透き通る世界の武器商人さん(ちゃん)   作:狐の行商人

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チャプター1 ゲヘナ学園近郊

「厶、ムム?」

 

「...はぁ、とんだ積荷もあったもんだ。まさか美食研究会に拉致られた生徒が載せられてるとは思わなかったぜ?あぁと、お前さん給食部の娘か?」

 

「ム、ム」

 

「そうかぁ...いや災難だったな、美食研究会の連中にとっ捕まって。待ってな、今解くからじっとしてろよ」

 

「厶」

 

先程美食研究会の連中から給食部の車両を失敬して逃げ切ったのだが、途中で車両の後方部から何だか音がしてきたので気になった俺は車両を停めて何が載せられているのかと確認した訳だが...大方食材だろ?という予想に反し、まさか赤い瞳に黒髪ツインテールで額から生えた2本の角が特徴的なゲヘナの生徒が拉致されて載せられていたのには一旦思考が止まりその後に思わず叫んじまった

余りの叫びに一瞬びっくりさせちまったその生徒の前で頭を抱えそうになったが、このままだと完全に拉致実行犯と被害者という構図を否定出来ねぇ状態で風紀委員会に見つかろうものなら問答無用で逮捕されちまう

 

そうなる前に彼女の縄を解いて誤解を解かねぇとなぁ...確認した所、彼女はどうもこの車両本来の持ち主である給食部の生徒らしい

...ひょっとしてアレか?この娘ってもしかして給食部の生徒の中では一番料理が美味いとかの理由で拉致られたのかね?遭遇した時間こそ短かったが、連中ならやりかねんなぁという謎の確信があるわ

 

「...ほい、解けたぞ」

 

「あ、ありがとうございます...助かりました」

 

「なぁに構わねぇよ...俺も美食研究会の連中に襲撃されて逃げようとしてこの車両を借りただけだしなぁ、人が載せられてるとは思わなかったがよ。もう一度確認させて貰うが、お前さんゲヘナの給食部の娘か?」

 

「はい、給食部部長の愛清フウカです」

 

部員じゃなくて部長さんだったかこの娘

部の長とはいえ美食研究会に捕まっちまう辺り元々の戦闘力は決して高くないんだろうな...このまま帰らせてもまぁた連中に捕まる可能性は、無きにしも非ずか

 

「愛清フウカね、俺は萬屋アルマってモンだ...今日はちょいとゲヘナ学園の救急医学部に用事があって学園に向かってたんだがよ。道中で美食研究会に目をつけられてな」

 

「あー...(눈_눈)」

 

「...その顔からしてもしかして日常的に巻き込まれてんの?アレに」

 

「巻き込まれてます、アレに(눈_눈)」

 

「...心中お察しするよ」

 

「どうも」

 

何時も巻き込まれてるのか...これは真面目にこのまま帰らせてもまぁた連中に捕まりかねんな、目的地は同じだし車で移動するなら楽な上にこの娘が居てくれるんなら状況説明はしやすくていいだろう

ちょいとばかりアフターサービスしてやるか

 

「どうせ学園に行く途中だったし、このまま乗せてってくれるなら帰るまでの道中の護衛もさせて貰うがどうだい?」

 

「えっ、それは正直助かりますが...あの、いいんですか?」

 

「構わねぇよ。こう見えて不良共相手なら自衛も出来る程度には強いしよ、最悪フウカ嬢にゃ先んじて逃げて貰って風紀委員会呼んで貰う間足止めとかも可能だろうからな」

 

見ず知らずの俺が救援求めるよか学園内で顔が知られてるフウカ嬢が風紀委員会に駆け込んだ方が直ぐ来てくれるだろうしなぁ、それに此処で好印象を持って貰った方が後で商談もし易くなるし食材とか調理器具とかもしかしたら買ってくれるかもしれん...そもそも戦闘能力に関しては俺が足止めした方が賢明だろうさ

オマケに風紀委員会の連中とかに心象も良くなるし、何よりゲヘナ学園に入り込みやすくもなるだろうって打算もあるにはある

後は、そうだなぁ...

 

「まぁタダ程怖いモンはねえとも言うし礼を貰えるなら俺の今日の昼飯を一食分程作って貰いてぇんだがなぁ、構わねえかい?」

 

「あっ……ふふ、そういう事なら喜んで腕を振るわせて貰いますね!」

 

「イヒヒ、サンキュー♪」

 

美食研究会がわざわざ拉致してまで身柄抑える給食部部長の料理ってのも気になる所だしな、ご相伴に預かれるチャンスがあるんなら取りに行くべきだろうよ

 

 

 

フウカ嬢に運転を任せてあれこれと話をしながらゲヘナ学園へと車を走らせ続けたものの、その間に再度美食研究会が襲撃してくる様な事態は発生しなかった...食堂から自分を頻繁に連れ去る際にこの給食部の車両も接収されるとフウカ嬢は日々起こされるトラブルの元凶達に関して愚痴っていたのを聞くに、連中は自分達が好きに使える車両が無いから給食部の車両を接収して好き勝手しているのだろうな...いや、そんな金があるなら食材に使うとか言うかもしれん

 

なら暫くは美食研究会から追われる様なトラブルは無いか、と思い始めていた俺とフウカ嬢を乗せた車両は遂にゲヘナの学園の傍までやって来れたらしい。

前方には腕章に制帽を被った風紀委員会の生徒達が何処か慌ただしく俺達と同じ進路へと各々武器を持って走ったり車両に乗って移動して...いや待て慌ただしく?武器を持って車両で移動してる?

 

「フウカ嬢、ちょいと車を止めて様子見だ。風紀委員会の生徒達の様子が慌ただしい、何か前方でトラブルかもしれねぇ...巻き込まれねぇ様に逃げるかもしれんから急発進やUターン出来る様にエンジン掛けたまま道横に寄せてくれ」

 

「わ、分かりました!」

 

「高所から何が起きてるか様子見してくるからちょいと待っててくれ、直ぐに行って戻ってくる」

 

「高所からはいいんですけど直ぐにって...どうやってですか?周りには建物も多くて高所には困りませんけど、階段やエレベーターでも昇り降りには時間が掛かりますよ?」

 

「こうやってさ」

 

フウカ嬢と会話している間に用意を終えたボルトスロワーのフックショットを放ち、近場のビルへと引っ掛けて巻取り機構を起動して俺は上へと向かう

 

2度3度と繰り返せばビルの屋上へと辿り着けたので、そのまま双眼鏡を取り出し少し先で起きているだろう騒動の原因を見た訳だが...

 

「―――は?」

 

何だか毒々しい紫色で緑色の液体を垂れ流した、吸盤の付いたタコ足のような触手を生やした珍妙な巨大生物が風紀委員会相手に大暴れしていたが...アレはもしや以前噂に聞いたB.O.W.に属する化け物か?にしては何か随分とコメディチックな見た目だな、ちょいとばかし重ねたパンケーキをモチーフにしたと言われても違和感が無い様なデザインしてやがる

問題はそんな生物が俺達の前方で大暴れして、風紀委員会ですら止めきれずにこっちに向けて移動しているって事か

 

(―――更に言えば、アレがもし教祖や取り巻き連中にサラザールのクソガキの何れかが作ったモンなら...今度は俺が確実に始末をつけるべき案件になるな)

 

前は都合良くStranger達が来てくれた為に奴等を倒せたが、今度はそうもいかねぇだろう...そうなれば現状プラーガの危険性を一番良く知っている俺が動かなければあの村や城の二の舞だ、そうはさせるかってモンだ

俺はこのキヴォトスという世界の事を気に入っているし友人知人も出来た、それをまたあの教祖共に好き勝手されて壊されちまうなんざ御免被るぜ

先ずはフウカ嬢のトコに戻って彼女を避難させて、アルちゃん達や店の娘達にも応援を頼まねぇと...

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

とまぁ危機感と決意を抱いたままフウカ嬢の所へと戻った俺だが、直後に盛大な肩透かしを食らう事となった

前方のB.O.W.らしき奇妙な生物の特徴を伝えてフウカ嬢を避難させようとしたんだが、その生物の特徴を聞いた瞬間フウカ嬢は美食研究会の時と同様にスンッ...とした真顔になり奇妙な生物に関して説明してくれた

 

「...それ、多分『パンちゃん』だと思います」

 

「パンちゃん?」

 

「はい、私の後輩で給食部に所属している牛牧ジュリという子がよく作る料理から生まれて」

 

「待ってくれ、料理でアレが出来るのか?ちょっと俺でも多分デュークの奴でもそんな料理のレシピは知らんぞ?あんなデカくて動き回って暴れまくって叫ぶというどう見てもヤバい生命体が料理から出来るとかそうはならんやろ」

 

「なっちゃうんですよ、ゲヘナでは珍しい事じゃないので」

 

「―――ゲヘナやべぇな、俺の知ってる常識が通じねぇわ」

 

違う世界の常識が何処まで通じるかは曖昧だが、少なくとも料理で化け物紛いの物体が出来るのはゲヘナだけだろうよ...いや、現実逃避してる場合じゃねえな

目の前で青い顔をしているフウカ嬢は此処に来るまでの道すがらで愚痴交じりに色々と話してくれたのだが、その中でゲヘナ学園の生徒会である万魔殿に対して色々経緯はあったが現在でもかなり予算を削られているらしい

今こうして顔色が悪いのはただでさえ減らされた予算が、幾度目かは分からないパンちゃんの暴走による被害で更に減らされかねないという恐怖もあるんだろう

......あぁっ、全く。以前の俺なら、こんな儲けにもならない人助けなんざ意味も興味も持たずに捨て置いていたんだがなぁ、あの甘ちゃんに影響されたか...

 

 

 

 

 

『そういやアンタはアメリカのエージェントだったか?まぁ...任務な訳だから是が非でもあの嬢ちゃんを助けねぇといけねぇ訳だから大変だなぁ、俺なら逃げ出しちまうぜこんな状況はよぉ』

 

それはまだ俺がガナードだった頃のStrangerとの一幕だった

アシュリーの嬢ちゃんを助け出す為に動いていたレオン・S・ケネディというエージェントの銃を改造している最中の片手間に、俺はそんな話を投げかけた

普段なら小粋なトークで返してくれるその男は、その問いにだけは少しだけ間をおいて答えてくれた

 

『警官になる前の俺なら、もしかしたら逃げ出していたかもしれないな。でも今はもう、逃げる事はしない...なぁアンタはラクーンシティの事件を知ってるか?』

 

『―――表じゃあ其処まで真実は知られてねぇが、裏の業界じゃあかなり有名な話だ。化学兵器の暴走によって都市が丸々一つ壊滅したんだったか?それが元となり裏ではその地獄を作った兵器の取引すらやってるらしいが』

 

『俺はその地獄のラクーンシティに居て生き延びた一人だ、その後政府と取引をして今こうしてエージェントになってる』

 

『ハッ。おたくの家族か友人を人質に取られたか?如何にも政府がやりそうな手だなぁ、えぇ?』

 

『一緒に脱出した女性から孤児を一人預かってくれる様に頼まれたんだ。その子も大人の陰謀に巻き込まれて、今ですらそういう連中に追われている...政府の庇護下にある方が安全の保障は出来る』

 

『そうかい、それでその代償にお人好しのアンタはこうして死地送りって訳か?お節介も大概にしとかねぇといつか死んじまうぞ』

 

『それでもこうして俺が動いていれば助けられる人が必ず居る、あの時警官だった俺が助けられなかった人達は多く居たが...それでも助けられた人が今も生きている。なら立場が変わったとしても、俺は誰かを助ける事を今度も諦めたくはない』

 

『あぁはいはい、日陰者には眩し過ぎる生き様だよアンタは。ほれ、仕事は終わったぜ?』

 

改造を終えた銃を差し出すと、Strangerは銃を手に持ち動作を確認する

俺の仕事っぷりに文句が無かったのかそのままホルスターに仕舞って出口へと向かい2歩3歩と歩いた所で止まり、肩越しに顔を此方に向けた

 

『こんな場所で武器を売ってくれるアンタも俺を助けてくれているんだ、大事件の解決は出来なくてもお節介や人助けってのは案外アンタにも簡単に出来るんじゃあないか?』

 

『―――ヒヒッ、言ってろ若造。また生きて買いに来やがれ』

 

『あぁ、また後で』

 

 

 

 

 

「(あの色男め、簡単に言ってくれたもんだぜ全くよぉ)...それで?アイツはどうすりゃあ倒せるんだフウカ嬢?」

 

「な、何でそんな事聞くんですか?」

 

「このまま放置しててもどうせこっちに向かって来るし、好きに暴れさせてたらフウカ嬢は困るんだろ?ならこれ以上暴れ続ける前にさっさと倒しちまった方が色々と都合が良い筈だ...違うか?」

 

「で、でもアルマさんが危険じゃ」

 

「"いえ、あくまで顧客サービスの一環ですのでお気になさらず。今後ともどうぞご贔屓に"...昔の友人の口癖みたいなもんだがな、アンタとは道中の護衛を約束したんだ」

 

アタッシュケースの中にある武器を確認し、デカブツとの戦闘に使う品定めをしていく...スーツに似合うからと新調した武器も幾つかあるから火力面ではヨーン達との戦闘時よりかは高くなっているし、風紀委員会の連中とは目的が同じだから連携も取れなくはないだろう

―――なら、勝てる算段はある

 

「それに俺としてもこれからゲヘナで商談する予定も入ってるんだ、美食研究会のせいでかなり時間もとられたしこれ以上時間をかけたくはねぇ。俺達の邪魔するってんなら、目の前の暴れん坊を大人しくさせて道を通らせて貰うぜ!」

 

さぁ、派手に行こうじゃねえか!

 

―――――――

 

萬屋アルマ(スーツの姿)

 

風紀委員会に見つかる事無くフウカ嬢を解放した(見つかるとややこしくなる為作者が断念したとも言う)

フウカも美食研究会には頭を悩ませているので若干苦労人同盟として親しくなりつつある

アフターサービスを兼ねて護衛を請け負ったらまたゲヘナ特有の厄介事に遭遇、時間も押しているし護衛対象のフウカが関わっているトラブルだったのもあり今度は逃げずに問題解決へと向かう事に

ガナードになる前の彼であればまた遠回りして送り届けていたのだが、かつて出会ったお人好しの色男の影響か青ざめる彼女を見過ごせなかったらしい

 

新調した銃?スーツとくればあのサブマシンガンとあのマグナムだ...何、反則だって?ゾウよりやべぇ奴をブッ倒すんだ、必要だろ?

 

 

 

愛清フウカ

 

アルマが偶然にも拉致しちゃったゲヘナラチラレニホンヅノちゃん

一瞬スーツ服がビシッときまった見知らぬ相手が現れた為もしや私マフィアに売られちゃうの!?と焦ったが直後にアルマ渾身の叫びで『あれ?マフィアじゃない?』と誤解が多少解けた

その後助けてくれたし一食食わせてくれるのを対価に帰りの護衛も引き受けてくれたし、愚痴を言っても聞いてくれたし慰めてくれたりとアルマが知らん間に好感度がグングン向上している

 

後にこの出会いから給食部があんな事になるとは、今は誰も思わなかったのである(いい意味?で)

 

 

 

巨大パンちゃん

 

アルマ達の進行方向で大暴れ中、モブちゃん達では止められない化け物なのは皆様もご存知の通りである

 

 

 

レオン(レオン・S・ケネディ)

 

RE4の主人公、回想のみ登場

武器商人だった頃の彼に影響を与えた人

我々はあくまでプレイヤー視点で会話も二言三言な感じだったが実際ならばこんな感じで皮肉や軽口をお互いに叩きながらサドラ―やサラザール達と戦ってたらいいな...と思って書きました、今後も何処かで少しだけ挟むかも

 

 

 

アルマの昔の友人

 

パンちゃんですか、それに関しては...私では存じかねますねぇ




あと2話か3話で漸く本編のプロローグでしょうかね、アニメ1話の時系列まではまだまだ遠いですがゆっくりと気ままに書いていきますので今後ともご贔屓に...

ライブセレクション「カイザーPMC基地正門」

  • 『このまま対策委員会と進む』表ルート
  • 『後続部隊を待つ』暗躍(裏)ルート
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