透き通る世界の武器商人さん(ちゃん)   作:狐の行商人

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チャプター3 アビドス自治区1

 アルマがアビドスへと向かっていたその日、アビドス自治区にある市街地は短期間で状況が二転三転する大騒動の真っただ中にあった

 

事の始まりは市街地にある柴関ラーメンにて発生した爆破テロ事件である

店主である柴大将に日頃からバイトとして雇って貰いお世話になっていたセリカや常連であるシロコ達が慌てて駆け付けると、店の近くの大通りにて何やら騒いでいた便利屋68の面々と遭遇...彼女達の実力と目的を知っているアビドスの面々は彼女達に対し店の爆破に関わったのかを問い詰めた所、便利屋68は柴関ラーメンの爆破は自分達がやった事だと犯行を認め戦闘の意思を示した

 

犯行を自白し戦闘の意思を示した便利屋68に対し...先生とアヤネから柴関ラーメンの店主である柴大将が僅かに軽傷を負ったものの大事には至らないとの報告を受けても尚怒りが収まらないセリカ・シロコ・ノノミが挑みかからんと動いた

...しかし一触即発状態になっていた両者に対し割って入る様に遠距離からの攻撃が複数回行われ、混乱する場に新たな乱入者達が現れる

―――乱入者達の名は、『ゲヘナ風紀委員会』...ゲヘナ学園の秩序を担う治安維持組織である

 

 

 

当初、便利屋68の身柄を確保する為にやって来たと主張する銀鏡イオリはアビドスに対して撤退を要求。これに対しアビドス側は彼女達の処遇は自分達に決定権があるとして拒否し一時的に交戦状態に陥るも先生と風紀委員会の火宮チナツの静止、そして通信越しに事情を説明する為に現れた風紀委員行政官の天雨アコが介入した事で再度の話し合いの流れとなった

 

天雨アコは再度ゲヘナ学園の規則違反者である便利屋68の身柄の引き渡しへの協力を要請...この要請に対しアビドス側の意見の纏め役としてアヤネが自分達の自治区内の出来事である事と直前の戦闘行為に対する不信感を理由に協力要請を拒絶し、先生もまたアヤネ達の意見に賛同...両者は互いの目的を果たす為に臨戦態勢となった

 

が...風紀委員会と対策委員会の開戦は寸での所で便利屋68が先程の報復とばかりに奇襲攻撃を風紀委員会に対して行った事で中断させられ、この間に柴関ラーメンと柴大将の事を問い詰めたセリカに対し陸八魔アルが謝罪を行うという奇妙な空気の中..."1つの影"がゆっくりと3勢力の集う大通りへと近付いて来ていた

 

 

 

 

 

『―――きっかけはティーパーティーでした』

 

 

鬼方カヨコに『私達の確保はあくまで建前であり、最初からシャーレの先生を狙って一連の行動を起こしている』と本当の目的を察知されたアコはこれを認め事の次第を説明し始めた。ゲヘナ学園と長年敵対しているトリニティ総合学園の生徒会にあたるティーパーティーがシャーレに関する報告書を手にしている、という情報を得たアコは以前サンクトゥムタワー奪還作戦に参加していたチナツからの報告書を確認し...学園や組織の枠組みを越えてサンクトゥムタワー奪還を成し遂げた先生の存在による影響力を鑑みた彼女はエデン条約にも思わぬ影響を与える危険性を考慮し先生を保護し自分達の庇護下に置く判断をしたらしい

 

これに反発したシロコ達は風紀委員会という共通の敵への対処の為に便利屋68と一時的に停戦し、一先ずは目の前の問題に対処すべく行動を起こそうとしていた

 

「まさか貴女達が共闘するなんて...まぁいいでしょう。風紀委員会の恐ろしさを嫌という程―――」

 

―――ズルッ、ズルズルズルッ!

 

「...ん?何この音?」

 

「麺を啜る音か?」

 

『...こほん、風紀委員会の恐ろしさを嫌という』

 

ズルズル、ズズズッ!ズズズ―!!

 

『――――ッ!先程から一体誰ですか!!人の話を一々中断して!』

 

「...ぷはぁ。ソイツぁ失礼、なんせこっちはついさっきまで砂漠をひた走ってて今漸く自治区にやって来たもんで腹が減ってたんだよなぁこれが。イッヒッヒ!」

 

『―――そ、の…声は!何故貴女が此処に居るんですか、萬屋アルマ!』

 

「「「「「「「「アルマ(さん)!?」」」」」」」」

 

"アルマ!"

 

両者が対峙している場へと新たに姿を現したのは、先生やアビドスの面々に加えゲヘナの風紀委員会も顔見知りであるブラックマーケットの武器商人...多くの生徒が最早見慣れつつある愛用のロングパーカーを着込んでいる萬屋アルマその人であった

アルマは空になった器を一時的に路上に停められていた車のボンネットの上へと置きながら、ゆっくりと先生達の側へと向かって歩いていく

 

「どぉもアコ行政官...それにアビドスの面々に便利屋68の面々に先生サン、萬屋アルマデス。よぉよぉ皆様方お揃いでこりゃあ何の騒ぎ、ってテンプレはまぁいいか。大体の事情は双方の通信を傍受させて貰ってたから大まかには知ってはいるしよ」

 

『こ、の...貴女は一々私の邪魔をしに...!今我々は大事な案件を片付けようとしている最中です、部外者である貴女は関わらないで』

 

「ところがぎっちょん、そうもいかねぇな。今俺は其処のアビドス対策委員会の面々と商談の真っ最中でなぁ?オマケに先生もこの商談に第三者扱いで関わって貰ってるもんでお前さんの所に先生を連れていかれると話が頓挫しちまうから困るんだよ...それに『アビドス対策委員会が何らかの面倒事に巻き込まれた場合、正当性のある理由以外で発生する問題においては万屋アルカは出来得る限りの協力をする事』って約束も含んだ誓書も書いちまってるから部外者でもねぇしなぁ?」

 

『何ですって!?』

 

「ま、そんな訳で先生を連れてこうってんなら...俺達全員倒してもらわにゃあならねぇかなぁ?」

 

「え、アルマも手を貸してくれるのね!?心強いわ!」

 

「ん、宛にさせてもらう」

 

"...また手を貸してくれるかい?"

 

「商人の手で良けりゃあな...で、どうする?やるかい?」

 

 

 

ごきり、ぼきりと腕を鳴らしながらアビドス対策委員会の面々の横へと立ったアルマは無手のまま風紀委員会と対峙する...キヴォトスの常識的に考えるなら相手がヘイロー持ちであったとしても無手であるのならば大抵の場合はあまり脅威とはならないのだが、風紀委員会の面々は以前ゲヘナ学園を訪れた際に彼女の実力と強みを知っている。状況に合わせて多数の武器と戦闘スタンスを変えながら縦横無尽に駆け回り、高い戦闘能力と状況判断能力と指揮力を有するアルマの存在は味方であれば心強いが敵対すると空恐ろしい存在となる事を

 

勿論今回アルマと敵対する流れになったアコもアルマの実力を良く知る人物であり迷ったが、それでもゲヘナ学園や風紀委委員会の為...そしてヒナ委員長の役に立ちたいが為に迷いを捨てて動揺していた風紀委員達に号令を出した

 

『―――例え貴女が其方側に組みしてもそれでも10人だけ、これ程の人数差があれば押し切れます!風紀委員会、全員攻撃開始ぃ!』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

"ノノミとハルカは三時の方角へ!セリカとムツキは九時の方角!シロコとアル、アルマは正面の十二時の方角だ!"

 

「うん」「了解」「任せな」

 

風紀委員会がアコの号令の元動き出したと同時に先生もまた指示を飛ばす

敵が一番多く居る正面を任されたシロコ・アル・アルマは風紀委員会の激しい銃撃を避けながら司令塔たるアコの無力化を目指して進んでいこうとするのだが...

 

「来たぞ!撃て撃てー!」

 

「近寄らせるなー!」

 

「おおっと、アブねぇ!...はぁー、こりゃ流石に俺でも受け続けたらやべぇ数揃えて来てるな」

 

「ん、このまま真正面から行くのは危ないかも...」

 

「普段は此処まで人員を動かす様な事は余り無いのに...余程先生を手の内に引き入れたいのね」

 

流石にそこいらのチンピラやブラックマーケットの連中と違い正規の治安維持組織である風紀委員会だ、数十人単位が構える銃口から一斉に撃ち出される銃弾の雨あられに対し此方は3人のみ。最初は撃ち合っていたものの余りの弾幕に3人揃って廃車と花壇の陰へと隠れざるを得ない程真正面からの撃ち合いでは数的な不利、其処から更にアルマ達を追い詰めるべくアコが風紀委員達に対して指示を出していく

 

『第1第2小隊は左斜め、第3第4小隊は右斜めから代わる代わる銃撃を行い対象に対して斜め方向から撃てる位置取りを維持しなさい!その間に砲撃隊は迫撃砲を今の位置から前に移動させ、動けない彼女達に対し迫撃砲をたっぷり浴びせて倒すのです!』

 

「あっ、アコ行政官テメェ以前風紀委員の嬢ちゃん達に俺が出してた指示を応用しやがったな!?」

 

『ふふふっ、貴女の事は好きではありませんが貴女がこの子達に出した指示は中々に有益でしたので此方も少し真似させて頂きました...以前自分が彼女達に教えた戦術でご自身が倒されるなんて、皮肉が効いているでしょう?』

 

「性格悪いぞお前!さっき前口上邪魔されたの地味に根に持ってるだろ!胸は服の横空けてねぇとせまっ苦しい程デケェ癖に性格は小さ過ぎんだろぉが!」

 

『んなっ!?それは今関係ないでしょう!?大体こんな所まで商売に来ている貴女の様な守銭奴に言われる筋合いはありません!』

 

「あーあーあーお前言っちゃならん事言ったなオォ!?ライン超えたなアコォ、見てろよこんな包囲俺達でぶち破って一泡吹かしてやるからなぁ!」

 

『やれるものならやってみなさい!規則違反者の便利屋68やアビドスの子達に加えて貴女にも辛酸を舐めさせてあげますから!』

 

「ちょっとアルマ!今はアコと口論してる場合じゃないでしょう!?」

 

「こうしている間にも風紀委委員が迫撃砲を運んできてる...このままじゃ不味いよ」

 

以前ゲヘナにてアルマ自身が風紀委員達に見せた指揮を真似たアコの戦術、それに気付いたアルマとアコが互いの陣営による銃撃を挟みながら口論し合うという異様な光景に他の面々は困惑しつつも状態は動いていく

既に風紀委員達は迫撃砲を元の位置より前へと動かし、砲弾を詰め込むべく動き出しているのだ

このままであれば動けぬまま迫撃砲による砲撃で吹き飛ばされるか、或いは周囲を破壊され尽くし風紀委員達の前へと自動的に曝け出されるかになるだろう...そう、"このままであれば"

 

「...さぁて、そろそろいいか」

 

「そろそろ...って」

 

「何か策があるのね!?」

 

「イヒヒ、悪知恵だけはあるんでね...怖ぇ怖ぇ迫撃砲もやっと前に押し出してくれたし今度はこっちの番だなぁ。アルちゃん、シロコ嬢...反撃のお時間といこうや!」

 

 

 

 

 

天雨アコは勝ちを確信していた

このままいけば風紀委員達を正面だけでなく斜めにも展開する事で3方向から撃ち続け、最後の詰めに迫撃砲で周囲の障害物ごと規則違反者である陸八魔アルに加えて邪魔者のアビドス生徒とヒナ委員長に擦り寄っている忌々しい武器商人である萬屋アルマを一網打尽に出来ると

 

アコにとって萬屋アルマとは外からやって来た得体の知れない不審者であり、敬愛すべきヒナ委員長に手八丁口八丁で取り入った怪しい商人であり、ゲヘナの天敵であるトリニティや風紀委員会と相容れぬ存在である便利屋68とも手を結んでいるという情報を自分達に隠そうともしなかった相手である

最近でもヒナ委員長と時折電話越しに楽しそうに話をしたり、時折ゲヘナを訪れてはヒナ委員長と親し気に話をしていたりと心底羨まし...忌々しい行動をしていたのだ

そんな相手は今、各学園に対し多大な影響を与えかねないシャーレの先生に加担しアビドスの生徒と便利屋68共々自分達風紀委員会に対して抵抗すべく戦いを挑んて来ていたが...こうして数の暴力と迫撃砲の火力で動きを封じてしまえば流石のアルマも何も出来ないだろう

万が一倒せなくともこのまま銃撃を続けさせて迫撃砲を撃ち続ければ動きは封じておけるし、迫撃砲の砲撃を受ければ流石に怪我は負わせられるだろう。そうして動きが鈍くなった隙に護衛の少なくなった先生の身柄を抑えてしまえば主目的が達成されるのでどう転んでも最早此方の勝ちが確定していた...つまり

 

(つまり、この状況に追い込まれた時点で貴女達の負けなんですよ!萬屋アルマ!)

『...迫撃砲の準備が完了次第一斉に撃ち込みなさい!』

 

 

今まで散々好き勝手にヒナ委員長に擦り寄っていたツケを支払わせるべく、アコは詰みの一手を繰り出す

風紀委員達の手によって砲弾が詰め込まれた迫撃砲は、アルマ達に向けて放たれるべくゆっくりと射角を合わせられ―――

 

 

 

 

砲身から放たれた弾によって、大通りにて更なる爆発が起こる事となった

 

―――――――

 

萬屋アルマ

 

先生を気遣ったのかかなり譲歩した契約をアビドスと結んでいる(これを結んだが為に自動的にこの後のアビドスの騒動に巻き込まれるのが確定した)

柴関ラーメンが便利屋68によって吹き飛んでおり昼飯のラーメンを食べ損ねたので代わりに立ち食い蕎麦を食べながら現場に到着、店員ちゃん達の分もお支払い済みである

 

大体の流れは把握済みであるし、アコの性格も理解しているので『あー、また暴走してらぁ』といった心境である...まぁたヒナ嬢の心労が増えるだろうが全く

 

今の所素の姿であるのに珍しく銃を取り出していない状態で戦闘中

 

 

 

陸八魔アル・砂狼シロコ

 

対風紀委員会戦にて組むことになった

タンク役兼回復役のアルマ、中盤アタッカーのシロコ、後方アタッカーのアルと構成的には安定したもののアルマまで加わった為アコも人員を惜しみなく投入し正面は左右の戦闘よりも激戦区化、アニメ版以上に弾幕が厚くなっている

 

只今アルマの策を聞いて動き出す準備中...

 

 

 

天雨アコ

 

実はゲヘナ来訪以後もヒナ委員長と親し気なアルマに対して便利屋68並に恨んでおり、両者による口喧嘩は顔を見合わせれば何時もの事と言わんばかりに日常化しつつある(大体アコが始めるが)

アルマが合流した時は焦ったが、数の暴力による弾幕を用いてアルマ達を追い詰め迫撃砲による砲撃で止めを刺せそうなので自分の勝ちを確信している

 

自信満々な時が一番信用ならない、とは同僚(イオリ)の言葉である

 

 

 

"先生"・アビドス対策委員会・便利屋68

 

アニメ版の展開通りに動き始めており、アルマ達の戦闘の裏でセリカ&ムツキVSイオリ達とノノミ&ハルカVSチナツ達戦が展開されている

 

 

 

 

 

空崎ヒナ(現在移動中)

 

時折医療品を届けに来たアルマと話をしたりモモトークや電話で話をしているらしい(アコ談)

最近良い香りがする~、とイブキ達親しい面子や風紀委員達から評判

ライブセレクション「カイザーPMC基地正門」

  • 『このまま対策委員会と進む』表ルート
  • 『後続部隊を待つ』暗躍(裏)ルート
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