透き通る世界の武器商人さん(ちゃん)   作:狐の行商人

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チャプター2 ブラックマーケット

さて、此処で萬屋アルマが経営している万屋アルカの状況について少し語るとしよう

 

先ず今の万屋アルカの元となった建物は、元々はギャング組織「ヨーン一家」が自分達の新たなる拠点として設計建築していた建物で当初地上5階に地下1階という構造であり、地下部分は訳アリの商品を隠す為の搬入口付きの地下倉庫と頑強な地下構造となっていた

 

またギャング組織という手前、敵対組織との抗争や治安維持組織の摘発に備えて表に出ている部分もかなり強固な構造を成しており並大抵の銃撃では建物の表面にこそ銃痕が残るが内部構造まで被害が出ない様に対策が施されており、もし持ち主達がヨーン一家のままでも此処に立て籠もるだけで各学園治安維持組織は彼等を摘発する事にかなり手を焼かされていた可能性があった...しかし、実際はそうはならなかった

 

ヨーン一家は萬屋アルマ並びに便利屋68によって壊滅、彼等がヴァルキューレに引き渡され宙ぶらりんになってしまったこの建物の利権はアルマが取得し、現在は店舗兼住居として使われる事となっている

 

そして現在―――地上5階部分は多少の内装を変えただけでほぼそのままに公に出来る地下倉庫たる地下1・2階部分の他に隠し倉庫としての地下3階に店員達や要人の万一の避難場所としてアルマが個人で作った地下4階を隠し持つ万屋アルカなのだが...その地下4階部分には今、トリニティ三大分派サンクトゥス分派のリーダーであり本来当期の『ホスト』を担っている筈の百合園セイアと先日出会って以来妙にアルマに好意的な救護騎士団団長蒼森ミネがアルマによって個人的に匿われており、その事を知るのは匿った張本人であるアルマのみとなっている

 

...何故、こんな事態が起きたのか?

事の発端は、数日前にアルマのモモトークに届いた一通のメールであった

 

送り主は蒼森ミネで、至急アルマの手を借りたい要件がある為此処まで来て欲しいという内容であった

指定された場所は、トリニティ総合学園郊外にある廃墟...後からミネに聞いた話ではあるがアレは元は救護騎士団の詰め所として使われていた古い建物で、総合学園に有事が起きた際学園内から救護騎士団がトリニティの要人を逃すルートとして伝え聞かされている場所だったそうだ

そんな内情をまだ知らなかった俺は外部の人間の手を借りたい火急の用事とは何だよ?と一瞬思いつつも現地へと車を走らせ...現場に到着早々小柄な少女を横抱きにしながら隠れる様に車に乗り込んできたミネの姿に凡その事態を察し、乗り込んだ直後に車を走らせてその場から大急ぎで立ち去った

 

その後は店員達にも気付かれぬ様に2人を荷台へと隠しながら万屋アルカの地下搬入口から車ごと地下へと入り、下車した後も姿を見られぬ様に大急ぎで秘密通路を経由しこの地下4階のシークレットルームへと匿う事となったのである...

 

 

 

(やれやれ、とんだ爆弾抱えちまったなぁ)

 

セイアとミネを隠している地下から秘密通路を通って2階の自室へと戻った俺は漸く人心地ついた心境で椅子に凭れ掛かる

今の所セイア嬢は昏睡しているだけでハーブを処方し更に香による治療を行い、護衛と介護にはミネが常に傍についていてくれるので心配はしてはいないが...店に有事があった際には彼女も前に出ざるを得ないだろう

そうならない為に腕の立ちそうなスケバンの嬢ちゃんを用心棒に雇ったし、店員達も彼女には流石に劣るが前以上に戦える様には仕上がりつつある...後は、()()()()()()()()()()()()()()()はかなり戦えるし有能であった為俺の秘書として色々動いて貰って―――

 

「店長?少々お時間宜しいでしょうか?」

 

「ん?アキ嬢か?構わねぇぞ?」

 

「失礼します...店長が不在の間に幾つかの商談が纏まりましたのでご報告を」

 

ガチャリ、と俺の部屋のドアを開けて入って来たのは件の新人...白に淡いピンク色が混じっているかの様な独特の色の長髪と猫を思わせる様な耳と尾が特徴的で、俺とは真逆の白いスーツを着こなしたモデル体型の美人秘書の清水アキ嬢である

彼女は俺の傍までやって来ると、右腕で抱えていた報告書を手に取り直してからゆっくりと俺に手渡してくれた

 

「サンキュー...ネットで売る為に作った装飾銃がまた高値で競り落とされたか。ちゃんと飾って貰えるなり使って貰えるなりすりゃあいいんだがなぁ...」

 

「...真に価値を理解出来ていない方の手に渡るのは嫌ですね、どんな扱いをされるか分かったものではありませんから」

 

「だな。商談の成立については承知したが、他に何か問題とかは無かったか?」

 

「いえ、全く。寧ろ何時もよりブラックマーケット全体が心なしか静かになっていた様な雰囲気でしたね、店長がD.U.から帰って来る少し前からでしょうか」

 

「そうかい、ワカモやら戦車やらとドンパチやった意味はちゃんとあったらしいなぁ」

 

「―――待ってください?ワカモってあの七囚人の、ですか?」

 

「多分その七囚人の狐坂ワカモだな。他の七囚人についてはまだ知らねぇが...オマケに何か目を付けられたらしくてな、下手すりゃ襲撃に来るかもしれん。ちょっと其処の所は警備担当の嬢ちゃん達と話し合いになりそうだなぁ」

 

面倒が増えちまってワリィな、とアキ嬢に伝えたらお気になさらずと言ってくれたが...やっぱ大規模な破壊行為をしてたらしいワカモの名前は有名だったのか、一瞬だけアキ嬢の顔が強張ってたな

...出来るだけ不安を解消させれる様にしねぇとなぁ

 

「今んところ美食研究会にはウチの店の位置はバレてねぇが、時間の問題だろうし...都合のいい事に店が襲撃された際周囲の建物は派手に壊れたり更地になっちまってる所もある。この際大金叩いて周りの土地を買っちまって店とハーブ畑の規模を広げるか」

 

「店の規模を広げるんですか?」

 

「今回のキヴォトス全体の混乱で大分ハーブの売れ行きが良かったんだが...お蔭さんで在庫が、な。将来これ以上の混乱が起きたら今度は在庫切れになっちまいそうだ。それは流石に商人としてよろしくねぇんでな、少し状況が落ち着きつつある今の内に前以上の量産体制を確保しときたいってのもある」

 

「他は...防衛能力の向上と更なる人員確保に向けた布石といった所ですか。でも、資金面は問題ないんですか?」

 

「その辺りは問題ないだろうよ。ゲヘナとトリニティへのハーブの輸出に武器弾薬の出荷も今んとこ順調だし懐事情は問題ねぇ、頑張ってくれてる店員達の為にも射撃場とかの娯楽施設は多少なり欲しいのもあるからちょいと奮発しようじゃあねえか。その内アンケート取るからお前さんも欲しいもんがあったら書くといいぜ?」

 

「...一応お聞きしますが、アンケートの内容を見るのは店長だけですか?」

 

「あん?そうだなぁ、俺だけにするか...全員に明かしても問題ない奴なら兎も角個人的に内緒にしときたいお願いもあるかもしれんしな」

 

「そうですか、ではその時までに何をお願いするか決めておきますね♪―――では、報告は以上になりますので私はこれにて失礼させて頂きます」

 

「あいよ、お疲れさん」

 

部屋を出て行くアキ嬢を見送った後に、俺はアルカと周囲の建物が書いてある地図を取り出して買い取る土地と建物の配置等を思案し始めていくのだった...

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

―――シャーレ奪還作戦から暫くが経過したとある日...ブラックマーケットの街中を一人の大人と数人の生徒が歩いていた

大人の方は最近何かと噂になっている連邦捜査部『シャーレ』の先生であり、複数いる生徒は先生に救援要請を申請したアビドス高等学校に在籍している小鳥遊ホシノ・十六夜ノノミ・砂狼シロコ・黒見セリカの4名であった

先生達の目的は、アビドス高等学校を度々襲撃してきていたヘルメット団が有していた戦術兵器...その破片を調査した結果、本来キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種に加えて取引されていない型番の兵器すら有していた事が判明。更には昨晩便利屋68なる組織にも襲撃を受けた先生達はこれ等の問題の原因を探るべくブラックマーケットへとやって来たのである...

 

「―――それで先生ぇ?先生にはこの武器とかを詳しく調べてくれる人に心当たりがあるんだよねぇ~?」

 

"うん。私がシャーレを奪還する時に一緒に戦ってくれた子でね...このブラックマーケットを拠点にしているらしいんだ"

 

『そんな人が居るんですね...で、でも大丈夫でしょうか?そんな人を当てにしてしまって...』

 

"大丈夫だよ。その子は萬屋アルマって言うんだけど、ちゃんとした店を持ってるしゲヘナやトリニティにも顔が利く程の人脈がある子だからね。話せばきっと協力してくれると思う"

 

「わぁ、ゲヘナやトリニティにも顔が利くんですか?凄い人なんですねぇ♪」

 

「ん...その人なら武器の情報とか教えてくれそう、かな?」

 

「教えて貰わなきゃ困るじゃないですかシロコ先輩...で、先生。そのアルマって人は何処に居るんですかね?」

 

"...うーん、何処だろう?私も皆もこのブラックマーケットに来るのは初めてだし、土地勘も無いからね"

 

「ええー!?名前だけじゃあ特定人物を探すのはかなり難しいんじゃないですか!?シロコ先輩もさっき言ってましたけど、此処って街一つ分位の広さがあるんですよ!?」

 

『それに、違法な武器や兵器が取引される場所なんですから何が起こるか分からないんですよ!?何かあったら私がサポートしますが、気を付け......きゃあっ!?』

 

高等学校を全員不在にする訳にはいかず立体のホログラムを飛ばしてナビゲートをしてくれていた奥空アヤネのインカムに、突如として大きな音が入り込み...その音の原因はすぐさま一向にも伝わった

タタタタタタ!と鳴り響いたのは、銃声。それも、彼女達が今まさに進んでいた通りの先にあるT字路から聞こえてきたものであった

 

「―――銃声だ」

 

"...何か、トラブルかもしれない。皆、構えて"

 

先生の指揮に、素早く自分達の愛銃を構えてそれぞれの位置に付くアビドスの生徒達...全員が配置についた次の瞬間、先ず1人の生徒がT字路を曲がり慌てながら此方へと走って逃げて来る。それを追う様に複数の足跡が近付いてきており、『待てー!』『逃がすな~!』という怒号も聞こえてきた

 

『あれ?......あの制服は』

 

「わわわっ、其処を退いてくださいー!?」

 

逃げてきた生徒は、慌てていたのかそのままシロコにぶつかってしまった勢いで尻餅をついてしまう

 

「――っと、大丈夫...なわけないか、追われてるみたいだし」

 

「は、はい...うう~、本当にアルマさんの言う通りになっちゃいました...」

 

「...?今...」

 

「おっとぉ?気になる言葉だけど...今はこっちに来る不良達に対応しよっか?シロコちゃん」

 

「ん、分かったホシノ先輩」

 

―――こうして、一行はトリニティの生徒である阿慈谷ヒフミを偶発的に同行者として引き込む事となったのだが...結果的にこの出会いが萬屋アルマ、ひいては万屋アルカそのものをアビドスの問題へと巻き込む事態へと発展していくとは誰も知る由も無かったのである

 

 

 

―――Chapter2 END

 

 

 

―――Next Chapter3 「対策委員会編」

 

―――――――

 

萬屋アルマ

 

シャーレの奪還成功後に万屋アルカにて今後の方針を練り始めた武器商人さん

かなり有能な秘書と表向きの防衛戦力になりそうな強いスケバンの用心棒を在野から獲得、更にはシャーレ奪還後一先ずの落ち着きを取り戻しつつあるブラックマーケットにて規模拡大を目論見始めている

取り敢えずハーブの製造量をマシマシにしとくか、と堅実な手を打つが...後にこれが大成功する事になろうとは思っていない模様

 

セイアやミネを匿った事は『爆弾抱えちまったなー』とは思っているが、実は迷惑を掛けられたとか面倒に巻き込まれたなとかは全く思っていない

ミネであればセイアの人命こそが第一であるし、あの時の啖呵を思い出せばミネが人命の為なら思い切った行動をするのも重々理解してしまっているので、仕方ねぇなぁ...ダチの頼みなら手ェ貸してやるよといった感じである

......お蔭で更に好感度が増し、何か救護騎士団に度々勧誘され始めたのは自業自得である

 

 

 

清水アキ

 

アルマの店に雇用され、その有能っぷりからアルマの秘書を任されるまでに至った猫耳猫尾の美人秘書さん

愛用の武器はボルトスロワー...を小型化し、片手拳銃程の大きさにカスタムしたもの(その内紹介します)

 

何故か七囚人というワードに反応を見せている

 

尚アルマはアキ嬢の素性については現状全く気にしていない...その内教えてくれりゃあいいさ、といった所

 

 

 

強いスケバンの用心棒

 

とても強いらしい

 

 

 

"先生"+アビドスメンバー+阿慈谷ヒフミ

 

現在エピソード1章の11『ブラックマーケットへ(1)』の真っ最中

基本的に冒頭は変わらないが、先生とヒフミは既にアルマを知っている為先生は取り敢えず武器商人のアルマなら詳しい話が聞けるんじゃないかと思っているし、ヒフミはアルマの懸念通りの事態に巻き込まれて反省しているといった変化がある




圧倒的なブラックマーケット票...これはつまり、あの台詞を期待されているという事ですね!?

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