巨大パンちゃんと萬屋アルマ、風紀委員会の戦いは風紀委員長空崎ヒナと銀鏡イオリを加えての第二ラウンドへと突入していた
アルマと風紀委員会が戦っている巨大パンちゃんは一生徒の数倍の高さと道路を塞ぐ程の横幅を誇る巨躯を生かした触腕による振り下ろしや薙ぎ払いが最大の脅威となり、本体から二倍以上は伸びる上に簡単にコンクリートを破壊し地面を陥没させる程の破壊力の前ではいかなキヴォトスの生徒達でも二発三発と喰らえばノックアウトされてしまう可能性が高く、また距離の離れた相手には本体上部から前方へと向けて放つ粘液飛ばしを行うという近距離遠距離どちらにもある程度対応してくるという汎用性も持ち合わせている
更には巨躯に見合ったタフネスさもある為実力者であるヒナ・イオリを中心として相当量の人員と火力による飽和攻撃をもって打倒する...というのがパンちゃんに対して風紀委員が対処する場合の通例であった
しかしこの戦術においては鎮圧するまでの間に戦闘に参加した多くの風紀委員が負傷する上に治療とその後の回復が完了するまでの休養を有するという問題が発生し、現時点でも戦闘に参加した第四・第五中隊は重軽傷問わず半数以上が負傷して戦闘から離脱してしまった両中隊はこれ以上負傷者が出た場合再編や人員の補充が無い限りは中隊規模の行動に問題が発生してしまうという状況に追い込まれていた
ゲヘナの治安維持を担う風紀委員会としては、動かせる中隊の数が減るというのはその活動そのものに大きな影響を与えかねない...早急に始末をつけたいヒナは自主的に協力すると言い出したアルマを加えて自分とイオリ・アルマという即席チームに、後方にある高所に陣取った風紀委員達を統括するアコの支援を加えパンちゃんの駆逐を開始した
最初に動いたのは巨大生物の眼前へと移動した彼女...アルマであった
彼女は先程のサブマシンガンを収納し、新たにハンドガンを取り出した...また取り出した銃を放り投げたり手元で回転させるという変な動きをさせている上に手持ちの銃が複数あったりと不可解な点が更に増えていく彼女はそれを巨大生物に向けて放つ
―ズドォン!!
「ッ!!?」
轟音と共に銃口から放たれた弾が巨大生物の胴体らしき場所に直撃すると一瞬だけ動きが完全に制止し、巨体の上部から僅かに粘液が溢れて滴った...効いていると判断したのか彼女は即座に同じ個所へと更に複数発を叩き込んだ
その間だけは巨大生物は細かく震え粘液を上部から溢れさせるだけで全く動く気配はなく、その隙を見逃さないとばかりにイオリとアコの指示を受けた風紀委員達の一斉射が叩き込まれていく
「オイ何だその銃、すげぇ音と威力だな!?」
「コイツはハンドキャノン...俺の手持ちの中では一番のじゃじゃ馬だがその威力は象すら仕留めるという話もある代物だがっ、と!...これを全弾打ち込んでもジャブかストレートを叩き込んだ程度のリアクション、だと見たね!全く武器商人としては商売あがったりだ!」
「いや、私等の銃でも手傷を負わせるのは苦労するんだけど、なっ!」
「...二人共まだまだ余裕があるわね」
ハンドキャノンという強烈な銃を複数発立て続けに受けその上から一斉に攻撃された事で激しく暴れだし、周囲を見境なく破壊していく巨大生物の猛攻をしゃがんだり瓦礫に隠れて回避するアルマと持ち前の素早さと身のこなしで躱しながら銃撃を加えていくイオリ
2人に意識が向いている間に別方向から『終幕:デストロイヤー』を放って更に痛手を加える...今度は此方が厄介と思ったのか触腕を振り上げて叩きつけようとしているみたいだけれど、遅いわね
単純な叩きつけを横へと跳躍して躱してからリロードしてまた撃ち始めると巨大生物の丁度側頭部の辺りで大きな爆発が起き、直後に先程のハンドガンの轟音が複数回聞こえてきた
視線だけ音が聞こえてきた方へと向ける...右手で銃をまた意味無さげに回し左手には手榴弾を握り締めたアルマと目が合ったが、彼女は不敵に笑いながら右手を数回振る。まだまだ余裕があるという意味なのか、それともさっさと攻撃しろという意味なのかは分からないが彼女の方へと巨大生物の意識が向いたらしい
釣られる様に彼女の方へと向きを変えたからイオリと私でまたその隙だらけの巨体を撃たせて貰う
攻撃されているアルマの方は...障害物を蹴り飛ばして粘液を相殺させている。荒々しい戦い方が目立つけどそれが注意を引き付けているのか、今私やイオリに高台から支援してくれる風紀委員の子達は好きに攻撃出来ていて楽が出来るわね...いい調子だからこのまま押し切れるといいけれど
◇◇◇
第二ラウンドが開始されて5分程度が経過した頃、趨勢は風紀委員達に傾いていた
アルマがパンちゃんの注意を大いに引き付け、その少し後方からイオリが左右に素早く移動しながら撃ち、ヒナという最高最強の武力が蹂躙し、細かい隙をアコが見極めて支援射撃の指示を出す
その連携に段々とダメージが蓄積され、攻撃が更に大雑把で大振りになりまたダメージを負い続ける破目になるパンちゃんはこの流れのままいけば自分は討伐されると判断したのか、激しく暴れ周囲に粉塵を巻き上げ始めた
チナツの治療を受け動ける様になった風紀委員達が慌てて他の怪我人や巻き込まれた人々の避難誘導や救助を急ぐ中、最前線にてパンちゃんを攻撃し続ける3人はそれぞれがその動きの変化に反応して行動を続けていく
アルマは少し位置を下げて様子を伺いながら即座に動ける様に両手に持っていた銃や手榴弾を仕舞い出方を伺い、ヒナもまた攻撃の手を一時止めリロードしながら次の好機を判断する為に視野を確保する...そしてイオリは粉塵を巻き上げていくパンちゃんを見て臆して逃げようとしていると判断し、アルマの横を通り過ぎて一気に前へと出ながら銃撃を叩き込もうと走る
「逃げるつもりか!?その図体で逃げ切れる訳が――」
「!イオリ、上!」
ヒナの声を受けて制止し頭上を見上げたイオリの視線の先には、暴れている間に上方へと放たれたらしき幾つもの粘液が落下し始め今まさに彼女へと降りかからんとしていた
粉塵を撒き上がらせてこの攻撃から視線をそらそうとしていたのか、と素早く察したイオリはそれでも粘液が次々と落ちてくるまでのタイムラグを利用してサイドステップやバックステップで当たる事無く全てを凌ぎ切った
「そんな攻撃に当たるか!今お返しを―――ッ!この程度、でッ!?」
再度パンちゃんへと照準を合わせようと構えた瞬間に彼女目掛けて撒き上がった砂煙の陰から触腕が薙ぎ払われる。再び回避しようとしたイオリだったがズルッ...と足を滑らせバランスを崩してしまう
(しまっ...さっきの!)
足を滑らせた原因は、先程に自分の周囲へとばら撒かれた粘液...気付かぬ内に足元の至る所へと飛び散ったそれを知らずに踏んでしまった彼女は僅かな一瞬体勢がふらつくものの、何とか踏み止まった
だがその僅かな時間にも迫ってきた触腕による一撃がイオリへと迫る...回避が間に合わないと察したイオリは冷や汗をかいた
「やばっ―――うおわぁっ!?」
「世話が焼けるぜイオリ、一本釣りさせて貰うが舌ぁ噛むなよぉ!?」
その一撃が叩き込まれる寸前、来る衝撃に備えて身構えようとしたイオリの腰の後ろ辺りへと何かが引っ付く感触と共にグンッ!と強く横へと引っ張られた彼女は宙に舞う
触腕の薙ぎ払いが自分の居た場所をごっそり抉っていくのを天地が逆転した視界で見たイオリは、そのままアルマが持つボウガンの様な銃の先から自分の方へと伸びたワイヤーに引っ張られながら落下し、その数瞬後にアルマが自分を両手で受け止め素早く地面に降ろしてくれた
「わ、悪い助かった...」
「良いって事よ...
(だが周囲の被害やら委員会の連中の治療も考えればそろそろ仕留めたいぜ、戦い始めて大分経つし撃ち込んだ弾数も相当量だからダメージは蓄積出来てる筈だが...)」
今日は商談の予定だったから武器の数を少なめにしたんだよな...RPGやライオットガンといったものは無ぇし頼みの最高火力であるハンドキャノンもあの程度だったとはな、フル改造すればまだ上は目指せたが無い物ねだりか...となりゃあ、やっぱこの場に居る最高火力かつ場を納めるに相応しい人物が良いか?
「アルマ!」
「っ何だヒナ嬢、ってオイ!?」
今まで淡々とパンちゃんに攻撃を続けていたヒナ嬢からのいきなりの名指しに驚いたが、お呼びに応えて振り向く俺に対して真っ直ぐ走って突っ込んでくるヒナ嬢が見えて何を考えてるのか分からずに一瞬戸惑う
今俺の傍にはイオリが居てヒナ嬢まで寄ってくると最悪一網打尽されかねんぞ!?何を考えて...
「貴女の『腕』を貸しなさい!『上方から一気に仕留める』わ!」
「!―――イヒヒ、俺でいいならお貸しするぜぇ?イオリはあのデカブツに借りを返してきな!トドメはヒナ嬢が決める!」
「何をする気か分からないが、任せた!」
俺とヒナ嬢が今から何をしようとしてるか察せなかったものの借りを返してくると言って離れていくイオリに頷いた後、俺はその場で横を向く。そのまま両足を肩幅よりもやや広めに少し前後になるようにし、膝を曲げて腰を低めに落としてかかとを少し上げる。左手の手の平に右手の親指以外の指を付け根から乗せ、両手の親指の内側をくっつけて最後に手のひら全体を包み込むように握って所謂バレーボールのレシーブの構えを整えて打ち出す球を待ち...
「――――今!」
「決めてこい、ヒナ嬢ォ!」
ヒナ嬢が俺の腕に脚を乗せた瞬間に合わせて僅かに屈み、そのまますくい上げる様にパンちゃんの頭上へと彼女を送り出す...弾丸の様に飛び出したヒナ嬢は空中で背中の羽を広げ姿勢を制御し、真下へと狙いを定め
「この掃射からは、逃れられないわ」―『終幕:イシュ・ボシェテ』―
『終幕:デストロイヤー』から今まで以上の圧倒的な弾幕による掃射が放たれ、パンちゃんの巨体を覆い尽くす銃弾が豪雨の様に降り注ぎ続けた結果...遂に精魂尽き果てたのか、パンちゃんは最後に断末魔をあげて抵抗を止めて沈黙した
「...協力、感謝するわ。御蔭で被害も最小限だった」
「此方としてもフウカ嬢から頼まれて手伝っただけだから気にしなくていいぜ?ただまぁ...負傷者が大分出ちまってるな」
パンちゃんの撃破後、俺は退避させていたフウカ嬢の護衛を風紀委員の子達に引き継いでからヒナ嬢たちの元へと戻った...美食研究会は俺達を追っ掛けてきたとこを運悪くヒナ嬢達に出くわして鎮圧されてお縄についたらしいので、もう俺が居なくても安全は確保された様なもんだった
後で必ず給食部に寄ると約束して握手を交わし帰る彼女を見送ったんだが、ヒナ嬢やイオリの所に戻るまでの間にかなりの数の生徒が負傷しておりチナツ嬢が忙しそうに動き回っていたのを見かけたんだよなぁ
「...ええ。此処だけじゃなくて、温泉開発部の方でも結構被害が出てしまっていて救急医学部が此処に来るまで少し時間が掛かるらしいわ」
「その救急医学部に用事があったんだが、こうなると救急医学部の方も忙しそうだな」
「先にゲヘナ学園に行って待ってればいいんじゃないか?フウカの飯でも食べてれば後始末だけは終わると思うぞ?」
「一時的とはいえ、流石に協力し合った子達を残して食う飯はなぁ...向こうが片付けばこっちの救助にも来るんだろ?なら救助の手伝いをしながら待つとするさ、人手は幾らあっても困らねぇだろ?」
「ならチナツの手伝いをお願いするわ、人数が多くて苦労しているみたいだから。イオリは瓦礫の始末をしている子達の指揮をお願い」
「分かった、委員長」
「おうよ、丁度医薬品を持ち込んでるからそれを出して手伝わせて貰うぜ」
「持ち込んでいる?...それは商品じゃないのかしら?」
「キヴォトスじゃあこんな騒動日常茶飯事なのは俺も身をもって知ってるからな、商品としての物と緊急時に分けられる物を仕分けて持ち歩いてるから多少なら無償で提供しても問題ねぇよ。それにこういう場で実際に商品の効果を実演する商法もあるからな、興味があれば是非買ってくれると嬉しいね」
「そう...なら、お手並み拝見といこうかしら
「ああ、大船に乗ったつもりで......今何て?」
おやぁ?あんまり知られたくない二つ名が一番知られたくない人の口から出てきたぞぉ?気のせいだよな、という意味を込めて聞き直してみるが、薄っすらと笑みを浮かべてもう一度繰り返してくれた
「薬師さん、と言ったのだけれど?」
あこれ完全にバレてやがる、逃げ...られんよなぁ。相手はアルちゃん達便利屋68ですら逃げを選択するゲヘナ最強、美食研究会と違って油断も慢心もしてくれねぇだろうし
「あー...どの辺りでお気づきになられたんだい?」
「私が貴女に名乗った時には薄々と気付いていたわ。便利屋68がブラックマーケットに最近現れたとある生徒と共にマフィア組織を潰したという報告は私の所に来ていたから、色々と」
「ほぼ最初からじゃあねえか...因みにだが、アンタ以外に俺がそうだと気付いてる奴は?」
「居ないと思うわ。アコなら報告は読んでいたでしょうけど、普通に通話をしていた辺り便利屋68の方に意識が行っていてあまり貴女に対しての情報は深堀りしていないみたいだから...さて、何の用でゲヘナに来たのかは知らないけれど
後で詳しく、話を聞かせて貰うわね」
......裁判長の前で立たされて判決を待つ被告人の気持ちって、多分今の俺みたいな心境なのかもしれねぇなぁ。あ、アハハ...
―――――――
萬屋アルマ(スーツの姿)
ハンドキャノンを派手に撃ちまくったものの、まだまだ威力が足りていないそれではダメージは控えめだった模様...尤も、元の世界での最大強化を以てしても巨大パンちゃんの前では単発での撃破は難しいだろう
(RE4のラスボス並みに撃ち込んで漸くか?もっとかもしれない)
結局はタンク役と要所でのサポート役に徹し、風紀委員主力と協力して巨大パンちゃんを制圧した
が...今度は何とヒナ委員長に初見でほぼ身バレしていたのが判明、アルマの長いゲヘナでの1日はまだまだ続くらしい
空崎ヒナ
実はアルマに関しての情報は直近のもの以外ほぼ把握していたらしい
野良タンクであるアルマが加わっての戦闘になった為時間はかかったものの普段よりは楽に鎮圧出来た
窮地に陥ったイオリを助けたり自分からの急な指示にも応えてくれる柔軟さには一目置いている
フウカを救出してくれていたし私達が来るまでの間風紀委員の子達も助けてくれていた手前、あの場で退避してくれれば見逃がしても良かったのだけれど...まぁ本人が残ると言ったのだし騒動も収まって落ち着いたから、少しお話しでもしましょう?
巨大パンちゃん
何とか鎮圧完了、さて出現と暴走の原因は如何に...?
愛清フウカ
拉致の元凶が捕まった為此処で一時のお別れ
いつもより早く助け出された上に車両も無事、更にパンちゃん問題の解決もされたので気分良く給食部の調理室へと帰れたものの其処には壁に大穴の空いた調理室が...思わず崩れ落ちた彼女は本当に何も悪く無いのだ
銀鏡イオリ
戦闘能力自体は高いが兎に角罠というか搦め手に弱いらしく、本作でも危うい場面が発生する事態に...
彼女を筆頭に風紀委員生徒達は現状アルマに関しての詳しい情報を有していない
火宮チナツ
ハーブ医薬品関連は今回の話で触れると長くなりそうなのでセナの登場と共にまた次回...スマヌチナツ
風紀委員のモブちゃん達
作者がとある天啓を得たので次回もう1度こんがり焼かれちゃう出来事が確定した()
モブちゃん達の情緒は如何に...
何時の間にやらUAは10万超えてるしお気に入りは3000超えたしデイリーランキングにも良く載るようになってて小心者な私は震えています
何時も見てくれる皆様、感想や誤字報告をしてくれる方々ありがとうございます
まだまだプロローグのプの字すら見えない拙作ですが引き続きお楽しみ頂けると嬉しいです
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