凹凸スクワッド   作:餅屋

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今回は掲示板がちょっと挟まっていまーす。ぼんやり書く時の勘所を取り戻してきたような気がしますが気のせいかもしれません。

追記
なんか読みにくくね?と思ったので影響度についてを後書きの方に移しました。


3.大遺構へ行こう(クソ寒ギャグ

 

 ナージャをあやしていたら少し集合時間に遅れてしまった。

 すぐ近くにある所定のエリアまで歩き、早速影響度を1に再設定すると、一気に人が視界から消える。

辺りに残って居るのはNPC……おそらくはドールが殆どのようだが、ぱっと見でも関節などのデザインに粗さが見える。パラが言ってた劣化機ってのはこいつらの事か……。

 そうしてエリアを見回していると、エリアの隅、丁度腰掛けられそうな辺りにショーが居た。

 

「ネモォ……助けてくれ……」

「ご主人様どちゃくそ可愛いですわ……!」

 

 エンハンサー*1型のドールに抱っこされて。

 

「ドールってこンな変なのばっかなのか……?」

「俺はエンハ選んでないからわからん……デストロ……ナージャの頭がよろしくない事しかわからん……」

 

 などと話すと、ナージャが自分の名前に反応したのか訊ねた。

 

「なー旦那ー? このねーちゃん誰?」

「戦友……いや仲間かな……?」

「なンで疑問系なンだよ……ショーだ。よろしくな」

「私はソフィーと申しますわ!」

「ナージャ! 旦那に付けてもらった!」

「おーそうか……オレは戦闘苦手だから頼らせて貰うぞ」

「任せろー!」

「そこの小娘! ご主人様は私が護るんですからね!!!」

「ソフィーオメーエンハベースなんだから戦闘苦手だろ……?」

「ご主人様より力は強いですわ!!!」*2

 

 一瞬で姦しくなった……。た……確かにナージャもソフィー? も女だが……。いや今日は俺もだった……。

 というか。

 

「他の旅人にも反応するようになってるのこれヤバくね?」

「前は反応しなかったのか? よく話題にはなってたから反応するもんだと……」

「他の旅人には反応しなかったんだよ前は。いつそうなったんだろ……」

 

 めっちゃドールが進化している……運営の絶対逃がさないという強い意志も感じる……。

 

 そして軽く出来ることを紹介しあってから、ひとまず戦闘の具合でも確かめるかという話になり、皆でメインコンテンツの一つである大遺構へ歩きがてら雑談する。

 

「そういやドール相手だとショック起こさないんだな?」

「NPCに起こしてどうすンだよ……そこまでコミュ苦手じゃねーよ……! 飴スクでも見てたろ……!」

「そうかな……そうかも……」

「ご主人様は完璧ですわ!」

 

 飴スクのNPCはNPCって言うかァ……看板とかの類だからァ……。*3

 

「病院のジジババに比べりゃまだ全然会話出来るからな」

「話がループするからなお年寄りは*4……おっとここか」

「上に向かうと一般人とかが暮らす居住層*5に繋がってるンだってよ」

「私達は行けないのですよね、居住層……」

「セキュリティ上の問題でドールが入れないってパラが言ってたな……」

 

 何やら大遺構内に暴走した劣化ドールやら何やらがぽこじゃか居るらしく、安全の為にドールは問答無用で入れないようになっているのだとか。まあ中の区分である高層と低層で文字通り天と地ほど生活レベルの差があり、高層の旅人が大遺構へ入るにあたっていちいち許可が必要なのに対し、低層は大遺構に入り放題稼ぎ放題命大安売りセールだそうだが……。

 ふとショーが目配せした先を追うと、ナージャがキラキラとした目で俺を見ていた。

 

「旦那が行く時おつかい頼んでいい?」

「別に良いけど……買えるかどうかはその時の資産*6によるからな?」

 

 ナージャがグッとガッツポーズをする。これは……買ってもらえると思っておるな……? 

 

「何が欲しいンだ?」

 

 ショーが訊ねると、ナージャは「パンツ!!!」と力強く答えた。

 空気が凍る。

 

「ネモ、お前さ……」

「それでも俺はやってない」

 

 おっとついいつもの(ボケ)が出てしまった。

 

「……ンー……マーケットは……まだ開放されてないのか……開放される段階は……」

 

 ボケもスルーしてくれるショーの優しさが目に沁みるぜ……。

 

 ○

 

 ショーの中で俺の社会的地位が暴落した犠牲により、俺たちは無事*7大遺構入り口に到着した。暗く澱んだ空気感が、目の前のやたらデカい大穴から放たれているような気がするのだが、それよりも。

 

「ショー、俺さ……これめっちゃ見覚えあるんだけど……」

「オレは無いけど……なんだV6関係か?」

 

 入り口と思しい場所に存在する台座のようなオブジェクト。それに俺は覚えがあった。嫌ってくらいあった。

 

「これ……衛星エリアのカスタムダンジョンコンソールだわ……」

 

 嗚呼思い出される……トレハンと……トレハンと……トレハンの日々……全然出てこないお目当て……部屋にミチミチに詰まったケモエネミー……クソムカつくピグマリオンのジジイの顔……野良パーティーでの闇鍋ダンジョンアタック……ウッアタマガ

 

「草」

「なにわろてんねん」

 

 百面相をしでかした俺の顔でも見たのか、ショーは悪い悪い、と断りを入れてから訊ねてくる。

 

「それ、V6同様に動くのか?」

「動いてない。近付いてもなーんも起こらん。昔の通りなら近付いた時点で何かしらウィンドウなりが出たが、なーんも起こらんので多分機能停止してるんだろう」

「ならまぁ問題ないだろ……裏で待機状態になってるとかなら問題だろうけどよ」

 

流石にないかなぁ、とショーが独り言ちる。

 

「んじゃまあ……役割確認だ。俺はタンク兼ディーラーやる。ナージャは死なない程度に盤面荒らしながらディーラーをやれ。もしも俺が落ちたらショーの指示をよく聞いて撤退だ。とにかくショーとソフィーの生存を優先しろ」

「わかった!」

 

 ナージャは元気よく答える。お兄さんナージャがお兄さんの社会生命をゴミにしてくるけど良い子で嬉しいよ……。

 

「オレは支援と指揮だな。ソフィーは支援メインのヒーラーで頼む。オレが落ちたらネモの事は気にせず撤退しろ。それと機械系のが来たら支援じゃなくて妨害中心で行け」

「任されましたわーっ!」

 

 やたら気合いの入った感じでソフィーも答える。こっちも良い子だけどちょっと性癖面が……不安ですね……。

 

 じゃあ行くか! ダンジョンアタックに! 

 指差し確認ヨシ! 

 

 10分後。

 

「思ってたより敵が……敵が多い……!」

「旦那〜また釣ってきて良い? これ楽しい!」

「だめ」

 

 1階層で数十グループ居るとか馬鹿じゃないの!? 

 ナージャがウッキウキで敵釣ってきたのを処理するのにめっちゃ頑張ったわ!! 

 

「畑の雑草並にエネミーが居る……」

「私はまだまだやれますわ!」

「リソース配分は考えろよなァ……」

 

 疲れた様子でショーが溢した。多過ぎて俺がショー抱えて動いてたからな……タンク役とか出来なかった。必要なのは火力だった。

 

「ドロップ素材は美味いけどこの密度はちょっとな……」

「ちょっと情報漁ってみるか……お、あった」

 

 ショーがウィンドウを操作しながらボヤき、そのままウィンドウをこちらに向けてくるので小休止とした。

 

 ○

 

【V7初心者】すみません私はデカケツサイボーグシスターに釣られて始めた者なのですが……【質問】

 

610:名もなき旅人

ドルメスタートだと大遺構で早速洗礼受けるの酷いよねV7

 

 

614:名もなき旅人

>>610

パーティー組んでやるかセットプレイ構築しろ定期

 

 

617:名もなき旅人

>>614

居住層スタートとは逆順だから敵の強さはともかく数がヤバくて先に進むほど少なくなるの良い篩だと思うよいやよくない

そのせいで俺はフレンドを作る事になったんだぞ!!!11! 

 

 

620:名もなき旅人

>>617

言えたじゃねえか……

 

 

621:名もなき旅人

>>617

さては北方勢だなオメー

 

 

623:名もなき旅人

でもね

ドルメスタートはめっちゃ楽しいんですよ

 

 

628:名もなき旅人

>>623

楽しさの代償に旅人の情緒が火山へと焚べられている点については何かないのか? 

 

 

630:名もなき旅人

>>628

ンーンン……

 

 

632:名もなき旅人

居住層だと強いエネミーがわらわら居る地獄に行く事になるし広い視点から見るとバランスは取れてる定期

 

 

635:名もなき旅人

>>632

そうかなぁ……!? 

バランス……取れてるかなぁ!? 

 

 

637:名もなき旅人

もう幾つ寝ると

階層戦争イベだぞ旅人よ

 

 

641:名もなき旅人

(:3[___]

 

 

642:名もなき旅人

>>641

ね……寝てる……

 

 

644:名もなき旅人

>>641

爆速で反応されては眠れぬ夜となったろう……

 

 

646:名もなき旅人

階層戦争なー……

楽しいんだけど正直低層に移りたさが凄いある

と言うか特定の奴と敵陣営でやり合いたくない

 

 

650:名もなき旅人

安心しろ>>646……それは皆が思っているだろうからな……

 

 

652:名もなき旅人

>>646

その相手はもしかしてひ

 

 

653:名もなき旅人

 

 

654:名もなき旅人

 

 

655:名もなき旅人

? 

 

 

656:名もなき旅人

卑劣が完成してるの何度も見た

 

 

658:名もなき旅人

悔しくなったらブロックするのが正解だぞ

 

 

660:名もなき旅人

アイツはブロックが吉とはよく聞くけどなんかそれやると負けた気がするから嫌だよね

 

 

664:名もなき旅人

>>660

お気づきになりましたか

まだ挑めるドン! 

 

 

666:名もなき旅人

>>664

嫌じゃ……!(迫真)

 

 

 

 ○

 

「卑劣……?」

「知り合いだけど敵対しない分にはちょっと性格悪いけど良い人だぞ。敵対しない分には」

「2回言うのか……」

 

 ショーが困惑した様子で呟いた。他所で言われるほど悪い人じゃないんだよ? いやまあ俺レジャー利用メインだったからそこまで深い付き合いなかったけど……。

 

「でもまあ、やる事は分かったな。はーいそこのドールズもこっち来てー」

「わぁい!」

「ナージャと何話してたンだ?」

「ご主人様にも内緒ですの!」

 

 俺たちが情報収集に励んでいた頃、ドール達はドール達でこしょこしょ話をしていたらしい。仲良くなれたのは良い事だと思う。

 軽く手を叩いて注目を集める。

 

「なんか下の階層ほど敵グループの数が多いらしいので! 次の階層への! 道を探します! 質問!」

「ハイ!」

「ナージャ君!」

「ちゃんです旦那*8。敵は倒さないの?」

「律儀に相手すると面倒なので倒しません! まずはパラ子から頼まれたおつかいの処理優先です!!!」

「わかった!」

「ナージャはかしこいな……」

 

 うんうんとナージャの髪をわしゃわしゃとして人懐こい犬みたいな表情を堪能していると、ショーが耳元で囁いてきた。ASMRか? 

 

「お前はアホだけどな……」

 

 ヒェッ……。

 割と怒ってる時の声だった。

 

「俺が何か……やりまして?」

「敵、こっち、来てる。OK?」

「hai!」

「働け……」

「撤退戦準備ー!」

 

初アタックで撤退戦とか初めての経験だぜ!

 

 

──走る、走る。追ってくる犬っぽい姿の機械群から。

 

「ソフィー、お前使えるバフあるか!?」

「1回限りならありますわ!今ナージャに使いましたわ!」

 

コイツ判断が早い!早いから助かってる部分もあるけど!

 

「あと1回俺になんとか捻り出せねえか!?」

「120秒効く別の奴が1個ありますわ!でもご主人様に使うなら許可取れって言われてますの!」

「ショー!許可!」

 

ナージャじゃサイズ的にお前抱えられないし俺が速くなるしかないんだけど俺は……遅い……!*9

 

「きン゛ーッ゛ッ゛!」

「嘘でしょ……舌噛んでる……」

 

プルプル震えるショーの身体。VRゲーにおけるリアルさ度合いは往々にして利点と欠点を併せ持つが、今は舌を噛むという姿で欠点が牙を剥いたらしい。

 

「ンー……」

 

呻り声と共に急激にショーの震えが収まる。指が動いている気配からするに設定で痛覚を下げたのか。とはいえこの様子だと再び口を開けば二の舞だ。

そう思って走っていると、目の前にショーの掌が翳された。

 

「今は危ないからやめろって!」

「ン」

 

ひらひらと否定するように揺れる掌。仮想メモが映し出され、『これソフィーに見るように伝えてくれ。バフ許可』との文字。筆談って手があったか!

 

「ソフィー!」

「なんですの?ご主人様から許可取れましたの?」

「ショーの手見ろ!」

「ちっちゃくて柔くて可愛いですわー!」

「ノー、そうではなく……」

 

だめだあこのエンハンサー!

 

「ン゛ー!」

 

痺れを切らしたショーが突きつけるようにしてソフィーへ掌を向けた。

 

「了解ですわ!【レッチドブースター】!」

「お、きたきた……オイこれ全ステバフじゃねーか!」

 

はっきりと速度と筋力が増した感覚がする。DFにおいてステバフは……危険度が高い……!*10

 

「幸運が0になる代わりに同量の能力をそれ以外に加算するバフですわ!だからご主人様に許可取らないとダメなんですの!」

「今から前出て止めるからショーそっちで預かってくれ!そぉい!」

 

言うが早いかショーを一瞬だけお姫様抱っこにし、そのまま着いてきていたソフィーへ渡す。

 

「しゃあっですの!」

「ぐえーっ!」

 

ショーの苦悶を聞きつつ反転。よしよしこれくらいなら全然大丈夫だ扱える……良かった……そしてさよならこれから倒す奴らのドロップ……。*11

 

初期武装である大槌をインベントリから取り出しながらナージャに加勢を伝えた。

 

「ナージャ入るぞォ!」

「旦那ァ!この一波凌いだら多分大丈夫だぞ!」

 

おう、と返事をしながら目の前の機械群、そのうちの1体に大槌を振るう。頭部っぽい部分に打撃が叩き込まれ、物理法則に従い奥の暗闇へ頭部が吹っ飛ぶ。やっぱこれだよこれ。今ステバフとナージャの削りとが入ってるからここまで綺麗にワンパンできるの今回くらいだろうけど!

殴り付けた勢いを利用し、円を描いて相手を煙にまく。数年前に学んだ卑劣と呼ばれる例の人の教え曰く、大槌の扱いは円の維持とその解消の緩急であると言う。円の維持は打撃力をより高め、円の解消は虚を作る。極めて単純な2択を何層にも重ねて殴り付けるべきなのだとかなんとかVR飲み会でご機嫌な顔色で言っていた。その後会計でちょっと青くなっていた。

対人なら言われた通り何層にも重ねてそれらを行うべきだが、今回は数はともかく強さはさほど程度な相手だ。円の維持に注力するだけでも問題はないだろう。

 

維持、維持、解消、解消、維持、解消──。

 

「旦那ァ!コイツが〆だ!」

 

続けていくうちにナージャがそう言って最後の1体を此方へ蹴り飛ばした。タイミングを合わせて……振り抜く!

バゴン!と大きめの音を立て、頭部のみを残して最後の1体の首から下は暗闇へ送り出された。

 

「ナイスショット。ところで今のでまた来てるっぽいンだが?」

「もうおうち帰る!!!」

「りょー」

 

間近に迫っていた入り口に向けて皆でダッシュする。

 

無事見る事のできた数時間ぶりの外は、案外清々しいものだった。

 

*1
めちゃくちゃ人に近いデザインの支援特化ベースタイプ。ヒーラーも出来る!火力とタンクはできない!

*2
ワタシドール……ツヨイネ……。

*3
ここは最初の村……。

*4
3周は固い。

*5
ドルメ以外を選ぶと此方でスタートする。V7における旅人の共通点は製造された人類であるという事。

*6
ゲーム内での通貨単位。溶ける時は一瞬。

*7
大本営発表。

*8
スン…。

*9
でも支援役が居るよ……!

*10
具体的には速度……AGIの妙ちきりんな感覚補正が1番危険。

*11
幸運値……LUKは倒した敵のドロップ率にも影響する。0だと何も出してくれない。原則手に入る資産すら落ちない……。





○影響度
DFに搭載されている周囲のプレイヤーによる観測を双方向に調整する機能。下限の1は自身とフレンドのみが認識できるようになり、上限の5は周囲の座標に居るプレイヤーをランダムに認識するようになる。
元々はイベント開催時などにスムーズに進行出来るようにと搭載された機能だったが、北方勢などのVRゲームは楽しみたいが必要以上に他人と関わりたくないプレイヤー達がひっそりとプレイするのに使い倒されている。
普段の影響度が1や2だとコイツ北方勢だぜー!と煽られるぞ!

○ソフィー
現在搭載しているバフデバフは他に4種。回復が1種。
ご主人様が大好き。

○ナージャ
噂に聞く縞パンなるパンツを求めている。
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