透き通る世界の武器商人さん(ちゃん)   作:狐の行商人

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チャプター3 『??』の夢~アビドス自治区

...揺れる、揺れる

閉じている目の向こう側でガタンガタンという振動音と共に体が僅かに揺すられている様な感覚がする…夢うつつな気分の中、ぼんやりとする頭で小さな違和感を覚え始めた

 

(んぁ...?俺は、確かホテルで寝てた筈だが?)

 

ゆっくりと瞼を開け、何かに身体を預け傾いていた己の身体を起こして周囲を見渡す。其処は自分が寝ていた筈のホテルのベットではなく...

 

(...()()()()か?此処は、()()()()()()()か?どういう事だ...?俺は確かにアビドス自治区のホテルで寝ていたんだが)

 

未だに霞が掛かったかの様にぼんやりとした思考のまま、西洋調の豪華な内装がなされているダイニングカーの一角にあった椅子に座って窓際のガラスにもたれ掛かって寝ていた己の身体をゆっくりと動かして立ち上がる

 

(くそっ、どうなってやがる?考えが纏まらねぇ...安物の酒をしこたま飲まされたみてぇに頭ん中がぼぉっとしやがる、酒を飲んだ記憶はねぇし寝ぼけてんのか俺は?)

 

くらくらする頭を何度か叩いても混濁した思考は中々元に戻らず、生前初めて飲む機会を得れた安酒に浮かれ酔い潰れるまで飲んでしまった過去の失敗と同様の状態のままテーブルに手を乗せてふらつく体を支え、椅子も支えにしながらゆっくりと非常灯と室内灯の明かりを頼りにしながら別の車両へと向かうべくアルマは歩を進める

 

(この車両には、人がいねぇ...()()()()()なのか真っ暗だし寝静まってるのかもしれねぇが、流石に客の乗ってる車両なり運転手の居る車両は列車が動いてるんだからあるだろ。兎に角其処に行って情報を―――?)

 

ダイニングカーの出入口の階段傍までやって来た辺りで車両が僅かに揺れ、ブレーキ音と共に車両が徐々に減速しているのを感じた...駅があるのか、それとも大きなカーブがあるからなのかは分からないがゆっくりと2階から降りて人がいないかを探し続けたものの...

 

(一般席の車両にも人っ子一人いやしねぇ...なのに列車は動いたまま?いよいよ不気味だな)

 

一階部分へと降り一般客用の座席がある車両に入ってもやはり人気は無く、薄気味の悪さを意識し始めた辺りで車両が停車する...このまま車両内を探すか或いは降りるかを一瞬迷った後、列車を降りる判断をしたアルマは車両の乗車口から外へと出る

 

(さて、此処は何処だ?それに俺が乗ってた車両の名前は何―――はっ?)

 

外に出たアルマの眼前にあったのは駅...ではなく、()()()()()()()()()()()()()がありそれ以外には周囲には駅舎や駅名の看板も道路すら無い、駅のホームのみが洋館の玄関の目の前に隣接しているかのような状況に間の抜けた声が思わず出そうになった

こんな光景に一瞬呆然としたものの何とか思い直して他の客が降りたり駅員や車掌がいないかを見てみたが、やはり自分以外は誰もおらず乗っていた列車の名前が『()()()()』であると判明しただけであった

 

(...いよいよ以てこれが夢なのかそれとも幻想なのか分からなくなってきたな、現実の線も...まぁ、無くもねぇか?昏倒した状態でアビドスから此処まで連れて来られたかもしれんな、それが誰かは心当たりがねぇが)

 

列車はエンジンすら止めたのか静かになり、今の所すぐさま動く気配は見えない

これ以上はこのホームに留まる意味は薄いと判断したアルマはゆっくりと洋館の玄関先へと移動し、赤銅色をした大きな両開きの扉を開けて中へと入り―――

 

 

 

 

 

「...んん?」

 

ぱちり、と目を開けた俺はベッドから身を起こして周囲を見渡す

アビドス自治区の自分を含めて社員全員が宿泊しているホテルの一室で目を覚ました俺は室内にあった時計の時刻を確認するが、今の時刻は早朝の5時18分と予定よりもかなり早めに起きてしまったらしい

ばっちり目が覚めてしまい寝直すのも面倒だなと思った俺は布団を払い除けて商売道具が詰まったバックを取り出し、簡易的な点検をして時間を潰す事にした

 

(...にしても何か昨日は変な夢を見た様な気がするんだが......あー、どんな夢だったか?もう記憶から消えちまったのか内容が思い出せんな)

 

何だか奇妙な夢を見ていたのは覚えているんだが、内容はもう思い出せなくなっちまったな、まぁ夢なんてもんは覚えてても段々内容が薄れてその日の内にもう記憶から抹消される場合が多いから仕方ねぇが...ん?

 

「......うん?何だ?こんな商品俺は入れた覚えは無いんだが」

 

何時の間にか見慣れない『商品』がバックの中に詰め込まれていたが、俺はこの商品達をブラックマーケットで買った覚えは無いし作った覚えも無いぞ?これがどういう銃かは流石に分かるが、ちょいと気味が悪いなぁ

確認の為に一度バラして組み立て直すが、特に何かが仕込まれている訳でも無く不都合があった様な感じも無いし誰が何の為に俺のバッグにこれを忍ばせたんだが

 

(...悪い代物所か上物揃いだし店に並べても文句のねェもんばかりだから有難く使わせて貰うが...)

 

部屋の入口の鍵も掛かってたし動いた気配も無い...同じく鍵を有する窓も念の為に壁や床も確認してみたが変な所はねぇ、両隣の部屋は店員ちゃん達が宿泊してるし高い階層で止まってるからあの子達に気付かれぬ様に俺の部屋に忍び込むならフックショットでも掛けるか屋上からワイヤーとハーネスでもつけて降下するしかねぇ

が、それにしても目立つし何より寝てたとはいえ人が来れば流石に俺も目を覚ますってのに気配すら感じなかったならソイツは相当な手練れか或いは人外な存在か

...不気味ではあるが今はこれ以上は分かんねぇな、後でホテルマンに変わった客が来てねぇか聞くとするか

 

幸い弾の規格は同じ物が多いし取り回しには苦労はしないだろうが...それを見越して忍ばせてるんなら益々以てこれを俺のバックに入れた奴は何者なのか判断に困る、俺の取り扱う商品の事を結構詳しく知ってるんだからな

 

「......まさか、な」

 

思い出すのはかつての親友の事である

小太りで食い意地が張っていた友人だが彼に似た人物の情報は聞いた覚えは無く、生徒以外で人間らしい見た目をしている人物なんて先生以外に居たら目立つ筈であるがこれもまた聞いた覚えが無い

第一あの体型でえっちらおっちら俺の部屋に忍び込もうとしてたんなら吹きだす自信があるが、アイツももしかしたら生徒の姿になってたりするのかねぇ...?

 

(ま、居るか居ないか分からん奴を探すよりも今は今の問題に取り組むとするか)

 

あれこれと思考を続けながらも組み立て直した新商品達の手入れを行い、そのまま手に馴染んだ商品達の手入れも終えた俺は携帯端末を開きメールの有無を確認する...おっ待ち望んでた相手からメールが来てるな、ちょいと送ってきている時刻が彼女の多忙さ故の悲しい事になってるが今は頑張ってくれと祈るしか出来ねぇ

今度ヒナ嬢も使ってる何時ものハーブのお香詰め合わせでも差し入れに送るかな、さて内容は―――

 

「...イッヒッヒ、よぉしよぉし。これでおもてなし用の手札が出来たなぁ」

 

おっと、ついつい黒い笑みが出ちまったぜ...まぁ仕方ねぇよなぁ?前々から頼まれて調べてた情報を先方に回し続けた結果得る事の出来た代物だ、大事に大事に使わせて貰わねぇと意味がねぇしなぁ?

オマケに使う相手も都合よく向こうから居場所を教えてくれたしコイツを上手く使えばウチも苦労した分の儲けが頂けるだろうよ...まぁ強いて言えば、だ

 

(向こうからもう一つ特大の"やらかし"をしてくれると更にやりやすくなって有難いんだが、高望みし過ぎか?)

 

―――萬屋アルマが望む特大の"やらかし"と同時に...萬屋アルマの特大の逆鱗をとある理事が踏むのはこの直後の事であった

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

アルマが意味深な夢を見たその日、アビドス学園...いや、アビドス自治区は再びの大騒動へと突入し始める

 

始まりはアビドス学園の実質的リーダーであった小鳥遊ホシノが退学届けと手紙を残して行方をくらませた所からで、彼女はカイザーPMCに以前より傭兵として働かないかとスカウトをされ続けており対価としてはアビドス学園が背負っている借金の大半を肩代わりするといった契約内容だった

そして今回カイザー理事が跳ね上げた金利の上昇を元に戻すという条件も加えられた内容を彼女は呑んだ旨と...こういった形で学園を去る事への先生やアルマ、後輩達に向けた謝罪と今までの感謝を込めたメッセージが書かれていた

 

その内容に一同は驚愕し、アルマですら静かに『...そっちに今行くから待ってろ』と一連の流れを聞かされた後言葉少なめに話す程の事態となったアビドス対策委員会であったが、追い打ちを掛ける様に更なる悪意が襲い掛かって来た

 

「―――この地区を制圧するまで撃ち続けろぉ!」

 

カイザーPMCの兵士達により、街中の至る所で起こる爆発と銃撃による蹂躙劇が早朝のアビドス市街地に吹き荒れる...逃げ惑うアビドス自治区の住人達に次々と襲撃する事でカイザーPMCは強引な立ち退きを迫り、従わない者達に対して次々と危害を加えて暴力による恐喝を続けていく

この襲撃の立案者であり実行犯でもあるカイザー理事は、じきに現れるだろう先生とアビドス対策委員会に対して既に勝ち誇った気持ちであった

 

(アビドス高等学校、その最後の生徒会メンバーであった小鳥遊ホシノは既に黒服の手により退学した...これで私の計画の邪魔をする者は対策委員会に残る奴等とシャーレの先生のみ。しかし対策委員会は公式に許可を得た委員会では無く非公認の組織、例え潰したとしても連邦生徒会は何も言えぬし連邦生徒会長不在の今奴等はそれ所では無かろう...フフフ、漸くだ。漸くアビドス自治区がカイザーのものとなる!)

 

「さぁ、進め!この居住区を制圧した後、アビドス高等学校を我等の手で制圧し全てをカイザーのモノとするのだ!」

 

己の野望の為にカイザー理事は部下のPMC兵士達に更なる進軍を指示する

その指示を受け彼等は更なる銃撃と破壊行為を行いながら大通りを進み続け...

 

「...む?」

 

―――進む先から現れた"銀色の甲冑"を纏った不審者と遭遇する

 

「貴様...何者だ?」

 

【邪魔者さ、カイザー理事...手下を従えてピクニックの途中でスマンがなぁ、ちょいと邪魔ぁさせて貰おうか?】

 

「邪魔者だと?...フン、たった一人で何をするかと思えば銃すら持たぬまま私の邪魔をするつもりとはな。お前達、奴を排除しろ!」

 

「「「「「ハッ!」」」」」

 

カイザー理事の一声で彼の前に出たPMCの兵士達がステアーAUGを構え銀甲冑の人物に狙いを定める

対して銀甲冑は両腕を組んだ後仁王立ちのままで動かずに静観していた...舐めているのか?と感じた兵士達は理事の命に従いそのまま容赦無く銃撃を放つ

金属製と思われる鎧を激しく銃弾が襲い、甲高い音を響かせ続け...音が続いているという違和感に理事も、兵士達も気付いた

マガジンの弾を撃ち尽くし、弾が切れたままの銃を持ったまま一斉射撃をその身で受け続けた筈の銀甲冑は...

 

【...ああ、排除出来たかい?全く、カンカン喧しくて寝れたもんじゃあねえんだがよぉ?】

 

信じられぬ事に複数の銃口から放たれた弾丸の雨あられを受けてなお全くの無傷のまま、欠伸でもしているのか右手で口元らしき所を抑えて退屈そうな様子で此方を見ていた...馬鹿な、豆鉄砲じゃあないんだぞ!?と戦慄するカイザー理事とPMC兵士達を前に銀甲冑はゆっくりと身構え始めた

 

【さぁて、先手は譲ったし今度はこっちの番だが...その前に名乗らせて貰おうか?

 

 

 

目には目を、歯には歯を...無慈悲に、孤高に!我が道の如く魔境を行く覆面水着団...俺はその№6...『銀甲冑の悪夢』ジャガーマンたぁ、俺の事だァ!】

 

―――――――

 

萬屋アルマ(ジャガーマン)

 

夜中に変な夢は見るわ、内容は覚えてないわの上に保持する武器が急に増える事態に困惑気味である...えぇ、何でこんなもん持ってるんだ...?

 

カイザー理事達に対抗する手段を着々と用意していた矢先にホシノが行方をくらませるという事態が発生、アビドス高等学校に向かっていた筈だが...何故かカイザー理事達の前へと姿を現した彼女は再び『例の鎧』を纏っていた

 

 

 

"先生"・砂狼シロコ・十六夜ノノミ・黒見セリカ・奥空アヤネ

 

ホシノが行方をくらました為に現在大混乱の真っ最中

現在は市街地の爆発とカイザーPMCの反応を確認した為現場へと急行中

 

 

 

カイザー理事+カイザーPMC兵士達

 

小鳥遊ホシノの身柄を拘束した為既に勝ったも同然であったが、功を焦ったのか市街地とアビドス高等学校の占拠へと向かってしまい『銀甲冑の悪夢』と遭遇してしまった...何だコイツぅ!?

 

 

 

 

 

アルマが見た"夢"

 

お察しの方も居るかもしれないがバイオハザード0~1序盤の部分的な夢であり強化イベントでもある

今回の夢はスペンサーによる最初の事件から洋館事件直後辺りであり後のバイオシリーズの始まりとなる辺りで、今後もアルマは断片的にこういった夢を見る事になる

 

 

 

...尚、アルマが保有していた『神秘』に深く関係している模様

ライブセレクション「カイザーPMC基地正門」

  • 『このまま対策委員会と進む』表ルート
  • 『後続部隊を待つ』暗躍(裏)ルート
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