「はぁ~...何とか逃げ切ったがこのままじゃあ商売が出来ねぇな、依頼が出されているとなれば俺の商売活動の範囲も大まかに特定されてるだろうし...」
便利屋68の襲撃から何とか逃げ切り、新たな拠点にした廃屋の玄関のドアを閉めて漸く武器商人は安堵の溜息をつく
彼女達が言うに闇市の販売メーカーが目障りになった俺の首を狙って依頼を出したような感じだが、それにしては
(...きな臭ぇなぁ)
如何せん依頼を出すには理由が弱い感じがしやがる
ハーブから作った医療品各種はあのStrangerが俺に売ってきた在庫と一度目の収穫物から作り出された物を市場相場を確認しながら多からず少なからず流していたが...それだけで排除を前提として依頼を出すか?
それよりも俺自身の身柄確保か或いは製造法を脅し取るなりした方が儲けが出そうなもんだが...
「しかしまぁ、どうするかねぇ」
今回は逃げ切れたが、何れこの廃屋が特定されれば二度目の販売を控えている
かといって例えばあの便利屋達に自分一人で勝てるか?戦闘経験やチームワークで圧倒的に負けている相手だ、頭数を揃えようと傭兵やゴロツキ程度では足止めにもならねぇだろ
いっそ畑のもの全てを収穫してとっとと別の地区...ゲヘナ、は便利屋のホームだからトリニティやアビドス、ミレニアム辺りに逃げ込むのもあり、か?
だが...
「身分がはっきりしない奴や訳アリ者が生きていくには、此処が一番だからなぁ」
他の地区だと学生証の有無による取引制限や治安組織の存在、土地環境や住居の確保始めとした問題点が幾つもあるし便利屋連中が諦めるとは限らねぇ...最悪治安維持組織にとっ捕まって矯正局送りにされたら身元不明の俺は出て来れるかも分からんときたもんだ
便利屋を買収するか?...いや、金で寝返ると知られれば彼女等は信用を無くすだろうし情報を見る限り受けた依頼は正否を問わずきっちり働いてやがる
例外として依頼主が不義を働いた際は別だったか......待てよ?
(依頼の不義を提示すりゃあ契約破棄に持ち込めるか?)
どうにも胡散臭い依頼話だ、案外調べれば何か出て来るかもしれねぇか
それを材料に便利屋と交渉が出来れば別に戦う必要も理由も無くなる様に...『取引が出来る』
「...あぁ~、なぁんだそうすりゃあ良かったのか」
ニヤリと口元が三日月に曲がり、武器商人の顔に笑みが浮かぶ
武器商人にとって商売...取引とはガナードになってでも捨てきれなかった人間性であり、誇りであり、同時にガナードに成り果てたが故か前以上に強まった欲であった
仮に、もしそれを刺激する様なモノが彼女の前に現れたら
「それじゃ、先ずは情報の仕入れを始めるとしようかぁ!?イッヒッヒッ!!」
それを成す為に突き進む彼女を止めるのは、困難を極めるだろう
◇◇◇
―――薬師の排除依頼を受けて4日後、便利屋68の事務所にある電話が鳴り響く
今日も薬師の姿はブラックマーケットで確認出来なかったし、日にちもそこそこ経っている...気の早いクライアントなら催促や現状確認もあるだろうなと多少うんざりしながらも一度二度と鳴り響いた受話器を、社長である陸八魔アルは手に取ると耳に当てた
「はい、どんなことでも解決します。便利屋68です...ご依頼ですか?」
『よぉ!社長さん元気してるかぁ?俺だよ俺...薬師さ!』
「......はあっ!?薬師!?」
ガタリ!と座っていたお気に入りの椅子から思わず立ち上がり、電話相手に対して思わず叫ぶ
アルの様子と出てきた名前を聞いてカヨコ達も思わず警戒心を露わにし、各々愛用の銃を何時でも撃てるように身構える
信頼する部下達が臨戦態勢になったのを見たアルは一度深呼吸をして、スピーカー機能をオンにして再び話をする事にした
「...貴女、いい度胸してるじゃない?私達に追われている身なのにわざわざウチに電話を掛けてくるなんて」
『まぁ色々訳があってなぁ?アンタんとことはあんま事を荒立てたくないんだ、前も言ったが仕事を出せそうなトコだったもんでなぁ...ま今回はちょいと直接話がしてぇから、今から行くんで茶菓子でも用意して待っててくれや』
「あっ、待ちなさい!行くって此処に!?あっ.....き、切られた」
「わぁ~お、大胆だね?追ってる側の私達の事務所にわざわざ来るなんて」
「か、カチコミでしょうか!?アル様今直ぐ爆弾トラップを仕掛けましょうか!?」
「ハルカ、落ち着いて...で、どうするの社長?一応話がしたいとは言ってたけど迎え撃つ準備しておく?」
「...み、皆一応戦闘の準備は整えておいて!騙し討ちの可能性は否定出来ないけど...薬師はあくまでも直接話がしたいって言ってきたから、最初は話を聞いてみるわ!」
「こっちが騙し討ちにして捕まえれば依頼は達成出来るけど...?」
「それは駄目よ!交渉をしに来てる相手に此方が騙し討ちを仕掛けるなんてアウトローじゃないわ!」
「...ふふっ、そう言うと思ったよ社長」
―コンコン―
『俺だ、便利屋68。薬師だ...入っても構わねぇか?』
「――ええ、いいわよ」
アル達が戦闘の準備を整えて待ち構え始めてから数分後、本当に薬師は事務所の前に現れた様だ
わざわざノックをして入室の許可を得ようとする所に多少の好感をアルは持ったものの、油断せずに入室の許可をした
アルも、カヨコも、ムツキもハルカも緊張した面持ちで入ってくる薬師の様子を伺う
「邪魔するぜぇ」
ガチャリ、と扉を開けて入室してくる薬師だが今日は先日とは少しだけ出で立ちが異なった
前回の追跡時には背負っていた背負子ではなく...代わりに背中にはショットガンとボウガンらしきものを背負い、左手には銀色のアタッシュケースを手に持ちながら歩いて来る
「さて、先ずは話を始める前に礼を言わせて貰うぜ陸八魔アル...話を聞く気になってくれただけでもありがてぇからな」
「構わないわ...それで?一体何の話をしに来たのかしら?」
「あー、それについてはちょいと待ってくれ...伊草ハルカ、悪いがコイツらをお前さんに預けとく。話し合いに来ただけだからな、コイツらは今は不要だ」
そう言ってアタッシュケースを一旦床に置いてから、自分が背負っていたショットガンとボウガンを彼女の前に差し出す
一瞬急な指名にビクりとするものの、ハルカは薬師からおずおずと武器を預かる
その間、前の様な不意打ちは許さないと言わんばかりの目線をカヨコとムツキが向けていたが...薬師は飄々とした様子で武器を手渡す
「―――よし、じゃあ座らせて貰うぜ?」
「―――どうぞ?」
テーブルを挟んで向かい合う様にソファに静かに座るアルと薬師
アルの後ろにはカヨコが控え、薬師の後ろにはムツキと武器を遠くに立てかけに行って戻って来たハルカが愛用の銃をすぐ撃てる様に持ったまま立ち彼女の出方を伺っているが...
「さて、じゃあ話をするとしようか」
ニィ、と三日月の様に口元を歪めて笑みを浮かべながら落ち着いた様子で薬師は話を始めた
「先ず、今回の俺の排除を目的とした依頼に関してだが...それは偽装された偽の依頼だと確認した。そして販売メーカー...いや、とあるマフィア組織の真の目的は俺を餌にした便利屋68への復讐だ」
「...?...!?なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」
「「「...はい?」」」
...とんでもない話を
「い、いやちょっ、ちょっと待ちなさい!?依頼の偽装に、復讐!?それにマフィア組織!?ど、どういう事よ!?」
「アルちゃん、落ち着きなよ~?」
「―――でも俄かには、信じられないね。まぁ...こうして私達の前に来てその話をするって事はそれを立証する証拠を集めてきたんでしょ?」
「イヒヒ、良くお分かりじゃねえか...あぁ、証拠取り出していいかい?アタッシュケースの中に入ってるからよ」
アタッシュケースを開けて中に唯一入っていた茶封筒を取り出して薬師はそれを机に置く
アルがそれを慌てて受け取り、カヨコと共に中を確認する為に封を開けているのを見た薬師は話を続ける
「今から二週間少し前、便利屋68はブラックマーケットの歓楽街外れにある倉庫を占拠している不良集団の掃討依頼を受けただろ?」
「あ~、確かに受けたねぇ。掃討には成功したんだけど、倉庫は不良達が置いてた弾薬に銃撃戦の流れ弾が当たったのか大爆発して更地になっちゃったんだよね」
「そ、それでクライアントの方が怒って報酬を減額されたんですよね...」
「その事だがな...俺が調べた所どうにも裏があってな。倉庫に居たのはマフィアの手下共で、倉庫にあったのは密売品の武器弾薬に高級品にガワだけ偽装した中身は小麦粉の医薬品モドキ…これらをゲヘナやトリニティなんかで売り捌くのが連中の目的だったんだが…」
「…それを敵対的なマフィアが察知して商品を奪おうとしたけど不良役兼護衛の手下が多くて断念、そこでその偽装を逆手に私達に不良の排除を依頼して格安でまんまと商品だけ頂こうとしたら銃撃戦で破れて宙に舞った小麦粉とマズルフラッシュ辺りが反応、それが弾薬諸共にドカン、か…」
「だからあんな依頼主カンカンだったんだねぇ♪報酬だけは支払ってやるんだから有難く思え!なんて言われてムッとしたけど、そんな流れだったなら怒って当然だよね!アハハッ♪」
「あ、アル様...?」
カラカラと笑うムツキに対して、資料の写真や書類各種から事のあらましを確認したカヨコは頭を押さえて溜息をつく
おろおろとしながらアルを見守るハルカ
そしてわなわなと震えながら資料を何度も読み返したアルはバン!と資料をテーブルに叩きつける
「た、確かにスジは通っているかもしれないけれど、依頼主が私達を騙そうとしている決定的な確証が無いわ!そこはどう証明するの!?」
「...事務所の左の窓、そこからこっそり向かいの歩道左方向の電柱見てみな。事務所の出入り口に張ってる見張りがいるぞ?」
「ッ、カヨコっ!」
「分かった、見てみる......ハァ、本当に二人組の見張りらしき奴等が立ってるよ?ご丁寧にこの前の倉庫に居た不良によぉく似てる」
一見すれば不良共がたむろしているだけに見えるからの偽装なのかもしれないが、先程写真でほぼ同じものを確認しているカヨコが似ていると言うとなれば殆ど間違いない
眼前の薬師は現在に至るまで殆どソロで活動している、という情報は皮肉にも依頼主が伝えてくれたものだ...つまり、表にいる見張りは高確率で依頼主の配下となるだろう
お陰で気付かれねぇ様に屋上から失礼させて貰う為にワイヤーアクションしなきゃならなかったぜ?とニヤニヤとした笑みを浮かべながら、薬師は更に続けていく
「厄介者の排除とはいえ活動範囲は兎も角俺が住処にしてる場所はまだ把握しきれてなかった様だし、ソロで活動してる俺は基本身軽だから別の自治区に逃げたらそれを追いかけるという手間も発生してたろ?
つまりはこの前の接敵で俺が逃げた時点で長期戦になる場合もある訳だが...それなら見張りを置く必要性は余り無いよなぁ、定期的に依頼の履行を催促するなり気長に結果だけ待てばいいんだからな...
なのにだ、あんなとこに見張りの要員を立てて便利屋の動向を見張らせてるってのはそうしなきゃあならん理由があるって自白してるようなもんだろ?」
「貴女が見張りを雇ったとしても、大して意味は無いもんね...」
「ねぇな。んな事に金を出すならとっとと別地区に逃げる方が早いし無駄金もいらねぇ...鉄火場じゃあ儲け時と引き際をミスったら何もかも失っちまう。ダチも、テメェの命も、金もな...」
顔を下げて、ゆっくりと自身の拳を握り締めるのを見ている薬師はまるで今まで失った何かがある様に話した後にアルに視線を合わせる
「...さて?陸八魔アル、そして便利屋68。どうだい?俺と取引をしねぇか?」
「と、取引ですって?一体、何を取引するつもりなの...?」
「―――んなモン、決まってるだろ?
俺もアンタらも連中に安く見られてんだ...本当の価値って奴を連中に見せてやらねぇとなぁ!?その為に―――さぁ、取引といこうじゃあねえか!!」
―――――――――
薬師(武器商人)
商談や取引に関してなら最悪自分の命すら秤に乗せる覚悟すらも出来るやべー奴、頭ゲヘナ寄り(美食とか温泉とか系)かもしれない
現時点ではソロで店無しなので身軽、その為逃げれるならとっとと逃げる事も考えるが商品が燃やされるのは勘弁して欲しいし単にO☆HA☆NA☆SIがしたいという欲が出てきたので交渉(取引)に持ち込む事に...
今回は完全に武器商人のターン
便利屋68
現状は完全に薬師に振り回されている
今はまだ薬師から『依頼が出せそうな連中』という印象だけ
次回はアルちゃんのターンになる予定
マフィア(販売メーカー)
大がかりな金儲けをしようとしていたのだが、それにしては情報管理やらリスク管理やらが甘く大損した
便利屋68に落とし前付けた後は敵対組織も倒す算段をしているらしいが、その機会は来ないだろう...
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と皆様のお陰でランキングに載せて頂きました、ご視聴ありがとうございます
今後も武器商人さんの商談を書き続けていきますので宜しくお願い致します
それと次回でアンケートを終了します
圧倒的なブラックマーケット票が集まりましたが、幾つか投票率が高めな選択肢もありましたのでその内IFでも書こうかなと思っておりますので、気長にお待ちを
ライブセレクション「カイザーPMC基地正門」
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『このまま対策委員会と進む』表ルート
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『後続部隊を待つ』暗躍(裏)ルート