。

 

「ありがとう、ホシノ。」

 

「うへ!?あ、戦闘中のこと?」

 

「それもあるが...」

 

昨日の語らいと鍛錬で、再び己を見つめなおすことができた。

あれらが無ければ、あの砲弾を斬ろうと思えなかっただろう。

無論、骨を見出すことすらも...。

 

「...いや、何でもない。」

 

ただ、それは今言わなくてもいい気がした。

決して彼女自身が向き合い切れているとも言い切れない。それを無理に掘り返すのも、何か違う気がしたから。

 

「え~、教えてくれてもいいじゃーん。」

 

「鍛錬に付き合ってくれて、だな。」

 

「...ま、それでいいや。うへへ~。」

 

あの時とは全く違う、本心から出たような腑抜けた声に思わず笑いそうになりながら、学校に戻った。

学校では、疲れ切った顔の先生が出迎えてくれた。




や っ た ぜ(骨断を書きたかった作者魂の叫び)

戦車を骨断で真っ二つにする師匠が書けたので、俺ぁもう満足だよ...それはそれとして普通に続きますが。

今回使ったのは図書館仕様の殺主と肉斬、リンバスのシンクレアの骨断です。
剣契シンクリャにはもっとマッチ強くなって欲しいですね、ハイ

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