「それで、トキ嬢...俺は何を用立てりゃいいんだ?」
「此方を...ミレニアムの会長から預かってきた物です」
お互いが名乗り終えた俺とメイド、トキ嬢が席に着き商談へと入る。トキ嬢が傍に置いたアタッシュケースから取り出し俺の方へと差し出してきたのは1つの茶封筒、それを受け取り開封して中に入っていた書類を取り出して俺は注文品の一覧を読んでいく
...銃本体の購入数は書いてないのに大量の弾薬を欲しがっている、それにこのリストに記載されてる大半の品物は機械や重機を動かす為に必要な部品が多いな?それに関連してかスペアのパーツや制御用の電子部品もかなり必要らしいが、何かの戦闘用のメカでも作ってるのか?ミレニアムは確か科学が発展していると聞くし不良やテロリスト対策として学園警備用のロボなりメカなりを作ってても可笑しくはねえが、それにしちゃあ随分...
「...えらい注文する部品の数が多いな?おまけに種類も多岐に渡る様子だが、一体何を作るつもりだ?」
「1つは都市警備用のドローンです。我が学園は科学技術に力を入れている新興の学園、此処キヴォトスにおいて最新鋭・最先端を行く多くのものが製造され各地で普及しているのはご存知かと思います」
「...その科学技術を盗む、或いは奪う為に来る連中に対しての抑止や防衛を目的とした買い物か。理屈は分かるぜ?理屈はな」
「もう1つは試験用や新開発中のドローンになります。新素材の開発やAI開発、新型兵装の開発等を行う際に試し撃ちや耐久テストに動作確認のテストを目的としたテスターに使用する為非常に消費が激しく...」
「ふむ...」
防衛以外にもテスターとして使うんならそりゃあ大量の部品が必要になる訳だ...だが解せないのは何故わざわざ
先日のミネも少し話していたが各学園の自治区にも当然専門の販売店やでけぇ複合施設はあるだろうにそういった所に話を通さずどういう訳かブラックマーケットの俺の店に来て注文する辺りに何かの裏を感じざるを得ないがな
「折角の儲け話を持ち込んで貰った手前あんま言いたくは無いんだが、ウチじゃなくミレニアム自治区内にあるだろう店なり工場に頼めばいいんじゃあねえか?」
「無論其方にも話をしておりますが此処はキヴォトス、不測の事態に備えて調達先は幾つも用意しておきたかったというのもあります...それに件の医療品に関しての噂も聞き及んでおります。今はまだ急を要する案件ではありませんが、今後其方の取引についても後々お話をしたいとの事でした」
「...ふぅん、成程な」
つまりはあれか、今欲しいのはドローンの部品やら弾薬だけどこの商談を皮切りにハーブ医療品の取引についても詰めていきたいと?此方としてもゲヘナ・トリニティと合わせて三大学園と言われているミレニアムが売り先が増えるのは嬉しいが、矢張りこの取引自体何か裏がある話って所か?
...まぁ今此処で其処を突いてものらりくらりと躱されるだけか、今はこの取引の確約だけしておいてゲヘナとトリニティとの流通を優先して後々ブツを集めてから直接会いに行く事も考えるとしよう
っとそうだ、序に聞いとくか?
「―――ああ、そうだ。トキ嬢が会長さんの、ミレニアムの関係者だってんなら丁度良いから一つ聞いておきたい事があるんだよ。メカやドローンに詳しい技術者を探してるんだが、会長さんなら誰か心当たりがあるかもしれんから帰ったら聞いといてくれ」
「技術者、ですか。それなら機会があればリオ会長に直接お会いになるのが良いかと思います、彼女もミレニアム学園が誇る技術者の一人ですので」
「...そうか、なら今度直接会いに行かせて貰うとするぜ。最初の納品に関しての連絡はどうすればいい?」
「連絡用の機器を預かっておりますので、此方をお使い下さい...注文した品物を用意出来ましたらその端末を用いて指定の場所へ輸送してください。それとくれぐれも、他の端末で連絡を取り合ったり店員の方々以外に今日のこの商談を誰かに話すのは控える様にお願い致します。又会長に会いに来る際には事前にアポを取って頂き、その際に何か聞かれましたら医療品に関しての話をしに来たと仰ってください...最後に、私やリオ会長が貴女と取引している事を口外する様な事があれば―――」
「おぅおぅ、徹底してるな...ま、そういう契約をする以上スジは通すから安心してくれ。俺もC&Cだったか?にこの店を物理的に畳まれちまうのは部下を食わせていくのにも自分の生活的にも大いに困るんでな、しっかり守秘義務を果たすさ」
オイオイもし秘密を漏らしたりしたら口を封じるぞ?ってのもやるかい?...そこまでやるとはな、内々に事を動かしたいってのはよぉく分かったが...
リオ会長さんよ、あんた何を企んでいやがるんだ?
「...ふぅ、色々と忙しい一日だったぜ」
「お疲れ様です店長、お茶どうぞ」
「ん、サンキュー」
商談を終えトキ嬢が帰った後でやっと一息ついた俺に店員の一人が紅茶を持って来てくれた
トキ嬢が帰った後に店仕舞いもしてるし、本日の警備担当以外は店員達もそれぞれ普段着に着替えて今頃俺がゲヘナで買って来た土産を開封して楽しんでいるだろう...コーヒー豆とチョコレート菓子を中心に買って来たが商談用の部屋にも賑やかな声が聞こえてくるし気に入って貰えたらしいなぁ
「でも意外でしたね」
「うん?何がだ?」
「ああ、いえ。さっきのミレニアムのメイドはハーブ医療品の購入に関しての話は今後って事で今直ぐの取引の話はしなかったそうじゃないですか、ゲヘナやトリニティは欲しがってたのにミレニアムは、まだ要らないのかなぁって思って...」
...成程、彼女の言い分は尤もだ
先程の商談、実は注文された品物の種類は多岐に渡れどハーブ医療品に関して後ほどと述べて時期をずらして話をしたいという旨だったからな...おや?とも思うかもしれんわなぁ、少し説明しとくか
「...そうだな、『今は』まだ必要が無いってのも理由の一つだろう。だが他にも理由はいろいろある...トキ嬢が此処に来た事自体秘密裏に行われていたとしてだ、現時点でハーブに関しての商談も成立させた場合俺が今後リオ会長に直接会う様な事態が発生したとする。その際俺とリオ会長じゃあ今まで全く接点が無かった筈なのに急に現れた奴がアポとったり会って話をしていたら違和感があるだろ?」
「......あの、店長なら偉い人に売り込めると思ったら学園に行って直談判で売り込みしそうですけど」
「イッヒッヒ、違いねぇ!てか実際しちまってるわな、だがま理由が無いのに急に学園のトップやお偉いさんに会って話をしている外部の人間...しかもブラックマーケットの商人なんて見たら『一体何の話してるんだろう?』位は思うだろ?それが確かミレニアムの治安組織みてぇな扱いのC&Cだったか、其処に知られると困るんだろうよ...だから見られた時の言い訳として俺とハーブ医療品について商談を行っていたから会う必要性があった、とかいう落とし所を用意したかったんだろうさ」
紅茶を口に含み、ゆっくりと嚥下していく
他にもまぁ色々と裏があるんだろうが、今直ぐ撤収するかどうかを判断しねぇといけねぇ問題は感じなかった...寧ろ気にするべきは『購入している量と数』だろう
(規模がトップクラスにデカい学園なんだから注文する量も相応だと思ってたが、これをもしトキ嬢が話していた様にブラックマーケットの複数ある店に注文してるってんなら都市でも防衛する気か?って規模になるな...逆にウチだけだった場合市場に影響が無い様に密やかにかつ長期的に準備を整えようとしているのかだな)
その場合ウチを選んだのは何かあった際に外部の武力装置である便利屋68との繋がりや俺を始めとした店員達の戦闘能力、目玉商品のハーブ医療品を取引している或いは取引しようとしているという表側の理由付けに店の評判辺りだろうか?評価されていると言えば聞こえはいいが...
(何を企んでいるのかが分からねぇのが怖いな...いや、何に備えているか分からねぇと言うべきか?)
ヘルメット団やマフィア組織を始めとした連中以外にも、今日出会った美食研究会に話だけは聞こえてきた温泉開発部相手だとしてもかなり過剰気味な注文に思えたが...彼女は何に備えてやがるんだ?
「店長?」
「......明日からは注文された品物の確保とハーブや武器弾薬の製造は続けていくが、店員達は部屋に置いてある私物以外で外に色々持ってるんなら早めに地下倉庫に持ち込んどく様に言っといてくれるか?どうにもきな臭ぇ感じがするから念の為にな、紅茶ありがとよ」
「は、はいっ!承知しました!」
空にしたカップを盆に返せば少し慌てながら部屋を出て行く店員の嬢ちゃんに足元気ぃつけろよー?と声を掛けながら、俺も書類を纏めてとっとと自室へと向かう
全く、昨日から今日に掛けて色々あったし色々あり過ぎて疲れちまったぜ...さっさとシャワーを浴びて着替えてからベットに潜り込んだ俺は今までの疲労からかあっさりと意識を手放して眠ってしまった
そして、その日俺は夢を見た
...尤も、この夢の内容を思い出したのはもっとずっと後、あのエデン条約締結の一件辺りになっちまうんだがな?その夢の中で俺は『古き友』に会い、語り、知り、理解した―――この世界に俺が来た理由と意味、そして...この体に宿った"古くも新しい神秘"についてもだ
あん?何でそん時の出来事を翌日に覚えてなかったのかだって?そりゃあなんせ翌朝からは暫くドタバタと忙しくなっちまうのが俺達の預かり知らぬ内に確定していたからなぁ、なんせその時の混乱は俺達を含めてゲヘナ・トリニティ・ミレニアム含むほぼキヴォトス全域に波及しちまう程の大事でよ
そう、『連邦生徒会長が行方不明になった』というとんでもない厄ネタさ―――
◇◇◇
アルマがゲヘナを訪れ、トキと秘密裏に取引をした翌日から...ブラックマーケットを始めとした各地でとある噂が流れ始めた
『連邦生徒会の生徒会長が行方不明になった』という出所不明のこの噂は、最初は各学園首脳部からも現場で治安活動をしている面々からも只のデマだろうと一蹴されていたものの...日を追う毎に各地で混乱が発生し始めていくと段々と真実味が増し始める事態となる
発電システムの異常・連邦矯正局において収監されている囚人達の脱獄・ヘルメット団やスケバンを筆頭とした素行の悪い不良生徒達による各自治区の生徒達への襲撃事件の多発・戦車やヘリコプターを始めとする出所不明の武器の不法流出の増加...そしてその様な混乱を納める為に本来存在している連邦生徒会やSRT特殊学園は各地の動乱に対して不気味な程に沈黙を保っており、各学園の治安を担う組織や首脳陣からはその動きの無さに不満や不安が沸々と湧き出していた
そしてそれは勿論、彼女―――萬屋アルマもまた、同じ気持ちであった
「―――全く、連邦生徒会に来るまでに何度も襲撃されたりする辺り日増しに治安が悪くなってるんじゃないの!?此処にはヴァルキューレやSRTが居る筈なのに襲って来るとか向こうの生徒達は何してるのよ!」
「その意見には同意しますね、トリニティでも生徒達に対しての襲撃や恐喝が多発していて手を焼いていて連邦生徒会の手も借りたい程なのですが...」
「それ以外にも出所が不明な武器や兵器の不法流通も横行して、正常な学園生活にすら支障が出ているのが現状です...でなければミレニアムだけでなく、我々も納得出来る様な答えを求めて此処に来たりはしないでしょう」
「ぜっっったいに納得のいく答えを連邦生徒会長にして貰うんだから...!」
ズカズカと荒い足取りで連邦生徒会の建物の中を進んでいく3人の生徒達...早瀬ユウカ・守月スズミ・羽川ハスミの目的は共通していた。此処暫く続いている各地の機能障害と治安の急激な悪化、そしてそれに対し何ら対処もせずに指示も出さないまま沈黙し続ける連邦生徒会とその会長に対しての説明と対応を迫る為である
奇しくも同日に同じ目的でやって来た彼女達は軽くお互いの状況を確認しながらレセプションルームへと辿り着いた
其処には既に『2人』の先客が訪れており、片方は風紀委員の腕章を付けたゲヘナ学園の風紀委員らしき少女と...もう一人、きっちりとスーツを着こなす長身の女性の2人が向かい合う様にレセプションルームの一角にある席に座りコーヒーを嗜んでいた
「...ゲヘナの風紀委員も来ていたのですか」
「そうみたいですね...ただ、今は抑えて下さいねハスミさん。此処で騒ぎを起こすのは色々と」
「......それ位私でも分かっていますよ」
「なら今の間は何よ...兎も角、今最優先なのは連邦生徒会長の居場所を聞くべきでしょ?此処に先に来ていたんならもしかして居場所を知ってるかもしれないから聞いてみるわ。―――ねえ、其処の貴女達ちょっといいかしら?」
「はい、何でしょうか?」
「ん?俺達に用事かいお嬢ちゃん?」
ゲヘナの生徒がいる事に対して若干の嫌悪感を出しそうになるハスミをスズミが宥める間に、先んじてユウカが二人に声を掛けそれに反応し二人の視線が此方に向いた後に立ち上がる
「私はミレニアムの生徒会で会計を務めている早瀬ユウカと言うんだけれど、見た所貴女達も生徒会長に用事があって来たのかしら?」
「ゲヘナ風紀委員会所属の火宮チナツと申します...此方は」
「ほぉ、ミレニアムの生徒会ねぇ...お初にお目にかかるなぁユウカ嬢、俺の名は...
ブラックマーケット在住の武器商人、萬屋アルマだ」
―――――――
萬屋アルマ(スーツの姿)
漸くプロローグ直前まで辿り着けた模様の武器商人さん
此処で出会わせるべきか1章まで先伸ばすべきか迷いましたが此方で行く事にしました
トキ(を経由してのリオ会長)との取引内容はドローン用の大量の弾薬と部品の数々
現在とある都市を秘密裏に建造中の様子だが、アルマは現時点でそれを知る由もない為色々裏を疑っている状態
ハーブの取引に関しても会いに行った時の理由にしてきたりしている為訝しんでいる...でも取引額は中々良いので契約そのものは結んだ
契約を結んだ後に連邦生徒会長が行方不明となり大忙しになった1人、その関係なのか風紀委員会のチナツと共に連邦生徒会にやって来たらしい...詳細は次回にて
飛鳥馬トキ(調月リオ)
現在後の要塞都市の建造真っただ中、秘密裏に幾つかの企業に目星を付けて物資を調達すべく駆け回っていた中でアルマの店の噂を聞きつけてやって来た
他の企業では生徒相手だからと舐められたり足元を見られたりしていた為最終的に了承してくれたアルマの店に調達を一本化、以後は連邦生徒会長不在中の混乱を隠れ蓑にしながら着々と建造を続けている模様
表向きとして『ハーブ医療品の取引を今後ミレニアムでも取り入れる為にアルマに会う』というのはアルマがミレニアムに来てもある程度誤魔化しやすい理由であり動機になり得ると判断しており、今はまだトキを経由しての間接的に取引をするだけの間柄である...まぁお察しの通りパヴァーヌに介入する為の理由付けとも言うが
早瀬ユウカ・守月スズミ・羽川ハスミ・火宮チナツ
シャーレ初期メンバーとなる面々
この中で直接顔を合わせているのがチナツだけだし、ゲヘナ側の参加者が1人に対してトリニティ側が2人なので釣り合わせる為にゲヘナ側からの参加扱いである...尚在住地はブラックマーケットとかいう奴、大丈夫か?大丈夫だろ多分(投げやり)
まさか各方面へのサイバー攻撃をハーメルンまで受けるとは思わずちょいと書いていた下書きデータが消えたりしましたが何とか書き直して投稿です
またアンケートの結果ですが...
百合園セイア316 / 27%
桐藤ナギサ304 / 26%
聖園ミカ288 / 24%
蒼森ミネ284 / 24%
という作者も余り見た事の無い僅差でセイアちゃんが1位になりました...こんなアンケート結果滅多に見ない位にばらけましたね
この結果は後々本作のストーリーに影響を与えていく結果になりますのでお楽しみに
ライブセレクション「カイザーPMC基地正門」
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