あと明日もエイプリルフール番外編があります。よろしくね。
ビルディングの時間だ。
色々とワチャワチャとしていた前バージョンとは違い、V7は装備に紐付けされた各タレントツリー……要するにスキルツリーでビルドの精度を高めていく作りとなっている。
これはリビルド時の所持タレントツリーは元よりツリーに一切組み込んでいないスキルも選択できるのが利点だが、その分装備への依存度と装備掘りの熾烈さが爆増。結果プレイヤーマーケットの市場環境がほぼほぼ高速で流動するという欠点も生み出した。
その分廃れるのも早いので、俺たちシナリオ最前線を目指す初心者としてはお手頃に必要な装備も手に入れ易くて助かるんだが……。
「移動用に【フェザーライト】*1とオマケの【ワイヤジャンプ】*2入れて……打点は【ブルスラム】*3で大丈夫だろうし……余った枠は全部【ガーディアン】*4でいいか……」
余り枠を全部ガーディアンにぶち込んだのは育成の仕様が原因だ。DFはスキル、ステータス、装備の3本で性能構築していくスタイルなのだが、装備には各々必要ステータスの足切り数値があり、スキルは前述した装備自体に付与された拡張タレントツリーがあり、ステータスはタレントツリーに対応してそれぞれのレベルに応じて増加し、ステータスが装備の足切り値を越えさせるといった具合で三竦みとなっている。
タレントツリー内にある同系統の取得スキル枠の数に応じてツリーレベルは上がり易くなって行く為、作る完成形がわかっているのであればその役割に合わせて早いうちから軸となるように育てていくのがベターなのだ。つまりは、
基のステ補正も大きくなっていく=倒すの楽になる
という事になる。
なお今俺が使っているような初期装備には一律でベーススキルLV+3が付いている。これは要するにリビルドによって構築したアバターが持つ習得スキルツリーを内容を問わずLV+3として扱うオプション効果。なのでこの初期装備で当分遊ぶ場合は、特化型で組むよりも器用貧乏くらいのとにかく触っているスキルツリーを可能な限り多くして組み上げた方が大抵進みやすい。まあ珍しく妨害を食らったのが俺だった訳だが!
ちなみにこの初期装備OP、現状は一点物らしく同型OPが確認されていないので売ったりするのは厳禁なのだとか。
当初はタンク寄せ器用貧乏だったが今は色々と分かった部分も多いのでもっと特化させる事にする。
そんな訳でビルド組み換え……できた!
「データ確認してくれ〜」
ステータスウィンドウをショーに向けると、ショーはじっと見ながら口にする。
「よりタンク向けにしたのか? 珍しいな」
「想定より遥かにナージャが動けたから……今は足りないタンクやる方が良いかなって」
「オレは動くの苦手だけどネモがそう言うって事は相当やれるンだなナージャ」
実際半端な前衛旅人より強いわ! 一家に1人ちょうだい! となるくらいである。心折られるプレイヤーを見かけないのが不思議なくらいには動けるので俺もうかうかしてたら腕抜かされそうだ。
「旦那に誉められた?」
「誉めたよ!」
「誉めてたぞ」
「ヤッター!」
ナージャはかわいいな……これで一般常識がもっと身に付いてくれれば言う事ないんだが……。
「そんな訳でメインアタッカーはナージャ、タンクが俺、アシスト兼ヒーラーがソフィー、指揮役がショーで行こう」
一応これでバランス良いパーティーになる……筈である。
「撤退判断の基準は?」
「俺が落ちるか全体のライフ総量が4割切ったらかな」
「了解」
「ネモ様……私の仕事が多いように思うのですが……」
伝えられたソフィーは訝しげに俺に訊ねてきた。そうだね×1
「もうちょっと面子増えるかショーが整ったら減ってくるから頑張ってくれるか? それとソフィーちゃんが頑張るとショーの負担が減って全員動き易くなるんだ」
「……! 頑張りますの!」
それっぽい事言ったら納得してくれた……チョロいぜ!
「お前がいつかソフィーに殴られてもオレは止めねえぞ……」
「ソフィーちゃん……ちょっとショーの事好き過ぎない?」
「それはまあ……オレも思ってる……」
エンハって皆こうなの?
だとしたら失望しましたゴリアテちゃん*5のファン辞めます。
「オレのはこンな感じ。サブアームは好きなの選べ揃えたから」
「いったいどうやって……?」
「誰かが戻ってくるの遅かったからその間にな」
「すみません……!」
ショーの方から見せてもらったステとアーツ群を見ながらサブアームを決めていく。
俺のメインはSGだしショーが打撃力低くてデバフ弾で支援中心だし……
「MGで頼むわ」
「はいコレ。あと弾2スタックな」
「このままでは俺はショーのヒモになってしまう」
それも悪くない気が……している……!
「働かなかったらケツ蹴り上げるからな」
「届く? ……ゥゥン」
「イテッ……でも届いたろ?」
「理解らせられちゃった……」
軽口の代償でほんのりケツに打撃感が残る。ショーも変に身体捻ったらしく、ちょっと身体を伸ばしていた。猫っぽいんだよなストレッチしてる時のショー。
そんな俺たちのやり取りを見ていたソフィーがポツリと呟いた。
「羨ましいですわ〜……」
「……思ってたより性癖ヤバいな?」
「ロルバとか頼めンのかなこれ……でもなぁ……」
「有能ではあるしな……」
2人で顔を見合わせながらぶつぶつとボヤいて、いざ大遺構へGOだ。
──それからおよそ30分後。
「かってえこいつ!」
「旦那ーっ! 装甲剥がしたー!」
「ナイス!」
ナージャが剥がした部分に散弾を叩き込む。ダメージ確認ヨシ! あともう1セットで落とせるな……!
「東から動体が寄ってきてますから注意ですの!」
「今スタン入れたからもう1セットいけるぞ!」
「アーイ!」
俺たちはワチャワチャとしながらあの無駄にデカいエネミーを処理していた。名前なんだっけドールの言っていた方である。
理由はごく単純で、1体だけならまあなんとかなりそうなのとサブイベの進行条件として表示されていたからだが、こいつがやたらにタフだった。
大槌のダメージは通りやすかったからまだ許すが……。
「こんなの複数体とかやってらンねえ……」
「別に強くないけど硬いのめちゃくちゃ面倒だな……」
誰だよこんなの設定した奴……運営ちゃん許さねえからな……。
「以前の遭遇時とはまた違う姿になっていた様子なので、おそらく自己進化機能で耐久性を上げた個体だったんだと思われますわ!」
「ラピス姉が居たら楽そう……」
姿変わってたっけ……? 変わってたかも……。
これモロにヒントなのでは……?
「……ソフィーはその辺の判別行けるか?」
「勿論ですわご主人様! 今倒した個体と同ベース機体なら行けますの! でも別のベースであったり、火力支援方面へ進化した個体はまだ無理ですわ! データが欲しいですわね!」
「だとさ」
「なら各1体は倒さないとダメっぽいか……」
「コイツ斬りにくいから戦うのヤダな〜……」
ナージャが文句を言うのをどうどうとあやしつつ、俺は顎をなぞりながらショーへ伝える。
「……仮称タンク型はスルーで」
「了解。ソフィーは索敵で判別行けたら報せてくれ。進むルートその場で変えるから」
「わかりましたの!」
「旦那ー、ショー姉ちゃん地図覚えてるの凄くない?」
「だってショーは凄いからな……俺にできない事たくさんできるぞ」
「スゲェ……」
ナージャがショーを尊敬の目で見始めたのでごすずんポイント*6をナージャに付与し、上へと向かう。
○
さてラピス曰く、作中での感覚として自己進化型作業機械というのは相当に面倒な部類であるらしい。
必要に応じて大遺構に残された同族やらのパーツを取り込み、それぞれの判断した形へと進化し続ける特性を持ったこの機械群。
なんと過去に人類により大遺構の開拓及び整備に使われた物なのだとか。現在の下層居住区もこいつらによって開発されたらしく、時折当時のデータを食った機体が下層へ向かって大騒ぎになるのだとも聞いた。大人しく建築作業だけしてくれたらまだ良かったのだが、残念ながらそうは行かなかったのだとか。
そして何故今俺がこんな話をしているのかと言うと……。
「旦那……あの機械……」
「共食いしてるな片方機能停止してるけど」
バキパキと装甲やら部品が砕かれる音が響いている。
共食いという他ない。8脚型の機械が脚を捥がれた機械の残骸に接触し、何やら取り込んでいた。
「機械同士だけどまあまあ趣味悪いよなこの光景……おっなんか光った」
「ネモ様……準備した方が良いですの」
ソフィーが言ったその時、食ってた方の動きが止まる。
凄い……嫌な予感がします……。
「もうちょい早めに言えよな……」
「あの機体が『壊れる』瞬間を一度見た方が良いかと思いましたの。アレは多分火力型なので倒すのはさっきほど面倒ではなさそうですのよ」
「壊れ……?」
「旦那ァやるぞ!」
ナージャの発破と同時、動きの止まっていたエネミーが再び動き出した。背面がメリメリと音を立てながら変形し、先ほどまで無かったアームが形成されていく。
先端に砲口があるのを認めて、後ろに居たショーを庇うように動きながら確認。
「周囲に他のエネミーは?」
「居ませんの!」
「ショー!」
「20……いや15待ってくれたら隙作れる」
「りょ! ナージャ! ショーが合図したら火力叩き込め!」
「わかったーっ!」
アーツで後衛用の防壁を生成しておき、先んじて接敵していたナージャに続き前線に立つ。
「お前らもうちょっと早めに伝えてくれよな!」
「だってこれラピス姉に言われてたんだよ仕方ないじゃん!」
「なら許すが……」
おそらくは俺よりもINTが高いラピスの考えなら渋々理解するが……。
「それより旦那あの新しい砲潰してくれない? アタシだとまだちょっと武装の強度足りなくてさでも旦那なら潰せると思うんだ」
「このサブイベ済ませたらお前らの装備更新も考えないとだ……なっ!」
「ありがと旦那!」
ナージャの言葉に応じて【ワイヤジャンプ】で砲口近くに取り付き、そのまま【ブルスラム】をぶっ放してから再度【ワイヤジャンプ】でナージャの近くへ戻る。金属同士のぶつかる音の後、あっけなく歪んだ元砲口を見て俺は首を傾げた。
「いくらなんでも柔くね?」
「リコシェ姉が言うには生やした直後だと打撃にめちゃくちゃ弱いらしいんだ」
「……ヤバそうなの雰囲気だけでむしろ弱いのかコイツ」
「そういう事! 旦那視覚センサー潰して!」
ナージャが答えながら関節部に兵装を振るうと、鈍い音を立ててエネミーの体勢が崩れた。
「どっせい!」
指示に従いギョロギョロと動いていたモノアイっぽい部分に【ブルスラム】をキメると、レンズらしき部分が砕けて発していた光を失った。
「お前らやるぞー!」とショーの合図。体勢を立て直そうとしたタイミングで行動阻害が刺さる。
生まれた大きな隙に合わせ、ナージャがスルスルと機体の背部へ回ってブレード型の兵装*7を突き込んだ。
ガクンと大きな反応を最後に、再び動き出す気配もなくなる。
「終わりか?」
「多分そう? 中枢部壊したから仮に生きてても再起動は無理だと思う!」
ナージャの言葉に後衛組を手招きして呼び寄せる。パーツ分解を頼みつつ、やれる事も無いのでナージャと雑談。
「ブレード系モジュールはその辺が強みなのか?」
「ピンポイントに壊すならアタシは得意! でも装甲剥がしたりは苦手!」
この事は後日調べたら部位攻撃時のダメ補正がバカ高いが弾かれやすいとか書いてあった。デストロの初期兵装がブレードなのはある種の罠とも。
運営ちゃんさあ……。
「次から役割変えるかァ……」
事前に練った戦術ミスだなこれは……やっぱその辺ショーに任せた方が楽そうだ……でも今はショーが戦闘関連全然組めてないからまだ無理なんだよな。
「解体めんどくせえンだよな……でも泥量減るしな……お、知らんパーツだ」
「見せて見せて」
「ほい」
「『コラプトコア』……名前が厄そう」
俺の言葉にソフィーが反応した。
「実際そうですわ!」
「知っているのかソフィー……!」
「壊れて従来の目的等を書き換えられてしまった機体はこのコアを持ちますわ! このコアを媒体に他の機体へのハックが行われているみたいですの! ばっちいですわ!」
「ばっちいて……」
カビたみたいな言い方するじゃん……。
「幸い我々オリジンにはハックも効きませんしただのきちゃないコアですのよ!」
「きちゃないて……」
「説明見る限りだと結構便利そうだけどなこのコラプトコア」
ショーが呟き、その心は? と問えば、返事は容易に返ってくる。
「どうも居住層で出回ってる装備の認証外すのに使うみたいなんだよ。リミッター解除して扱えるらしい。オレたちとしては便利だろ?」
「リミッター」
「ネモがバーストって言ってるアレ*8とかに使えるそうだ」
「……! 便利……!!」
戦闘システムの拡張はもうどんと来いだ!
それ以外? うーんそうねえ……。
「現金過ぎるだろ……入手出来る機会は多いのか?」
「現状ご主人様はエンジニアとしてのタレントを持っていますから、それならば機会は多いですの。でも例えばキネティック*9のような後衛タレントや前衛タレントに切り替わったのであれば、その限りではありませんの」
「ビルドに寄る訳か……ならエンジニアがトレハン向けビルドとして書かれてたのにも納得だな」
ソフィーと会話しつつ、ショーが続けた。
「それならシナリオ進めるのにはあんまり向かなそうだな……」
「うーんオレもリビルドすべきなのか……配布日記がある内は良いンだが無くなると困るな……」
「なんかあった? 無課金主義?」
雑にリビルドした方が進行は楽になりがちなDFである。無課金主義となれば止める訳にも行かないが……いやでもショーはアメスクだと普通に課金してたな。
「ショップ担当のGM居るじゃン……苦手なんだよな……」
「あぁ〜……」
納得……してしまった……!
○
そうして色々とくっちゃべりあと遭遇したロボをしばきつつ探索を続けて早1時間(体感)。ラピスが言っていた座標に辿り着いた俺達を迎えたそこは。
「これは電源……生きてるな……」
ショーが眉を眇めながらぼやいた。
あからさまに構内から稼働音が響き、各種センサによる迎撃システムもバリバリに生きている。なんなら視界の端でその辺から近寄って行った無辜のロボが迎撃されてしめやかに爆散していた。
Why? 何故? 厄ネタの香りしかしないんですけど!
「ご主人様、動体反応がありますの。入り口から……」
「……種類は?」
「劣化ドールですの。あっボイスメッセージが来てますわね」
ソフィーはそう言い、ソフィー宛に届いたらしいメッセージを俺達へと見せた。
『ごきげんよう、旅人様。お早い到着に当機は喜びました。このような場所でお誘いするのも如何かとは思いますが、お願いがございます』
「なあこれさあ……」
胡乱な目つきで、ショーが俺を見た。
『どうか当機を、壊しては頂けませんか?』
そう、聴こえてきた。
「──罠だこれ!」
俺のツッコミが、構内に響いた。
サブイベ洗礼編は次話で終わりでーす。(多分)
なんかこの辺の語句何?とかあったら教えて貰えると助かります。指摘された後に脚注かあとがきに追加しておきます。