透き通る世界の武器商人さん(ちゃん)   作:狐の行商人

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チャプター3 闇銀行

「ええい強盗団だと!?我々マーケットガードを舐めているのか...!」

 

ダン!という音をさせながらマーケットガードの警備隊長は警備室の机に自分の機械質な拳を叩きつける

マーケットガードという組織はブラックマーケット最高位の治安維持組織であり、彼等が居るという事実の前にはブラックマーケットに蔓延る無法者達ですら息を潜めて嵐が過ぎるのを待つしかないという程に恐れられていたのだ

 

...しかし、それは先程の停電の前までであった

停電の後補助電力によって復旧したモニターには闇銀行内部の現状が何も映し出されざず、出入口前に待機している部下達も此方の連絡に一切返事も返答も返してこない...

この状態から考えると銀行の出入口から窓口までは既に所属不明の強盗団に完全に占拠されてしまっており、今頃連中は店の客を人質にでもして金庫から金を出すように店長達に迫っているのだろう…この警備室に居る我々を放置して、だ

 

(我々マーケットガードが居るのに何という大胆不敵な奴等だ!それとも知らずに来た愚か者か?…どちらにせよ、たかが銀行強盗程度に襲撃されて犯人に逃げられては我等の威信に関わる!早急に襲撃者共を取り押さえ、マーケットガードという組織の威信と威厳を取り戻さねば…!)

 

「隊長!裏手の警備をしていた小隊も合流しました!」

 

「良し、直ちに強盗団の捕縛に向かうぞ!俺に続け!」

 

自らが所属する組織の看板に泥を塗られた隊長はその場に居た部下達の他、銀行の裏手にて警備をしていた者達も招集し襲撃者の鎮圧と捕縛に向かった

隊長以下総勢21名のマーケットガードは警備室から行員のみが使用する通路を小走りで銀行窓口横にある業務用出入口へと向かう…此処からならば恐らく窓口にて行員を脅しているであろう強盗団の側面へと強襲を仕掛けられるし、客に弾が当たるリスクも少なくて済む…最悪当たったとしても闇銀行を襲った強盗団が悪いのだと罪を擦り付けてしまえば問題無い

 

その為にも先ず最優先なのは今この場で強盗団を取り押さえる事だろう、連中さえ捕らえてしまえば後の事は自分より上の方々が上手く段取りをしてくれる…そう隊長は判断し先へと進んでいた

 

…彼にとっての誤算だったのは、強盗団の正確な数を把握出来なかった事と警備隊の増援がいる可能性を考慮されてしまっていた事、そして…

 

――――ドゴォン!!

 

「ん?何か今―――」

 

…足止めを任された人物が、文字通りの踏み込んだ足止め策を実行して来る様な奴だった事だろう

 

不審な音が聞こえた隊長が側面、銀行外側の壁に視線を向けた瞬間壁に罅が入り...信じられない事にそのまま粉砕される。この闇銀行は正面の出入口こそガラス張りが多いものの金庫や顧客に関する書類がある中枢部に警備室周りは壁が分厚い作りが成されている...まさかそれを、重火器や爆弾を用いずに―――

 

【―――】

 

「なっ...!?」

 

己の体だけでコンクリート壁を粉砕して来る等誰が予想出来ただろうか?

 

急に壁を砕いて現れた全身甲冑の不審人物にさしものマーケットガードの面々も思わず硬直してしまった

その一瞬の隙に甲冑の人物は素早く右手で隊長の首部分を掴み...そのまま足が宙に浮く高さまで軽々と持ち上げた後振りかぶって床へと思いっきり叩き付ける

 

「ガッ、ァ―――...」

 

機械製の自分の体重と相手の剛力、そして重力を乗せた叩き付けを受けた隊長は床に大きな蜘蛛の巣状の亀裂を作り上げ...衝撃の反動で僅かに跳ねた後に地面に落ちてピクピクと震える以外の動きをしなくなってしまう

 

「なっ、隊長!?」

 

「おのれこの不審者―――」

 

【―――!】

 

自分達の隊長を一撃で昏倒させた人物に対し隊長の直ぐ後ろを追従していた2人の部下が銃口を向け...きる前に、突進してきた甲冑の人物が繰り出してきたのは白銀の籠手を使ったダブルラリアットだ

 

これまた首を狙った勢いのある一撃を受ける事となった部下の2人はその初速の速さに回避も防御も間に合わず真正面から喰らい、振るわれた剛腕の威力を前に踏み止まれず空中を2回転程し顔面から地面へと激しく叩き付けられて隊長同様に意識を失ったのか起き上がってはこなかった

 

...予想外の不意打ちを受け瞬く間に隊長と2名の同僚が倒される形となったマーケットガードの面々は困惑と混乱から相手に対して銃口を向けれず思わず様子を見る様な態勢になり、お陰で漸く自分達を襲撃してきた人物をまじまじと目にする事になる

西洋の騎士が着用する様な銀色の鎧を纏った八角形のヘイロー持ちの生徒、身長は鎧込みでマーケットガードの面々と同じか僅かに相手の方が高い為180cmを超えるだろう身長を持つ襲撃者は未だ10人以上が健在な此方へと兜の部分を向け...

 

【...さて、引き続き俺の仕事に取り掛かるとしようかねぇ】

 

左脚を2歩程度前に踏み出した形で腰を落とし、無手のまま身構えた

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

【さてとぉ、頼まれたのは足止めだが...俺は増援に来るだろう連中を全員ブッ倒すつもりでやるからな?オペレーター】

 

『ぜ、全員ですか!?それを1人でって...無理ですよ!』

 

【なぁに、問題ねぇよ。この鎧は特注製でな...ちょいと厄介な制限幾つか掛かるが、その代わり武器や兵器に対する唯一無二の防御力を誇るんだぜ?至近距離からのRPGですら無傷って代物だ】

 

『至近距離からのRPGを受けて無傷って...そ、それは本当に甲冑なんですか!?』

 

【ああ、間違い無くな。大方何らかの神秘が宿ってるんだろうが...その防御力を得る為の代償が結構重いんだよな。先ず今の俺は銃器の一切が取り出せねぇ、武器商人が商品の半分以上を売れねぇなんてとんだ皮肉だよな】

 

『そ、そんな状態でどうやって戦うつもりなんですかぁ!?』

 

【そりゃあ勿論、素手で!...と言いたい所だが幸いな事に投擲物だけは使えるからスタングレネードやレモン・グレネードを投げてるだけである程度時間稼ぎは可能だ】

 

『な、ならそうしませんか?物陰に隠れてグレネードを投げつけて足止めをすればアルマさんは先生の指示内容は達成出来ますし、それでも突破してきた際に戦えば良いと思うんですが...』

 

【イッヒッヒ...おっといけねぇ、笑い方も気を付けねぇとな。まぁ確かに足止めだけならそれでいいんだが、出来るだけお前さん達の人相が解る奴は減らしておかねぇとな...特に戦闘に慣れてる連中はこんな荒事の中でも自分達と対峙した相手の顔なり特徴なりは他の奴等に情報を伝えちまう。有事に慣れてねぇ行員や民間人は自分達が襲われた時にゃあ自分達は事件に巻き込まれたって所はよく覚えてても犯人の特徴は?と聞かれりゃあ襲われたって印象が強すぎて中々思い出せないだろうからまだいいが、慣れた連中はそうもいかねぇ...俺等の身バレのリスクはきっちり減らしとこうや】

 

『...理由は、分かりましたが...それが本当に可能なんですか?』

 

【可能だぜ?その為にちょいとオペレーターさんにゃあ色々情報を調べて貰わねぇとならんがな...短い時間だが、頼めるかい?】

 

『...何とかします。その代わり、本当に無理だと思ったら即座に撤退してくださいね?』

 

【その辺は安心してくれや...こういう時の引き際は間違えねぇよ、絶対にな】

 

 

 

(いやはや何が何とかします、だ...ドンピシャ不意打ちに良い所を教えてくれたじゃねえか、中々優秀なオペレーターちゃんじゃねえかアヤネ嬢はよ)

 

隊長格らしきロボットタイプに加えて2人の部下もさっくりと不意打ちからの流れで退場させられた俺は、この短期間の間に俺が欲しい情報を見つけ出してきたアヤネ嬢に感心していた

 

セキュリティが厳重そうな闇銀行の内部情報、それも機密情報に近いだろう警備室から窓口に向かうルートの情報を僅かな間に入手してくれて助かったぜ...お蔭で俺は闇銀行の横に回り込んで出入口にて派手な花火が上がるのを待ってりゃあ向こうから警備の連中は来てくれるし、こうして一番厄介な頭も通過するその瞬間に叩き潰せたから連中の注意は今顔や姿を完全に隠した俺に向いてるってもんだ

 

『先ずは3人です!残りは...18人!』

 

【...さて、引き続き俺の仕事に取り掛かるとしようかねぇ】

 

俺のみに聞こえる程度まで音量を下げたインカムからアヤネ嬢が相手の人数を教えてくれる。思ってたよりも多少はいたがまぁ問題ないな...この程度ならな

 

「おのれぇ、よくも隊長を...!」

 

「落ち着け!相手は1人、しかも素手だしあんな骨董品の甲冑如きで銃弾は防げまい!各員一斉射で仕留めろ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

隊列の一番後方に居たらしき副隊長のロボットが指揮を引き継いで指示を出し、全員の銃口が俺一人に対して向けられる...おぉコワ、そんな数で撃たれたら流石に生身じゃあ痛いかもしれんぇがこの鎧着てるから痛くは全くねえだろ

ただ、成すがまま撃たれるのも癪だからこっちからも反撃させて貰おうかい!

 

「撃てぇ!」

 

アサルトライフルのステアーAUG18丁が一斉に構えられ、その全ての銃口から弾丸が撃ち出されていく...その銃弾の雨の中を甲冑に弾丸が当たる甲高い音を響かせながらも最前列の兵士へと走って迫ったアルマは跳躍し、警備員の顔面へと思いっきりドロップキックを叩き込む

 

「ぐぺぇ!?」

 

【ぎゃっはっはっはぁ!そいじゃあちょいと...近接格闘訓練の成果の試し相手になってくれやぁ!】

 

―――――――

 

萬屋アルマ

 

鎧の制限による銃火器縛りの為に謎の全身甲冑レスラーと化してしまった武器商人さん

壁をぶち抜いて出て来るというバイオのエネミー特有のアクションを披露して先手を取った後に部下も2人即座に倒し、最後にもう1人に自分の体重と助走と甲冑の重さを乗せたドロップキックを叩き込んだ

 

アシュリーの鎧は銃火器や刃物に対して完全無欠の防御力を誇るが、その神秘を維持する為にアシュリーが出来る操作の縛り...即ちアルマの長所である多数の武器持ち替えが完全に封じられる仕様がある

(その場に落ちているものと弾薬の作成は問題無いらしい)

これにより現時点でのアルマはスタングレネードとレモン・グレネード(強化手榴弾)の投擲以外にはナイフ一本すら取り出せないので己の肉体でこの場を乗り切らなくてはならないが...?

 

アヤネの情報収集能力を結構評価しており、彼女が技術担当だと知ったのなら色々手解きする程度には良い印象を抱いている模様

 

ワカモの件以来近接格闘に持ち込まれた際に備えて用心棒さんに相談していたが、此処でお披露目する事になるとはなぁ...

 

 

 

奥空アヤネ

 

足止めをお願いされたのに全員倒そうとするし、武器が取り出せないのに無茶をしようとするし、いざ戦闘になったら何故かレスラーみたいな戦い方を始めるしで困惑しっぱなしである

武器商人、なんですよねこの人...?

 

それでもちゃんとオペレーターとしての誘導や情報収集をきっちりこなしていて、その手腕をアルマがちゃんと評価しているのは今はまだ気付いていない

 

これからこの廊下で起きるプロレスを全て目撃し銀行襲撃後にアルマが一体何をしていたかをホシノから聞かれた際の答えが「...何というか、プロレスでしたね...」と答え、先生を含めた全員が一瞬困惑する事になる

 

実はキヴォトス式限定仕様改造の候補者の1人である()

 

 

 

マーケットガードの皆さん

 

隊長が〇イラントみたいな出現をした甲冑野郎に一撃で出オチさせられたりラリアットやドロップキックをかまされたりという訳が分からない状態で戦闘をしている被害者の会の皆さん()

 

何やコイツぅ..!?という心境である

 

 

 

 

 

強いスケバンの用心棒

 

近接格闘に関しては私が(体を鍛え直すのを兼ねて)鍛えましたわ

未だ本調子ではないとはいえ私の技やエリザベスの弾丸を複数回受けてもアルマさんは高確率で耐えてくださいますし、私相手にも怯まず挑んでくるのでつい興が乗ってしまいます...

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