凹凸スクワッド   作:餅屋

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初めての方は初めまして。お久しぶりな方はお久しぶりです。
仕様。の続編的な……なんかそんな感じのやつです。
例によって不定期更新です。


1.ロータス小隊昇格!ロータス小隊解散!!!

 

 

『ゴメーン、こっち埋まっちゃったからそっちに任せるね!』

『一応こっちで見かけた奴は倒し切ったからそっち潰せればワンチャンあるぞ!』

「……こっちが3人残ってるの分かってて言ってる?」

『全員潰せれば+1で勝利! 行けるなガハハ!!! あっエリア狭まるの早──』

「通信切るね……」

 

 さて、いつまでも芋っている訳にもいかない。時間は有限だ。

 側で何やら計算をしている小さいの──ショーが訊ねてくる。

 

「ハスさんはなんて?」

「潰せるだけ潰したけど今スコアが-2」

「2人で格上3人飛ばせって? 最後の最後に無茶言うなあのおっさん……」

 

 ショーのアバターの声は不機嫌そうだった。いつもそういう声だ。アバター方面のコストはギリギリまで削ってるのがこのゲームの方針なので。

 

「仕方ねえだろ勝ち筋それしかないんだから……で、行けそう?」

「漏らさず有効弾当てられるならまあ……一応行けるけど……」

AB(エリアブレイク)は?」

「オレは使ってないから2回」

「ならまあ15%くらいか外し猶予は……」

「やれるのか?」

「馬鹿言えやるんだよ。ハスさんの花道飾りてえだろ」

「それもそうだ……んじゃ、行くか?」

「サポお願いな」

 

 ショーと軽口を叩きながら、俺はマズルフラッシュ瞬く鉄火場に踏み込んだ。闖入者に一瞬だけ静かさが空間を支配して、弾かれたようにまた騒がしくなる。

 

「一番ヤバいのは?」

「赤い肩の奴!」

「了解!」

 

 射線を潜り抜けてひとまず遮蔽物に隠れる。握る兵装の片方をSG(ショットガン)へ変更、近くの不利そうな奴に左手の銃口を向けながら体躯に隠した右手はヤバい奴へ。

 

 右手の引き金を引く。着弾。

 有効打ではあるが落とすには至らず、もう片方から斉射。何発かもらった。

 

「回復無いと辛えよ〜」

「予測できりゃそっちに流せるけどオレがそっちに出る訳にも行かねえしな……」

「合図でAB頼むわ、10秒後で」

「了解」

「"合図"」

 

 ヨシ来た、2人組に向かって左手の榴弾を放り込み、慌てた様子で出てきた赤肩の相方を右で撃ち抜く。SGの火力は痛かろうワハハ。榴弾は普通に蹴っ飛ばされて明後日の方向で炸裂したけど。

 

「赤肩が上手いな」

「アイツプラチナ下位の常連プレイヤーだからな」

「なら勝てば晴れてプラチナって訳だ!」

 

 牽制しながら転がり、1人だった方を狙う。

 直撃。被弾で吹っ飛んだのを追って盾代わりに使いつつ落とす。

 ABが反応、階層が崩落し、瓦礫と貨物が辺りに爆増する。

 

「あと2人ィ!」

「オレいつも思ってんだけどお前乱戦での荒らし能力だけ異様に高いよな」

「何? 聴こえない」

「何でもねェ」

 

 それにしても赤肩が厄介だ。

 手慣れてるし動きの質が違う。この感じだと新人慣らしで付いてきた感じか? 

 

「ショー、弱い方抑えられるか?」

「オレの単独戦での弱さ分かってて言うのやめろや!」

「んじゃいつも通りバックアップ込みで2人食いか」

「その座標のリミットは……行けて2分かな」

「急がないとな……赤肩はどっちだ?」

 

 SGをリロード、顔面ぶち込みが成功すれば確1なのでよくお世話になる銃種だ。位置を少し調整。

 

「お前から見て11時方向、弱い方は2時方向」

「了解!」

 

 弱い方を狙って遮蔽を思い切り蹴飛ばした。轟音を立ててカッ飛んでいく貨物を横目に今度は赤肩の方を狙って飛び込む。射撃態勢への入り方が早いがそっちの武器は知ってる、SMG(サブマシンガン)だろ? それじゃ死んでやれないんだ。

 

「捕まえたァ」

「何だこのデカブツ!」

「ショー、AB」

「りょ」

 

 再び崩落。弱い方は運が良ければ生きてるだろう。赤肩は崩落のダメージが残ってるからもう無理だ。衝撃モーションが残っている顔にSGを撃ち込む。

 

「サヨナラ!」

「まだもう1人が……」

「ンァーッ!!!」

「今落っこちて死んだな」

「かわいそ……」

 

 眼前に映る『victory』の安っぽいホログラム画面。何とか出来た。

 

「オレ達の勝ちだな」

「今日で引退だけどな」

「引退試合に巻き込まれて荒らされ降格とかやってらんねえだろうな相手」

『終わった? ロビー戻るよ〜』

「了解ー」

 

 祝勝会だ祝勝会。

 

 ○

 

 ゆるい雰囲気のほわほわしたおっさん──チームリーダーのハスバさんがエモートを使いながら喜びを表現していた。

 

「ロータス小隊のプラチナ昇格、おめでと〜」

「昇格してすぐさま引退するの許されるかなぁ……!? これ許されるかなぁ!?」

 

 チーム最年長のクワイさんはぶつぶつと一人で憂いていた。

 

「仕方ねえでしょクワさんもハスさんもリアル事情で引退なんだし……」

「オレとネモは次どうしよっかって悩んでる所スよ」

 

 俺はショーと共に2人を擁護しながら、用意されていた席に座る。

 

「僕は流石に家庭持つとなるとねえ……続けられないからね……」

「私も家業継ぐってなると数年ブランク空くから引退かなって」

「ハスさんはお幸せに……クワイさんは……頑張って?」

「重圧が……重過ぎる……!」

 

 5年ばかり一緒だったこの固定チームとも先の一戦でお別れ。

 ハスバさんは結婚、クワイさんは実家を継ぐ事によるやむを得ない解散だ。

 

「2人は別チームに入ったりしないの?」と、ハスさんの言葉。俺はショーを指しながらいつも通り返した。

 

「他のチームだとショーが多分合わないんですよ。俺ももうコイツ以外と組めそうにないし……」

「私からするとプラチナ食えるってなると引く手数多だと思うんだけどねえ」

「ニンゲン、コワイ……。ネモノソバ、アンゼン……」

「いかんショーの知らない人リアリティショックだ!」

 

 どう、どう……と宥めながら、駄弁っては色々と意見を交わす。その中で一つ、これは? と思う玉が混じる。

 

「別ゲーに移住とかは? ネモ君一時期色々触ってたでしょ」

 

 別ゲー……と、呟きながら考えた。どうせなら活気のあるタイトルが良いが、群雄割拠のVRゲー界隈において人口のばらつきというのは凄まじい。いや一個めちゃくちゃ強いのあるけど。でもな……アレエンジン特殊だからあんまり続けたくないんだよな他のゲームやる時感覚の齟齬出るし……。

 

「人居る奴だと……アンバー……」

「ショーくんができないでしょアレは」

 

 とはクワさんの相槌。だめかー。

 

「それ以外だと……SW*1新作……?」

「そっちも僕やってるけど現バージョンのバランス死ぬほど悪いからオススメしないよ……僕は続けるけど……」

 

 ハスさんそういや濃いめのシリーズファンだったな……! 

 

「DFやらないの? ちょうどSF系の世界観で新バージョン出たじゃん」とクワさんが謎のジェスチャーを交えながら口にした。

 

「DF……モッテル……」

「ほらショーくん的にもちょうど良さそうだよ」

 

 リアリティショックから抜け出せていないショーも持っているらしかった。

 まあ……超人気タイトルだからなDF……前バージョンは気の狂った奴だったけど……。

 

「持ってるんですけど……アレエンジン特殊だから他よりリアル過ぎるじゃないですか」

「よく言われるよねーやると抜け出せないって」

 

 私もそれで触るのやめてたしねー、とクワさんが笑いながら答えていた。

 

「俺はそれで触るの止めてたんですよね……こっちで支障出ると困るし……」

「ネモ……ドコマデヤッテタ?」

「お前はそろそろショックから戻ってこい……V6の途中だよイベント偶に参加する程度で」

「オレト……同じ……オレはV5メインだケド……」

「んじゃ一緒にやるか?」

「やる……」

 

 良いね良いね! とクワさんが手を叩く。ハスさんもうんうんと頷いているが多分このおっさんは話聞いてなくて雰囲気で頷いてる。さっきから他のプレイヤーの相手してたし。

 

「じゃあとりあえず明日はDFのどっかで待ち合わせるか……ショーはフレコ覚えてるか?」

「ン……11497261だった……と思うけど。ギアのフレから飛んだ方が早くないか?」

 

 言われてみればそうである。

 コンソールを開いて時間を見る……良い時間だ。名残惜しくもあるがそろそろ落ちるか。

 

「んじゃまた2人ともお元気で。俺は落ちまーす」

「オレも落ちますー。またいつか集まりましょう」

「ばいにゃー! 僕は落ち着いたらDFの方でちょっと誘うかも!」

「私は元々DF持ってるし誘われたら会いにいくくらいはするよー」

 

 ハスさんがテンション高めに手を振った。近況とか話に集合するならまあ……このタイトル(Candy Squad)は向いてないからな……。

 しかしその言葉にクワさんが胡乱な視線で挟んだ。

 

「いや……確かハスさんDF買う所からじゃ……」

「どんなに苦しくても……このお小遣いを燃やすしかない……!」

「結婚するんだから一応出費はやめましょうよ!?」

「でも安いからねDF……いや……2週間分のランチ代は結構高いな……?」

 

 やいのやいの騒いでいるおじさん2人としれっと逃げたショーのログアウトエフェクトを見つつ、俺はログアウトして就寝した。

 

 ○

 

 そんなこんなで翌日である。

 俺はギアに届いたショーからのメッセージに従い、遠路はるばる公国の中心地までやってきていた。

 めっちゃ久しぶりに来たなマジで。2年ぶりくらいに立ち寄ったかもしれん。

 勿論あいつにフレ申請は送信済みだし承認もされた。普段見ないフレコまで覚えてるだなんて流石はショーだぜ。

 それはさておき時間まで後10分くらいなのだが……。

 

「性格的にもう来てそうだけど来てないんだよな……」と、独りごちた所でフレメッセが届く。内容は端的。『どんな見た目?』というメッセージにそのまま返信。『でっかくて黒髪で槌背負ってる』。

 

『りょ』とすぐに返答。ところで今遠目に死ぬほど目つき悪くこちらの方を眺めている……率直に言ってロリなアバターの奴がショーだったりするのだろうか……? 

 

 一応……聞いてみるか……! と謎のロリに近付いた。ロリはギョッとした顔で強張った。衛兵NPCがちょっとこっち見た。

 やめてそういうのじゃないから! 

 

「違ったら悪いんだけど……人を探してたりしてる?」

「ア……イェ……」

 

 この反応……間違いない知らない人リアリティショックの症状だ……。*2

 すみません衛兵さん俺は怪しい者ではないんですちょっと構えるのやめてもらって良いですか? 

 

「ちょっとこっちも探してて……ショーって名前に聞き覚えあったりしない?」

「オメーネモかよ!!! わかンねーよ女アバターになってたらよォ!!!」

 

 ショーにキレられた。解せねえ……。

 

 ○

 

「でかくて黒髪のアバターって言ったじゃん……?」

「オレが想像してた方向性じゃねーンだよ!」

「動き易いようにリアルに合わせて作ったらこんなになっちゃってさ」

「嫌味か???」

「しかしそっちは随分ちっちゃいんだな……」

「……すぞ……」

「悪い悪い……その反応だとそっちもリアル身長に合わせた感じか」

「全人類があと10㎝縮んだらオレはめちゃくちゃ生きやすくなるからな……」

 

 身長がコンプレックスらしい。だから飴スクでも小柄なアバター使ってたのか……。

 

「とりあえず立ち話もなんだし……ウチ来る?」

「ウチって何処だよ!?」

「失礼……そちらの女性……ちょっと詰所まで来てもらっても……?」

 

 結構近付いてきていた衛兵NPCにバチクソ詰められた。

 違うんですよ……違うんです……! 誤解です……! 圧倒的誤解……! 

 

「違うの衛兵さんただの拠点に友人誘ってるだけなんですよちょっと拠点が北方にあるだけで!」

「オメー北方勢*3かよォ!!!」

 

 この後めっちゃ尋問された。

 

 

*1
遠い昔……遥か彼方の銀河系で……。

*2
ギュッ

*3
ぼっちでサブイベ掘らない勢。





・DF
作中世界でめちゃくちゃ売れているVRMMOタイトル、Dimension Fixの略称。
今は9周年アニバーサリーキャンペーンが終わりかけくらいの時期。

・北方勢
人と関わるのとか……怖くない……?なぼっちソウルを宿したMMOに向かない者達を指すDFプレイヤー間でのスラング。
しかし主人公のネモ君はVRレジャーとして使い倒していた側なので社交的な異物の方。むしろ気質的にはショーの方が北方勢に合っている。

・衛兵NPC
スタァァーッップ!
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